アサダニッキ
青春しょんぼりクラブ(せいしゅんしょんぼりくらぶ)
第09巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★☆(7点)
日御崎は自分自身のにまへの想いに気づいてしまう。彼に惹かれる依子は、その真実を知ったとき、何を思う…? そんななか、三刀屋学園2年生は修学旅行で京都へ。隠岐島の初恋の女性・美保そっくりの美少女・六日市が登場し、積極的に隠岐島に迫るが……! ? 新世代ざんねんラブコメディー、焦・心・乱・心の第9巻! !
簡潔完結感想文
- 修学旅行回。ただし2年生限定。1年生の にま は超限定フィギュアを偶像に。
- 出会いから初めての長期&遠距離別離。会えないから会いたい気持ちが募る。
- まさかの新キャラが2人。修旅中の仮想敵だと思ったら、日常にも降臨して…。
事実から目を背けるのは2日が限界、の 9巻。
『9巻』は ほぼ修学旅行回。
少女漫画における修旅とは、学校生活とは違う非日常が満載のイベント。
いつもの制服とは違う私服バージョンの あの人にキュンして、
朝から晩まで1日中一緒の空間にいられることにトキめいて、
修学旅行のジンクスを叶えるために アクセクして、
自由時間や夜間に2人きりで出掛けることにドキドキする学校最大の行事。
このイベントを活用するために彼氏彼女が違う学校でも日程と行き先が「偶然」同じになることも ままある。
が 本書の場合は、ヒロインとヒーローが同じ学校なのに修旅に一緒に行けません。
なぜなら学年が違うから。
同じ学年であることが修旅を一緒に楽しむ最低条件なのです。無念。
今回、修旅に出発するのは2年生で、1年生の にま は通常授業。
この学校の修旅は1週間もあり(観光名所の多い京都でも1週間は長い! あと旅費が高そう)、
隠岐島(おきのしま)たち2年生出発前の にま は絶望に打ちのめされていた。
だが、ここまで振られても押せ押せムード全開だった にま にとって、
修旅での会えない日々は、押してダメなら引いてみな、とばかりに恋愛の良いアクセントとなったようだ。
様々な事情からメールの連絡すらも控えていた にま を、旅先の隠岐島は異様に気にする。
実際に会えなくなって、想像以上に 自分の中の彼女の存在の大きさを知ったのは隠岐島の方。
実際 彼は、会えない時間を最短にするために、
修旅の解散が夜遅く(夜10時過ぎに学校着? なんて非常識な)にもかかわらず、
一度 にま の家を訪問して彼女の顔を見てから家路についている。
まさに 会えない時間が 愛 育てるのさ、である。
ただし修旅中にも新たな問題は山積する一方。
当て馬・日御崎(ひのみさき)問題に加えて、依子(よりこ)の片想い、
そして またも強気そうな転校生の女性キャラの出現。
はんなりと舞妓さんにはなれるけど、すんなりと両想いには なれそうもないのである。
修旅は 夏休みでも引き裂けなかった2人の男女を引き裂き、
そして学校で にま は簸川から借り受けた代替 隠岐島フィギュアを真っ二つに かち割るのだった…。
青心研は数々の問題行動から、生徒会(主に生徒会長 オカン)によって、
夏休み中も毎日 学校に登校させられていたから、
にま は隠岐島に出会ってからというもの これほどまでに長い時間 会わなかったことはなかった。
にま を一層 不安にさせるのは この学校には修学旅行のジンクス。
それは修旅2日目の夜に好きな人に告ったら うまくいく、というもの。
実際に この日に行動する人は驚くほど多いらしい。
というのも修旅の時期が高校2年生の秋で、受験生になる3年生進級前の高校時代最後の自由時間で、
すぐ後にクリスマスを控えていることから、高校時代に 取り敢えず恋人が欲しいという
生徒たちの焦燥がカップル成立の確率を押し上げているらしい。
1年生の にま には旅先の隠岐島や2年生女子の行動を阻止することは出来ない。
だからこそ にま は2年生の出発前から嘆き悲しみ、
それを見かねた簸川(ひかわ)は彼の門外不出の一品、
隠岐島の女装姿に よく似た超限定フィギュアを にま に貸し出したのだ。
簸川って実は人の心の機微がよく分かってますよね(それが寂しさを慰撫するかともかく…)。
…が、初日で それを 真っ二つにする にま。
修復するまでの猶予は たったの1週間。
あんなに長いと思っていた1週間は 途端に短く感じられ、にま の頭の大半は この問題に奪われる…。
本人ではなく、本人に似た容姿を求めた罰なのだろうか。
このフィギュアの破壊は、にま側が2年生ズを避ける事情なんだろうけど、
『8巻』の内容と同じく、外見を優先する恋愛や偶像崇拝の否定の意図もあるのだろうか。
というか簸川は まだ隠岐島とシルバーベリーを混同しているのか。
