《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

100本 集めると願いが叶うアイスの当たり棒。出てきた神龍によって富士ばぁ は不死を得る。

キラメキ☆銀河町商店街 1 (花とゆめコミックス)
ふじもとゆうき
キラメキ☆銀河町商店街(キラメキ☆ぎんがちょうしょうてんがい)
第01巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★(6点)
 

ミケ、クロ、イバちゃん、マモル、キュー、サトの6人は銀河町で育った幼なじみ。商店街のみんなも巻きこみ、今日も元気にはっちゃけます!! 愛と友情あふれるキラメキ☆銀河町商店街へようこそ!!

簡潔完結感想文

  • 同じ商店街に居ながらバラバラになりかけた6人が商店街のために立ち上がる。
  • 中学生になり男女に性差が現れる。…が、恋愛関係は ここから3年 変わりません!
  • 叶えたい願いがある人の前に現れる不思議な駄菓子屋・富士屋のために使う願い。

ジュブナイル小説 + 白泉社的ヒロイン&恋愛描写、の 1巻。

銀河町商店街を舞台に、13歳の幼なじみ6人の交流を描いた非常に健全な作品。

『1巻』の中に「気持ちが下を向いた時は 銀河町商店街を端から端まで ゆっくりゆっくり歩いてごらん ――そうすると だんだん元気が湧いてきて 歩き終わる頃には笑顔が戻っているんだよ」という台詞が出てくるが、これが本書のことを的確に表現している言葉に思えてならない。この商店街に暮らす人々、街の様子や雰囲気を観察し 堪能すれば、不思議と読者も笑顔になっていくような作品だ。

ポエム的な文章よりも、富士ばぁの この言葉が一番刺さった。こんなにも的確に本書を表現する言葉はない。

この商店街に住む人たちには悪意がない。それが本書の絶対的なルールだろう。前半で多少のトラブルは出てくるが、それは全て外部の者の犯行になっている。もっと言えば経営難に陥っている店もないし、潰れる店もない。ショッピングモールやネット通販の脅威など本書の世界には関係がない。そして死にそうな人も ずっと生きている(笑) そんな桃源郷のような世界だから私たち読者は この世界に没入するだけで元気が出てくる。

舞台装置としては不幸がない世界が広がっているが、中学生(後に高校生)の幼なじみ6人は それぞれに悩みを抱えている。『1巻』では中学生になって以降、彼ら6人の絆が綻びかけるし、中盤からは それぞれに恋の悩みが出てきて、悩み傷つきながら彼らが少しずつ大人になっていく過程が見られる。
前半は商店街という舞台がメイン、そして中盤からは高校生の男女6人の関係性の変化がメインとなり、後半は想像以上に恋愛要素が多かった。いつまでも だらだらと両片想いを継続するのではなく、ヒロインの恋愛信号が青になったら、予想より早く物語は展開していく。作品を時間の止まったネバーランドにしなかった点も好印象だった。


題点を挙げるとすれば、冒頭の一文「ゆっくりゆっくり歩」かないと本書の良さが分かりにくい、という点だろうか。今回、時間に追われていたこともあり、気持ちに余裕がなかった私は、商店街を端から端までダッシュで駆け抜けてしまった。ダッシュで駆け抜けると、この商店街、1巻あたり10分もかからない。よく言えば読みやすい作品なのだが、悪く言うと内容が薄い。ページにも時間にも余裕が見受けられる『1巻』は違うが、人気を得て掲載誌を移し 連載化した後は『1巻』と同じようなクオリティとは言えなくなっている。

また男女6人の群像劇のようでミケとクロという主役以外の人物の掘り下げは少し甘い気がした。明らかに物語がミケクロ重視で、彼らの個人回は思った以上に少ないのも残念だった。そして中盤からは商店街要素も少なくなり、前半で登場した人々も それほど出てこない。読者は商店街を端から端まで熟知することなく、頭の中の商店街に空白部分が多いままなのも残念だった。読者が長年 銀河町に暮らしていると見えてくるものみたいなのを表せれば一層 良い作品になったのではないか。
漫画的な技法で言えば、場面転換の際に手書きの文字情報で状況を説明しているのが気になった。例:←ミケに連れてこられた、など。文字に頼らない甘えない場面転換が出来るような話の流れを作って欲しいと思った。

初回の訪問ではダッシュしてしまったが、今回 感想文を書くにあたっては銀河町商店街を ゆっくりゆっくり歩いてみたいと思う。


要な登場人物は6人。

・通称:ミケ    こと  八百屋の次女・三宅 千乃(みやけ ちの)
・通称:クロ    こと  魚屋の次男・黒須 藍(くろす あい)
・通称:キュー   こと 蕎麦屋の長男・花咲 一休(はなさか いっきゅう)
・通称:サト    こと 焼き鳥屋の長女・佐藤 香澄(さとう かすみ)
・通称:マモル   こと 酒屋の長男・白馬 守(しろうま まもる)
・通称:イバちゃん こと 米屋の長女・椎葉 杏子(しいば あんこ)

