《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

藤君が20歳以上のキャラに受けが悪いのは、その人の大事な人を奪っていく恋泥棒だからか。

水玉ハニーボーイ 8 (花とゆめコミックス)
池 ジュン子(いけ じゅんこ)
水玉ハニーボーイ(みずたま )
第08巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

“お友達”じゃ我慢できない。「斬って★ 斬って★」奇妙な両片想い中の侍・仙石さんとオネエ男子・藤くん。水族館デート、藤家の結婚式……高まるロマンチックに藤くんの妄想も止まらない★ オネエの天敵・姫、筋肉おバカ・七緒先輩、力強き乙女・ドンちゃんも大活躍! 目指せ“脱・お友達!“な燃えたぎる第8巻

簡潔完結感想文

  • 告白はクライマックスまで温存なので その前にデート、そして結婚式。未来を先取り。
  • 告白できない自分を鍛え直すため藤君の告白をトレース。理科室で爆発、家庭科室で食中毒。
  • 自分の3人の姉、剣道界期待の女性2人から愛される男ヒロイン・藤君。ハーレム漫画なの?

薄々、気づいていたが藤君は男ヒロインかつイジられキャラである、の 8巻。

本書のヒーロー 兼 男ヒロインの藤(ふじ)君は、20歳以上の人の受けが悪い。きっとそれは藤君の柔軟性が、質実剛健だった人の心を融解させていくからなのだろう。その代表例が女ヒーローの仙石(せんごく)さん。素っ気なかった序盤から徐々に彼女の心を動かしていき、折り返し地点の『6巻』からは仙石さんが藤君に恋をするターンにまで発展した。
そのことが面白くないのが仙石さんの幼なじみで大学生の姫(ひめ)。姫は、仙石さんに気安く近づき、気安く距離を詰める藤君に初登場時から辺りが強かった(『3巻』)。それは姫にとって仙石さんが妹のような存在で、年下の幼なじみに悪い虫、しかもオネエ男子がくっついている事に不満があったからだろう。

今回、姫と同じような展開が起きるのが質実剛健お嬢様の西郷(さいごう)さん。仙石さんの剣道の良きライバルの西郷さんも藤君に惹かれた女性の1人。藤君は西郷さんから、初めて女性に告白されたが断る。その事実を知って気に食わないのが西郷さんの兄であった。上流階級の西郷家からしてみれば藤君は庶民で、しかも家庭科系以外は ほぼ低スペック。妹に好意を寄せられるだけでも ありがたいと思いなさいよね、という状況なのに好意を拒否したから怒り心頭。まぁ西郷兄の場合、藤君が妹の好意を受け入れたとしても嫌がらせをしてきただろうが…。

…と、2人の女性に知り合った事で、彼女たちの保護者というべき人に蛇蝎の如く嫌われてしまった藤君。しかし さすが男ヒロインというところで、この小姑のような存在や親族からの嫌がらせに対して、健気さと強さを見せるのがシンデレラ的である。藤君は決して腕力的には強い人間ではないが、柔軟で根気強く、人としての強さを持っていた。そういう強さがあるから、藤君は男ヒロインでありながら、間違いなくヒーローなのである。

そして考えてみれば女性剣道界を引っ張るような2人から好意を寄せられる時点で、藤君は紛れもなくヒーローっぽい。真剣に剣の道を進む人だけに藤君の強さは見えていたのかもしれない。

さて、このように20歳以上の人に愛されない藤君であるが、それを念頭に読むと楽しくなりそうなのが、次巻への展開である。これは本書の中でも最高の「引き」を持つ巻の跨ぎ方ではないか。いかにも水と油の存在の間で どういう会話をするのかが楽しみだ。しかし これまで何度も巻を跨ぐ話が しょうもなかった本書である。期待すると それだけ幻滅しそうな気がする。でも やっぱり楽しみだわ。


剣道女子2人に加えて、自分の美人の姉たち3人からは溺愛されて育ち、学校内では やたらと可愛い女子生徒たちと家庭科部で楽しい放課後を過ごす。オネエ男子だから男性であるという認識を忘れがちだが、これってモテない男子生徒から見れば相当 鼻につくハーレム状態なのではないだろうか。ラッキースケベの場面を採用したら、少年漫画誌でも通用するのではないか。しないか…(笑)


頭は、祝えなかった藤君の誕生日を祝う水族館デート。最後に少女漫画の定番、観覧車に乗ってもロマンチックにならないのが、既存のヒーロー像や価値観を壊すアンチ少女漫画の本書っぽい。

観覧車の2人は必ず結ばれる少女漫画ジンクス。好きな人以外と乗ったのは100作品中1作かな?

いて七緒(ななお)の妹・更(さら)の学校見学回。そういえば藤君は少々おバカで、学校も補欠入学だったらしいが、これは既存のヒロインはバカでいい、という価値観を踏襲しているのだろうか。お弁当作りが得意なドジなヒロイン、というのは少女漫画黎明期から引き継がれてきた基本形。
仙石さんの告白は保留が義務付けられているから、恋愛描写H乃木(のぎ)先輩と更でお茶を濁している気がしてならない。


一華(いちか)の結婚式。20歳以上の人に好かれない説のある藤君は、一華の旦那にも若干 距離を置かれる。まぁ これは自業自得か。でも身内から愛される藤君だから、その内、良い距離感になるでしょう。

大事な姉・一華ちゃんを取られたくないから、頭のおかしい子を演じてみたのだろうか…(笑)?

ずっと告白しない仙石さんにキレたのは西郷さん。そこで かつて藤君がしてくれた告白を再現してみる。仙石さんは料理が下手な人がするミスを連発。さすが脳筋。そこで理解するのは、誰かのために何かをする労力の大きさや込められた想い。そういえば仙石さんは父子家庭なのに、自分では料理する気が さらさら無かったのだろうか。幼なじみの姫がしてくれることも多かったのだろうが、そうやって人に依存して自立しないのは仙石さんらしくないような気もする。栄養不足が剣道に影響するのが嫌で、自分で研究しそうなのに。ちょっと設定がチグハグか。


西郷の兄登場。これで所要キャラは兄弟、または親が総登場か。一番少ないのは仙石さん。一人っ子だし、片親だし。と思ったら、『8巻』ラストでは仙石さんと姫の父親も登場。

西郷の兄・椿(つばき)は身体が弱い設定。あんまり活用されていないが、設定としては仙石さんと被ってる。椿は可愛い妹の告白を断った藤君に冷たい。ただし認めてくれない相手にも引き下がらないのが藤君。初対面が悪印象の方が、評価は上がりやすい。藤君は時間をかけて その人との関係性を構築していくタイプか。結果、難攻不落の仙石さんまで陥落しているし。


ストは姫の引越し。姫の母は海外の資産家の令嬢だったが、金銭感覚がおかしく莫大な借金が生まれたという。母は母国に帰っているが、姫の両親は遠距離で夫婦を続行中だという。
そんな姫野父は仙石さんの父親のマネージャー。仙石さんの父はスポーツ世界大会の日本チーム特別顧問をしているらしい。

そこへ2人の父親たちが帰国。姫の父親は藤君の父親同様、20~30代ぐらいにしか見えないが、仙石さんの父は年相応のリアルな顔をしている。
さて、大人組に嫌われる藤君という定評が構築されつつあるが、将来の義父との関係やいかに…⁉ 義兄では失敗していたよね…。