《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

もう残された恋愛の進展は、好感度の低い女性キャラの恋愛だけ。きょ、興味が…。

うそカノ【通常版】 9 (花とゆめコミックス)
林 みかせ(はやし みかせ)
うそカノ
第09巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★★(6点)
 

「今ならちょうど山の中で誰もいないしぴったりですよ?」入谷に告白され、「両想い」に!両想いだと、お互いだけに通じる言葉や、自分の定位置ができるのか!と目からウロコなすばる。浅草デートや後楽園デートではちょっぴり大胆に★「両想い」って、こんなに楽しくていいんですか!? モテメン和久井目線の特別編も収録★

簡潔完結感想文

  • 新キャラ退場。追加メンバーが上手く根づかないほどに初代メンバーが強いのか?
  • 「新しい関係」なので2回目のデート回も誕生回も全く別の内容になっている…?
  • 1年間の総決算。新年度が始まったら何かが先に進める、はず…のラストイヤー。

妙なアップデートを楽しめばいいのかな? の 9巻。

ニヤニヤしていたら、あっという間に読み終わった。

…と書くと、非常に満足したような印象になりますが、
ニヤニヤはするけど、手が止まるような心に引っ掛かる部分が少なかったからである。

色々な場所に お出掛けしているが、
その日の行動ばかりが描かれて、それを追っているだけで話が終わる。

作中時間で1年が経過した本書。
この間のヒーロー・入谷(いりや)の変化を丁寧に描いていたので、それは確かに感じる。

ただ、間違い探しのような差異を見つけられる人だけが楽しめるような変化で、
正直、『9巻』から始まった「正式なお付き合い」は以前と何が違うのか分かりにくい。

これは本書の中では『5巻』の結婚式以来の大きな変化なのだが、
『5巻』の時以上に、言葉上だけの関係変化のような気がしてならない。

こうやって何回も心機一転をすることで、
同じようなイベント(デートや誕生回)も違う意味が持てるから、
作者的には便利なのだろうが、
心機一転しても、出涸らし感まではリセット出来ていない現状である。

私は本書の節目の描き方が あまり好きじゃない。
ここ数巻で立て続けに、引き延ばしてきたことを終わらせているが、
その終わらせ方がヌルっとしていて、演出不足な気がする。

自然な展開といえば その通りかもしれないが、
もっと分かりやすい感動を与えて欲しかったのも事実。

キスも ここで⁉という場面だったし、
三角関係の和久井(わくい)の身の引き方も、分かりやすいものではなかった。
作風とマッチしないかもしれないが、
派手なエピソードを用意しても良かったのではないか。

『9巻』でヒロイン・すばる たちも3年生になり、進路に悩む1年となる。
作者は この恋愛を見届けるモードに入っているのかな。
それに見届けるのは、ここまで ついてきたファンだけだろうし。

残された恋愛は、妹・トモのことだけで、興味が湧かない。

良くも悪くも すばる と入谷の物語で完結してしまって、
他キャラ・新キャラの入る余地がなくって広がりに欠けるのが残念である。


キャラ・ジェシカとマイケルは早くも帰国。

登場のタイミングを見計らっていたのなら、
彼らが すばる たちに大きな影響を与える話を用意して欲しかったなぁ。
2人の恋愛も驚くほど内容が薄い。

デート中スマホと にらめっこ してる男性を好きになるか。入谷は「デート NG」で検索しな。

続いては改めてのデート回。

入谷はマニュアル人間がやめられないらしく、
完璧なプランによるデートを観光しようとしてしまう…。

2人の変化としては入谷は自分の気持ちを素直に表せるようになったか。
すばる の方も、自信がなくて あまり自分から入谷に関われなかったが、
もう今は積極的にイチャイチャすることを目標としている。

遊園地デートを企画するが、
乗る順番は決まっているのに、混雑を予想していない。
想像力に欠ける人間が陥る理想と現実のギャップである。

これ、入谷が すばる を楽しませたいのは分かるが、人間的に退化しているようで楽しめない。
検索人間からも脱却したかと思ったら、まだ頼ってるし。

これからの入谷は恥も外聞もなく すばる に向き合うと思っていたので、
以前のバージョンと変わらない部分が残念に映る。
もうちょっと丁寧に変化を描いて欲しい。


3月8日は入谷の誕生日。
誕生回です。
すばる の誕生回もあったので、誕生回としては2回目だが、入谷のは初なのです。
でも誕生回にクリスマス回と立て続けに同じようなイベントが続いたので新鮮味に欠ける。

この誕生回は、プランを考えるので1話、本番で1話と贅沢な話の作り。
プラン考案の1話は、内容が薄く消化試合という気がしないでもない。

すばる が考えたプランは『1巻』の短期連載でも登場した入谷の自宅近くの山に、
今度こそ2人で登り、そこで夕焼けを見るというもの。

クリスマス回で お金を使い過ぎたことを たしなめられているので、
すばる のプランは山頂での お茶会のみ。

ここでは誕生日様のはずの入谷が交際1年記念の品を すばる に渡す。
いや、正確には交際1年の記念ではないのか?
2人の中では どこを交際の始まりとしているのかが分からないから面倒臭い。

とにかく入谷は日頃の感謝と愛を形にしたかったらしい。
贈り物はネックレス。
少女漫画におけるアクセサリーは愛の象徴ですね。
ベタな展開だと、これを失くすことで2人に危機が!という話になるのですが、本書はどうなるだろうか。

予算3千円のクリスマスから、今回はどれぐらいの金額の物なんだろうか。
これはやっぱり金額比1:10だったクリスマスのことが入谷の後悔になったからなのかなぁ…。
ネックレスを入谷が どう選んだのかなどの一連の動きが読みたい。
まぁ、あの入谷が人のために動いているだけで十分 感動的なんですが。

1年前と同じ轍を踏まないように、事前に怪我を予防し、彼女を ずっと自分の傍から離さない。

の同じ日、トモと時田(ときた)も会っていた。
和久井が手を引いたことを諦めきれないトモ。

トモは その「小学生の発想」に加えて、頑固で拗(こじ)らせた自分と折り合いをつけようとする。
果たして、トモが出した答えは何なのかは分からないまま、
新年度、そして次巻へと話は続く。

もうちょっと話の密度は上がらないものかね。
主役以外のサブキャラの話は3倍の速度で進んでいいんですよ…。

「うそカノ 特別編」…
すばる への気持ちを少しずつ忘れようとする和久井の葛藤。

和久井が笑えるように良かったと思うものの、
やっぱり三角関係終了からズルズルと仕掛けていたのに、
ここで手を引くことにした、という明確な心の動きがないから不完全燃焼感がある。
本書は少ないネタで、色々なものを引っぱり過ぎた感じがするなぁ。

どうでもいいけど、すばる たちは どこに住んでいる設定なんですかね。
『9巻』では浅草や水道橋などに行っているが、高校から自宅までは6駅15キロもある。
高校まで遠いし、電車の駅間隔も広いし、結構 郊外なのか?