《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

部屋は たくさんあるのにベッドが1台しかない謎のスイートルーム。まさかトメちゃんが撤去⁉

おとななじみ 4 (マーガレットコミックスDIGITAL)
中原 アヤ(なかはら あや)
おとななじみ
第04巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★(6点)
 

仕事での頑張りが認められ、本社転勤を打診された楓。でも本社は九州で。春のことも伊織のことも心残りいっぱいで…。そんな中、伊織の仕事関係で大トラブルが!! みんなで力を合わせて乗り切ろうとするうちに三人の恋心が激しく不時着!? うまくできない大人たちのときめき&爆笑満載ラブコメディ!

簡潔完結感想文

  • 仕事の方法・将来像を明白にしてくれるのは いつも伊織。謎の生命体ではない。
  • 自分を好きな男性2人と一緒に寝るなんて正気じゃ出来ないのでワインがぶ飲み。
  • 天然で最強のハルは男ヒロイン。なので肝心な時にウジウジするのは仕様です。

回、巻末だけは次回への期待を持たせる作品の 4巻。

キス・キス・告白・返答、と巻末だけは物語が動く作品である。

本書の適切な長さは全5巻だったんじゃないだろうか。今回のラストでヒロインの楓(かえで)が気持ちを固め、相手の男性が楓を好きなのは表明された事実で、この後は九州出発という少女漫画的クライマックスに相応しい遠距離恋愛で最終巻になれば、笑えて少し切なかった大人の片想いも無事に終わった。

…が、この後から本書は意味のないターンが続く。相手を好きなのに告白しないという どうしようもない2人が笑えないラブコメを始めてしまう。仕事が障害になるとか、心理的な障壁とかが用意されていたら両片想い継続にも意義が見い出せるのだが、それも特になく、褒めどころの難しい後半戦へと突入していく。

いや、1つ意味があるとすれば、結局、楓とハルは似た者同士の おバカカップルということではないだろうか。夫婦喧嘩は犬も食わないように、恋人以前の状態の時から夫婦のような2人は周囲に迷惑を撒き散らしながらしか恋愛が出来ないのではないか。少女漫画のヒロインは巻き込まれ型が多いが、本書の場合は その真逆。そういえば先日読んだ 同じ幼なじみモノの築島治さん『私たちには壁がある。』のヒロインも迷惑系ヒロインで、自分から当て馬を その気にさせて逃亡していたなぁ…。幼なじみモノは、一瞬で相手を知り一瞬で恋に落ちるのではないから面倒くさく こじらせてしまうというのが面白い所であり、辟易する部分でもある。


体的に この2人のどこが似た者同士なのかというと、『3巻』でも触れたが、彼らの行動は8年の時を経てリンクしているように思える部分である。本書は高校卒業後から24歳現在までの6年間が空白期間になっているが、大事なのは8年後の因果応報だから、敢えて割愛しているのかもしれない。

8年ほど前の高校時代、楓が自分がハルにとってのヒロインだと信じて疑わず具体的な行動を取らない間に、誤解もあってハルは先輩女性の告白に応えてしまった。そして その8年後の物語の冒頭、楓は自分に全く興味のないハルに見切りをつけて当時の上司であった不倫男の甘言に乗ってしまった。2人は相手の自分への無関心が原因で他の人に走り、その交際で自分が傷つく相手の事実・真意を目の当たりにするのであった。もはや幼なじみ というより双子のシンクロである。

そして2人は幼なじみへの告白においても8年の時を経てシンクロする。

8年前、ハルに恋人が出来ても告白すらしないで悲嘆にくれるだけだった楓。だから8年後の現在、「きゅん…」と楓への気持ちを認識したハルは、楓に恋人(=伊織・いおり)が接近しても、告白する勇気が出ない。歴史は繰り返されるのだ。

そう、同じことを繰り返すのが、この似た者同士の鏡写しの関係なのではないだろうか。その意味では、ハルが楓に告白しないのは、過去の楓がハルに告白する勇気を持たなかった自業自得の結末なのかも。かつての弱い心が生んだ楓側への呪いと言えよう。

…ということは、正しい対称性のためにはハルが楓に告白するのは少なくとも8年後となるという予想になるのか…? 32歳まで周囲に溜息をつかれながら、告白をどちらがするかを牽制しあう男女…。ツラい。

そんなことは出来ないので、もしかしたら作中の年数ではなくメタ的な巻数で対称性を生んでいるのだろうか。だから4の倍の8巻完結が本書の適切な長さ、なのかもしれない(違う)。

などと考えるものの、ハッキリ言って、かつて楓が告白しなかったから現在のハルが告白しないという理由は弱く、一番強い抑止力であった「騎士の呪い」が解けたのなら、もう長引かせる理由はない。
やはり『4巻』ラストで楓が決意を表明したのなら『5巻』でハッピーエンド、または そこから両想い編に突入のが妥当だったか。


れまで人生の指針にしてきたハルを除外して、自分の人生を模索する楓。だから九州への転勤の話も自分で結論を出すまでハルには伝えない。こうやって思い込んだら、一つの手法でしか自分を貫けないところは、楓もハルも似ていて、どちらも少し おバカさん、と言えよう。

一方、ハルは自分の恋心を自覚してから、楓が可愛く見えて仕方がない。それ故に、ハルは自分の気持ちを伝える前に頭がパンクしてしまい、楓を引き留めることすら出来ない。つくづくタイミングの悪い男である。

