《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

冬が寒くって本当に良かった。君の布団に お邪魔する為の この上ない程の 理由になるから♪

おとななじみ 6 (マーガレットコミックスDIGITAL)
中原 アヤ(なかはら あや)
おとななじみ
第06巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★★(6点)
 

誕生日のサプライズに春がしてくれたのはまさかの×××××××!! 恥ずかしすぎてうまく対応できない楓に迫る春。照れながらもドキドキたっぷりの日々を送る中、楓の職場復帰が決定! 喜びもつかの間、春が不思議なことを言い出して…? 気持ちと言葉がうらはらな、うまくできない大人たちのときめき&爆笑満載ラブコメディ!

簡潔完結感想文

  • お歳暮プレゼント vs. ネックレス畑。丁度いいプレゼントをくれる人 募集中。
  • ライバル女性の試合放棄からの協力者の転生。そしてハルは餃子へと転生。
  • 人望があるが故にハルは色んな人の助言を真に受け実行する。打率は低め。

実逃避をするために謎の生命体になった俺が、ある日 餃子に転生した件について、の 6巻。

割れ鍋に綴じ蓋。誰もが主人公たち2人に恋をすることを諦める中、2人は まだまだ両片想いを続けている、という史上最強の おバカカップルの描写が延々と続く。

『6巻』で作中はクリスマスの時期を迎える。そういえば『1巻』では お花見をするという話が出てきたので季節は もうすぐ一巡する。もしや、作者が話に決着を付けないのは、幼なじみ同士の1年を描きたいからなのだろうか。これは白泉社作品の、最初の1年は季節イベントを優先して主役たちの恋愛は後回しという考え方に似ている。読者が どんなに願っても最初の1年は恋愛に踏み込まない、という白泉社の鉄則が持ち込まれている作品なのかもしれない。これが集英社で、オトナの恋愛が読みたい「ココハナ」読者と悪い意味でギャップが生まれてしまい、不満を増大させているような気がする。本書が白泉社漫画だったら許せたかもしれない。

結果的に24歳の おとななじみ の1年間を描く本書。年が明ければ、何かが変わるはず(変わってくれ!)

かっていたが、彼らは意志が弱い。いや、意志なんてないのかも しれない。2人が望むのは現状維持で、今の関係が破綻するなら何もしなくていいという後ろ向きの理由で作品が続いていく。当然、そんな内容を読まされた読者に爽快感などなく、早々に終わってくれと祈念する気持ちばかりが強まる。

彼らにとって片想いとは人生の一部で、両想いになることが目的ではなくなってきている。そこが幼なじみの呪縛の凶悪な所で、幼なじみモノの作品がウダウダとした展開になってしまう原因になる。

どうしても両想いになりたいという強烈な思いが生まれないから、彼らの行動は煮え切らない。そして失敗したくないから体当たり的な行動ではなく、誰かと相談し、その相談相手の意向が詰まった変な作戦ばかり実行する。
特に人望の厚いハルは相談相手が多すぎるのも考えもので、彼が表層的にしか理解していないアイデアを利用して行動するから失敗してしまうことが多い。伊織(いおり)・美桜(みお)・トメちゃんに加え、今回から立花(たちばな)も煮え切らない2人を両想いにするために好き勝手に助言をし、その行動から珍騒動が起こる。

自分で考えるような賢さも、自分の意思を貫く強烈な思いもないから、相手に伝わらない想いが空転していく。そして2人の関係は一歩も進まない。両想いの準備が整った『4巻』ラストから丸々2巻も無駄に浪費している。ライバル・当て馬たちですら匙を投げた2人の世界は、一層 狭いものになっている。想いを告げることすら寝たら忘れてしまうような展開は、本当に頭の悪い物語になってしまった。そして笑える場面でも笑いに逃げているだけのように見えてしまう悪循環が始まった。それだけ両想いにならない理由のない物語は不毛で、読者の心を荒(すさ)ませる。


ルは約束していた誕生日に他の女性宅にいるという裏切りをしたが、伊織は以前 約束していた通り(『2巻』)、楓に「誕生日には もっといいものを あげる」。

今回はブランド物の お高い品とはいえ、2回連続でネックレスを贈るあたり、無難・安全策で、悪く言えば伊織の つまらない部分が出ているような気がする。
もしかしたら伊織は この品を『2巻』で誕プレを約束した直後に買っていたのではないか。その時点では楓の誕生日前に自分が告白し、振られることなんて彼にとって予想外で、もしかしたら この品は告白用に用意していたのかもしれない。それが無駄になってしまうのが嫌だから、紳士を気取って嘘をつきたくないとプレゼントを渡す口実にしたのかも。とにかく楓のことに関する伊織は それほど偏執的だ。もし伊織から楓に偶然 通りかかった、なんて言葉が出たら100%嘘だろう…。

