清野 静流(せいの しずる)
純愛特攻隊長!(じゅんあいとっこうたいちょう!)
第13巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
見た目美少女だけど実は男の御巫真鶴(みかなぎ・まつる)と友達になった千笑(ちえみ)は、彼の実家である武道場に入門。しかし平田(ひらた)は、真鶴の千笑への恋心に気付いてしまった! 千笑を巡り、男同士のバトル!? そして、彼女を作らないはずの大野(おおの)が下級生から告白された! 「断る理由もねーしなー」という彼の言葉に、由香里(ゆかり)の恋、史上最大のピンチ!?
簡潔完結感想文
- 女の子にしか見えない人を誰よりも1人の男として見ているのは恋のライバル。
- 本書ではアクセサリは純愛が詰まっている。それを渡す時、愛は最高潮に達する。
- そして本気(マジ)に続く。謎の改題。そして主役たちが出てこない最終回。
第一次 純愛特攻隊長!内閣が終わる 13巻。
本作品は ここまでの13巻と『純愛特攻隊長!本気』4巻の全17巻の作品。
なのに、これ以降は謎の改題をして、1巻から始まる。
なぜ この改題に対して作者は何もコメントをしないのだろうか。
大人の事情なのか、本人からは言いたくないのか。
改題しての続投が決まっているからか、一応の最終回も明らかに続きを意識している終わり方。
しかも『13巻』のラストは主役の千笑(ちえみ)や平田(ひらた)の話ではなく、
脇役キャラの由香里(ゆかり)と大野(おおの)の話で〆る。
なぜ こんな構成にしたのか、作者の意図も編集の意図も謎です。
どうせ話は続くんだから、どんな話でもいいじゃないか、という感じなのでしょうか。
立花(たちばな)編が13巻中5巻以上を占めていたり、
一応の最終回に主役たちが出てこなかったり、
話の作り方が独特すぎて 好きになれません。
もうちょっと地に足についた話が読みたい。
きっと千笑は、人との距離が適切に保てない人だから、
話に登場すると、自分の話に持ってっちゃうんでしょうね。
ある意味ではスター性があるというか…。
千笑が自発的に動くと、人のことを巻き込んでダラダラと話を長引かせるし、
人に協力しようとすると、余計なことをして話を進まなくさせる。
きっと この世界から千笑がいない方が作品は平和なんでしょうね…(笑)
千笑の家族が、恋人の平田に対して暴走を制御するのは大変だ、みたいなこと言っていましたが、
作者自身も千笑の暴走に手を焼いたに違いない。
ヒーローの平田は純愛すぎて、千笑の問題を一瞬で解決してしまうから、
千笑と そして作品から距離を取るように仕向けられてましたが、
それに続いて千笑自身も作品から排除される結果になった。
13巻も続いて出した作者の結論が これなのか…。
千笑は真鶴(まつる)の恋心に気が付かないまま、無邪気に近づく。
これは倉森(くらもり)・千笑のライバルに続いて、真鶴・平田の同性ライバルの話になるのかな。
千笑も周囲も真鶴を性別不明に扱う中、平田だけが真鶴を男として扱っている構図が面白い。
だから平田は、真鶴自身も無意識で自分の中の男を否定して自分の気持ちから逃げようとしているのを許さず、
彼に同じ土俵に上がるのなら上がれと勝負を挑む。
もしかして作中で平田と殴り合って、互角に戦っているのは真鶴だけではないか。
真鶴は腕力や戦闘力だけで言えば平田と伍する存在である。
ラストのように時間をかけて計算高く千笑に近づけば勝機もあるかもしれない。
ただし平田が動いたら、そこで試合終了ですよ。
男同士で拳を交わし合って、真鶴の話は強制終了。
少なくとも3人は門下生が出来て、道場や家計も救われる結果になったけど、
真鶴の気持ちが中途半端に放置されたようにも思える。
連載が続くのなら、時々は真鶴がグイグイと迫るような話も読みたかった。
登場人物のキャラは それぞれ確立されているんだから、時々 登場させていけばいいのに。
カップルの話か、千笑が関わる新キャラ編か、由香里&大野編しか引き出しが無いのが惜しい。
箸休め的に、以前出たキャラを再登場させても良かったのではないか。
(高橋 留美子さんのコメディ漫画のように)
そうして あっけなく真鶴編は終了。
ここで真鶴が告白しなかったのは、真鶴が今の3人の関係が好きというのもあるだろうし、
告白してしまうと、立花編の再放送になってしまうからか。
もし告白してしまったら真鶴も物語から追放されてしまうのだろうか。
本書では恋愛の敗者にあるのは死のみ みたいだし…。
余談ですが真鶴のトイレ(小)の方法は どうかと思った。
現実の連載時も作中の設定1994年頃でも、男性が座って用を足すという意識はなかったのかもしれないが、
スカートをはいた男性が、立ったまま小便器の前に立っているのは視覚的にも変すぎる。
純愛特攻隊長!の「無印」としての最後の話は由香里と大野の恋。
上記の通り、千笑も平田もいないかのような世界が広がる。
恋のおまじないに頼るほど乙女な純愛を内に秘める由香里。
クラス替えで別のクラスになってからというもの大野に話すキッカケもない。
しかも大野に告白する1年生の後輩の女子生徒が出現し、
大野がそれを簡単に承諾してしまうから、由香里は身動きが取れなくなる。
泣くほど後悔する由香里は、
銀細工をキッカケに大野と交流するようになるが、
恋人として大野との関係に悩む後輩の背中を押してしまう…。
そういえば ここにもアクセサリを貰った人が いましたね。
立花編の『8巻』で、平田が買った高価なアクセサリを渡せなかったが、
由香里は大野から先にアクセサリを貰っている。
このハートの銀細工は2人の愛ではなく、交際前の由香里の片想いの象徴だろう。
しかし、2つのハートを繋げていたチェーンが切れて、ハートはバラバラになってしまった。
そんな時、大野は後輩と別れる。
お試し交際とはいえ、後輩の彼女をぞんざいに扱うことや、
人との距離を取り過ぎて、人に関わろうとしない大野に対して由香里は怒り心頭に発する。
言いたいことを言って逃走する由香里は やけ食いを始める。
そういえば千笑に振り回されて恋が上手くいかなかった
文化祭回の『6巻』でもドーナツをやけ食いしてましたね。
やけ食いが由香里のストレス発散法なのだろうか。
そして由香里の恋にストレスを与え続ける千笑は今回はリストラ処分を受けている。
しかし やけ食いが開運の鍵。
文化祭回でも、やけ食い中に大野が現れ会話が出来たし、
今回も、やけ食いの後に(苦しんでいたら)、大野が目の前にいた。
アクセサリが大きなウエイトを占める本書ですが、
本書におけるアクセサリは、簡単に身につけられるものなのか、という疑問が浮かぶ。
今回は仰向けで寝ている由香里の首元に、いつの間にかにネックレスがある。
これは大野が由香里の頭を起こして首元までネックレスを運んだか、
それとも金具がついていたのか(それでも首の下を通さなくてはならない)。
そういえば千笑の時もネックレスも指輪も、あっという間に所定の位置に収まったなぁ。
本書の男性陣はマジシャンなのだろうか。
大野の手首には由香里も制作に参加したブレスレットがある。
首と手首、これは あなたに首ったけ という意味だろうか。
「難攻不落の片想いは この先どーなる?」と疑問形で終わる「無印」最終回。
どうせだったら千笑たちの話にして、
4度目の「するする詐欺」で一応の結末を作って欲しかったなぁ。
なぜこうなった。