清野 静流(せいの しずる)
純愛特攻隊長!(じゅんあいとっこうたいちょう!)
第07巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
超美形キャラ・立花優弥(たちばな・ゆうや)登場! キレイな顔して悪魔です。いきなりのモテ期到来の千笑(ちえみ)に平田はヤキモキ!? 最強純愛カップルの愛は本物だけど、性悪オトコたちに狙われて、またしてもピンチー!
簡潔完結感想文
- 高価な物を ちゃんと返却しない限り、交流が続いてしまう送り付け商法 交際術。
- 逆のことをやられてブチ切れていた倉森編を忘れて自分は異性と交流する千笑。
- 1巻丸々 主人公たちが罠にはまっていく様子が続くだけ。笑い激減、嫌悪感倍増。
蟻地獄に誘い込まれる様子が続く 7巻。
少女漫画ヒロインは いつも何かから逃げている。
恋愛において、恥ずかしくても逃げて、嫌なことからも逃げる。
逃げることで、相手(多くはヒーロー役)が追ってきて、事態を大きな愛で包み込み解決してくれる。
自分は何もしなくても、問題は解決する簡単なお仕事である。
それは現実の相手でなくても起きる。
自分の中の想像の相手と対話して、自分が相手に嫌われるパターンを勝手に導き出す。
未来が自分にとって嫌な状況になることから逃げるために、何もしないで状況に流される。
そうして逃げ続けた先にもヒーローが待っててくれるから、彼女たちは一層 問題の解決能力を失う。
要するに、ヒロインは責任を取らない。
自分の軽率な行動で、男女交際におけるルールなどを破っているのに、ヒロインは自分の都合の良い解釈しかしない。
そうやって流されないとドラマが生まれないのは分かるが、
ただただ男性側が寛容で女性を許すだけの物語は、都合が良すぎる。
自分の失態に対する罰をしっかり受けて欲しい。
そろそろ読者側も男性に助けられるだけのヒロイン像に違和感を持たなければならないだろう。
特に本書のように男女交際をメインにした話の場合、
交際後にヒロインが当て馬と交流したり、事件に巻き込まれるためには、
頭が空っぽでなければならないのだろう。
本書の主人公・千笑(ちえみ)は、元々「脳筋」気味ではあったが、今回は更に思考力が低下している。
立場が逆と時にあれだけ嫌な思いをしたのに、
自分の時は、異性との交流を続ける様子には苛立ちしかない。
こういう作品内のダブルスタンダードを無視しながら進める内容は好ましいとは思えない。
千笑が知り合って、「友達」となった立花(たちばな・男)。
立花と男友達の賭けの対象になっていることを知らず、
千笑は立花の誘いに乗り、彼のテリトリーに引き込まれる。
彼氏の平田(ひらた)への確かな思いがあるから、と千笑は立花と交流していくが…。
千笑と立花を結ぶ縁となるのが、立花が千笑に贈った指輪。
立花から渡された指輪が800円だと信じたが、実際は78,000円だということを改めて知った千笑。
返却を要請する千笑の電話に、立花は日時を指定して千笑と会う約束にしてしまう。
この際、立花は この電話を立花の家の中にいた人に対しセールスだと嘘をつくが、
立花のやっていることことがセールスである。
自分自身を千笑に印象付けるための送り付け商法をして自分をセールスしている。
千笑が立花に指定された場所は遊園地前。
指輪の返却の前に、タダ券で遊ぼうと丸め込まれてしまう。
作者も千笑のアホな行動に関して悩んでいるとカバー袖のコメントから察せられるが、
いくら何でも脇が甘すぎて、一層 千笑のことが嫌いになりそう。
ドラマを広げるには、千笑が立花と関わっていく必要性があるのは分かるが、
そのために不自然な展開が目については作品に瑕がつくだけ。
千笑のために労働で汗を流す平田との描写が残酷である。
立花に平田のような特別な感情がないから大丈夫というが、
先日の、平田の小学校の同級生・倉森(くらもり・女)の件での経験が全く活かされていない(『3巻』~)。
初めての男女交際で衝突があるのは分かるが、
