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少女漫画と小説の感想ブログです

かつてのライバルが凋落したと知った途端、優しくなる杏菜たん マジ天使!

スターダスト★ウインク 8 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
春田 なな(はるた なな)
スターダスト★ウインク
第08巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★(4点)
 

東都芸術高校写真部の萌菜です。写真甲子園の本戦に出場するため、北海道に来てます。うちのチームは3年の私と珠里、1年の都倉くんの3人1組。他校のチームには都倉くんの幼なじみがいるみたい。でもなんだかただの幼なじみにしてはあやしい雰囲気の様な?

簡潔完結感想文

  • 写真甲子園。2年以上努力した人と、数か月の杏菜。本気の人と、恋愛が最大の目的の人。失礼だ!
  • 日向の返答。この一言を言うために一体 何巻 費やしたのだろうか。自明だったから感動ないなー。
  • もう一度3人で…。恋愛の障害は全て取り払われました。めでたしめでたし。まだ3巻分あるの⁉

「甲子園」を舞台にした幼なじみとの恋愛、杏菜を甲子園に連れてって! の8巻。

『8巻』を最後まで読み切ると「いい最終回だった」という感想が出てきました。
この漫画、全11巻なんですけどね…。

ここで恋愛にも一区切りついたし、天敵だったマリちゃん先生との決着もついた。

冷戦状態だった颯(そう)とも非常事態につき一時停戦も出来たし、
この後の2人の恋を隔てる問題も、なし崩し的に解決している。

逆に、あれっ、この後の3巻分は何が描かれていたっけ?と、その先の展開・蛇足が心配である。

この巻で終わらせておけば、まだ少し作品への評価は保てたのではないか…。


向(ひなた)と、彼に近づく教師・マリちゃん先生に会うためだけに写真甲子園に参戦した主人公・杏菜(あんな)。

『7巻』の感想文でも書きましたが、日向が在籍する東京の学校に行けば確実に会える2人に、
北海道で開催される写真甲子園で会う必要が全くない…。

東京で日向とマリちゃん先生 抜きで話がしたければ、
街中に出ずに、東京在住の真白(ましろ)くんのマンションで2人で会話すればいい話。

それなのに わざわざ写真甲子園という真面目な大会を利用する作者と杏菜に腹が立つ。

平凡になってしまう話をドラマチックにしたいのは分かるが、
写真甲子園でちょっとしたロミオとジュリエットを演じる杏菜の自己陶酔は見てられない。

甲子園出場者としての自覚や緊張がまるでない。

杏菜が気になるのは日向と マリちゃん先生の動向だけ。
生理的嫌悪を催すマリちゃん先生と わざわざ一緒の空間にいなくて いいでしょ。

杏菜がやっているのは、自分と他者を いたずらに傷つける行為しかない。


んな杏菜の空気の読め無さに、さすがに日向もお冠。

今回も、好きだと言った相手である杏菜から恋愛相談をされるという嫌がらせを受け続けてきた颯。

その呪縛から逃れるために杏菜と距離を置くと言った颯の真意を理解できない杏菜が、
颯に向かって、具体的にいつ解消されるのか、などを聞いてしまう。

男心、人の心を踏みにじる杏菜に、温厚な日向も軽蔑を隠さない。

そして、写真甲子園で やっと告白の返事を聞けるはずが、
話をしたくない、と態度を急変させる。
おい、先延ばしかよ…。

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颯だけでなく温厚な日向も怒らせる破壊神・杏菜のKYっぷり。男性2人ともが他の人好きになるエンド希望!

杏菜さん、貴方はマリちゃん先生を疫病神だと思っているようですが、
物語にとって一番、問題をややこしくさせている存在は貴方自身なのですよ…。

特に颯と日向の関係を悪化させている破壊神は杏菜に違いない。

最初に好きだと言われたら颯になびき、次に本当は貴方が好きなの!と日向にもアプローチする。

これってマリちゃん先生と何か違うところがありますかね??

自分の地位を利用して日向にスキンシップを計ったマリちゃん先生と同じように、
杏菜は幼なじみの恋情をなかったことのように傍若無人に振舞っている。

その上で颯には日向との恋愛相談をしてもらい、
日向には颯との関係悪化のフォローをしてもらっている。

自分を物語の中心に据えたいというヒロインチックな心がマリちゃん先生と杏菜はよく似ている。

更には日向がマリちゃん先生のセクハラ(語弊あり)を受け入れていたのも、
間接的には杏菜の軽率な行動(颯との一時的な交際)が原因だという。

やっぱり疫病神はお前だよ、杏菜!


