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少女漫画と小説の感想ブログです

あれでフッたつもりなの? オレ的には まだ始まってもないのに。考えが あまーーい!よ。

ハチミツにはつこい(7) (フラワーコミックス)
水瀬 藍(みなせ あい)
ハチミツにはつこい
第07巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

幼なじみカップル夏生と小春。
部屋で夏生に抱きしめられた小春は、驚いて夏生を突き飛ばしてしまう。
男の子な夏生にとまどう小春を見て、冬哉が夏生に宣戦布告――!?

簡潔完結感想文

  • 男性たちから連続で強引に押し倒されて、誰の顔も見られない事態が発生。
  • 顔を見れないから顔を背け、顔向けできないから現実逃避をするヒロイン。
  • 自分を純粋に見せる努力が原因で男性たちが流血騒ぎ。深々と頭を下げよ。

ベント回では、走って逃げるヒロインの姿が見られる 7巻。

学校内外に舞台を移すことで、
作中の問題と背景が変わるので気づきにくいが、
本書における物事の推移は大体一緒である。

まず主人公の小春(こはる)が思わぬ事態に遭遇する(自分や友人の恋)。
自分の恋の場合は、様々な理由でドキドキして恋の相手・夏生(なつき)の顔が見れないから その場から逃走する。
逃げ回った先で新しい展開が待ち受けており、
そこで受け止めきれない現実を見聞きしてしまい また泣いて逃げる。
友人の恋の場合は、お節介を一度は突き放されるのがデフォルト展開。

ここで一度 心が折れかかるが、友人や恋人のアドバイスで考えを改めて、問題の本質に触れる勇気を貰う。

そうして、そうだ 最初から全力で向き合えば良かったんだ、と思い直し、
彼女の助力によって物事が収まるところに収まり、1つのエピソードが終わる。

大体、最終盤で同性の友人が恋愛における格言を述べるか、
恋人の夏生が重すぎる愛を語るかで締められ、それで全てが大団円を迎える。

ここまでで1つのターンとなる。
そして また小春が新しい事態に直面して首を突っ込むところから始まる。

『7巻』で起こることも全く同じ。
まずは物事から逃げ回って、現実と向き合わないところから小春の生活は始まる。


れが顕著になるのが、イベント回の時である。
今回の文化祭編でも、『5巻』の委員合宿と同じように、
小春の逃走癖が何度も見られ、その逃亡先で次の展開が待ち受けている。

なぜ彼女は自分の許容量(キャパ)を超えた事態に泣くか逃げるかしかしないのでしょうか。
答えは少女漫画のヒロインだから、でしょうね。

自分で考えることや、汚い自分を受け入れることをしないで、
ただただ逃げて、誰かに問題解決と向き合う勇気を貰うまでは何もしない。

小春の行動は決して責められたりせず、ただただ寛容に受け入れられる。
だから そういう自分を反省したり、不快な思いをさせた相手に謝罪したりしない。
それが彼女から成長を奪わせ、また同じことをする要因となる。

本書において恋や友情は無敵だが、小春自身は無敵じゃない。
弱いままでも なぜか許される愛されヒロインなことは間違いない。


室でキスをしながらベッドに押し倒してきた夏生を突き飛ばしてしまった小春。
このことによって2人に少し距離が出来て、
夏生の顔を見られない小春は、ひたすら逃避することで自分を守る。

2人のことなのに2人で解決しようとしないだが、
これは両想いになった『4巻』から2人の関係が進展した事例ともいえる。

小春は両想いになったその日の夜、夏生のベッドに無邪気に自分から入っていったが、今回は突き飛ばした。
もしかしたら危険な(性の)香りが夏生から漂っており、それに敏感に反応したのかもしれない。
これまでの ままごとのような恋愛から、肉体を持った男女としての関係に移行していくのだろうか。


んな気まずさを抱えたまま文化祭編に突入する。

上記の理由で このところ元気のない小春を見て、彼女を慕う都築(つづき)に火が付いたようだ。
夏生と都築は対決モードに突入し、事あるごとに張り合うようになる。
小春は全く気付いてないが、夏生には都築の思慕はバレバレみたいですね。

2人がバスケで対決中に、夏生が怪我をしたと友人が知らせてくれ、駆けつける小春。
これもまた一つの友人の助言やお節介であり、そのお陰で夏生に迷いなく会いに行けた。
自分では顔も会わせられなくて、泣いているだけだけど、
友人の配慮があって、なんとか交際を維持できているのが小春なのだ。

ここで1ターンが終了した。
そしてまた次のターンへ移行すると、小春は逃げ回るのだけど…。

しかし相変わらず夏生の言葉は重いなー。
夏生が一方的に変化・成長するだけで、小春はそのままでいいという愛されヒロインのスタンスは相変わらずですね。


ちなみに文化祭でイベント委員が企画したのは「告白ステージ」。
体育館の壇上で、音楽をBGMに好きな人に告白するという企画。

この公開告白、自分たちだけが全校放送で告白を聞かれてしまった小春が、
自分の受けた辱めを、他生徒にも共有させようという小春の企みだったら笑える。

そもそも公開告白なんて公開処刑にもなりかねないと思うが、
本書においては、断られるなんて選択肢は絶対にないのだろう。
皆が幸せになる愛にあふれた世界の確立が本書の目的だもの。


