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少女漫画と小説の感想ブログです

妃は妃でも六条の御息所なので、生霊=秋穂を操り、2人の恋仲を引き裂こうとする(嘘)

ひよ恋 13 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)
雪丸 もえ(ゆきまる もえ)
ひよ恋(ひよこい)
第13巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

秋穂の本当の想いを知ったひよりと結心。夏休み、みんなで出かけたコテージで、コウくんとりっちゃんの関係にも大きな変化が──!? 【同時収録】ひよ恋 番外編「みさ恋」

簡潔完結感想文

  • その人の人生の転落から救うのはヒロイン的言動、実際に救うのはヒーローの役目。
  • 本書初の私的な お泊り回だがグループ交際の範疇。一応、ベッドインはしているが。
  • 各々が苦手分野に挑戦する秋。ゴール(目標)が出来れば それに向かって走るだけ。

穂(あきほ)なんて人は実は存在しない説、の 13巻。

いきなり嘘のネタバレですが、黒幕は妃(きさき)、お前だ!
…なんてね。でも そう考えると色々と納得のいく『13巻』です。

ひより たちが3年生になった『12巻』から登場した新キャラ・秋穂。
彼女は、ひより と結心(ゆうしん)の交際が半年を過ぎてから現れる、最初で最後の抵抗勢力である。

作中で秋穂の犯行動機が語られていますが、それが嘘なんじゃないかと深読みしたら面白い。

実は秋穂は、結心の幼なじみで、彼の事をずっと好きだった妃の手先だと考えると全てに合点がいく。
同じ中学校で友人で会った秋穂と妃は ずっと連絡を取り合っており、
妃がイギリスに転居した後もメールのやり取りは続いていた。

秋穂は ずっと妃のスパイのような活動をしており、
結心に ひより という恋人が出来た事も しっかりと報告していた。

その事実に はらわたの煮えくり返った妃が秋穂に命令して妨害工作をしたというのが まず一説。
なぜ妨害開始が交際後半年も経過してからなのかは、
すぐに別れると踏んでいたから様子を見ていたなどと説明が出来るだろうか。


して この説をもっと大胆にしたのが、秋穂は妃の生霊説。
つまり秋穂=妃。
これは『源氏物語』でいうところの妃=六条の御息所説となる。

イギリスでも結心が忘れられなかった妃の強い思いが、秋穂という存在を生み出した。

彼女が整形したというのも嘘で、
これは中学時代、目立たなく影の薄かった「秋穂」という生徒を妃が利用しただけ。
妨害開始まで半年あくのも、生霊の生成とイギリスからの移動に時間が かかったからである(笑)

ただ この説の弱いところは、秋穂が1年生の時から存在している点だけど。
(確かコウが1年生の時に同じクラスだったという証言があるはず)


の説を本気で考えている訳ではないが、
作品的には あながち的外れの推理でも ない気がする。

作品としては秋穂の中には、物語の都合で排除されてしまった妃の思いが受け継がれているはずだ。
秋穂の行動は2人が恋人となる前に物語から退場させられてしまった妃の無念を晴らすための行動とも言える。
まともに勝負する前に退場したから、今度は交際後に2人を試すような試練を与えた。
これは形を変えた妃のリベンジ勝負でもあるのだろう。

そして秋穂が ひより に降伏(?)してから、妃が久々に作中に登場するのではないか。
ある意味では やはり一心同体の秋穂と妃。
秋穂の中から黒い感情が消えたら、妃もまた浄化された。
だからこそ妃は何の遺恨もなく ひより や結心と再会できた。

また秋穂の存在は、「りぼん」の作風と読者層を念頭に、作品を綺麗に描き過ぎて、
妃が ひより と正々堂々と勝負が出来なかった作者の無念とも言える。

なので秋穂は最後の最後にラスボス的に出てくるに相応しい存在ではないか。
これでもう、思い残す事はなにもないはずだ。さよ…な…ら……。

秋穂は妃のストーカー。妃の思考にも一番近く トレース出来る存在と考えるとやはり秋穂=妃とも言える。

頭は、そんな秋穂編の最後の1話。

ひより のヒロインらしい行動の後は、
ヒロインのピンチを助けるヒーローらしい結心の活躍となる。

それにしても少女漫画は落下ネタが多い。
崖や海からの転落も多いが、学校の屋上から落ちそうになる人も少なくない。
自分を憎らしく思っている相手と友だちになるには こんぐらいしないとダメですかね。

騒動を経て2人は本当の友だちとなり、そして彼女も ひより を結心の恋人だと認める。
この件に関しての学校や同級生たちからの お咎めはない。
トラブルを目撃しているクラスメイトの面前で仲直りの報告をして それで万事解決。
皆、いい子なんだろうけど思考力を奪われすぎ、とも思う。


して季節は足早に過ぎ、次の話では夏休み。
妃が『5巻』以来に本編に再登場する。
作中時間でも1年4か月ぐらい経過しているかな。

上述の通り、この帰国のタイミングは、妃の黒い感情の化身ともいえる秋穂が浄化されたからなのだろう。

この回はお泊り回でもある。
妃の伯父が所有するコテージにレギュラメンバーが勢揃いする。

呼ばれなかったのは礼奈(れいな)ぐらいか。
眼鏡の彼も呼んで欲しかったなぁ…(笑)

