白石 ユキ(しらいし ユキ)
はにかむハニー
第07巻評価:★★(4点)
総合評価:★★☆(5点)
彼女として、彼氏として、試される時!? 熊谷家・花咲家 両家の両親が一気に登場! 波瀾万丈展開! 熊谷くんちのお風呂でイチャラブMAXの瞬間に熊谷くんママ登場!?!? 熊谷くんにケガをさせてしまった上に、親の居ぬ間にイチャこらしているなんてぜったい嫌われちゃったよ…(T_T)と落ち込む蜜だけど…? さらにクリスマスプレゼントに特別な物をあげたい蜜は、編み物に挑戦! こっそり手のサイズを測ろうとするけどバレちゃって!? 熊谷くんからの最高のサプライズも! これまで未収録だった番外編も初収録! 愛があふれまくりの第7巻!
簡潔完結感想文
- 彼の自宅の お風呂場でイチャラブする現場を母親に見られ最悪の初対面になる。
- 落ち込みが幸福の前振りであるように、最高のクリスマスは落ち込みの前振り。
- イトコに続いて交際に反対する花咲一族。ストーカー撃退は面倒な男を召喚する。
それぞれ相手の親に ご挨拶をする 7巻。
『6巻』で作品の大きな山として設定されたストーカー事件が解決したのに加えて、『6巻』までと『7巻』ではページ数が20ページ以上減ったので物足りなさを感じた。また『4巻』との重複が多く、本当に新しい出来事は少なかったように思う。
今回は両家の両親が登場して、この顔合わせが終われば少女漫画的には婚約が成立したといって良いだろう。本書では蜜(みつ)はストーカーから退避するためにイトコと同居、そして熊谷(くまがや)は両親が多忙なために、それぞれ親の監視なく自由にやって来た部分もあるが、これからは親を意識した行動があるのだろうか。ストーカーの件もそうだが、これまで無視してきた存在を出してきて、恋愛的に完成し切っている2人に刺激を与えようということなのか。親が登場すると交際も成熟してきて、物語も後半だという印象を受ける。
冒頭の熊谷の親と蜜のエピソードは、お風呂で濡れ場が始まる寸前を目撃されてしまい、嫌われて当然の状況で嫌われないという よいご都合主義が印象的だった。


ただ その後の遊園地デートや その帰りに起きる蜜の一族の中から反対勢力が出てくる、という展開は2度目で既視感が強かった。遊園地デートでの心残りは夜のパレードだけなのだから、そこまで一気に物語を飛ばせばいいのに、デート回で連載1回分を消化しているから再放送をして水増そうという魂胆が見えてしまう。遊園地での天候の急変も展開が同じ。作者の場合、これが意図的な繰り返しというよりもアイデアの枯渇による無意識の重複でしかないのでは、という疑惑が生まれる。
蜜の父親による反対は、基本的に保護者であるイトコのマキの時と同じ。蜜を守ろうとするあまり熊谷が理不尽な目に遭う。それに対して熊谷は正攻法で取り掛かり、彼の人間的な大きさが見える。熊谷は酷い扱いをされるものの、そのお陰で彼の見せ場が出来る。暴走してエロくなるよりも100倍 素敵な熊谷が見られるから私は熊谷には男ヒロインとして成長し続けて欲しいぐらい。何かと戦って余裕がないぐらいが丁度いい。
逆に蜜は成長が見えない。今回の父親への態度も含め、どんどん幼稚になっているように見える。フィジカルの強さなどストーカーにまつわるエピソードが作中で見えてこない。思考も成長しないから、熊谷に対する愛情の言葉も以前と同じように見えて代わり映えがしない。
それは2人の交際そのものにも言える。かなり早い段階から2人は相手のことしか見えていないから、高値安定ではあるものの ずっと恋愛感情が同じ位置にある。どんな問題も愛で乗り切る、というワンパターンで終わっている。長編としての面白さを出すには、恋愛感情が段階的に成長していく様子が欲しいのだけど、そこが描けていないから展開が同じだし、読んでいて不安にならない。
ストーカーの件があるから父親や親族が蜜を過剰に心配する理由がある。けど それと熊谷を最初から否定するのは意味が違う。そこを履き違えているし、同じことを繰り返すから、父親の反対の場面は必要以上に苛々させられる。描写が2回目であることを もっと考えて欲しい。
暴走しそうになる熊谷を蜜は受け止め、2人は遂に結ばれる。…なんてことはなく、熊谷の母親に現場を目撃されて するする詐欺が発動。最悪の初対面になってしまい、蜜は せめて熊谷の汚名を雪(そそ)ごうと説明を試みるが話を打ち切られる。母親は なぜ美少女の蜜が熊谷を選んだのか理由を問い質す。そこで出会いからの経緯と熊谷の特別性を蜜は説明する。でもストーカーの過去を知ってから回想すると、最初から蜜は男性である熊谷に何の躊躇もなかったように見えてしまう。蜜の熊谷に対する怖いは誤解だけであって、男性への恐怖は最初から感じていない。それが熊谷の特別性とも考えられるが、他の男性キャラにも普通に接しているから そうではない。つまりストーカーのトラウマが後付けのものだということだ。
