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少女漫画と小説の感想ブログです

転倒防止の幼なじみという補助輪が外れ、ひより は自転車を一人漕ぎ始める。もう事故らないで!

ひよ恋 3 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
雪丸 もえ(ゆきまる もえ)
ひよ恋(ひよこい)
第03巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

超人見知りのひよりが、身長差50cmの人気者・結心に恋をした!! 自分とは何もかもが正反対の相手。そんな結心に出会えて、毎日が楽しくなった。だけど、クラスがえの日が近づいてきて――!?
【収録作品】なつ恋/ひよんコマ/おまけまんが みったんの放課後日誌

簡潔完結感想文

  • 苦手だった学校生活が楽しくなって ひよりの短い1年生は終わる。本当の試練はここから。
  • 進級は新キャラ登場の合図。2人の新キャラによって早くも停滞していた物語が復活する。
  • 留学していた生徒にとっては「みんなの結心」のルールは通用しない。結心をゴン攻め。

ってつけたような新キャラだけど、彼らが物語を停滞から救う 3巻。

実は『2巻』で早くもマンネリ気味だった本書。
主役たちを恋愛成就から遠ざけようとするあまり、物語に動きが失われていた。
ヒロインの ひより も逃げてばかりで同じような展開が続いてたし。

ただし それをリセットするのが高校2年生への進級と それに伴う新キャラの加入だった。
『2巻』の感想文では、ひより になつかない猫の ぷいぷい と、ライバル的キャラの妃(きさき)が、
物語に適度な苦みを出していると書いたが、今回も2人の新キャラが ひより の心に波を立てる。

自分から動かない ひより には ちょっと手厳しいぐらいのキャラクタがいた方が良いみたい。
1人目の新キャラ・コウに関しては、ちょっと登場場面の意地悪がやり過ぎかな、と思うが、
ひより にも読者にも忘れられない初登場になったことは確か。

そして2人目の新キャラ・礼奈(れいな)は物語の外からの参入。
1年間の留学をしていた彼女は、留年をしているため1歳年上。
そしてヒーローである結心(ゆうしん)が この学校にいる生活を一切知らない人だから部外者として状況を見つめる。
何となく出来上がっていた この学年の結心に関するルールも お構いなし。

特別な絆を持つ妃よりも、ひより の「今そこにある危機」として礼奈は物語をかき乱す。

彼らは物語の新たな苦みとなるのだが、
それもこれも ひより の まろやかな甘さを引き立てる役割のためである。

ひより には悪いが、彼女は ちょっと不幸なぐらいが丁度いい。
ただ、この匙加減を間違えると読者も ひより に反感や苛立ちを持ってしまうから結構 難しいキャラである。
どうやって彼女が成長し続けていると見せるのか、作者のこれからの描写に期待と不安が入り交じる。

りぼん じゃなく他誌ならば、こういう初登場時だけドSキャラの男性と恋に落ちていたかもしれない。

ずは、ひより の誕生回から。
3月13日生まれの ひより は、皆に祝われる嬉しさと同時に この学年が終わってしまう寂しさも感じていた。
あれほど苦手だった学校が大好きになって ひより の4か月余りの1年生は終わる。

1年生の最後の日、クラスで打ち上げに向かう最中に、妃が目の前に現れる。
しかし妃は結心ではなく ひより に話があるという。
彼女はバレンタインのチョコの件を謝罪し、そして2人は正々堂々とライバル宣言を交わす。

やっぱり妃には こういう態度を取って欲しいですね。
そして彼女の焦りや葛藤もよく理解できる。
10年以上も隣にいて当たり前の人なのだもの。
妃側をヒロインにした少女漫画も出来るのだ(ルックスは入れ替わるかもしれないが)。
どちらも応援したいが、どちらかしか恋愛は成就しない。

打ち上げのカラオケでは結心は歌が上手い設定。
やはりパリピ側の人なのか。
カラオケでも個性が出ます。

歌っていない ひより にもマイクが回ってくるが、人前で歌うことなど彼女には無理。
そんな気配を察したクラスメイトたちはフォローに回る。
でも ひより はそれを申し訳なく思う。

そこで彼女は自分の この4か月の感謝をマイクを通して皆に伝える。
早くも数々の思い出が回想され、第1章 完といったところか。


して2年生に進級。
進級という名のプチリセットで、何が出てくるかというと新キャラである。

2年生では幼なじみの律花(りつか)とは別のクラスになってしまう。
だが結心や、ひより にやたらに甘い夏輝(なつき)は一緒。
担任の先生も変わらずで、何とか ひより の心は保たれる状況ではある。

ここで律花が離れるのは、これまで補助輪がわりに ひより を支えていた彼女が手を離すことで、
ひより が真に独り立ちするためであろう。
これまでの関係に頼らずに、彼女が高校から得た新しい関係性で自分の世界を広げていくことが求められる。