妃は買い出しと称し、結心を連れ出し、正式な ひより との交際報告をしろと命令する。
さすが女王様だ。

勿論、妃は交際の邪魔をしようという訳ではなくて、離日前の約束を果たそうとしたのだろう。
そして これによって本当に彼女の初恋は成仏したのだろう。
悪の化身・秋穂も倒されたし(しつこい)

そして妃は、卒業後の進路について ひより としっかり話なさいと助言を送る。
楽しいお泊り回のはずなのだが、やはり この時期にもなると進路の話題が大きなウェイトを占める。


より は親に国公立しかムリと言われているらしい。
1人っ子だし、そこまで経済的に困窮しているようには見えないが、そういう事らしい。

ちょっと先の話をしてネタバレになるが、
これは ひより の選択肢を狭める事で、この後、結心も頑張るという動機になるのかな。
私立OKにすると難易度に上下の幅があるし、女子大という選択肢も出てくる。
だから ひより の選択肢を狭めて、自分が背伸びしてでも同じ学校に入りたいという動機を結心側に作り出したのだろうか。


外で遊んでいる最中に熱中症のような症状で倒れた ひより を見舞う結心。
彼女の眠る顔を見る度に 恋に落ちていった感のある結心ですが、寝顔は久々でしょうか。
『9巻』の修学旅行の帰路以来か? いや、あれは結心は直接 見てないかも。)

目を覚ました ひより に、話の流れで結心が添い寝することに!
本書、唯一のベッドインですかね。

ひより は、そんな状況に幸福を感じる一方、
もう誰にも反対されない恋となっても卒業後の2人の仲を保証するものはない事を不安に思う。
進路という将来の不安に加えて、変わっていく環境の中で関係を維持する難しさに圧し潰されそうになる。


んな将来の不安を具現化したのが、コテージ近くの森なのだろう。

ひより は結心と、律花(りつか)はコウと それぞれに歩くのだが、
その途中で女性たちは不安に駆られ、涙を流す。

ひより は結心が1人で森に入ってしまい、おいていかれたと思う。
それは進路においても結心には心に決めた目標があるという ひより の心理そのもの。

だが結心が森に消えたのは ひより を喜ばすためでもあった。
リスを抱えて出てきた結心に、ひより は未だ何も決まらない自分の進路を打ち明ける。

そんな彼女に対し、結心も地元の国立、つまり同じ大学を目指す事を明かす。


一方、律花は卒業後、コウとは進路や住まいがバラバラになる確率が高い。
これは ひより・結心組との違いを出すためでもあるのだろう。

今のままの曖昧な関係では自分が忘れ去られるのではと考える律花は確かな保証が欲しい。
そんな彼女をコウは 抱き寄せて、ようやく2人に春が訪れました(夏だけど)。
ここは コウに もっとハッキリと告白して欲しかったなぁ。


あっという間に お泊り回も終わってしまい、早くも2学期に突入する。
ひより と同じ大学を目指したい結心だが学力的に厳しい結果が続き、試練の時となる。

そんな中で学校イベント、体育祭が始まろうとしていた。
ひより は1年生の時は学校におらず、2年生は3年に1度の文化祭イヤー、
なので この3年生が初の体育祭となる。

種目決めの時にボーっとしていた ひより は苦手なリレーに出場する事になる。
これは今は勉強を頑張るしかない結心に対して、
学力的には問題ない ひより の努力をする部分になるのかな。

練習初日から派手に転んで、醜態をさらした自分が嫌で ひより はリレーの辞退を申し出る。

だが、その申し出を聞いた担任は
「なんでも人より時間かかるけど その分 人一倍 努力する生徒」という言葉を聞く。
これは これまで2学年担当してくれた「みったん先生」の言葉であった。
自分の努力を見てくれた みったん の想いにも応えるために ひより は練習に励む。

ちなみに最終回間際だからか みったん先生にも恋愛フラグが バンバン立っている。

ひより のヒロイン的努力は やがて周囲を巻き込み、
練習をサボりがちだった生徒の参加率を高め、「皆で一致団結」という空気を作り出していく。
そしてそれが高校最後のイベントの、皆と一緒の思い出となっていくのだろう。

まだまだ逃避癖のある ひより。逃げる度に分かるのは、自分の周囲にいる人の温かさではないか。

して体育祭当日。

そこにはカゼで熱があるのに生徒を全力で応援し続ける みったん先生の姿があった。
ひより は、みったん先生が自分の不調を隠しながら それでも生徒に声援を送っている事を知る。

その姿を見て ひより は、生徒1人1人に愛情と責任をもって接する先生という仕事に感動する。
これによって ひより はゴール(目標)が出来た。
いよいよスタートの号砲が鳴り響く…。


ひよ恋 番外編 みさ恋」…
おバカな美沙(みさ)が恋をした相手は…。

これは最近 影が薄すぎる美沙の救済ではなく、作中で彼女より出番が多い相手役の救済だろう。
しかし少女漫画には全キャラをカップルにしなきゃいけない決まりでもあるのだろうか。

みったん先生の場合は、長い期間フラグを立て続けたとも言えるが、
今回は いかにも駆け込みで、余り物同士感が痛々しい。