真甲子園の日程の中、颯や日向を怒らせた自分の欠点や過去の失態を理解しないまま、
杏菜は日向を夜中に起こして、日向の答えを聞かせてもらおうとする。

泣き落としで…。

ハイ、成長がまるで感じられません。

結局、杏菜のやっていることは自分を好きな男たちの優しさに付け込んでいるだけ。
「悪いところ全部 直すから」と言い出す人は、大抵、何が悪いか分かってません。
根本の齟齬に気づくだけの心の機微がないのですから。

恋愛問題に一区切りがついた、颯と日向の静かな友情の方が何百倍も染み入りますね。

本当に、杏菜の「好き」という感情は頼りなさすぎて物語を支えてくれていない。
幼なじみ3人の物語としても、杏菜だけがレベルが低すぎます。

杏菜も含めて3人で、もっと思い遣りとか、優しさから身動き取れない切なさが欲しかった。


日向の返事もなぜ、このタイミングなんでしょうか。
作者がもう引き延ばす手段を思いつかなかったから?
北海道で、お泊り回、というシチュエーションが最適だったから?

どうせなら最終巻まで引き延ばして欲しかったなぁ。
ここまでは日向のターンが極端に多かったように思うし。
どっちを選ぶんだろう、というドキドキも感じられない。


向との恋愛問題が頭の大半を占め、気もそぞろで本戦の写真撮影をする杏菜。

もう、こういうところが本書と杏菜を好きになれない点です。

400校の応募の中から本戦に選ばれたのは18校。

中には杏菜よりも格段に高い意識をもって臨んだ生徒たちも多くいただろう。
それなのに自分の恋にうつつを抜かして本気で写真に臨まない姿勢。

写真甲子園を題材にしながら冒涜しているように感じてしまう。

作者もその辺に配慮したのか、同じく写真部員の菜花(なのか)の悪意あるモノマネで、
杏菜が ちゃんと写真撮影に集中していることを押し出していたけど。
(その前日は気もそぞろ だったように思うが)


そして両想いになった後にも暗躍するのがマリちゃん先生。

なんとマリちゃん先生、結婚を機に地元の中学を辞めたはずなのに結婚していなかった事実が判明。
浮気されて破談になったらしい。

現金なことに、マリちゃん先生が弱っていることを知ってからの杏菜は少し優しい…。

もはや彼女は天敵ではなく負け犬だからだろうか。
杏菜っぽい短絡的な思考ですね。

そうして写真甲子園も終わり、遠距離恋愛が始まった。

だがマリちゃん先生を巡る問題は終わっておらず…。

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両想いの杏菜と、破談のマリちゃん先生。勝ち負けが鮮明になったことで杏菜が優しくなり…⁉

真甲子園での日向とマリちゃん先生とのスキンシップ写真が学校側にリークされたのだ。

1人がピンチの時は、他の2人が結束するのが幼なじみの良いところ。
今回は、颯と共に上京した杏菜だったが…。

本来、写真のリークはマリちゃん先生を快く思わない写真部員から彼女への悪意だった。
だが、それに巻き込まれた形となった日向。

マリちゃん先生は理事長の娘という完全に後付けの設定から、
日向は学校を退学処分にされてしまう。
しかも日向は特待生だから品行方正が求められる、という訳の分からん理由まで付けて。

しかもマリちゃん先生まで退職する意向だから日向は完全に被害者。
(彼女の場合は口だけで、日向の退学後に居座る可能性もあるが)


これ、かなりとんでもない展開なのに、日向は冷静。
「絵なんてどこでも描けるでしょ」という東京への進学を無意味にするような発言も飛び出す。

写真甲子園に続いて、こういう発言は本当に不快です。
日向の性格上、怒らないのは理解できる。
先の発言は颯と杏菜の怒りを収めるためでもあろう。

でも、夢を追うために積み重ねた努力、
手に入れたかった環境、他の人が羨む入学資格や出場資格、
そういうものを無価値のように扱う本書の姿勢には嫌悪感を覚える。

日向を東京にやって、北海道で再会し、更に地元に戻らせる作為のために全てが存在したのかと残念に思う。
どう考えても日向はドラマチックを演出するために巻き込まれた作品の被害者だ。


そうしてマリちゃん先生問題に完全に決着がつき、
日向は東京から地元・新潟に戻ることになった。

最後の2ページが とても良い感じだ。
恋愛問題も一応片付いたし、もう『8巻』で終わりでよくないか…?