《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

両想い後を邪魔するのは いとこ ではなくて、魔性で架空の女装島 武子という人物。

青春しょんぼりクラブ 13 (プリンセス・コミックス)
アサダニッキ
青春しょんぼりクラブ(せいしゅんしょんぼりくらぶ)
第13巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

両想い成就で、ついに交際開始のにまと隠岐島。しかし、にまの負の恋愛力がネガティブ超常現象を呼ぶ…。
さらに、にまを心配する従弟・海潮が登場。女装隠岐島にマジ惚れしてしまい…?
新世代ざんねんラブコメディー、恋・路・多・難な13巻!!

簡潔完結感想文

  • 交際1日目。当て馬体質を脱して心の傷がなくなった代わりに身体の傷が多数。
  • みんなの隠岐島君の不文律を破った にま。これまでの修羅場の経験が活きる。
  • 本書で何回目かの こじれた初恋。元凶は にま。まず君が逮捕されるべき。

想い後が不吉な数字 13から始まるのも呪われている気がする 13巻。

交際1日目からの2人の学校生活を描く。
どれだけ甘々な日々が綴られるのだろうと思いきや、基本的には日常の延長です。

というのも宇宙一幸せで 地に足のつかない にまを、不幸の重力で どうにか この地に留めているから。
大きな幸せを手にしたはずが、両想いになった途端、にま に小さな不幸が巻き起こる。
でも この子を 当面しょんぼり させておかないと、話が甘く詰められだけなのも確か。
禍福は糾える縄の如し、で幸不幸をプラスマイナスゼロにして、
作品内の糖度調整をしているのだろう。

だから泥水も被るし、物によくぶつかるし、人の嫉妬も買う。
こうやって目下の悩みを作ることで、頭の中が隠岐島(おきのしま)一色になることを防いでいる。
今の にま は当て馬も含めた不幸体質に考えが支配されているが、
徐々に幸せでいる自分を受け入れるという幸福リハビリなのかもしれない。

それに彼女には不幸を防いでくれる、共有してくれる人たちがいる。

その代表格は もちろん隠岐島だ。
事故に遭遇し下がってしまった彼女の気持ちを上げてくれる存在。
その上下運動だけで勝手に胸キュンが生まれるイージー構造も完成している。
雨が降るから空には虹が架かるのだし、水を被るから頭に花が咲くのだ。

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ピンチが多ければ多いほど、それだけオレが君のヒーローになれるチャンスってことさッ☆

依子(よりこ)も久々に親友ポジションで にまを励ます。
単純な運命論や呪いといった言葉に流されてしまいそうになる にまを、
叱咤激励して、自信を回復させている。

そして これまで関わってきた人たちも にま の味方をする。
いわゆる少女漫画における「みんなの隠岐島君」論法で にまを取り囲む女生徒から
にまを守ったのは、女生徒の頂点に君臨する運動部女子であった。
この作品における女生徒のパワーバランス(または性格の陰険さ)は、
運動部 > 文化部 > 帰宅部 なのだろうか。

この場面、きっと にまだけでも くぐり抜けられたはずである。
今回は日御崎(ひのみさき)と依子が別れたという吉報に機嫌をよくしたテニス部女子が助けてくれたが、
そのテニス部女子・荘原(しょうばら)や香菜(かな)など女性に詰問されることに慣れている にま だから、
冷静に彼らの言い分を論破することも可能だったはずである。

こうして学校の人気者との交際が引き起こす余波は、あっという間に収まる。
作品としても両想いの事実以外、雰囲気も面白さも これまで通りと言える。
一気に甘い恋愛になるわけではなさそうだ。

まぁ読者としても青心研の部室を愛の素にして、
キャハハウフフされても困りものなので、清く正しい2人でい続けてくれた方が良いかもしれない。


…が、いつまでも甘い雰囲気にならないのも問題。

隠岐島は また巻き込まれ体質を発揮して、今度は演劇部の助っ人をする。
交際直後は鼻歌(または怪音波)が無意識に出るような心理状態だった隠岐島も、通常営業といった感じ。

2人きりでのデートの約束を取り付けるも、隠岐島は重要な役を任された演劇に、
そして にま は自分の交際を詐欺だと疑う 1歳下の中学3年生の いとこ・海潮(うしお)の問題にかかりきりになる。

海潮とは姉弟のように仲良く育ってきたため男女であっても遠慮がない2人。
にま に遠慮なくグイグイと迫る姿は、香菜や さおり など強気な人物と同系統にある。

ちなみに海潮の初登場時に何気に にま父も初登場している。
この優しそうな小太りな中年男性の にま父は誰かに似ている。
アニ研副部長にも似ているが、他作品の漫画で こんな人を見たことがある。
思い出しました! ヨシノサツキさん『ばらかもん』の郷長です ! あぁスッキリ!)

