相川 ヒロ(あいかわ ヒロ)
三神先生の愛し方(みかみせんせいのあいしかた)
第07巻評価:★★(4点)
総合評価:★★(4点)
三神先生、まさかの高校生編!? 愛のためなら…三神先生は高校生にだって、なるのです!女子高生なつめと三神先生はひみつの恋人同士。パパの会社の本部長の座を蹴り、なつめとラブラブしたい三神先生は「高校生になります!」と、とんでもないコトを言い出して…!? 白くん・響くん・いっちゃんも巻き込んで、ドタバタ☆スクールライフがはじまる!
簡潔完結感想文
- 何がしたかったのか不明な惣介高校生編。「普通の高校生の幸せ」では絶対にない。
- 高校生編なのに学校外での雑誌モデル体験。アラサー男性の制服姿は滑稽である。
- 脇の甘さも決して叱られないヒロインは成長しない。結局4人の男性を従える お姫様。
大人男子の魅力を一切 放棄して自滅する 7巻。
『7巻』から始まる高校生編はヒーロー・惣介(そうすけ)の突拍子もない行動以外に、作者は何を狙ったのだろうか。それが分からないから、ただただモヤモヤする。当て馬・白瀬(しろせ)と同じ高校生という立場で なつめ を巡る争いをさせたかったのだろうか、とも考えたが、特に高校生同士だから生まれる衝突などもなく、別に養護教諭のままでも出来るようなことの連続で、惣介が社会的地位を放棄する理由が分からない。作者的には おそらく惣介の父親が勝手に出した辞表があるから、惣介が復職できないという考えなのかもしれないが、社会制度なんて あってないような本書だから養護教諭に戻ることは可能だろう。高校生編になったことで生まれた面白い部分が見当たらないのは至極 残念である。
そもそも惣介が高校生になった理由が、なつめ に「普通の高校生の幸せもあげたい」のなら、惣介が彼女の生活に干渉しないのが一番である。そうして社会人と付き合う高校生のように、学校と放課後をきっちり分けた生活を なつめ が送れるようにするのならまだしも、惣介が同じクラスにいたら決して普通ではない日々になってしまう。
私が一番 気になるのは、そうすることで周囲の生徒の「普通の高校生の幸せ」を26歳の惣介が奪っていることである。以前から気になっていたが、この学校の行事には教師である惣介と その弟・響(きょう)、経営陣である長兄・宗一(しゅういち)が出しゃばりすぎている。臨海学校や体育祭など彼らの登場で なつめ だけでなく周囲の青春の1コマが彼らに塗り替えられている。この手の作品で、そこを真面目に論じるのはナンセンスなのは分かるが、どうしても私には その部分が気持ち悪い。
そして今回から一流大学院を卒業した惣介が高校生になる。レベルと年齢が違う人間が同じ空間にいる違和と圧力を感じながら授業を受ける周囲の生徒が可哀想だと思った。
溺愛漫画だから惣介の暴走による周囲の迷惑もカットされる。結局 なつめ と惣介(そして読者)の居心地の良い空間を演出する作品でしかないことを改めて思い知らされる。おそらく なつめ のメンタルのためにも玉砕した白瀬との関係は何の わだかまりもなく お友達に戻るのだろう。こういう作品が世間に必要されているのは分かるが、口に入れても味のない食事のようで、このジャンルがマジョリティーになることは、思考能力を奪われるような危険性がある気がしてならない。
そして何より惣介から「大人男子」という属性を奪って、タイトル詐欺になるし、彼の生活手段まで奪っている。惣介が稼いでいたからこそ年齢差による溺愛が成立していたのに、これでは ただ金銭的に実家から離れられず、それでいて社会にも出ない逃避にしか感じられない。
しかも高校生編なのにモデル活動みたいな内容になっているし、惣介以外の社会人兄弟も参加して、いよいよ高校生の意味がなくなっている。前提を壊してまで何がやりたかったのか、が見えてこないことが隔靴掻痒の もどかしさになる。作者も これが兼業という苦労をしてまで漫画家で やりたい内容なのだろうか。
25話から惣介は高校生となる。だが高校生になったからと言って即座にカップルになる訳にはいかない。なぜなら惣介の前職は養護教諭なのだから。こうして なつめ は ただのクラスメイトとして接し、学校でのイチャイチャを禁ずる。
だが惣介は過剰なスキンシップをしてくるし、生徒たちも それを当然として受け入れるから惣介の思惑通りに話は進む。はしゃいでいるのか これまでは惣介に多少はあったはずの分別もなくなり、全く楽しめない。生徒じゃなくなったから、保健室で発情する展開もドキドキというよりドン引きである。