である。彼らにとって大事なのは通名であり本名ではない。サトやマモルなんて本名を初めて認識したよ。

ミケクロの他は、チャラ男・天然・おっかさん系・オタクという外見と性格が分かりやすい配置。

『1巻』では中学2年生のミケとクロは銀河町商店街の中での有名人。だがミケは中学に上がって新しい環境になったら、少しずつ距離が出来始めた6人のことを気にしていた。そんな寂寥感を埋めるべくミケは6人で町内にベントに出ることを提案する。

男性陣は当初 参加を渋っていたが、自分たちに居場所を提供してくれるマスターが営むバーが、彼の昔の友人に襲撃される事件が起きる。マスターの苦境を救済すべく、イベントで出る優勝賞金を店の修理代に充てることで彼らは一致団結する。

その後、2日間という短期間で、彼らは「銀河町音頭」をアレンジ・練習し、見事 優勝を勝ち取る。この一連の騒動の中で、昔のような関係性が戻るというのが第1話。

ちなみに流星群は放射線状に降り注ぐのであって、北極星を中心とした星の運行のような円は描かないと思う。

30年後の約束のはずが、たった数年で距離が出来る6人。ここから更に年頃の男女ならではの問題が…⁉

ケとクロは生まれた病院も一緒で、生を受けた時から お向かいさんとして育った。6人がバラバラになりそうな時も、ミケとクロだけは仲は変わらずにいた。だが、その2人に距離が生まれようとしている。

2人は背の高さまで一緒だったのに、クロの手はミケよりも大きく、クロは女子生徒に告白されたり、ミケの知らない顔を見せ始めていた。自分がクロを理解できないことが腹立たしいミケ。

クロがミケに変な態度を取ってしまうのは、彼がミケを意識しているからでもある。それを知らないのは幼なじみの中でミケ本人だけ。他の4人も周知の事実で、クロは不憫な人になる。

この辺はザ・白泉社ヒロインと言った感じですね。無自覚で鈍感だが、それでいて場の空気を一変させるカリスマ性を持っているという特別な女性。白泉社漫画のヒロインは初恋すら許されないのだろうか。お金持ち世界だったりファンタジーだったり本書のように悪意のない世界の中で、更に恋愛感情をゼロから育てていくことが物語の純粋性を高める役目を果たしているのか? 10数巻恋愛感情を理解しないヒロインもいる中で、野生児のようなミケは予想よりは早く自分の恋心に気づく。中弛みしないのが本書の良い所ですね。

そんな微妙な距離感があるまま2人は体育倉庫に閉じ込められる。その非常事態に2人は素直になれない自分を謝る。その前にはクロのために怒ってくれたミケ。2人の優しさや思い遣りが伝わる場面である。

しかし そこへ2人が苦手な雷鳴が轟く。震えながらも強がるミケに対して、クロは好きでもない人にはしないと決めている抱擁をする。今回、一連のクロの言動を見ているミケだから本当は伝わってしまうバレバレの行動なのだが、雷鳴とクロの突飛な行動に ミケの頭は追いつかない。

2人を救出するのは幼なじみたち。ミケがクロを男だと理解するエピソードが良いですね。これから2人の差異は ますます広がっていくだろう。同じだと思っていたものが違うことを知るのは悲しいけれど、違いがあるからこそ自分にない部分を相手の中に見つけ、そして そこに惹かれていく。この悲しさが この2人にとっては恋の始まりの第一段階なのだろう。


休みも家業や商店街の手伝いをする中学生たち。

この夏、理不尽だが誰よりも商店街を見守ってきた駄菓子屋の「富士(ふじ)ばぁ」が倒れる。冒頭に書いた名言も、この富士ばぁの言葉である。

母である富士ばぁのことを心配する息子は、母を病院に入院させることを決意し、同居を勧める。自分の体調の変化・老いを自覚する富士ばぁは限界を感じていた。

そんな富士ばぁの回復を願い、中学生たちは動く。富士ばぁの、アイスの当たり棒100本集めてアイス1本と交換してくれるという鬼のルールを達成するために、彼らは自分たちの上の世代が隠したという当たり棒を嵐の中、探索する。タイムリミットは富士ばぁが病院に向かう翌朝まで。

彼らは富士ばぁが あの店でアイスを交換してくれるを願って当たり棒を集めた。これは未来への約束で、富士ばぁ復帰の切なる願いなのである。
もしかしたら当たり棒を100本集めると、それはドラゴンボール的に願いを叶えてくれるのかもしれない。この100本の収集が世代を超えているのが いいですね。富士ばぁの理不尽さに悩まされながらも、彼女と あの店で交流してきた かつての子供たち。これにより この100本は商店街全員の願いと言える。

ミケたちの親世代もまた富士ばぁに見守られて育ってきた世代。現役で商店街を支える働き盛りの彼らも、富士ばぁが戻ってくることを祈って見送りをする。本当に この商店街には愛が詰まっているなぁ。

そして富士ばぁは当たり棒のご加護を経て不死になったようだ…(笑)
彼らが高校生になった3年後の世界でも元気で駄菓子屋を開いている。もしかしたら100年後、銀河町商店街が寂れても、富士ばぁだけは その店を続け、誰も来ない客を いつまでも独りで待っているという悲しい展開になるのかもしれない…(嘘)