タアモ
地球のおわりは恋のはじまり(ちきゅうのおわりはこいのはじまり)
第02巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
双子の妹と比べられ、ずっと“じゃない方”扱いを受けてきた真昼(まひる)は、「いいことがあると、必ず悪いことが起こる」と考えてしまう超ネガ女子。そのため、まっすぐに想いを伝えてくれる蒼(あおい)に徐々に惹かれていくも、信じる勇気をもてずにいた。そんな不安を直接蒼に打ち明けた真昼に、蒼は2人が実は昔会っていたことを語りはじめ、とうとうキスを…。そして改めて告白されるのだけど真昼は…!? 恋、大進展!?な、第2巻!
簡潔完結感想文
- 2人には過去があり、蒼の真昼への気持ちは本物。あとは自分の気持ち次第。
- 友人と一緒に一歩前へ進む真昼。交際がスタートし、相手を また深く知る。
- 2人とも心の闇までは見せていない。それを見せられるまで仲を深められるか。
まだ清らかな自分だけを白日のもとに晒すことしか出来ない 2巻。
『1巻』の感想文でまず書いた通り、本書は「男女交際型」の作品である。
交際を通して起こる あれやこれやを描いていく。
この『2巻』でヒーロー・蒼(あおい)がヒロイン・真昼(まひる)と出会った日のことが描かれ、
彼が一心不乱に真昼のことだけしか見ない理由が明かされる。
『2巻』途中で、真昼は蒼の気持ちを受け入れ、
交際することで一歩を踏み出し、違う自分になろうとしていく。
上手くいかないことに落ち込むこともあるが、
同時に彼のことをもっと知りたいという確かな恋心も明確になっていく。
蒼はいつでも真昼のことを温かく包み込んでくれる包容力と優しさがあり、
2人の交際は実に順調に見えるが、読者だけには、彼らが互いに見せていない部分が分かる。
真昼であれば、まだ自分の闇、そして自分の醜さを映してしまう鏡のような存在、妹の真夜(まよ)を見せることは出来ない。
蒼と真夜と近づけさせないように画策して、平穏な時間を少しでも伸ばそうとしている。
そして蒼は彼の中で一度 地球が滅びてしまった日のことを話していない。
その話をしたがらない彼が、真昼に何でも話せる日が来ることを祈っている。
そうして彼の心の重さを、その濃い闇に少しでも光が差すことを願っている。
でも きっと大丈夫。
だって真昼だもの。
そばにいるだけで眩しすぎるほど明るいに決まっている。
キスという事後に語られるのは、蒼の忘れられない思い出。
その前に真昼は、過去と繋がらない現在の蒼を受け入れたことになる。
彼のことを何も知らないまっさらな状態で、彼を好きになる。
こうして より交際を通して、互いを知るという状況が強く前に出ている気がする。
真昼と蒼は数年前に会ったことがある。
それは彼らが中学生時代のこと。
その日、蒼が万引き犯と間違われてるところを、真昼が助けた。
蒼は背が低かったため、真昼は年下の小学生だと誤認していたようだが。
真昼にとっては「普通のことをしただけ」という認識。
しかし万引きトラブルを しっかりと正せること、
そしてそれを普通のことと思える真昼は正しい。
見た目が年下だったので、年長者としての庇護欲だったのかもしれないが。
けれど蒼にとっては大事件で、「それはもう地球がひっくり返るくらいの大事件」だったのだ。
それは彼が母親を失くして、張り詰めていた気持ちが弛み、
燃え尽きて、生きる意味を失っている時期でもあった。
そんな境遇から周囲に馴染めず、そして降りかかる不幸をはねのける気力も余力もなかった。
そんな時に自分を守ってくれた存在、それが真昼だった。
万引き騒動の後、2人で並んでブランコに座って会話もしている。
その時、真昼は蒼に持っていたお守りを1つ渡している。
