《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

うそで隠した本心が 君に伝わる発動条件は、いつも冷静な君が 私のことで心を乱された時。

うそカノ 1 (花とゆめコミックス)
林 みかせ(はやし みかせ)
うそカノ
第01巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

片思いの入谷くんが「彼女のふりをしてくれる人=うそカノ」を探していると知り、すばるは思わず立候補!! いつかほんとの彼女になりたい…」一緒の下校、初デート、毎日ドキドキばかりだけれど、入谷くんがうそカノ探していた理由を知って…? 「大好き」はほんと、「彼女」はうそ。すばるの恋のゆくえは……!?

簡潔完結感想文

  • 嘘にまみれた偽装交際。その嘘の中に偽装交際の本当の狙いや 本心も隠されている。
  • 最初の嘘デートで既に5巻ぐらいまでの交際の進展をやっているような気がする…。
  • 本編は短期連載分の3話分のみ。残りの半分弱は読切で、何だか続きが気にならない。

も方便。恋が始まる/恋を終わらせるための必要嘘、の 1巻。

本書は、好きな男性が彼女のフリをしてくれる人を募集していたので、
そこに即座に応募したことで「うそカノ」として交流を始める高校1年生の男女のお話である。

入谷くんを好きになるのも、うそカノになるのも、衝撃の事実を知るのも 全ては この保健室から。

ハッキリ言って、少女漫画的には偽装交際であっても それが出来たなら その恋の成就確率は90%以上だろう。
(100%じゃないのは、先日、偽装交際をしても交際に至らなかった作品に出会ってしまったので…)

気になる男性と同居するか偽装交際が出来れば、もう勝ったも同然。
一緒に過ごす内に、相手の男性は勝手にヒロインの魅力に気づいてくれるのだ。

そういえば この手の男性は無表情だったり無感情だったり、どちらかと言うと冷たいタイプの男性が多いなぁ。
そんな彼の心を溶かすのが、ヒロインの天真爛漫な温かい心 という訳か。

ちなみにヒロイン・すばる の貧血体質が出るのは最初だけ。
ネタバレとも言えないネタバレですが、この貧血が何か大きな病気の予兆だったりはしないので ご安心を。
あっという間に貧血症状すら出てこない。
どうやら すばる が保健室に何回も来る理由として利用しただけのようです。


が本書を好きな部分は、男性側の「うそ」。

少しネタバレになるが、その男性・入谷 匡史(いりや ただふみ)君は、
好きな人を安心させるために、彼女から離れる・遠ざかるために「うそカノ」を募集していた。

これは大好きな入谷に近づくために嘘をついているヒロイン・神宮寺(じんぐうじ)すばる と対照的な理由である。

この対照的な構図が好きだし、何よりも こういう手法を使ってしか、
その女性を安心させられない=自分の未練を振り切れないような入谷が愛おしいではないか。

学年一番の頭脳を持ち、クールで合理的な思考を目指す彼の、非合理的な幼い部分を好きになってしまう。
本書はきっと、入谷のそんな不器用なところを愛でる漫画だと思う(異論は認める)。

そして彼の不器用さは巻を重ねるごとに強くなっていく。
頭でっかちの彼が間違えていく様子に とても青春の甘酸っぱさを感じた。


ロイン・すばる に関して思うのは、自分から告白する勇気はなかったのか、という疑問がある。

物語の構成上、好きと言う自分の本心を隠しながら入谷に接近する必要があるのは重々承知だが、
いつまでも彼を好きだ好きだという割に、嘘の中に逃げ込んで、
自分が追い詰められるまで自分からは告白しようとすらしないのが残念だった。

また、うそカノを自分から引き受けて、入谷の実像や背景が分かっては自分勝手に傷ついているばかり。
彼女の悩みは自分の恋が上手くいかないかもしれないという視野の狭いものなのだ。
そして『1巻』収録分の3話だと、彼女がどこにも勇気を出していない(うそカノ立候補はともかく)のが気になる。

本書の内容は、表紙の通りに、ふわふわと優しい物語で、端々に作者の優しさやキャラへの愛を感じる。
だが、その一方で ニコニコと笑っていれば男性が顔を赤らめて優しくしてくれるような物語にも感じた。

もう少し芯の強い所を見せてくれたら、もっと好きになれたのに。


書は、白泉社お得意の短期連載から好評を得ての長期連載というパターン。

この『1巻』は、ちょうど全3回の短期連載部分までを収録している。
そのため本編は全体の半分ちょっとしかない(およそ200ページ中の110ページぐらいまで)。

「うそカノ」設定が綺麗に消え失せたハッピーエンドまでの模様を描いていて、変な満足感を覚えてしまう。
次の巻も買ってもらうためには、長期連載分も収録して、
巻末に大きな引きになるような場面で終わらせた方が良かったかも。

