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少女漫画と小説の感想ブログです

あら マネージャーさん★ ウチの旦那は私の料理にだけ こう言ってくれるの☆ うまーーい!

ハチミツにはつこい(11) (フラワーコミックス)
水瀬 藍(みなせ あい)
ハチミツにはつこい
第11巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

ずっとずっと、隣同士にいた小春と夏生。
けれど、夏生が夢を追いかけて京都に行くことに・・・!?
寂しくてたまらない小春はどうするの!?
累計200万部突破目前の大人気幼なじみラブ、クライマックスへ向かう11巻です!

簡潔完結感想文

  • 夏生との関係を近づける用意が出来た小春に、思いがけない別離が待っていた…。
  • 少女漫画のサプライズ再会、ほぼ失敗する説。最後の最後に恋のライバルが登場。
  • 離れても自分の場所があるなら大丈夫。夏生の母を反面教師に自己を確立する小春。

ライマックスでも本書のセオリーを崩さない 11巻。

いよいよ本書もラスト2巻。
次巻が最終巻である。
少女漫画の王道をいく作品ですから、クライマックスは遠距離恋愛です。

私が本書で唯一 後付け設定だと思ったのは、夏生(なつき)のサッカー部入部の遅さ。
これはクライマックスの展開を作者が考えた時に、
遠距離恋愛を成立のために必要な要素として後付けしたのだろうか?

夏生はいつの間にかに全国でも有数の選手となっていて、
他県の学校からスカウトがきて、そこに転校することになるまでに成長した。

ここは あんまりにも ご都合主義である。
夏生の努力や、子供の頃から変わらないサッカーへの打ち込み具合などが描かれてないから、
彼の中の恋愛とサッカーの比率がいまいち伝わってこない。

当て馬である都築(つづき)が総合病院の跡継ぎだから、
それに対抗して、若い読者層に憧れられるような分かりやすい進路が示されたのだろうか。

夏生とサッカーのバランスだけは もう少し上手く配分して欲しかった。


ライマックスと言っても、1ターンの構成は これまでと全く同じ。
最後の最後なのに、1ターンの長さが これまでと変わらないのは驚くべきこと。

もっと遠距離恋愛編で主人公の小春(こはる)を苦しめることも出来たと思うが、
次巻『12巻』が最終巻なので、彼女の苦しみの出口はもう見えかかっている。

以前も書きましたが、1ターンの短さも読者からの人気を維持し続けてきた要因だろう。
次々に問題が移行するので、停滞や中だるみ することなく、新鮮さを保てている。


者が この遠距離恋愛編で本書で初めて登場させたのが、恋のライバル・恋の邪魔者。

これまで西園寺(さいおんじ)という夏生が好きと思い込んで小春が傷ついたことはあるが、
西園寺は小春の敵対者にはならなかった。

だが今回、夏生が転校した京都の学校のサッカー部マネージャー・種田(たねだ)は、
本書では これまでにないほど嫌味な人物として描かれている。

と言っても彼女は狡猾なのか分からないが、分かりやすい悪役ではない。
小春がショックを受けるような言葉は用いているが、
間違ったことは言っておらず、根拠のない罵詈雑言とは全く違う種類の発言である。

私は恋の結末よりも、この種田と小春が どんな関係になるのかに注目している。
人の良い小春だし、愛に溢れた本書だから、種田とも仲良くなったりするのではないか、と踏んでいる。

そして何より、全体的に種田の発言が小春に大きな影響を与えており、
小春は種田に感謝するのではないかと予想している。

そうして小春は自分へ敵意や悪意を持つ者も懐柔して、本物の聖女になるのではないか。

『10巻』での「白雪姫」の演技の中で、悪役の王女すらも愛で包みこもうとした小春だもの、
そうして悪をも寛容に受け入れることで自分を可愛く見せるに違いない。
根っからの天然ぶりっ子は最強なのです。


生は自分の京都転校を話す前に、小春と1日デートをする。
別れのためのデートである。

小春は夏生の口から直接、話を聞く前に、
彼の電話の内容で、夏生が転校することを知ってしまう。

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一寸先は闇。これまでの彼女だったら現実逃避をしていたが、少しだけ成長を見せる。

ここで意外だったのは、小春が泣いて逃げなかったこと。
これまでなら、その場で逃げることしか考えなかっただろう(そして夏生にわざと見つかるように)。

でも物語終盤の彼女は違った。
自分から夏生に問いただすことは出来ないが、
彼の口から思いが伝えられるまで、自分から逃げなかった。

夏生が転校の事実を告げるのを選んだ場所が観覧車だったのも、
どこにも逃げる場所がない中で、小春が言葉を全身で受け止められるようにするためかもしれない。

人生で一番悲しい出来事で安易に逃げ出さなかった小春と作者に拍手を送りたい。


は言っても小春の変化はこの一点のみ。
議題が遠距離恋愛になっても、逃亡 → 助言 → 問題解決の物語の構造は一緒です。

やっぱり夏生と離れることを認めたくない小春は、学校内で夏生から逃げ回る。
その折に、サッカー部の元マネージャーの赤井(あかい)から、
彼女も遠距離恋愛をしており、自分の不安を吹き飛ばすような「世界一の遠恋を見せて」と言われる。

