《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

他の学部が目に入らない位 楽しい学部。他の男性が目に入らない位 大好きな貴方。

うそカノ 10 (花とゆめコミックス)
林 みかせ(はやし みかせ)
うそカノ
第10巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★(6点)
 

高3になったすばる。新入生に憧れられる学年1位・入谷を見て、わたしは入谷くんの彼女なんだから…と学力UPを目指す!! だけど入谷はすばるのバストUPの方が気になって!? 両想い初心者の2人は食い違いながらも、オープンキャンパスでの大学生ごっこ、夏祭りでの殿様ごっこでは一致団結! そして入谷にも彼氏としての自覚が芽生えてきて…!?

簡潔完結感想文

  • 高校3年生。それぞれに学力に悩む2人。すばる の悩みを入谷は解決できるが、逆は無理!?
  • 少女漫画において進路問題は、描くのが想定外のことが多いので、作中に手掛かりを求める。
  • 高校3年生は光陰矢の如し。『10巻』で春夏秋冬。最後に残された恋愛も決着が付きそう。

きの乏しい物語を救うのは、嫌われ者の妹⁉ の 10巻。

この『10巻』では1年前や過去回とは違う人間関係や悩みが見られることが楽しかった。

1つは弟キャラで愛されてきた時田(ときた)の壁ドン(的なもの)。

『5巻』で好意を寄せるトモに形ばかりの壁ドンで迫った彼は、
彼女に「壁ドンとか今更だし それってもっと背が高い人がやるもんだから」と反論される。

だが約1年後の今回、時田の放つ壁ドンは、もっと野性的で感情的な足での壁ドンだった。
そして恐らくであるが、彼の背は あの時よりも伸びている。

少ししかなかったトモとの身長差は広がり、
そして彼は この1年で これまでなかった魅力を兼ね備え始め、壁ドンが似合う男性となったようだ。

本書で初めてトモに お説教してくれる人が出てきた! 野放しにすること10巻。長かったー。

もう1つ、過去回との対比で面白いのが
私の中で伝説の『8巻』の「おっぱい回」とは違う意味で、
「おっぱい」で入谷の頭の中で占められていること。
これは後述します。

同じような事象を扱いながら、全く違う描写になっているのを楽しめるのも長編ならでは。
まったく本書は男性たちの成長や懊悩が面白い漫画である。


よいよ作品は高校3年生突入。
基本的に高校3年生は少女漫画にとって鬼門である。

普段は定期テストの勉強すらあまりやっていない お花畑の人達でも、
進路に悩むことになり、恋愛の入る余地が少ないのが高校3年生。

ここまで100作品ぐらい続けて読んできた私の体感だと、
高校3年生に突入する少女漫画は全体の2割弱といったところではないか。
3年間あるはずの高校生活だけれど、
少女漫画においては2年の途中で終わることの方が多い。

そして進路の話は難しい。
あまり生真面目に悩んでも、作品内が暗くなる。
勉学に集中するため、恋愛的な動きも少なく、
本来の少女漫画読者のニーズから離れてしまう。

描くとしたら本書のように、1年間の中の印象的な1日をピックアップして描くのが良いのでしょうね。
お互い頑張り続ける毎日の中で、
その人の存在があるからこそ、また明日も頑張れる気持ちになれる。
本書では恋愛を、決して勉強の邪魔になる要素として扱っていないのが良かった。


そして作品的には恋心が感情に動きが乏しい中で、
妹・トモと時田の恋愛を動かしているのも上手い。
まさか これまで余計な事しかしなかったトモに作品を救われるとは。

作者は こういう事態を見越して、トモたちの恋愛を保留していたのかな。
そうだったら ここの所、ネガティブな感想を書いていた自分を恥じたい。


の『10巻』では、幾つも忘れられない入谷(いりや)の言葉があった。

私が特に印象に残ったのは、オープンキャンパスで進みたい学部に悩む すばる に向かって彼が言った、
「他の学部が目に入らない位 楽しい学部があったんだよね
 それって俺には もう 答えがでてるように見えるけど」という言葉が印象的。

進路も恋愛も将来も、もう悩む必要はない。なぜなら彼らは大切なモノに出会ったから。

これは作品や『10巻』における すべての事象に応用できる言葉である。

一番単純なのは、今回の感想文のタイトルにもした、
他の男性が目に入らない位 大好きな貴方、ということだろう。

すばる にとって入谷は人生初の、そして人生で唯一の恋となる(かもしれない)。
和久井(わくい)という入谷に負けない素晴らしい男性が、
自分を想ってくれていると知っても彼女は少しも揺るがなかった。

そういう迷いのない真っ直ぐな気持ちが、彼女の未来を照らしてくれる。
そして その明るさが本書の作風に直結している。


谷の名言を『10巻』の入谷に応用してみよう。

それが「他の おっぱい が目に入らない位 魅惑的な おっぱい」だろうか(笑)

