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少女漫画と小説の感想ブログです

影野だって遭難したくはない カテキョ二本立て収入増やしたい 火事場だって突入しちゃう

影野だって青春したい(8) (別冊フレンドコミックス)
北川 夕夏(きたがわ ゆか)
影野だって青春したい(かげのだってせいしゅんしたい)
第8巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)

光永さんとラブラブMAXな影野。スキー場で大ピンチになっても愛のこじらせパワーで光永さんを救ったり、火事の中、人命救助をしたり大活躍! でも今は高2の冬。進路の違いから、今までどおり光永さんと一緒にいられないとわかった影野は――… こじらせればこじらせるほど人は成長する!? キュンと感動の青春スパーキンな第8巻!!

簡潔完結感想文

  • 誕生日回。「影野」史上で死に最接近した回。危険すぎて笑えない。
  • 修学旅行回。学校生活最大イベントが、お寺巡りに風邪で終始地味。
  • 3年生進級。影野の成長がしっかりと分かる、あの頃から2年後の話。


言い辛いんだけど、影野、トーンダウンしてるよね(光永風)の8巻。

これまでの巻と内容が大きく違うわけではないけれど、感想文を書こうにも心に残る場面が浮かんでこない。
唯一、影野が独力で頑張る8巻の最終話はこれまでと違う要素が多い回なので印象的ではあるけれど。

これは影野と光永が一緒に行動する場面が少ないことが原因だろうか。
私は特に光永の影野の行動を温かく見守る視線が好きなので。

今回はスラップスティックやギャグ要素が少しのボタンの掛け違えなのか冴えない感じがする。
もう一方の恋愛要素は高止まりしているし、一難去ってからの「ずっと一緒にいよう」という水戸黄門的展開への倦怠もあって、心がときめかない。

8巻でもアクシデントはいっぱい起こる。
雪山で遭難しそうになったり、火事現場に突入したり大ごとだ。
これは光永さんのためならたとえ火の中、雪の中という影野の心境でもあろう。

でもその原因が安易なせいか、問題解決のカタルシスがない。
雪山での影野は、またもや作者が影野の知能を下げたためにリフトを乗り間違える。
そして戻れなくなり、光永までも危険にさらす。
二人ともが絶体絶命のピンチになったところで影野はお決まりの「光永さんは(私が)お助けしますので」という印籠を出し、無敵の力で下山する。

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スキーで遭難も少女漫画ではお約束ではあるが…。
これが愛の力だ!と言わんばかりだが、そもそもの原因を作ったのは影野であることが引っ掛かる。
光永救出のためにスキー場に多大な労力を掛けているだろう。
そこに誕生日のサプライズがあって、生まれたことに感謝と言われても…。
本書の読書に気真面目さは不必要だろうけど、雪山も火事も稚拙な判断で行動しない方がいいよ、と常識的な私が顔を出してしまう。
ちなみに火事になる光永家庭教師の回は、ラストのキーパーソン「近所の幼なじみ」の存在は前半で伏線がちゃんと張られている。
そこに気が付かないとラストの唐突な展開に呆気に取られてしまうだろう(拝啓 私へ)。
そして影野へのスパルタ教育や家庭教師の経験が光永に将来の道を照らす…。


3年で光永とクラスが別れるという前段階になった修学旅行回。

でもどう考えても、光永の進学クラス行きの話と修学旅行回を同時進行でやる必要がないように思える。
修学旅行を光永と同じクラスの、受験生ではない2年生の内に行かせようという判断なのかなぁ。

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修学旅行の夜のお約束と言えば、このシチュエーション。
影野は光永の決断を知って放心していたせいで、風邪をひくという、実に影野らしいが、またもや自業自得な展開であった。
修学旅行回なのに通常と変わらない1話分、更に風邪で1日寝たきりになる影野。
作者は何か影野に恨みでもあるのか。
旅行先での光永との非日常描写があれば、絶対心に残ったのになぁ。

この巻のラストで3年生になった影野たち。
影野に今更『君に届け』の貞子(爽子)のような設定が加わっていることに驚く。
影野の「ぼっち」演出を強調するために必要だったのかなぁ。
しかしそんな中でも自ら声を掛ける影野の姿に成長を感じ、やっぱり胸が熱くなる。
クラスメイトになった不破を陥れる中学の同級生たちは、相変わらず悪意100%の極端な設定。
続く『9巻』もそんな登場人物がいるので楽しめない。
この辺りが作品『影野』の辛抱のしどころです。

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いつの間にかに影野の裏設定が出来上がっている。とっても既視感のある設定。
スキーで雪ダルマ、火事で髪がアフロになったりと表現が古典的なのも気になるところ。
影野お得意の何かに巻き込まれ化け物のように見えるシリーズもマンネリ化しており、まず被り物や布を取れよ、と冷静に突っ込んでしまう。
もっとギャグの発想がハチャメチャであったら、作品の売りになるのにと残念に思う。
それがとっても難しいのも分かるのだけど。