キャラの1人は仁戸部(にとべ)コウ。
身長159センチの男子生徒。
彼も人見知りらしく親近感を覚える ひより だが、その裏で なかなかの毒舌。

そしてコウは ひより に本書で初めて悪意を向けてくる人でもあった。

「身長差強調して『ちっちゃくてカワイイ私』アピールでもしたいの?
 純粋そうに見えて実は計算だったりして」と、ひより の メンタルをフルボッコにする。

そんなピンチをフォローしてくれるのが結心。
コウに謝罪をさせるように圧をかける。

コウが ひより に冷たい態度を取ったのは、
復学してきた ひより の身長が噂になり、男子生徒としては小さいコウが、
お似合いだと周囲の男子生徒に冷やかされた過去があるから。
そして ひより が好きな人が結心だと周囲にバレると今度は勝手に失恋したような扱いを受けたという。

迷惑を被ったという怒りがコウの犯行動機である。

こうやって大きめの騒動を起こして、新キャラを印象付けるのが上手ですね。
コウに関しては、ちょっとひねくれ過ぎたエピソードだとは思いますが…。

にしても この時、近くにいる結心には ひより の好きな人がバレバレではないか?


して この騒動の後に登場するのが留学していて本来は1歳年上の松島 礼奈(まつしま れいな)。
彼女は結心を一目で気に入り、席が隣という事もあり会話量が多い。

留学して丸1年学校にいなかったので、礼奈には「みんなの結心」ルールが通用しないのも面白い。
積極的に結心にアプローチし、彼の恋愛事情なども聞きまくる。
ここまで結心に遠慮がない人は過去に いなかった。

ライバルではあるが、学校の違いや結心と距離を置きがちな状況の妃と違い、
礼奈は ひより にとって学校内の目の上のたんこぶ となる。

礼奈の、明るくて、自然体でいるだけで まわりに人が集まってくるところは、
結心と共通する人としての資質であった。
そして それはひより が絶対に持てない資質でもあった。

新キャラを2人を一緒に出すと話が取っ散らかるので、時間差で登場させているのもテクニックである。

これまで誰も聞けなかった結心の恋愛関係の話題を聞き出すのが礼奈の役目。結心と恋の現状を整理。

学期という事でイベントも多く発生。
ひより は12月からの登校なので、まだまだ知らない学校行事が沢山ある。
2年生に進級しても同じことの繰り返しにならないのが良いですよね。
12月からの復学は少女漫画的にはベストなタイミングかもしれない。
クリスマスやバレンタインなど恋愛系のイベントはあるけど、学校行事は少なめだから。

まずは身体測定がある。
ひより は140cmから142cmになったが、結心も190cmから192cmに伸びてしまい身長差50cmは変わらず。
まぁ この分かりやすい差が本書の特徴だから差は埋まらないよね。
これ以降、身体測定の場面はないから、この身長が最終的なプロフィールになるのかな。

続いては学校行事の遠足回。
ひより は初めての楽しみな学校行事に眠れず体調が思わしくない。
夏輝のアシストもあって結心たちと回ることになったが、ジェットコースターを前に ひより は倒れる。

どうやら ひより は記憶から消去しているが中学の時にジェットコースターに乗って気絶したらしい。
自分の苦手分野を忘れたまま挑戦しようとしたが、乗る前に身体が拒絶反応を起こす。

そんな ひより を結心が おぶってくれた。

ちゃんと目を覚ますと そこにいたのはコウ。
選択的ぼっち であるコウが、ひより を看ててくれていたらしい。
感謝の言葉から始まり ひより はコウとかなりの量の会話を交わす。

ひより は礼奈やコウに気を取られて新しいクラスの面々と話せていない、というが、
2年生になったばかりなのに、1人で礼奈やコウと喋れていることの方が凄いのだ。


の日の最後に、少女漫画的に遊園地で一番大切な乗り物・観覧車に乗る。
礼奈が結心と乗ってしまい、ひより はコウと乗るになる。

ここでは密室で男性と会話をする状況になるが、ひより はコウと それなりに会話を続けられている。
何よりコウのことを「コウくん」と呼べている。
意地悪をされたけれど自分と似たような親近感が彼女の警戒心を緩めたか。

同じく密室で結心は礼奈と話す。
それは結心の「好きなコ」のこと。

結心は「”好きなコ”って どういう感覚か 正直 よく わかんねぇ」と言う。
ここで結心は ある意味で、ひより以上の恋愛に奥手な人ということが判明する。

そんな結心を「みんなの結心」の輪の外にいる礼奈は客観的に分析する。

それは彼が みんなが大事だから選んだりしないのだという分析。
だが それは決して優しさではないと彼女は指摘する。
博愛の結心は誰かと誰かを区別することが出来るのだろうか。

これも新参者で まだまだ部外者である礼奈だからこそ言える言葉である。
こうして自覚していなかった自分の心に結心は気づく。
彼の恋心の自覚が間近なのだろうか。

「なつ恋」…
ひより に とことん優しい男前の性格の夏輝の15歳の恋。
夏輝の意外な一面を知れるが、漫画としては どこかで見たことある展開ばかり。
好きなタイプは年上のインテリなのだろうか。
あと、作者の男性イケメンの顔のバリエーションが意外に少ない。