春の両想い後に、彼女に惹かれた都築。
都築に切り札があるとすれば、それは小春の良き相談者「ピアノの君」の正体が自分だということぐらいだ。

そして文化祭中のトラブルを回避するためもあり、都築はその秘密を小春に明かす…。
また その行為自体が小春が関わるピンチを助けるヒーロー的な意味を持っていたのだろう。

そして都築はこの切り札と共に、攻勢を仕掛け、彼女を押し倒し おでこにキスをするのだった。
そのキスにドキドキした小春は、夏生に顔向けできずに、その事実を言えないでいた。

これは小春にとってこれは浮気に等しいことなのかな。
はしたない自分の過ちから目を背けるように、彼女はまた夏生から逃亡するのであった…。

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小春の歩みに合わせる夏生に対して、都築は俺様ヒーロー的な強引さを持つ。どっちが胸キュン?

小春は罪悪感を覚えるが、これは都築を異性として見て、そして接近された肉体の正常な反応だろう。
その肉体の反応を恋のドキドキと勘違いしているだけだろう。
夏生が胸の大きい女性を好きなのと同じ本能的な理由だ。

だが、そんなことを上手に割り切れるはずもない小春だから、自分からも相手からも、逃げる。


こまで都築にアプローチを受けても、相変わらずの小春鈍感スタンスは変わらない。
彼女には都築の行動の理由は皆目 見当もつかないらしい…。
異性から好かれていると自覚することなく愛されるのが純愛なのだろうか。

しかし そんな小春の目を覚まさせるのは西園寺(さいおんじ)。
都築が小春のことを好きなことを本人に告げてしまう。
都築の恋愛に関しては積極的で、楽しんでいる風のある西園寺。
いつもは雪女のように冷血にも見えかねない彼女が、羽目を外してミスをしてしまった。

都築のアプローチを一部始終見ていた西園寺に、
小春が「(おでこに)キスされたこと知ってるの⁉」と大声をあげた瞬間、夏生が後ろにいたから大変。

そんな現実から彼女は、逃げる。
その弁明も言い訳もしないで、小春は逃げる。
逃げることだけが、彼女に出来ることなのです。

逃げることで事態をややこしくする可能性など考えたりせず、
ただ、自分が楽になる刹那的な選択をしてしまうのです。


走中に ぶつかったのは都築。後ろから追ってくるのは夏生。
前門の虎 後門の狼、といった感じか。

そして2人の男性が自分のために争い始める。
が、2人の男が揉みくちゃになっているのを見て、
またも許容量をオーバーした小春は、泣いて逃げる。
いつか小春が逃げずに自分の口で状況を説明する日が来るのだろうか…。

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両親が喧嘩していたら、なぜが子供が泣くのと同じ心理。そんな幼児メンタルの恋物語

逃亡し続ける小春を救うのは、またしても友人の助言。
デフォルト展開が続きます。
でも狙いすぎる名言って気持ちが冷める。
友人たちの助言は年長者(作者)からの恋愛格言にしか思えない。

三者の意見を貰うことで、小春は自分の心境を整理できた。

そこで気づいたのは都築の好意に対して応えられない自分がいること、
そして自分が彼を「傷つけるのが怖かった」のだ。

恋が万能だと思っていた自分が、誰かの恋を終わらせてしまう。
その責任を果たすのが怖かったのだ。
ここは小春の苦みを伴う成長の一つだろうか。

そして もしかしたら この小春の固辞が、文化祭における たった一つの失恋かもしれない。


回りはしたけど、解決した後は夏生の胸に戻る。
万事解決だが、夏生に謝るシーンは入れて欲しかったなぁ。
説明不足や自分を優先したことで、夏生に心配をかけたし、都築は殴られたのだ。

謝りもしないで大きな愛に包まれて、1つのターンが終わった。
小春の成長がまた見られないままに。


…と、小春も読者も一段落着いたと思っていたところに、都築の片想い継続宣言が下される。
まだまだ三角関係は続くみたいだ。

夏生との関係が高値安定中だから、小春を揺さぶるのは当て馬の役割なのだろうか。
一度 失恋しても、上手くいくのが本書の恋愛(小春や西園寺)。
都築も諦めなければ明るい未来が、ある⁉


小春の16歳の誕生日のデートシーンで『7巻』は終わる。
このデートでもそうだが、全てにおいて小春に比べて、
夏生が「彼氏」として頑張り過ぎているような気がする、
これが何かの伏線だったりしないよね。
いつか、気持ちが破裂したりしないよね。
男性の我慢って、最後の最後で大爆発するから怖いのだ。