実経験から何も学ばないまま2人の絆が広がる訳ではないのが残念な内容だ。
それでいて性行為の成否を作品内で何度も取り上げる。
もうちょっと精神的に充実した交際の様子を積み上げて欲しい。
立花の話の合間合間に、イチャラブ場面を挿んでも説得力がない。
この遊園地デートの件でも、平田との信頼関係を醸成することなく、千笑は逃げ回る。
最初こそ平田に小さな嘘をついたことを認めるが、立花との経緯を何も説明しないまま。
彼氏以外の男と近づくことに後ろめたい気持ちがあるから、彼氏には言わないで済まそうとする計算高さが見える。
立花編は、とっても長ったらしい話だが、
遊園地デートで、平田の弟が目撃者になるという場面は伏線がちゃんと張ってあって感心した。
立花の暗躍に平田が気づかないのは、平田がバイトばかりして、学校を休みがちだから。
どうも平田は千笑のために働いている節があるが、千笑は彼氏の目の届かない内にモテ期(仮)を堪能中。
千笑の お気楽さばかりが悪目立ちする。
そして再度、指輪の返却をエサに千笑を自分のテリトリーに誘い込む立花。
千笑が平田とデートをする待ち合わせの前に、
立花は仮病を使って倒れ、千笑を誰もいない自宅に上がり込ませ、
千笑が自分から離れがたい状況を作ったところで彼女を押し倒す。
そうして「既成事実」を作って、平田と別れざるを得ないようにするのが目的なのだろう。
だが、千笑は腕力があるから返り討ちにする。
このヒロイン、頭は弱いが、力は強い。
今回、数少ない笑えるシーンだろう。
ただネタを使いまわしている再放送だけどね。
『3巻』の平田殺害に続いて、2回目の殺人。
平田の時は鉄アレイだったが、今度は素手での犯行となる。
立花が即死してしまうのは、彼の栄養状態が悪かったことも影響しているのかな。
立花の生存は確認したが、目を覚まさないので部屋に居残る千笑。
こうして千笑は立花の家で4時間以上を過ごすこととなる。
出会いのコンタクト探し(『6巻』)でも2時間以上経過していたが、
千笑は立花といると時間の経過があっという間らしい。
本書は1994年頃の時代設定なので携帯電話は普及していない。
なので現代人には考えられないことだが、待ち合わせに遅刻するという連絡も出来ない。
千笑は自宅に連絡して間接的に平田に連絡を取る手段があったが、
今の彼女は頭空っぽの少女漫画ヒロインに成り果てているので、それすらしない。
千笑の平田に対する思いやりが全く見えない。
そして自分は平田に何をしても許されるという傲慢さが見え隠れする。
本当に失神した立花が見た夢では、彼の家庭内での愛情が不足していた暗示される。
冷たい家庭で育ったから、血の繋がりや人との交流を信じられないのだろう。
立花もまた、倉森同様に静かに壊れていることが予感される。
またまた社会派の『ライフ』っぽい作風になっていくのかと思うと気が重い。
しかも今回は立花だけでなく、もう一人 立花の重要な協力者がいるっぽい。
話は長くなる一方だ。
読者は もっとテンポの良い学園ラブコメを期待しているというのに。
デートをすっぽかした翌日に、千笑は平田と立花の間に挟まれ修羅場を経験する。
また平田への小さな嘘を重ねるが、彼への愛を叫ぶことで乗り切る。
だが千笑の愛の叫びは、平田の側に追及させないようにする小狡い手段にも見える。
こういう手段、千笑なら、そうやって都合の良いことを言って丸め込もうとする、と激怒するところだが、
平田は千笑を信頼して、彼女のことを抱き締めて万事解決とする。
だが2人の愛の強さが立花の負けん気に火をつける。
なぜか立花の側だけに都合の良い情報が集まり、最後にもう一つ罠が張られる。
『7巻』最後で、立花からの一緒に買い物をして欲しいという誘いに千笑が乗る動機は特に弱い。
一応、千笑も予防線として友人たちを集めているが、
平田との愛を確認したばかりの千笑が、立花に近づくことは不自然極まりない。
何度も言いますが、こういう千笑の姿を読みたいんじゃないんだよなー。
千笑のために笑顔で働いている平田の姿が悲しい。