海潮が にま の交際に関して過敏なのは、
彼が にま高校入学以前からの にま の当て馬体質を見てきているから。
だからこそ、隠岐島みたいな完璧男子が にま に近づくのは魂胆や詐欺の心があるからに違いないと断言する。

考えてみれば隠岐島が、オレは もう にまちゃん だけの男になるんだ、といって、
女装島を封印してくれれば、この後の騒動は起きなかった。

だけど、両想い後も2人はどこまでも お人好しで、巻き込まれ体質で、人の役に立とうとする。
これがトラブルの元なのだが、こんな2人だからこそ、両想い後も作品内の雰囲気が変わらないままでいてくれるのだ。


が、隠岐島の実態を内偵しようと にま の高校に潜入した海潮が、
演劇部の衣装を身にまとった隠岐島に会ってしまったことから騒動は大きくなる。

海潮が隠岐島に恋をしてしまったのだ。
といってもBLではない(あごクイはされてるけど(笑))。

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学校という日常に舞い降りた、非日常の女神。そのギャップもまた胸を射抜く。

彼が恋をしたのは女装した隠岐島、通称・女装島(じょそうしま)。
自らも毒牙にかかった簸川(ひかわ)が命名した、この女装島が、
また清らかな青少年の恋心を奪ってしまったのだ。

…というか海潮よ、その人を探したいのなら、
顔とか名前とかの前に、学校でドレスを着ている人間という特殊条件の方が はるかに重要だと思うが…。

こうして本書何度目かの「こじれた初恋」が生まれてしまう。
にま は、海潮と隠岐島、そして女装島の2人3人格に板挟みになる。

こうして完成した「一目惚れしたのは女装癖のある男子高校生で」。
おまけににま の彼氏であるという、海潮にとって「地獄のような真実」。
そこから目を背けさせるために、にま は、女装島の株を下げようとするが…。


潮(うしお)の熱意に追い詰められた にま は、女装島を手の届かないところに追いやる。
それが、逮捕(という架空話)である。
これは笑った。あのドレスは血で染め上げたのか…(笑)

この時点で面白いのは、イケメン彼氏ゲットの にま が騙されているんじゃないかと心配した純粋な海潮を、
にまが騙しにかかっている点である。

にま もそれを分かっているから、隠岐島に全ての事情を話せなくなり、
そして自分で解決しようとして、話がまたややこしくなる。

ただし、話がややこしくなったからこそ、
海潮と隠岐島の面会が果たされ、そこで にま は、また宇宙一幸せな言葉を間接的に聞くことになる。
コメディの中に甘い言葉が隠れており、調整されているとはいえ全体的に糖度は高めです。

そして再読で この話を読んでいると どんな場面でも どうしても笑ってしまうのを抑えられない。
まさか隠岐島出演の演劇部の舞台が、次の とんでも展開の布石だったとは!
もうバカバカしくて、ずっとニヤニヤしてしまう。


頭は、にま の両想いから一呼吸 置くためか、さおりの話題から始まる。
川ちゃんも良い人だし、さおり も結局 良い子が分かる お話です。

一目惚れの人 VS 良い所を見つけていく人、どちらが勝つのだろうか。
この恋愛も最後まで見届けたかったなぁ。

さおりを主人公にして、三角関係モノが作れそうですね。
問題は どちらもキャラデザが似すぎなこと。
W黒髪は見分けがつかない。
性格が似てない双子設定でもいい。
あっ、それ『星上くんはどうかしている』か…(笑)

「Special Short」…
三郷(みさと)香菜は津和野 大輔(つわの だいすけ)に褒められたい!

香菜に関して津和野が、雑誌に載る=容姿を褒める、ことよりも、
生活態度の変化を しっかり把握して、その心を褒めているのが胸キュンである。
予想外に褒められるのもまた胸キュン倍増。

でも話の内容よりも、
高校1年生で、にま と香菜が仲良くて、桜の花びらが舞うって時期の設定はいつなんだよ!
とツッコんでしまった。