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少女漫画と小説の感想ブログです

美男と美女、2人の仲は急接近☆ 彼と 彼と遠ざけたかった彼女の距離だけどね★

地球のおわりは恋のはじまり(3) (デザートコミックス)
タアモ
地球のおわりは恋のはじまり(ちきゅうのおわりはこいのはじまり)
第03巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

ずっと“じゃない方”扱いを受けてきた超ネガ少女・真昼。だけど入学早々、イケメン蒼くんに告白されてさあ大変! だけど、かつて真昼に救われ、ずっと彼女を想っていたという蒼くんの真っ直ぐな想いに惹かれ、とうとうお付き合いすることに!なかなか彼女としての自信がもてない真昼だけど、「蒼くんのことを知りたい」と勇気を出す。すると蒼くんが「うちに来てみる」と誘ってきて…!? 恋、緊急事態!?の第3巻!

簡潔完結感想文

  • 彼氏の家に初訪問。地球が滅びるような妄想は自分が浮かれていたことを知る。
  • 彼氏と妹が初対面。対面させないようにしていたのに…。今回も地球存亡の危機。
  • しかも偶然とはいえ彼氏と妹のバイト先が一緒で トラウマが再発しかねない危機。

分以外の誰かを考えることで、世界が広くなる 3巻。

ヒロインの真昼(まひる)はネガティブで物事を悪い方ばかりに考えてしまう。
しかし それは自分に関するネガティブであって、他者のことを全く考えていない。
そのことが『3巻』で如実になる。

それがヒーロー・蒼(あおい)の家庭の事情。
彼のことを何も知らないまま交際して、
兄弟構成までは知ることが出来た真昼だが、
まさか彼の母が既に他界しており、彼が家事を引き受けていることは知らなかった。

自分が世界が滅ぶ、地球がおわると一人でアタフタしている間に、
蒼は現実に直面し、悲しみを乗り越え、自分のやるべきことを毎日こなしていた。

真昼は自分の幸不幸がプラスマイナスゼロになることで心の安寧を得ていたが、
そういう自分が他者にとっては酷く幸福に見えるという視座を持っていなかった。

浮かれる自分を自重するために、
「地球がおわる」と呪文のように繰り返してきた真昼だが、
自重した生活をしているつもりでも、気持ちは浮ついており、
蒼の自宅で、それに気づかされて、羞恥心にまみれる。

ただし これまでと違うのは、それが真昼にとって喜びでもあるということだろう。
知らなかった彼の一面を見られたこと、
恥ずかしい自分を発見したこと、
それを成長の糧としようとするところが、真昼の成長に他ならない。

これまでと違い心の問題は彼女一人のことではなく、他者であり恋人である蒼の世界に繋がる。
真昼の心が少しずつ前向きになっていることを実感できる。


ただし距離が近づいても まだまだ互いに自身のトラウマを見せていない。
蒼は母の死のことに関して真昼でさえ立ち入らせないし、
真昼は双子の妹・真夜(まよ)に対するコンプレックス、自分の醜い部分を蒼に申告できていない。

真夜本人も物語に参戦して、彼らの関係がどう変わるのか、変わってしまうのかが怖くもあり、楽しみでもある。

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真昼を家に入れても仏壇のある部屋の敷居はまたがせない蒼。これが今の2人の距離。

課後に蒼の家に行くことになった真昼。
自宅に連れ込まれることで、
地球がおわるほどの出来事があるのではと あらぬ想像をして慌てふためく。

しかし蒼の自宅で見たのは彼の弟妹たちと、そして仏壇に置かれている彼の母の写真だった。
これまでは勘違いで恥をかいてきた真昼だが、
今回は勘違いと想像力の欠如で恥ずかしい気持ちになる。

そのことを類推する材料は揃っていた。
だが二親がいることが当たり前で、そのことに疑問を持たない真昼には、
親が亡くなるという現実があることは想像すら出来なかったのだろう。
自分が世界一の不幸者だという気がしていた彼女が見た、本当の不幸が そこにはあった。

蒼が「地球のおわり」を感じるほどの絶望を経ていることを知った真昼が、
お線香をあげたい、と申し出ても、やんわりと断る蒼。

彼にとって、母の死は真昼にさえ触れて欲しくない部分らしい。
きっとこれが本書における少女漫画的トラウマになるのだろう。
真昼との関係、学校生活、友人たちとの時間の中で、これが解消されることを望むばかりである。

真昼は、蒼の妹からの情報で自分が彼の初めての彼女だということを知る。
こちらは嬉しい予想外の事実だろう。


うして様々な角度から蒼を知ることが出来た真昼は、
少し広い視野で世界を見つめ始める。

些細なことで世界がおわると叫ぶのではなく、胸を張って蒼の彼女になりたいと願う。
学校でも自分から蒼の彼女だと名乗れるぐらいの勇気を持つ。
それが可能となったのは自分の立場ではなく、蒼の立場、2人の関係を真昼が念頭に置くことが出来たからだろう。

