《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

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この漫画が100万部売れない この世界はどうかしている

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アサダ ニッキ
星上くんはどうかしている(ほしがみくんはどうかしている)
第1巻評価:★★★★☆(9点)
  総合評価:★★★★(8点)
 

「似てない双子」と有名な2人の星上くん。兄・望はぼっちで、弟・求は学校の人気者。三毛野いさりは「友達の作り方を教えてほしい」と望に頼まれたのをきっかけに、正反対な2人に振り回されることになって……!? この三角関係はどうかしている!? 八方美人女子×似てない双子のトライアングルラブコメ第1巻!

簡潔完結感想文

  • 私の嫌味を真に受けてまで友達が欲しい星上くんはどうかしている(兄)。
  • 兄の理解者は弟の自分だけでいいなんて星上くんはどうかしている(弟)。
  • クラスの居心地が悪くなっても星上くんを選ぶなんて私はどうかしている。

あー、楽しい。
前情報なしのいわゆる「ジャケ買い」漫画がこんなに楽しいと至上の喜びを感じますね。
この漫画、控えめに言って大好きです。


漫画というよりもアニメのキャラクターデザインのように削ぎ落された容姿をした登場人物の中には、まことに複雑な思惑が交錯している。
わずかな例外はあるものの、基本的に登場人物は1話で登場した高校の一クラスの生徒たち + 双子の弟。
本書は彼らの間に生まれる人間関係・友情・恋愛のベクトルが慌ただしくその方向性と長さを変化させていく様子がつぶさに描かれる。
誰かと関わることによってドミノのように連鎖的に物事は進み、そしてオセロのように昨日の敵は今日の友、またはその逆で彼らはこれまで見せなかった表情を裏に隠している。

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殺し文句のような友達になって欲しいというお願い
関係性の変化の様子をもう全部書き出したいぐらいだ。でもきっと漫画を読むより面倒くさい文章量になってしまうだろう。
説明を放棄するようですが、少しでも気になった方は1話試し読みできるサイトで読んでみて下さい。
絶対に面白いですから。最後まで面白いですから。

それぞれに癖のある性格の彼らが織りなすコミカルな掛け合いと、その一方で繰り広げられるシリアスな攻防が作品の幅である。
特にこの『1巻』ではラストまで恋愛要素がない少女漫画がこんなに楽しいなんてどうかしてる!


メインの登場人物は主人公・三毛野(みけの)いさり と双子の兄弟・星上望(ほしがみのぞむ・兄)と星上求(もとむ・弟)。
この双子の星上兄弟。容姿こそ似てなくはないが、両親が10年前に離婚して違う場所で暮らしてきたためか性格はてんで違う。
いわゆる学校のアイドル的存在である弟・求に対して、兄の望は田舎から出てきたばかりもあってクラス内で浮いている。
いさりはある日そんな望から友達の作り方を教えて欲しいと頼まれたことから星上兄弟に関わることになるのだが…。

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いさり師匠のもと 友達作りを学ぶ望だが…。
主人公のいさりは本書ならではの性格設定だと思う。
これまで少女漫画では「いい子」の主人公はたくさんいた。
けれど本書のいさり のように八方美人、しかもそれを自覚している人はいなかったのではないか。

本書の雰囲気はこのいさりによるところが大きい。
彼女は最初から何かを悟っているような性格で、友達ともそして自分とも適切な距離を置いている。
だから湿っぽくならない。悪く言えばシニカルで淡泊。

そんな彼女だから、作中で結構な事が起きても自分が揺らいだりはしない。
実は彼女、双子の星上兄弟と仲を深めてからというもの、クラスメイトの女子生徒から結構な嫌がらせをされる。
明白にハブにされたり、自分の物品を壊されたり、作品によってはメインテーマになりそうな事件が起きる。
しかし彼女は上記の通り自分の欠点や、彼らとの上辺の付き合いを認知しているからこその寛容さをもって物事に対処する。
要するに慌てない。
彼女の自分の何かを諦めたような前向きさによって作品は重くならないでいられる。
たとえ心中に悲しみや怒りがあっても常にこちらに見せるのは八方美人の笑顔なのだ。

ちなみに星上弟の求にも弁当箱を壊されている。
親であれば娘の身に何が起きてるのか心配になるようなことの連続である(登場しないけど)。


このクラスの男子たちは女子の言動をよく見ていますね。
特に望は悪口に対して「絶対に加わらず上手く話題をそらしている」いさりの姿勢に感心したことが切っ掛けで彼女に友達作りを習おうとした。
これはいさりの八方美人への賛辞ではなく「他人への悪意で深める友情のむなしさを君は知っている」という心根まで見透かしてのことだろう。
このセリフ深く共感します。実行は難しいですけどね…。
こんなセリフが出てくるのも、望がいさりの言動をよくチェックしているからこそだろう。
これは「ぼっち」が故なのか、それとも少なからずの興味があったのか。
女子の様子を見ているのは同じくクラスメイトの岩伏くんも同じ。他人をあざ笑う言動を繰り返す女生徒たちを心底嫌っている様子。

そんな厄介な女生徒をはじめ学校中の人と友達になる勢いの望だけれど、やはり順番はあって、いさりが最初で次が岩伏なのだ。
純粋な彼が選んだ人だもの、自分に見切りをつけている様子のいさりも自信をもっていいのではないか。


単純にいさりと出会って望の世界が広がるという流れに一筋縄で持っていかない点に作者の構成力を感じる。
特に中盤でいさりが悟る「星上くんはあたしのせいで あたしは星上くんのせいで お互い以外に友達ができない」というセリフには痺れました。
そんな関係性をわずかな話数で成立させてしまう手腕には脱帽するしかない。
そして望が友達に囲まれるようになったら別の感情が胸に湧いてきて…。
何かを得ては何かを失う、彼らのままならない日々がとても愛おしく思える。


望の弟・求もいい意味で期待を裏切ったキャラですね。
1話の最後で豹変する彼には笑っちゃいました。
まさかそのベクトルで いさりと望の間に参戦してくるとは思いませんでした。

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望の世界が広がることを求は望んでいない
でも求といさりはいいコンビですよね。
深謀遠慮を企むタイプの火花散る頭脳バトル。
エゴ丸出しの自己の利益に誘導をしたり、脅迫して相手を委縮させたり、権謀術数の渦巻く漫画だ。
笑顔のままテーブルの下で足を踏み合う女性同士のバトルといった感じでもありますが(笑)
1話の求のいさりの浅はかさを暴き出すなりすましと、その後の求の本音が隠されたなりすましをいさりが見抜く場面が、いさりの心を映す場面として心に残った。
星上くんはどうかしている(1) (KC デザート)

星上くんはどうかしている(1) (KC デザート)