『8巻』では、すばる よりもスタイルのいいジェシカの胸には一切 反応しなかった入谷なのに、
今回、入谷は すばる に対して、彼女の天真爛漫な無邪気さではなく、
彼女の性的な魅力に参って自爆している。
入谷にとっては他の胸が目に入らない位の唯一の胸なんですね。

これまでも隙あらば、彼女を部屋に連れ込もうとしている入谷なので、
なぜ このタイミングで こんなに すばる に性的興奮を覚えているのかは謎だけれど。

前述の時田の背が伸びて男性的な魅力を備えてきたように、
すばる の胸が大きくなって、女性的な魅力が増して、それが入谷の欲望に火を点けたのか。
そういえば すばる の胸は水着が流されちゃうほど ひっかかりがなかったのですが…(『2巻』)。

特進科、学年一位の生徒として颯爽と登場するシーンから一転、
彼女を目の前にすると胸しか目が入らないような状態だし、
彼女が目の前にいなくても、彼女の胸のことばかり考えてしまう。

成績が著しく下がるほど性的な思考に頭をOCCUPYされてしまう青少年・入谷。
柔らかい画風で緩和されてますが、日々 性的な夢を見ることを告白するヒーローも なかなかいない…。

それぐらい入谷は我慢の限界、ということなのだろうか。
もう2人の進展を邪魔するのは、出版社的な問題ぐらいしかないのではないか。
入谷よ、恨むのなら白泉社連載であることを恨むんだ。


んな入谷の人には言えない悩みの一方、すばる は進路に迷う。
そういえば すばる も自身の おっぱい問題に悩んでいた時期があったが、その時は入谷はスルーだったなぁ。
つくづくタイミングの合わない2人だが、その2人が何だかんだで順風満帆なのが面白い。

ちなみに入谷は理系で、将来は研究職志望。
どうやら入谷が2年生の冬休みにパリに行ったのは(『7巻』)、
現在はパリで研究者をしている父のラボを見に行っていたという理由が明かされる。
とっても後付けくさいが…。

すばる の進路はオープンキャンパスで決まる。
決め手となるのが、上述の入谷の名言。

少女漫画で、進路の話まで描くつもりで連載を始める作品はないだろう。
連載がどこまで許されるかは作品の人気次第だもの。

なのでヒロイン側の進路の話は、序盤の、数少ない手掛かりから選ぶことになる。
そして なぜかヒロインの進む学部は文学部・経済学部などの人文社会系ではなく、
ある程度、将来の職種が限定されるような学部が多い。
こうした方がヒロインの人物像がハッキリするという考えなのかなぁ…。
ちょっと前時代的な気がするので、変わった進路も見てみたい。
(もちろん、こういう進路を否定している訳ではありません!)

すばる も唯一といっていい得意分野からの選択になる。


路も定まり、いよいよ勉強に熱が入る すばる だが、
結局、大学が決まるのは指定校推薦だったことにズッコケる。

この学校は指定校推薦の枠が多いのだろうか。
去年も3年生の写真部の先輩が推薦だったような。

そして3年生の1学期まで成績が中の中(または中の下)だった
すばる にまで推薦枠が回って来るなんて…、という不自然さは否めない。
高校3年生になってから頑張る人でも あるんだ、枠。

すばる の合格が決まった後の話は胸が温かくなる。

続く入谷の合格、そしてこれからも一緒にいたいという すばる の神頼みも かわいいし、
それを俺が叶える、と言い切る入谷も素敵だ。

エロいことだけじゃなく、ちゃんと すばる の心配で眠れなかった入谷も またかわいい。
人を心配できることや、人前で寝ちゃうのも、それだけ入谷が心を許している証拠である。
すばる と出会って以降の入谷の変化の描写が本当に楽しい。


よいよ受験勉強が激しさを増す夏以降に話を動かすのは、トモと時田。
(結局、すばる は謎の指定校推薦だったわけだが…)

トモが誤ったし、謝ったのが印象的。
そして前述の通り、時田の壁ドンが忘れがたい。
彼は ずっとトモに甘かったが、ここにきて荒ぶる時田が見られるとは。

穏やかな本書、特に異性間の争いは全くと言っていいほどない本書なので、
ここまで感情を露わにする場面は珍しい。

時田は、今年の文化祭はミスコン2位だったみたいだが、
この結果は、トモの予想とは違って、
時田が弟キャラだけじゃなく、ちゃんと男性として成長した結果の集票だったのではないか。
そういえば時田はミスコン上位で、成績も学年上位でハイスペックなんだよなぁ…。


本書において、女性の笑顔は男性の胸を射抜く。
あまり笑わないトモが、一時 険悪になったと心配した時田との仲が戻ったことで、
安堵で表情を和らげ笑ったことで、時田はまたトモを好きになる。

本書では男性側が毎回、女性を好きになっているなぁ。
だが、それがいい