楓は九州の本社に行く前に、支社で一か月の研修を受ける。最初は雑用のような仕事と無駄な会議ばかりで、仕事の楽しさを見失う楓。

その愚痴を話すのは伊織。ここのところ仕事系の相談は全て伊織が引き受けている。会社勤務は伊織の方が先輩で、伊織が通ってきた道を楓も進んでいく感じ。伊織といると新しい自分に出会い、成長させてくれるのは間違いない。楓は現場の仕事の魅力を感じているが、伊織に背中を押されて会社の仕事に前向きになる。

頼り切っている伊織と離れる不安を覗かせる楓を伊織は抱きしめて励ます。

その現場をハルが目撃していた。そのことでハルは人の形を捨て、謎の生命体へと進化していた。そして この辺りからハルが必要以上にグダグダしている。伊織がライバルで、ハルもまたエリートでスマートな彼に劣等感があるから動けないのは分かるが、両想いを阻止する力としては弱い。

好きを自覚してから傷つくことも たくさん経験するハル。この痛みは かつての楓の胸の痛みか。

んな伊織は いよいよホテルがオープンし、そのパーティーに楓を招待する。

楓は美桜(みお)を連れて参加。そこに花を届けに来たハルも登場し、幼なじみが集合する。

だが伊織が準備していたパーティーの企画(ハニワ)にトラブルが起きる。伊織は部下を頼らず1人で解決に動こうとするが、ハルが伊織に助け舟を出す。

ハルは自分の人脈とコネを使ってトラブル解決に動き、そして伊織と、初対面の彼の部下たちを巻き込んで、トラブルの穴埋めを計画する。こうしてハルは非常時における有能さが伊織よりも優れていることを証明していく。

この件を通して、伊織はトラブルを乗り切っただけでなく、チームの問題点を気づけたことがあり、ハルに感謝する。そして高校のサッカー部の時と同じく、ハルと自分の違いを痛感し、反省する。男性2人が、それぞれに相手が最大のライバルだと思っているからこそ、気持ちを加速させたり停止させたりする影響の出方が面白い。


事にパーティーを終えた伊織のもとにホテルのオーナーが顔を出す。なんと その人はハルがホームセンターで相談を聞いてもらっている高齢の女性・トメちゃんだった。

そしてハルから恋愛相談を受けているため事情を察知したトメちゃんは、オーナー権限でホテルの部屋を用意して、3人で一緒に泊まることを命じる(ちなみに美桜はパーティーでイケメンを見つけて消えてった…)。

用意されたのは、部屋数は多く、バスルームとシャワールームも別々にあるけれど、ベッドは1つしかないという謎の部屋。トメちゃんがオーナー権限で即座にベッドを撤去するよう手配したのだろうか…。


うして男女3人の お泊り回が始まる(@スイートルーム)。

実は一番 失恋に耐えられないのはハルなのかも。天然鈍感最強の男ヒロインだがメンタル弱め。

シャワーを浴び、食事をした後の席で、伊織は2人の前で楓に告白する。これまでは楓の気持ちを待つ姿勢だった伊織だが、彼だけはハルの参戦を知っているので、自ら動くことにした。そして伊織は楓から返事は九州出発前という期限もつける。更に どこまでもハルとフェアな戦いをしようとする伊織は、ハルを促し、楓への告白を言わせようとする。

だが逃げ腰で煮え切らないハル。それを見て、楓が静かにキレる。ワインをグラスに注ぎ、飲み干す動作を何度も繰り返す楓。

楓は この豪華な密室でTOPをわきまえない男性2人の態度にキレていた。その後、いつぞやと同じように泥酔した楓は乱れる。男性たちは楓を落ちつかせ、一息ついた3人は寝ることにする。

ここで重要なのは、楓が情緒不安定にさせることと、そして泥酔モードにさせることだろう。いくら楓が鈍感で おバカだからと言って、素面では3人一緒に寝ることを了承しないだろう。3人での同衾を成立させるためには、こういう強引な展開で楓が了承する状況を生まなければならないのだろう。

そうして並んだ3人だが、楓とハルはワクワクモード。やはり この2人は頭の構造が似ている。ただダブルうでまくら は少々 やり過ぎか。まぁ ハルは無邪気でやって、伊織は対抗意識でやっていることは分かるので許容範囲ではある。この辺もハルの器の大きさを感じる部分だろうか。


して1か月が経過し、楓の研修期間も間もなく終わろうとしている。

それは九州への転勤だけではなく、伊織の告白への返事も決めなくてはいけない。

一方、ハルは伊織の動向は気になるが、自分が告白する勇気が出ない。だがハルはハルなりに、楓が自分から離れていった後のことを考え、自立を画策していた。自分が負担にならないようにというハルの心遣いであろう。彼にしては健気な行動である。

父との会話もあって楓は自分の心に正直に生きることにし、ハルが好きだという気持ちを自分の根っことする。だから伊織とは交際できないことを、九州出発前に彼に直接 伝えた。

この場面、伊織は半ば結果が分かっていたかのような言動をするのがツラくて、そして伊織が格好良い。自分の未練を断ち切るように楓にハッキリと気持ちを言葉にさせ、そして用が済んだら踵を返すという合理主義的な去り方で、お互いに変な空気にさせない どこまでも優しい人柄が見える。少女漫画的には結末は変わらないだろうから、少しでも交際してみるなどという伊織が変に期待し、そして余計に傷つくような展開にならなくて良かったと思いたいところ…。