26話では白瀬が なつめ に恋心を抱きそうになっていることを察知した惣介は目の前でキスを見せつけ牽制する。鈍感な なつめ は惣介の言動が過剰だと彼を罰するが、惣介は危機感が消えない。こうして2人の意見に齟齬が見られ、すれ違いとなる。
なつめ は白瀬を友達というけれど、彼氏の前で他の男と2人きりで行動することに疑問を持たないのが彼女の知性や想像力がない部分である。そして白瀬からの好意に気づかない なつめ の鈍感描写も限界が近い。なつめ と白瀬は どちらも6歳児のような精神性・恋愛観で わざとらしい。
また響と白瀬の当て馬同士のBLっぽい描写も狙い過ぎていやだ。惣介には勝てないと踏んだ兄弟が対抗馬として白瀬を当て馬候補に一本化しようという野党の共闘にすれば最後の対決っぽいのに、結局、彼らもプレイヤーとして出しゃばるから戦いに終わりが見えなくなってしまっている。
そんな中、モデルとして活動する白瀬の「彼氏にしてほしいこと特集」に なつめ が相手役に指名され撮影に参加する。なつめ は白瀬からの初めての願いを聞き、そして彼に ちっとも なびかない自分をアピールするために快諾する(論理が意味不明。白瀬と距離を取るのが正解ではないか)。
だが そこに惣介、更には響と宗一も参戦して またも4人の男性たちの戦いになる。もう それは体育祭とかで見たってば…。
25話。現役モデルの白瀬と一緒に撮影をしても、それに負けない輝きを放つ三神三兄弟。さすがに宗一(29歳)のコスプレは痛々しいはずなのだが、それはスルー。
相変わらず なつめ は自分が誰にも なびかない ことを証明するために、4人の男性との恋人っぽい写真という要望に応える。今回も響・宗一はページ数稼ぎでしかない。寸止めの苦悶、可愛さを口に出来ない苦悶など、毎回 同じ展開で本当に工夫がない。
白瀬とはヘッドマッサージというシチュエーションで身体を密着させる。そこへ我慢できずに惣介が登場。絶対に撮影の邪魔だが、頭を白瀬、足を惣介にマッサージされ、なつめ は顔を赤らめる。惣介はセクハラだし、やってることは大人の映像的な3人でのプレイだし、気持ちが悪い。
最後の惣介単独の撮影では、その状況を利用し惣介が ひたすら愛をささやく。その言葉に なつめ は自然と笑顔になり、周囲に相思相愛の様子が伝わる。第三者に伝わることが本人には伝わらないのが不思議だ。
やがて人気モデル・白瀬の撮影が騒ぎになり急遽 撤収となるが、白瀬は なつめ の手を取り2人だけで逃亡する。
28話。2人だけになった白瀬は なつめ に自分を見て欲しくて思わずキスをする。先に行動があり、その後に好きだという気持ちを宣言し、自分自身で その気持ちと行動に白瀬は驚く。だが なつめ は友達だと安心しきっていた白瀬からの予想外の行動と、自分の脇の甘さに傷つく…。
惣介に言えない秘密を抱えたことで彼女は惣介と距離を取る。事実を話した時に軽蔑され、別れると言われるのが怖くて ただただ逃げだす。
その逃亡中に白瀬と会い、2人で屋上で上がった なつめ は自分の無神経さと そして気持ちに応えられないことを謝罪する。なつめ が冷静に行動する数少ない場面ですね。素敵な当て馬をヒロインが振ることで、濁りのないエンディングへと続く。ただ この後の なつめ は通常運転で自分の事ばかりになるが…。
そこに惣介が現れるが、まだ顔を合わせたくない なつめ は屋上の端へと逃げ、そして きしむ柵を握りしめながら他の人とのキスを告白し、泣きながら謝罪をする。惣介の反応を見るのが怖い なつめ が強い拒絶をすると、柵が壊れ、彼女は宙に投げ出される。なつめ の手を間一髪で握りしめる惣介。そして ようやく顔を合わせた なつめ に自分が なつめ を嫌うことはないと一生の愛を誓う。
だが男性2人の力よりも なつめ の体重が重いらしく(笑)、惣介と白瀬もベランダから落ちそうになる。それを回避しようと なんでも言うことを手を離してという なつめ の要望を聞き、惣介は3人で屋上から落下することを選ぶ。
事態を目撃していた響により下にマットが引かれていた。それを確認して惣介は落ちた。惣介は「消毒」を完了し、この件を抹消する。白瀬は友達に戻ろうとし、なつめ も それに応じようとするが、惣介が却下。今後の白瀬の扱いが気になるところである。