《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

早々に恋愛関係が固定化された少女漫画は、変なキャラの身内で話を引っ張る。

純愛特攻隊長!(2) (別冊フレンドコミックス)
清野 静流(せいの しずる)
純愛特攻隊長!(じゅんあいとっこうたいちょう!)
第02巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

西高最恐カップル、平田明史(ひらた・あきふみ)と遊佐千笑(ゆさ・ちえみ)。ケンカなら負けなし、恐いものナシの二人の前に立ちはだかる強敵、それは千笑父(元悪役レスラー)!! この窮地に打ち勝つことはできるのか!? そして、ついに未体験ゾーン突入!? ドキドキ急展開! 駆け抜けるラブバトル、いよいよフルスロットル!

簡潔完結感想文

  • キャラの濃い父親に交際が発覚してしまい、平田と千笑はロミオとジュリエット
  • ギャグは振り切れてるんだけど、常識人の私には笑えない部分が幾つか出てくる。
  • 2人は次のステップへ♥ 肉体関係を匂わす少女漫画は何巻も するする詐欺が続く。

編化を目指す少女漫画の悪癖が出まくっている 2巻。

『2巻』の大半はギャグに振り切っている。
やはり本書の真骨頂は前半部分だろう。
多くの作品のファンは このテイストが ずっと続くことを望んで読んでいたのではないか。
読者は主人公・千笑(ちえみ)とヒーローの平田(ひらた)が同じ問題に取り組んでいる場面が見たいのだ。
失礼な発言だと思うが、やはり前半は面白かったんだなぁ、と再読にて再確認した。
後半、巻を跨いで出口のない問題に取り掛かる構成は、やはりテンポが悪すぎる。
せめて1巻に1騒動にしてくれないと。

再読して思うのは、作者はスピンオフが得意なんじゃないか、ということ。

そもそも平田が作者の既存の作品の脇キャラで、その平田を主人公に据えたのが本書となる。
そして本書終了の数年後には、千笑と平田の娘が主人公になる作品が生まれる。

本書の後半でも その現象は起きて、
千笑たちに恋愛要素が減ってきたからか、本来は脇キャラだった人物がメインとなる話が続く。
長期連載のはずがオムニバス作品のようになっていく。

このように作品内で育ったキャラ、育てやすそうなキャラをメインに据えて新作を描けば、
永遠にネタに困らないのではないだろうか。

この『2巻』を読むと、千笑の両親の馴れ初めなどが聞きたくなるのは必至。
どうせなら最新作は両親の恋バナにして、親子三代の千笑の家族のサーガにしてはどうだろうか。

いずれにせよ短期集中連載がいい。
長編になると、本来あったはずの輝きは失われてしまう。


『2巻』の主役とも言える千笑の父は3年前に引退した悪役プロレスラー。
千笑の高い格闘技術は父の教育の賜物なのか。
彼女の弟は至って常識人らしく、いるのかいないのか分からないぐらいの存在感。
ネタがないなら千笑の一家、それぞれの話を作ってくれれば良かったのに。

千笑の父親は『1巻』から登場していたけど、とても濃いキャラが付きました。

作中は1994年の設定で、千笑は家の電話機(しかも子機がないタイプ)で平田と電話するため交際は周知の事実となる。
その交際が家族会議の議題に上げられ、弟が平田の間違った悪い噂を吹聴したために父が激怒したことから騒動は始まる。

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父親は直情的で早合点キャラ。そこが千笑とよく似ているのか。千笑の親族に振り回される運命の平田。

そうして、平田と千笑の父親との面談が設定された。
本書は、別作品では夫婦となった平田たちの馴れ初め、という始まりなので、
今回は連載前から結婚することが分かっている。
それでも親御さんとの挨拶は少女漫画においては婚約を意味する重要な節目。

しかし平田の方もまた、千笑の父のレスラーとしてのヒールっぷりを友人たちから聞かされ、間違ったイメージを持ってしまう。
平田には恐怖心もあるが、千笑のためにも、まず誠実さを見せようと努力する。
売られた喧嘩でも、叩きつけられた挑戦状でも、何事からも逃げないのが平田である。


笑の父親の、自分に対する当てこすりにも忍耐を見せ、父に本当の人柄を認めてもらおうとする平田。

だが、父の行き過ぎた態度が千笑の逆鱗に触れ、まず父娘の仲がこじれてしまう。
父はそれで反省するどころか、平田への憎しみを増し、
往年のヒールレスラーのように、平田が愛する千笑を攫い、なぜかある家の中の独房に監禁してしまう。
それ以降、学校も休学させ、箱入り娘として千笑から自由を奪う。
今の父は務め人らしいが、それもテレワークで自宅内こなし、四六時中 監視の目を光らせる。