蜜の熊谷への愛情を聞いて母親は感涙する。母親は熊谷と似た者親子で、感情の表し方が苦手なだけだった。そして熊谷の両親に、ストーカーの一件で熊谷が傷を負った一件に責任を感じないように言われ、蜜の心は軽くなる。誤解による落ち込みからの解放、というギャップが恋愛ではない胸キュン構造になっている。
クリスマスに向けプレゼント選びに悩む蜜。手作りの品で想いを伝えようと手袋を編み始めた蜜は慣れない作業に寝不足になる。サプライズを計画しているので、指の長さなどを調べるために不自然な行動をしてしまう。けれど すぐに熊谷に追及されて計画を自白してしまう。
サプライズにならなかった お詫びに熊谷も計画を披露し、2回目の遊園地デートが約束される(初回は『4巻』)。
当日、何とか手袋が完成し、2人は遊園地に向かう。これまでならイトコ・マキが妨害するところだが、今回は別の妨害者の登場が予定されているので彼女の出番はない。
初回では行かなかった場所を巡り楽しむ2人だったが、この遊園地に来ると天候が急変するジンクスでもあるのか、降り出した雪が吹雪 始める。混乱する客の中に迷子を見つけた2人は親を探すのを協力し、天候の急変で寒がる子供に熊谷のマフラーと、蜜は熊谷のための手袋を渡す。ちょっと嫌だなと思いつつ善行をするのがヒロインの蜜様である。
夜までに雪は止み、初回に見られなかったナイトショーが始まる。蜜は熊谷のコートの中に入れてもらうが、この構図 少なくとも3度は見たので新鮮味がない。このショーの途中で熊谷は蜜にネックレスを渡す。これは愛の象徴で束縛の願望である。
楽しい一日が終わり、ケーキを買って帰り、熊谷とマキの3人で食べようと家に帰ると、そこには蜜の父親が居た。相手の両親の次は自分の親との遭遇である。
蜜の父親は娘を溺愛している。それは小さい頃から美少女として名を馳せていた蜜が変質者に狙われることが多く、心配も多かったからだった。そしてストーカーの一件があり離れ離れになったが、それが解決したことで蜜は一度 親のもとに顔を出すはずだった。しかし蜜が黙って実家に帰ると誤解した熊谷に追いかけられ、そのままUターンしてしまった。娘に会いたい気持ちが募った父親が我慢できずに会いに来たようだ。
父親の溺愛っぷりを知っているマキは蜜に熊谷との関係を隠匿するよう助言するが、熊谷は正直に交際を言う。蜜も以前、渚(なぎさ)が男性であることを熊谷に隠した方が良いと渚本人に言われても正直に話していたが、誠実さが この2人の交際の在り方らしい。良いことだが、話が どれも一直線になってしまっている。


熊谷は自分が歓迎されていないと分かっていても自分たちの関係を認めてもらおうと正面から ぶつかる。蜜の父親は熊谷にとって将来的な関係性を結びたい相手であり、現在においての仮想敵みたいな存在となり、蜜を巡って2人の男性が火花を散らす。
父親は蜜の首元に熊谷から贈られたネックレスが光り、それを愛おしそうに眺める娘の顔にショックを受ける。自分もネックレスを準備していたこともあり、父親の熊谷への対抗意識は大きくなり、最後には親としての権力を振りかざし、実家に戻るように提言する。実際、ストーカーの件も片付き、蜜が実家を離れる理由もなくなった。
熊谷のことを頑なに認めない父親に蜜は反論しようとするが、父親と押し問答になり、その際に この日 贈られたばかりのネックレスが破損してしまう。愛の結晶は脆かった。この一件で蜜は父親への怒りと悲しみで泣き出し、自分の旗色が悪くなった途端、父親は いそいそと帰宅する。意地悪な同級生レベルの人間性である。
壊れたネックレスは修理に出される。そして蜜は父親への怒りが収まらず、正月に帰る予定だった家に戻らないつもりでいた。しかし蜜に母親から連絡が入り父が怪我をした上に、気力を失っていることを聞かされる。
心の整理がつかない蜜に熊谷が、少しでも怒りより心配が勝るのなら帰った方が良いと言われ実家に帰ることになる。しかも熊谷同伴。父親は反発を隠さないが、正面から向かってこない。それでも熊谷の存在を無視するような幼稚な態度を取るから蜜も怒りが収まらない。
ここで鎹(かすがい)になるのが熊谷。蜜の母親と並んで料理をした熊谷は、あのクリスマスの日、蜜を心配して父親は何時間も車を走らせたこと、そしてストーカー対策の一環として自分も蜜に会えない日々を過ごしていたことを伝える。近所の神社にあった父親の願いごとは、神様を信じない父親に すがりたいものがあったからなのあろう、と熊谷は分析する。これまで以上に熊谷のスパダリっぷりが目立つ。
「番外編」…
クリスマスシーズンで手芸店で一緒にバイトをする2人の話。ただ それだけ。