また、小春の元気のない姿を見ていた都築が、
小春には見せられなかった夏生の弱い姿や迷いを話してくれる。

都築が実家を離れてもなお、医者になる勉強をしていたことが夏生にも影響しているらしい。
女同士だけでなく、適切な距離を取りながらも刺激し合う男の友情も描かれています。

これで完全に自信を回復し、改めて夏生と向き合い、小春は「いってらっしゃい」が言えた。


しさに負けそうな時は友達が支えてくれた。

小春を励まそうとパジャマパーティーを開催してもらい、
この時は、同じように好きな人と簡単には会えない西園寺に助言を貰う。

小春は1回悩むけど、その悩みを長引かせないところが良いですね。
人の意見を上手に自分に落とし込める人だから。
色々と単純とも言えますが。

そういえば西園寺さん、書類をホチキスで上手に留められるようになってますね。
あとイベント委員って、夏生の欠員は補充されないんですかね。

補充要因がチャラ男で小春にちょっかいを出し、それを都築が牽制するという内容だけで
あと5巻ぐらいは戦える気がしますね(笑)


生は早くも高校サッカーの雑誌で注目株になる。

夏生の記事の中で同じ高校のマネージャー紹介もあって、
女性マネージャー・種田の存在が小春の中で大きくなる。

本書で唯一の女性ライバルでしょうか。

夏生との電話中に種田が夏生の部屋に現れ、
流れで種田と小春は会話をすることになるが、
彼女の物言いに棘を感じ、小春はまた許容量オーバーになり、逃げだす。
この場合の逃避は、充電切れと嘘をついて、電話を切ってしまうというもの。

種田マネージャーは自分の経験もあって、遠距離恋愛が上手くいかないと思っている。
「彼がサッカー留学で遠恋になって さみしくても 彼の夢のために がんばらなきゃって思って」
「ちょっと がんばりすぎちゃった」
「それで恋は自然消滅」

言いたいことは分かるが、論理が意味不明。
「ちょっと がんばりすぎ」たから、彼の方が重荷に感じて、自然消滅という意味なんだろうけど、
がんばって、自然消滅では論理が飛躍し過ぎではないか。


んな遠恋が続く中、あっという間に夏休みに突入し、夏生の誕生日がやって来る。
去年は夏は、イベント委員の合宿だけで、夏休み中の夏生の誕生日は作中では描かれなかった。

彼の誕生日に京都に向かい、サプライズを計画する小春。
でも少女漫画における、恋人へのサプライズは失敗の予感しかしません。

京都の夏生の学校前で、持ち前の親切心から夏生の住む寮に潜入した小春。
これは夏生の母と出会った時に、事故を回避したのと同じ展開ですね。
何気に人の懐に入るのが上手い小春さんなのです。

寮での食事作りが間に合わないと知ると、夏生と会う時間を割いてまでお手伝いをする小春。
これは彼女のお節介の中でも良いお節介ですね。

ただ、午後2時から午後5時まで3時間も作業に熱中してしまって、夏生との時間はあと実質30分。
3時間準備して軽食しか出来ないって、この寮、非効率すぎないか…?

夏生は小春が作った食事を食べて、小春の味を思い出す。
そのことを電話で伝える夏生。

これは夏生の特殊能力の一つですね。
以前も、サッカー部へのケーキの差し入れの際、一口で彼女の手作りだと分かった(『6巻』

小春は完全に夏生の胃袋を掴んでいるという証拠なのだろう。
夏生が母と別れて以降、10年以上お弁当を作り、彼を餌付けした成果である。
(そういえば夏生の母は息子のお弁当を作らないのだろうか。
 そして自分が戻ってきて、即、息子が転校するのは、
 彼女にとってショックなことだと思うのだが、彼女の心境は何も描かれない)


生の言葉を嬉しく思う小春だったが、それを聞くのは彼に会えないまま乗った帰りの新幹線の中。

種田マネに夏生に会いに来るのは自分本位の行為だと言われて、容量オーバーとなった。
そこで彼女は新幹線に逃げ込んでしまった。

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この人と分かり合える日が来るのか。それとも初期から登場してないから使い捨てるのか。

種田マネは、最初で最後のライバルである。

しかし これが小春の自立の第一歩となるらしい。
後々では種田マネに感謝するパターンでしょうか。
そして自立できずに依存して、そして離れてしまった夏生の母とは違う強さを獲得する分岐点でしょう。

こう考えると夏生の母は、小春の反面教師として描かれているのでしょうか。

夏生の母を直接的には否定していないものの、
彼女に対する本書の評価はなかなか手厳しいことが分かる。

夏生の母の弱さや、男性に依存するしかなかった生き方が前世紀の元のするならば、
小春の生き方は21世紀にアップデートされた女性の生き方なのかもしれない。

もちろん、女性は男性のサポートのために存在するかのような描き方には少々疑問があるが…。