入学の日に、蒼が真昼の鞄から大量の お守りが出てきた際に、彼は運命の人だと確信したのだろう。
だから蒼は真昼をずっと好きだった。
といっても作中で別の関係を表現した「妄信」という言葉の方が違いような気もするが。
彼にとって真昼は特別な存在で、運命の人。
だからストレートに愛情を表現する。
1話からの彼の態度の謎が少し解けてきた。
そして蒼もまた「アヒルの子」だったことが判明する。
中学生時代の万引き騒動の頃まで彼は背も小さく、周囲から奇異な目で見られることが多かった。
だが背が伸びると周囲の反応、特に異性の反応が変わった。
真昼の場合は自分が白鳥だとアピールしたい気持ちが少なからずあったが、
蒼の場合は、自分が白鳥であることに自信を持つのではなく、周囲が彼を白鳥だと認識し始めた。
彼という鳥に白鳥という名前が付けられた。
または白鳥というカテゴリに勝手に分類された。
蒼にとって外見だけで目の色や態度を変える女性は虚しさを覚えるだけかもしれない。
彼はもう世界の闇も、そして世界一輝く笑顔も知っているから。
蒼からの交際の申し込みを真昼は即座に受け入れず、保留にしてもらう。
帰宅後に真昼は熱を出し、
インフルエンザと判明して、学校を1週間休んでしまった。
返事を用意できない真昼の話を聞いてくれるのはクラスメイトの守谷(もりや)。
守谷は学校の教師が好き。
歳の差の幼なじみで、幼い頃から守谷の家庭が大変なことになっても、ずっとそばにいてくれる人。
そんな先生は、指輪を失くして大わらわ。
それが相手にバレて、お昼ご飯もコンビニ弁当になってしまう。
しかし指輪といい お昼ご飯といい、どうにも既婚設定の気がするが、
終盤では未婚(まだ結婚していない)が発覚し、チグハグな感じがする。
婚約や同棲はしているということなのか。
そして真昼を一歩前に進めさせるのは、この指輪騒動だった。
守谷が先生に指輪を返すことと、真昼が蒼を受け入れることを それぞれのキッカケとする。
落ちていたのを発見したという体(てい)で指輪を返却する守谷。
先生は感謝の余り、彼女を抱きしめる。
これは役得なのか、それとも罪悪感を濃くするだけか。
約束通り、真昼も前へ進み、蒼の交際の申し出を受け入れ、早速 初デートとなる。
だが蒼は他にも別の人を連れてきていた。
それが蒼の弟・優(ゆう)。
小学3年生の彼は、小さい蒼そのもの。
初デートに弟を連れてくるのはどうかと思うが、これにも理由があった。
真昼にとって、蒼は過去に一度会ったことがある人だが、彼の家庭や背景は何も知らない。
弟のこと、デートコースの選択のこと、デートを通して、真昼は蒼のことを知っていく。
デート場所は恐竜展。
蒼にとっても人生 初デートだから悩んだが、
「自分の好きなものを知ってもらいたくて」選んだ場所。
弟を連れてきたのも、彼自身の緊張を紛らわすためだという。
こうやって互いを知っていく。
上手くいかないこともあるけど、
それも含めて2人で過ごすことの大切さを学んでいく真昼。
にしても蒼の弟は、小学3年生というよりも、
幼稚園の年長さんぐらいの精神構造に見える。
物理的にも恐竜展では最初から蒼に抱っこされてるし。
デートをして交際が本格化しても、
蒼と不釣り合いなことにコンプレックスを抱かざるを得ない真昼は、学校内で交際を秘密にしようとする。
人間関係、学校社会を理解していない蒼は絶対に気にしないが、
悪いことが起きないように息をひそめて生きる真昼は、トラブルを避けたい。
こういう時も、蒼は真昼の意思を尊重してくれる。
抜群の包容力を見せる、完璧彼氏にも思えるが、
前述の通り、2人には意図的に隠している自分の過去・闇がある。
それを見せることが出来るのか。
それを見せた時、どうなるのか。
それを乗り越える2人でいられるのか。
交際を通した物語は まだ始まったばかり。