ななじ 眺(ななじ ながむ)
パフェちっく!
第02巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★(6点)
近頃、大也のことが気になる風呼。けど大也は女の子が大好き! そんな大也に風呼はフクザツな心境。一方、壱は一見クールだけど、元気な風呼に少しずつ打ちとけてきた様子で…!?
簡潔完結感想文
- 好きになるほど近くて遠い存在。本気の心を見せたら そこで終了ですよ。
- 風呼を直接的に協力してくれる大也。間接的な縁の下の力持ちになる壱。
- 最初に風呼と熱愛報道が出たのは壱⁉ 表情が緩むのは君が目の前にいる時。
三角関係の二辺の距離を同じにする努力が見られる 2巻。
『2巻』も まだまだ壱(いち)と大也(だいや)、それぞれの長短を見極める内容である。
風呼(ふうこ)の恋心は確定したのだが、告白したら失恋は確定的で、
どうしても 恋の相手・大也に踏み込むことは出来ない。
大也にとって女性との付き合いは常に遊びでなくてはならない
女性が本気であると判断した時点で、その女性を冷淡に突き放す。
そんな実例を見てしまった風呼は、早くも身動きが取れなくなる。
近づけば傷つき、でも側にいると どうしても惹かれる魅力を持つ大也。
なかなか魔性の男である。
攻略が難しい彼をどうやって攻略していくのかが見物である。
一方で壱は、嫁をいびる姑であり、風呼の味方でもある。
風呼の変化に常にいち早く気付き、
時には嫌味も交えながらではあるが、彼女が この恋を完遂するように奮い立たせる言葉を送る。
聡明な壱には、大也に関わって泣く未来が見えているから意地悪も言うけれど、
誰よりも風呼のことを認めているから、彼女を応援もする。
そんな嫁と姑(というよりは小姑か)の複雑な心境が入り交じったバトルも見物である。
どうして自律と自己責任を重んじる壱が、風呼に手を伸ばすのかが分かるのは少し先の話。
ミイラ取りがミイラになってしまうのである。
一方(大也)で打つ手がなくても、
一方(壱)がフォローしてくれ、彼との距離は着実に縮まる。
そうやって人の関係性が常に流動的だから、読んでいて飽きないのだろう。
大也にしても やはり一緒にいると惹かれてしまうのは読者にも伝わる。
今回も大也と一緒に行動したり、また3人での共同作業があったりと、
彼らが相互理解を深めるイベントが満載である。
『1巻』の感想でも書いたが、読者の受けや好反応を狙うばかりの展開ではなく、
ゆっくりと作品を育てようという時代の大らかさを感じる。
エピソードを重ねて、二辺の長さが均等な三角関係を成立していったからこそ、本書は面白いのだ。
特に壱の分かりにくい風呼への態度・アプローチは、前半のゆっくりとした展開がなければ成立しなかった。
キャラ付けが山盛りのグイグイ系ヒーローには絶対出せない奥ゆかしさがある。
マーガレット系の漫画が私には相性がいいのだろう。
壱に指摘されて自分の大也への恋心を鮮明にしていく風呼。
この時の壱は客観的視点を持つ、もう一人の風呼の人格のようである。
風呼が大也と傷つかない適切な距離を保てるのは、壱の助言によるものも大きい。
そして壱が風呼の気持ちの変化に気づくのは、
敏いからなのか、それとも風呼を観察しているからなのか。
また恋愛相談を通して小森と大林との距離も一層 近づく。
彼女たちがいるから、風呼が男に寄り掛かってばかりの人間に見えないようになっている。
次いで起こるのは、勉強回ならぬ締切回。
漫画家である風呼の姉の締め切りが早まり、壱と大也にも応援を頼む。
ここで初めて壱と大也が風呼の家に上がる。
恋をしている風呼にとっては、自分の家に好きな人がいるのは喜ばしい光景。
ご近所ならではの役得である。
何とか徹夜をして、早朝には完成の目途がついた。
徹夜をしたことがない大也は即ダウンして、風呼の家で寝てしまう。
これまた彼の寝顔が見られるというキュンキュンの場面。
大也との共同作業は続き、アパートの敷地内に犬が捨てられて、飼い主を探すことになった。
壱は正論でシビアに現実を諭すが、風呼と大也は前向きに行動をする。
しかし大也に捨て犬の話を通したのは壱であり、
彼が飼い主を捜すポスター作りも協力してくれたことを後で風呼は知る。
壱の優しさはいつも見えにくいが、それが風呼にも分かってくる。
壱もまた彼なりに心配をして間接的な協力はしてくれているのだ。
飼い主探しを諦めそうになる風呼を鼓舞するのは大也。
やがて飼い主が見つかり、風呼は全身で喜びを表し、
その姿に大也も、そして壱も感情を動かされる。
風呼が2人の男性に惹かれるだけでなく、2人の男性も風呼に惹かれていく。
この引力の作用が作品の面白さに繋がる。
風呼はクラスメイトにさえ無表情だと誤解されている壱をもっと広めたい。
ただし壱に表情が出るのは風呼の前だけなのだが。
放課後、窓際で風呼が壱と会話していると、カーテンが風に舞い、
2人がカーテンから出てくるところを目撃した生徒たちに それが「カーテンキス」だと誤解される。
その噂は大也にも伝わってしまうが、否定は一瞬で終わる。
それよりも風呼を傷つけるのは、大也にとってのキスの価値、
そして女性と「つきあう」ことを頑なに否定する大也の価値観だった。
大也と話していると、風呼はゴールが果てしなく遠いことを実感させられる。
ある時、大也に告白してきた人に、彼は冷淡な態度を取った。
その理由は その女性が本気だったから。
告白は、彼との関係の終焉を意味するのであった。
大也の言葉を聞き落ち込む風呼に気づくのは壱。
相変わらず風呼には欠如した冷静さと理知的な意見を述べてくれる。
それによって助けられた風呼はまた前を向く勇気を貰う。
この辺りの壱は何をやっても おいしいポジションですね。
風呼の友人でも気づかない彼女の表層上の嘘の笑いに ただ一人 気づくなんて!!
壱の笑顔は風呼しか知らないし、壱もまた風呼の本当の笑顔を知っている。
なんて素敵な関係性なのだろうか。
彼が恋愛に参戦した時にどうなるか、今から楽しみ。
早く戦争にな~れ。
「ハッピーしてる?」…
高い壁を隔てて名門私立高校と隣接する自由な気風の高校生・あを。
自作の服を校内で売る彼女が、隣の高校の お坊っちゃん・雪之丞(ゆきのじょう)と出会う。
この壁はロミジュリか、ベルリンの壁か、愛の不時着か。
作者自身もツッコんでるが、この壁は耐震性がなさそうである。
そして このブロックの積み方だと、通り抜けている間に、上のブロックが落ちてきそうで怖い。
服を作れる あを が、隣の高校の制服に似せた服で学校に潜入する場面も、
所詮それがイミテーションだと痛感し落ち込む場面も本書ならではの展開。
雪之丞は学年主席で、名門校の授業についていけないという訳ではない。
それでも彼は自由を求めて自分の壁を乗り越えようとしているところが良い。
『パフェちっく!』本編もそうですが、
主人公の髪型や、ファッションへの気合の入れ方をみると、矢沢あい さん『ご近所物語』を連想する。