連載を単行本化した時の巻末に合わせて、完全に意識した大袈裟な引きを作る作品も嫌だが、
今回ばかりは商売下手というか、連載の利点を消すような構成が気になる。

全11巻を完読しての感想は、
良くも悪くも『1巻』の内容と地続きだなぁ、という印象。

連載でも『1巻』の登場人物たちを上手く活用している一方、
これ以上 大きな動きは見込めないため、目新しい部分が少なかったように思う。

話の作り方が丁寧なのは とても好感が持てて、それが内容にもマッチしているが、
印象に残るようなイベントや場面を あまり覚えていない。

本書は雑誌「ララ」での掲載だったみたいだが、
他社で言えば「りぼん」や「なかよし」で掲載されていても違和感がない。
高校生未満の人が夢みる高校生活といった感じなのだ。
そこに物足りなさを感じる人もいても不思議ではない。


ある冬の日の保健室で、神宮寺すばる は特進科の入谷匡史くんの
「…あー 彼女のフリしてくれる人みつけないと…」という分かりやすい独り言を聞いて、それに立候補する。

本当は以前から入谷が好きな すばる だが、
単なる利害の一致という感じを出すために、「うそカノ」として彼女気分を味わいたいという理由を咄嗟に思いつく。

入谷は この高校の特進科で学年一頭がいい。
顔に関しては学校中で騒がれるというレベルではないが、決して悪くは無いだろう。
それに すばる が入谷に惹かれだしたのは、
体調を崩した夏の日に、入谷が自分を気遣ってくれた時からで顔ではない。
そして これによって すばる は約半年は片想いしている計算となる。

偽装交際なので形から それらしく見えることを重視する2人。
「恋人っぽいこと」として、まずはシャーペンの交換をする。

保健室でイチャつくことも入谷の目的の一つ。入谷にはシャーペンの交換よりも重要なイベント。

だが提案したのは入谷側なのに彼には すばる に渡せないシャーペンが1本あるらしい。
それが どういう由来の物かは後で明かされる。

そして入谷が選んだ すばる のシャーペンには ある願いを書いた紙が入れられていた…。


ばる の1歳年下の妹・トモは、うそカノに浮かれる姉の話に反論する。
シスコン気味の妹は、すばる の中の冷静な人格といった役どころか。
そういう妹がいるお陰で、反論にも負けない すばる の強い意志が示せている。

同じ時間を過ごす中で、入谷は すばる の良い部分を見つけていく。
偽装交際や同居では、彼へのアピールタイム(無自覚)が長いことが利点だろう。

だが、ある日、クラスメイトの傷の手当てに入った保健室で、
すばる は保健室の養護教諭・槇村(まきむら)先生と入谷の会話を聞いてしまう。

そこで すばる は入谷が渡すのを拒否したシャーペンの由来と、彼の先生への恋心に気づいてしまう…。

すばる がうそカノ応募に際して咄嗟に嘘をついたように、
入谷が「うそカノ」を募集する理由も嘘だった。

すばる に その理由を説明する際も入谷は無表情だが、
彼も頭をフル回転させて咄嗟に嘘をひねり出したのだろうか。

表情が乏しく分かりにくい彼の感情や思考が見えることで悲しみや胸キュンが生まれていく。

健康面の理由で保健室常連の すばる だから、個人的な理由で保健室に入り浸る入谷と出会ったのだが…。

かし彼の真意を知りながらも、「デート」と称して写真撮影をすればそれは嬉しい。
ちなみに このデートでは、これから何巻かけて一歩ずつ近づいていくことを一瞬で叶えてしまっている気がしてならない…。
これは連載継続は嬉しい誤算で、この時点では想定してなかったから仕方ないけど。

すばる の笑顔は入谷を誤作動させる。
うその関係の中で、彼の心に本当の恋心が芽生える兆しが出てきた。

そんな良い雰囲気の中、養護教諭が通りかかり、すばる の夢のような時間は終わってしまう。

婚約者しか見ておらず、入谷を弟のようにしか見ない先生に すばる は入谷に味方をするために対抗する。
恥ずかしいぐらいに入谷の良い所を列挙してしまい、入谷を困惑させた。
が、そう思っているのは すばる だけで、実際の入谷は恥ずかしさに赤面していた。