これは平田が諦めるか、自分を越えて千笑を助けるか、父の婿を見定める儀式でもあった。

だけど監禁に対して、千笑を権力で縛っている父親の姿に嫌悪感を覚えた。
やり過ぎた父親の、やり過ぎた行為を笑う場面なのは分かるが、どうしても常識的に考えてしまい楽しめない。

平田のたっての願いで、親友たちが訪問した際は、父親は独房を開けるし、千笑に玄関まで見送りさせている。
だが それ以上の自由は千笑には許されず、「千笑 戻りなさい。」と言葉で娘を束縛する。

この場面も平田と接触するための千笑の手紙に不機嫌になった。
ここでは父の一方的な裁量で独房の開閉が行われるから不快感が増す。
こんなことなら、平田が何とか辿り着くまで独房を開けたりしなければいいのに。

そもそも、平田との交際に父が反対する理由が弱い。
一応、平田を巡る悪い噂が父の反対の理由なんだろうけど。
ここは成績がグッと下降したとか、親に嘘をついて夜中に平田に会いに行ったとか、
千笑が悪いことをした罰としてなら分かるが、ただ父が現実を認めたくないから娘の自由を奪っている。

父を悪役にして評価を下げ、相対的に平田を輝かせてるのかなぁ? うーん。

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動機が弱いから、父が狂っているとしか思えない。その狂気が笑えるのか? ここから全然 笑えない。

エスカレートする一方で、千笑の平田との文通に激怒した父は、娘を九州に転校させようとする。
事態が緊迫したところで、平田も強硬手段に出た。
内部に入れないなら、外部から家を破壊し、千笑の救出を果たす。
ちなみに千笑の母親は、夫のやることに反対はしないが従う訳でもないので、千笑の脱出を見逃す。

父は千笑の暴走を止めるだけの度量があるか、平田を試していたという。

ちなみに本書のクライマックスは、ビルなどの屋上からの落下のことが多い。
この後も、落下の場面は何度も見ることになる。
まぁ 視点を変えれば、このシーンが出たら 一連の話の終わりが近いという意味でもある。
屋上から落下することで、派手な演出が出来るし、落とし前をつけるという寸法だろう。

千笑の暴走を止めるという話も、物語の後半では平田は暴走を放置することが多くなるので意味を失う。
彼女が暴走しないと物語は生まれないし、その暴走を止めると平田と喧嘩のシーンが多くなるし、
後半は、恋愛的にも、話の展開的にも行き詰まるばかりである。

ラストは親子の情に訴えているが、千笑は平田を選んだのは、父の影響という話も説得力がない。
千笑が平田に惹かれたのは、噂や外見よりもずっと優しいからではないか。
良い話風にまとめているが、私には父と平田の間に共通点を見いだせない。


平田は本書における完璧ヒーロー。
そこが素敵なところで、作品的は残念なところ。
物分かりも良く勇気もあるから、物事を瞬時に解決してしまう。
彼が動くと話が終わるので、やがて千笑を黙って見守るポジションに追いやられる。
読者は2人の話が読みたいのに、それが段々と叶わなくなる…。


にも交際が認められ、順調な2人。
ただキス以上のことは未だない。

少女漫画において、性行為の匂わせは、物語が停滞している証拠です。
するする・やるやる詐欺ですね。
そのドキドキでしか読者の興味を保てないから、何度も何度も未遂を味わわせる。

男女交際の仕方について男同士で腹を割って平田の、その口調からすると、
平田にとって千笑は初めて告白した人だが、初めて付き合った人という訳ではなさそう。
てっきり、そのうち元カノ問題が出てくると思ったが、そこは触れられないままだった。

千笑が好きすぎて、千笑が近づくだけで緊張してしまう平田。
だが、千笑は平田の素っ気ない態度に不安は募る。
分かりやすい すれ違いの始まりです。

別れを切り出されると恐怖する千笑は、建付けの悪い体育倉庫に平田と2人 閉じ込められてしまう。
なんだか監禁されてばかりだな、千笑。

こうなったら体育倉庫で致しちゃう展開希望。
他の作品との差別化になるし。
でも、するする詐欺だから、しないんだろうなぁ…。