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少女漫画と小説の感想ブログです

俺の願いは 俺の気持ちが君に届くことではなく、君が毎日を笑って過ごしてくれること。

キラメキ☆銀河町商店街 4 (花とゆめコミックス)
ふじもとゆうき
キラメキ☆銀河町商店街(キラメキ☆ぎんがちょうしょうてんがい)
第04巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

ようこそ、天下の台所・銀河町商店街へ! それは愛すべき幼なじみ6人とその他大勢が織りなす、愛と友情・笑いと涙の純度100%青春感動物語! 仲がよければケンカもします、下町☆青春はっちゃきコメディ!!

簡潔完結感想文

  • 悲しい時に笑い方を思い出してくれるのは、一緒に育った大切な仲間たち。
  • 本書屈指の感涙必至から大騒ぎの商店街イベント。この落差が作品の魅力。
  • チャラ男に見えて以外に神経が細いキュー。ミケ姉妹はモテモテである。

がまた笑ってくれる時まで、ずっと傍にいるから、の 4巻。

もうお馴染みとなった幼なじみ男女6人の商店街人情噺。少女漫画的に大切なのはヒロインのミケが 少しずつクロへの特別な気持ちを育んでいること。自分が相手の気持ちに応えられず、傷つけてしまったことから(『3巻』ラスト)少しずつ「恋」の輪郭を学んでいくミケ。
本書が優れているのは日常回の中に、ミケの気持ちの育ち方を しっかりと潜ませていること。僅かだが確かな変化を しっかりと描いているから その変化が読者にも手に取るように分かる。読者の予想以上に その気持ちが確定するのが早いのも本書の長所である。早めの展開によって、ダラダラとしがちな白泉社作品の中盤も充実した内容が保たれている。売り物の一つ一つが確かな品質なのが、この商店街の優れた点である。

幼なじみたちは人生の良い時も悪い時も仲間である。特に今回は、悪い時のことが半分を占めている。ケンカしたり、想いを受け入れられなかったり、想いが届かない切ない恋をしていたり、そして大事な人を失ったり、と様々な局面で傍にいる大切な人たちがいることに気づかされる、という内容が良かった。一緒にいるから落ち込んだり泣いたりした後に笑えるようになっている。商店街全体にも そんな効用があったと思うが、幼なじみたちも一緒にいることが悩みの出口になっていく。

もしかしたら これは今後、仲間内で誰かが悲しむようなことが起きても乗り越えられる、という布石なのかもしれない。ミケが恋心を自覚することはクロとの両想い成就のカウントダウンでもある。そして それはクロに恋をするサトが悲しむことを意味する。恋愛のいざこざで仲の良かった人と疎遠になるのは よく聞く話。彼らには それを乗り越えるだけの確かな絆や仲直りの方法を確立していることを先に描いているのかもしれない。

読者にとって、最高の喜びの裏には読むのが辛い展開が待っている。その心理的な苦痛を和らげるために作者は事前に こういう内容を用意したのではないか。それぐらい本書は優しい物語である。

そして今回は少女漫画の王道展開もあるように思う。商店街のクイズレースは学校イベント・運動回だし、ミケがクロの部屋に泊まるのは お泊り回である。設定が設定だけに気づきにくいが、ちゃんと少女漫画しているなぁ、というのが『4巻』の印象。

スポーツ系イベントでは怪我した女性をヒーローが助けるのが お約束。サト目線で胸キュンしましょう。

分に恋をしてくれた男性の気持ちに応えられず、傷つけたと感じていたミケは、まだ悩んでいた。恋とは何なのか。その答えが出ないで煮詰まったミケは走り出す。

一緒に走るクロと、敗者が勝者の言う事を聞くゲームが始まる。勝ったクロの命令は『笑え』。そうして自分なりに恋に結論を出したミケは再び笑顔を取り戻す。復活の1話であった。彼ら2人は仲直りの方法を持っている。今後ケンカしても、それが夫婦ゲンカになっても、彼らは こうやって仲直りしていくのだろうか。50代ぐらいのゼーゼーいいながら走っている中年男女を見ることになったら、なんだか物悲しくなりそうだが(笑)