伊織はプレゼントを渡し、これまで通りの関係を望む。そうして2人の人間関係がリセットされたことで、伊織は これまで通り楓の相談役に戻ったと言える。

伊織は これ以上恋愛的に踏み込んだりしないが、楓に これまで以上に優しくすることで大事にする。ここでは楓以外の女性を女性とも思わない伊織と、楓以外の女性(女性以外)も助ける優しさを持つハルとの対照性が よく出ている。

ただでさえ当て馬は退場しないのに、幼なじみ特権もあり伊織は ひたすら楓に都合の良い男に転生。

ルは次の土曜日に誕生日を祝い直すと宣言した。

しかし当日、ハルは そそくさと出掛け、楓を外に連れ出したのは肉食獣・立花であった。賑わっている公園のベンチで並んで座り、ライバル同士の会話が始まるかと思いきや、立花はハルを「いらん」と一刀両断。

どうやら あの楓の誕生日の夜、体調が悪い嘘をついた立花に対し、ハルは全力で看病にあたってくれて、彼女を精神的に打ちのめしてしまったのだ。ハルが「恋愛能力ゼロすぎて何にも始まらない」ことを身をもってしった立花は、楓に同情するまでになっていた。

だが立花は、その中でハルが楓を大事にしていて今の関係を壊せないのだという推測を述べる。そして立花はハルにも説教をし、今度こそハルの愛が楓に伝わるよう力を貸していた…。

そこから始まるフラッシュモブ。そして楓がモブの方々と居合わせた人たちの注目を浴びる中、楓はハルからのプロポーズを予感する。だが楓は、ハルが意を決して何かを言う前に逃亡する。ヒロインは逃げるのがお仕事です。


は家で2人になったハルに その続きの言葉を聞こうとするが、フラッシュモブ失敗の失望の中にいるハルは対話を拒絶する。

でも、ここで楓がプロポーズを予感したということは、ハルの気持ちに気づいたということでもあり、ここから楓がハルの気持ちを無視して過ごすのは変。決着を付けないことに ご執心で。作品として面白くない。

そして何度目かの繰り返しになるが、いつから楓は待つ専門になったのだろうか。いつでも告白できる機会も、少なからず両想いの確信もあるのに、ハルを待つというのが意味が分からない。

ハルは この失敗で幼なじみであり続ける選択肢を選んでしまう。天然最強ヒーローだが意外にもメンタルは弱いのである。布団を もう1組購入し、同衾も止めてしまった。

そうして2人に距離が出来る。


離を感じていた楓に、立花が自分で言えばいいという もっともな助言を与える。だが、今度はハルが話を聞くのを拒絶。2人が それぞれに大事な話を しない/聞かないという地獄のリピートが続く。

その直後に楓の職場復帰が決まり、この話は流れてしまう。こうして拒絶されるぐらいなら現状維持で良いというところで2人の気持ちが重なってしまった。


んな状況の中に登場するのが、2人の住むアパートの隣室に引っ越してきた男子大学生の雪野(ゆきの)。

彼は楓の勤務先にバイトとして参加し、2人の仲は急接近。彼は同棲していた彼女と別れて、急遽1人暮らしをすることになったという。ちなみに雪野の元カノは楓と同じ年という設定で、だからこそハルの危機感が募る。楓からすると、若い年下のイケメンとの交流は おばさん的に嬉しい、というぐらいの感覚のように見えるが。

その彼の接近を見て取ったハルは、冬の間、2つの布団を重ねて、同じベッドで寝ることを提案する。こうして同衾生活に戻るのだが、現状は変わらない。


リスマスが近づき、イルミネーションを巡る話となる。ちなみに過去回想の中のハルのイルミネーションは、良い話なんだけど、電源は どこにあるのだろうと疑問に思った。

そんな楓の気持ちとシンクロして、トメちゃんから助言をもらったハルはレンタカーでイルミネーションを見に行く。8年前は経験できなかったことが、8年後に、今も隣にいるハルが叶えてくれるという幸福感に包まれる楓。久々にハルが楓を喜ばせることが出来た。

ハルを慕い、彼に色々な助言をする人々の中では、トメちゃんは比較的まともか。時折、肉食発言が目立つが、ハルを一歩前に進めようという優しさが見える。からかい半分に訳の分からない格言を残して、後の迷惑を考えない美桜とは そこが違う。まぁトメちゃんも失敗報告を楽しんでいる節はあるだろうが…。