その考えは自分も彼も傷つけると身をもって学んだはずなのではないか。
ま、彼なりの精一杯の後輩への優しさで、他意も悪意もないんだろうけど。
一方で たった一週間の旅行と軽く見ていた隠岐島は、
たった1日 にま と上手く連絡がつかないだけで心が落ち着かない様子。
これは上記の通り、にま が他のことで頭がいっぱいだからなのだが、
隠岐島にとって にま から何かの二の次の扱いをされることは不服のようだ。
これは隠岐島特有の 面倒臭い独占欲でしょうか。
隠岐島にとって彼女と会えないことが、彼女の輪郭を鮮明に浮き立たせる。
これまでも にま は自分が巻き起こした騒動に責任を感じて、
隠岐島から逃げ回っていたことはありましたが、
その時も同じ学校内にいる気配はあり、その気になれば彼女を確保できた。
だが今回の にま の逃避行動は隠岐島のあずかり知らない事情であり、
彼は自分が避けられているという結果しか分からない。
だからこそ嫌な想像が頭を巡り、電話先の彼女の後ろから男の声がしただけで嫉妬の炎が顔を出す。
これまでにない すれ違いの日々とでも言うのでしょうか(2日間の「日々」だが)。
何かと理由をつけては、にま とコンタクトしたい隠岐島は、
行きの新幹線では拒否していた舞妓姿に挑戦して、それをエサにして彼女の興味を引く作戦に出る。
出発前とまるで言うことが違っているのが隠岐島の修旅です。
心の空白に気づいたのは、彼の方かもしれません。
彼にとって にま に会えない1週間はあまりにも長くなった。
彼らにとって色々と黙っていられないのは2日間だけ。
にま は簸川への罪悪感を抱えきれず、起きたことを正直に話す。
彼女の衝撃告白に簸川は気を失い顔面蒼白。これによって電話が隠岐島の手に渡った。
そこで交わされる久しぶりの まともな会話(まだ2日目の夜だが)。
この会話によって にまが隠岐島と簸川を避けていた理由が明らかになり、
彼女が行動を共にしていた男性が、その問題に関連していることも判明した。
こうして隠岐島は自分だけが悶々と悩んでいたことが解決したといえる。
そして自分が なぜ悩んでいたかという心の問題に、彼も答えを出さざるを得なくなる。
そんな心理状態の羞恥で顔を赤くする隠岐島にとどめを刺すのは にま。
彼女は この修旅2日目の夜のジンクスにかこつけて、隠岐島に告白をするのだった。
彼に振られてからも ほとんど好意を隠すことのなかった にまだが、
今回の告白は、タイミングといいジンクスといい過去最大級の効果を発揮する。
たった一本の電話で、2年生のイケメンコンビの顔色を白と赤に塗り替えるなんて、にま おそろしい子!
にま にとっては、この(2年生の)修学旅行は一大恋愛イベントだったのではないでしょうか。
図らずも、自分が身を引いた状態になったことが、功を奏している。
これまで当て馬人生だったが、この恋は天も味方していると言えるのではないか。
ただし そこに水を差すのが、2年生の転校生の問題。
修旅中に初めて顔を合わた転校生の女子生徒・六日市(むいかいち)は隠岐島の初恋の人・美保(みほ)にそっくり。
それもそのはず、彼女・六日市は美保の遠縁らしい。
これは隠岐島にとって、初恋のアイコンの登場である。
『8巻』でテーマになった「偶像と恋愛」の隠岐島バージョンである。
やはり人は見た目が100%で、好意は容姿に宿るのか⁉
ただ隠岐島の心は揺るがないことが明言されている。
彼は 至って冷静である(にま から連絡がこないこと以外)。
しかし六日市の方は またも面倒臭い系の女子生徒のようで、修旅が終わった途端に にま に関わり始める。
ここまでの教訓として香菜(かな)・テニス部女子荘原(しょうばら)・さおりと同じ絡まれ方をすることが予想される。
…ということは 長期的には何の問題もないとも言えるか。
しばらく頑張れ、にま(笑)
修旅で恋愛が小休止となっているのは 日御崎。
当て馬として自覚が出てきたと思いきや、彼は距離を置く。
彼が動いてくれないと、隠岐島も動かない気がするから動いて欲しいぐらいですが。
その日御崎は六日市と隠岐島が近づきすぎるのを阻止している。
企みをもって隠岐島に近づく六日市の思い通りにはさせないという日御崎の意思が見える。
そして修旅中に頭を整理しようとしたのは、日御崎への恋が目覚め始めている依子。
しかし依子は、日御崎を観察すると、彼が今 誰を好きになのか明確に分かってしまった。
依子 2回目の恋もまた不毛な恋であった
好きな人がいる人を好きになってしまう。
これでは にま と同じである。
もしかして依子の恋って奪略系なのだろうか。
結局、将来的に母と同じ恋・行為をしそうで怖い。
ここにきての友情崩壊だけは嫌だなぁ。
他の気の強い女生徒と違って、依子と にまの言い合いは、
互いの仲を修復不可能なぐらい徹底的に傷つけ合いそうで怖い。