続いてはイバちゃんの個人回。5年前に母を亡くしたイバちゃんは、妹と双子の弟達を見守る母親的な役割を引き継ぐ。母を亡くしたイバちゃんを支えたのは家族と、そして幼なじみたちだった。まだ おむつ の弟達の世話を皆でして、双子は全員の弟的な存在になっていく。

人の死と、その喪失感の大きさが繊細に描かれていて、自然と涙が出てくる お話。母との思い出が一番あるからこそ一番悲しいという逆説を小学校の時に思い知るイバちゃんの姿が悲しい。

とてもいい話なんだけど、ここでもミケが重要な役割で、やはり作品として彼女を頂点としている構図になっているのが残念。個人的な意見だが、6人は並列で同格でいて欲しい。ここは別の人、キューとかが母の葬儀でイバちゃんを支える言葉を放ったとかで良かったのではないか。それなら後の展開にも繋がるし。無自覚に最強のミケという構図は既に見飽きた。

あと過去のエピソードを付け足せば付け足すほど、こんなに絆がある6人が中学進学ぐらいで疎遠にならないよ、という最初の設定への疑問が生まれてしまうなぁ。


店街のイベント「縦断スーパークイズ」のアダルト部門に参加する幼なじみたち3組6人。この回ではミケクロペアではなく、ミケはキューと、クロはサトとコンビになる。

こういう作品内のイベントが多彩なのは白泉社作品らしい傾向ですね。こういう お祭り騒ぎをどこまで楽しく描けるかが人気に関わってくる、かもしれない。そういえば少女漫画では こういう商店街イベントや商店街の福引が商店街の衰退が著しい現在でも ずっと出てくることに疑問を感じていたが、本書の場合は活気ある商店街を舞台にしているので当然に思える。ただ商店街の中の人が参加して いいのか、という疑問はあるが。

少し意外だったのはイバちゃんが政治経済の知識がある、ということ。幼なじみの中でも賢いグループなのだろうか。

運動が苦手なサトはクロの足を引っ張り、怪我までしてしまう。ただし少女漫画世界では怪我をした女性は男性が助ける。お姫さまだっこをしたままクロは激走する。クロに追い抜かれたキューがミケの頬にキスをして彼の戦意を喪失させるのには笑った。そして意外な優勝者にも大いに笑った。こんなことされたらマモルがイバちゃんを好きになってしまいそうだが、寝ていたので胸キュンしなかったのか…⁉


親同士も幼なじみのミケとクロの家庭。なので両家族は夕食を一緒にすることが日常茶飯事である。そこに初登場するのが彼らの兄と姉。同じ年のミケの姉・飛鳥(あすか)とクロの兄・遥(はるか)。ちなみにミケには もう1人、第1子となる長兄・大悟(だいご)がいるという設定である。
遥は弟のことを本名の「藍ちゃん」と呼ぶのだが、クロの本名なんて覚えてないので最初は どこに由来する名前なのか戸惑った。

最強ヒロインのミケがコンプレックスを抱くとしたら姉だろう。2人の兄姉は本書で最強の存在。

飛鳥と遥は幼なじみながらも、全く恋愛感情を抱かない関係性らしい。ただ弟妹の関係性を応援するという面では一致しており、クロの恋心を彼らは察知しているらしい。そんなにクロの態度は分かりやすいのか。

幼なじみで距離感が近すぎるから気づきにくいが、この回は お泊り回でもあるのか。一緒の布団で寝るイベントが発生し、そして これまでだったらミケは眠れていた状況と思われるが、もう一睡もできなくなっている。クロが勝利する日も近いか⁉


モルが愛する本をキューが水に濡らしたことでケンカが勃発する。そんな中、時間厳守の配達が両者の家に依頼され、行き先が同じのためケンカ中の2人が鉢合わせになる。相次ぐトラブルを2人で乗り越え、彼らは仲直りに至る。この2人は同じ人を好きになっても大丈夫そうだなぁ。

続いてはキューの個人回。キューは幼い頃からずっとミケの姉・飛鳥が好き。だが毎回アプローチしては返り討ちにされる。サトと同じ苦しい片想いをしているキュー。その心を癒すのは、変わらない仲間たち。本当に『4巻』は傷心の人が多かったなぁ。