しかし蒼が自宅まで送ってくれた帰り道、蒼と妹の真夜が遭遇してしまう。
そのことに身を固くする真昼が今度は蒼に不自然な態度を見せてしまう。
お互いに見せられない部分がまだまだあるらしい。

かつて一度だけ顔を合わせただけで、真昼が好きだった先輩の心を奪っていった真夜。
だから真昼は蒼の心の動きを心配するが、彼は真夜に関してノーコメント。
蒼に関しては他の男性と違って真昼のことを妄信しているから大丈夫なのかもしれない。

しかし真夜と蒼の関係は今後も続いてしまう。
それが2人のバイト先が偶然にも同じになってしまったからである。


うして『3巻』では2つの恋心の萌芽が目を出す。

1つが蒼の友人・銀河(ぎんが)。
蒼のことを知りたいと、銀河に相談する真昼。
銀河が知り得る蒼の情報をもらい、
そして銀河から蒼が認める相手である真昼には見込みがあると言われる。
その言葉に心底 安心した真昼は自然と笑顔がこぼれる。

その笑顔に魅入られたのが銀河。
普段の表情とのギャップにやられたか、それとも真昼の笑顔は天下無敵なのか。

そういえば中学時代に真昼に万引きの疑いを晴らしてもらった蒼が忘れられなかったのは、彼女の笑顔でしたね。
その笑顔があったから、高校入学してすぐに蒼は真昼にアプローチしてきた。
(この巻では真昼は、蒼が好きなのは 過去の自分ではないかと悩む場面もあるが。)

もしかしたら処世術としての笑顔じゃなくて、心からの笑顔であれば真昼は無敵である。

やはりモテモテの真夜の双子の姉であり、真昼が気づかないだけで、実は魔性なのかもしれない。
ネガティブ思考と そのオーラで魔性は隠されていたが、
蒼との交際で そのオーラは払拭され初めて、どんどん真昼の素顔が出てきている。

背が伸びてモテ始めた蒼と同様に、
真昼も負のオーラが消えた途端にモテ始めるかもしれない。
今後は蒼の心配は尽きないかもね。


に普通の学生生活を満喫させてあげるために、
真昼は担任教師の家に行くことを提案する。
担任は、クラスメイト・守谷(もりや)の幼なじみで、そして想い人であるから一石二鳥である。

その日程の相談などを、蒼のバイト先であるカフェで行う3人(蒼はバイト)。
こうしてまた1つ蒼の世界を知ることが出来た。

だが そのバイト先に真夜が働き出す。
そこで接触を重ねることで、恋の萌芽の2つ目が顔を出す。
それは蒼 → 真夜の恋心ではなく、蒼 ← 真夜の恋心だった。

蒼と一緒のシフトで働き出す最初の日は、真夜は非常に感じが悪かった。
その理由が『3巻』後半の真夜視点で語られる。

真夜は実は性格の悪い子、ではなくて、
姉想いの、姉に気を遣って生きてきた人であった。

真夜はずっと姉の真昼と仲良くしたかった。
恋の話をしたかった。
好みが違うし、同じ人を好きになったりしない。
そう誓いを立てて生きてきた。

しかし相手がどう思うかは別。
中学時代に真昼にトラウマを作ったように、姉の好きな人が真夜を好きになってしまった。
だから今回、バイト先で真昼の彼氏と一緒になってしまったから、どうにかして離れようとする真夜。

バイトの男女2人の雰囲気が良くないことを察したオーナーが食事に誘うほどに距離は保った。

そして バイト話に真昼が踏み込もうとしても、
真夜は蒼とはあんまり話せてない、嫌われてるのかも、と事実とは違う証言をする。
蒼は真夜とたくさん話が出来たと報告してくるのに。

真夜は姉に気を遣って生きているが、
かえって それが姉を想い悩ます結果になっていることを知らない。

そして距離を保っていたはずの蒼に、自分が惹かれていることを自覚してしまう…。
いよいよ世界が終わる日が近づいているのか⁉

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姉はネガティブ、妹はツンデレキャラ⁉ 嫌な顔をしている時の真夜は真昼に似ている。

蒼と真昼の現状を心配する真昼だが、
守谷に相談して、発破をかけられてからとはいえ、ちゃんと蒼と向き合い続ける。

地球がおわるような破滅の予感もありながら、
しっかりと話し合って寄り添い合う2人の姿が良い。

すれ違いのために本人に何も聞かないまま右往左往するヒロインが多い中、
真昼はちゃんと蒼に心配事や不安を話せているから気持ちがいい。

何よりも蒼もずっと真昼のことを見ててくれるから、
彼女から心配の萌芽が顔を出しそうなことを察してくれる。
お互いがお互いを もっと大事にしよう、精一杯生きようとする姿勢が良い。

あぁ 2人は一緒に歩いているんだな、という感覚が心を温かくさせる。