こういう すばる の天然ゆえの破壊力が本書の楽しい所であろう。

この一件も先生に悪意はないが、入谷の中の先生の大きさを感じてしまい、
うそカノでしかない自分の存在に虚しさを感じる すばる。
そんな気持ちを抱えたままで入谷が誘ってくれた山登りでも転んでしまう。

惨めになった すばる は、自分が全てを知っていることを打ち明ける。
入谷は、先生のために、彼女が気兼ねなく結婚できるように動いていた。
それはもう、彼が先生への気持ちを手放す準備が出来ているということでもあろう。


が入谷が その説明をする前に、同じ場所に撮影に来た、
すばる の写真部仲間の男子生徒・和久井(わくい)が登場する。

彼はあっという間に怪我をしたすばるを運んでしまい、入谷は何も出来ずに佇(たたず)むばかり。
すばる にとって先生がライバルに思えたように、和久井という男性が、入谷の心を揺さぶる存在であろう。

苦しいばかりの すばる は、また嘘をついて、
自分に好きな人が出来たから、と今度は自分から入谷から遠ざける。
入谷の目的も果たしたので うそカノを終了し、彼を解放する名目で自分を この悲しみから守る。

そんな身勝手とも言える うそカノの終了を一方的に宣言する すばる に対し入谷も苛立っていた。
彼の苛立ちが交換したシャーペンをカチカチと動かさせ、芯が出なくなったところで、芯を中に戻そうとする。

シャーペン本体の中には、すばるの おまじないが入っていた。
そこには「入谷くんと恋がしたい」という彼女の願いが封じ込められていた。
これは嘘ではない彼女の本音である。

一方 すばる は自分が撮影した写真展示に生徒たちが貼り付ける付箋の感想の中に、
入谷のものがあることを知る。
見つけた入谷のものらしい付箋には何と言う事のない感想。
だが その裏にある入谷のメッセージを見つける。

このメッセージを入谷が貼ったのが、彼が すばる の本心を知る前という順番が良いですよね。
すばる の心を知る前に、入谷も すばる に対して優しくしたかったと思っている。
自分を好いてくれているから好きになったのではなく、
彼は すばる がどう思っているか知らない段階から、すばる が特別になり始めていた。

すばる の本心を知った入谷が すばる を問い詰める。
ここで初めて、入谷に近づくために演技をしていた すばる が彼に本心を告げる。
そうして白状することで「うそカノ」は終わる。

「うそカノ」は終わるのだけど、作品名うそカノ は続く。
作品は もう必要となくなった名前を ずっと使い続ける…。


「ゆれる、こもれび亭。」…
両親を事故で失った10歳の菜乃花(なのか)と その妹・桃花(ももか)姉妹。
そんな彼女たちを、父親の昔なじみの青年・颯(そう)が引き取って5年が経過した。
民宿を経営する颯のために その手伝いをする姉妹の日常。

ハートフルな良い話なんだろうけど、そうしようという作為を強く感じてしまう。
あわよくば連載も視野に入れたような設定だし、
白泉社らしい親を容赦なく死なせて不幸にして、
親戚も鬼畜な人間に仕立て上げることで天涯孤独な境遇にするのも既視感と嫌悪感ばかり。

両親の歩んできた歴史がいまいち見えず、時系列に不明な箇所が多い。
どう考えても颯は大学を卒業してすぐに子供たちを引き取っているが、
心理的なことや経済的な問題もそうだが、何よりも彼が民宿を経営する動機が分からない。

菜乃花を健気な子にするため、彼女が働くような民宿という設定ありきで話が進んでいる気がする。
颯の翻訳家との二足の草鞋(わらじ)も、二兎追うものは…になっているばかりではないか。
余計な装飾ばかり多くて、この民宿は居心地が悪い。

「夏の涯(はて)」…
そこそこの偏差値を誇る中高一貫の男子校の合格発表の日に出会って3年。
高校1年生となった木瀬(きせ)と茅野(かやの)は、
出会った頃と見た目も立場も逆転している。変わらないのは…。

暑い夏の中でも、どこか冷めた目をした、
作中で1人だけ長袖を着続けている木瀬が印象的な作品。
肌を見せない=本心を見せないということなのか。

これはBLというよりもブロマンスというジャンルなのかな?

でも木瀬の指向は この先、男女どちらにも転びそう。
このまま茅野への想いを募らせれば、その先を欲することもあるだろうし、
母をはじめとした女性を参考にした偏った女性像を壊すような人に、
男子校を卒業して世界が広がった後に出会う可能性も まだまだあるだろう。

確かなのは今の彼にとって、茅野という人が
命の恩人で、生きる意味で、世界そのものだということだろう。