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少女漫画と小説の感想ブログです

今回 自分が割った窓ガラス代を弁償できるまで ホスト部で働き続けるよ☆

桜蘭高校ホスト部(クラブ) 17 (花とゆめコミックス)
葉鳥 ビスコ(はとり びすこ)
桜蘭高校ホスト部(おうらんこうこうほすとくらぶ)
第17巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

環の退部騒動を受けホスト部は解散! 祖母との関係修復に環は悪戦苦闘する。彼の真意を察したハルヒは、環と出会う前の自分に戻ると宣言!! 一方、環を信じ待つ部員たちは、鏡夜を中心に理事長の裏計画を突き止めて!? 悩める環のために動き出すホスト部——緊迫!!

簡潔完結感想文

  • 冷却期間。環の行く道と方策を理解したハルヒは彼と出会う前まで自分をリセット。
  • お家 騒動。取締役会での謀反。土下座しろ! とは言わないけど退場させる親子喧嘩。
  • 誰かのために怒る、誰かの想いを伝える、動く、その原動力はその人が好きだから。

ボを割った『1巻』から、窓ガラスを割るまでを描く漫画の 17巻。

ツボはハルヒの秘められた魅力、窓ガラスは境界を越えるという意味でしょうか。

色々 割ることで世界を広げる この漫画。
まだ最終『18巻』はありますが、物語としては ほぼ大団円を迎えます。

少々 スケールを大きくし過ぎた箇所もありますが、
環(たまき)の行動だけはブレずに、彼の信念を通した行動が描かれている。

環は最重要人物なのだし、漫画としては仕方がないが、
結局、連載初期に感じた「環だけが正しい世界を作る装置」という違和感が再燃する。

その為に今回、須王一族に間違った行動を取らせているように思える。
特に環の父親は大事な物を見落とすほど、根本の性格を変えてしまった気がする。


鏡夜(きょうや)が環の父に放った「あなたが母親への復讐の為に環を利用した」という
言葉を借りるならば、「作者が最終回っぽい展開の為に環の家庭環境を利用した」ように思う。

広げ過ぎた大風呂敷の弥縫策としては悪くはないが、恋の障害のための作為であることは否めない。

本来、環自身の問題とハルヒとの恋愛は関係のない問題なのに、
どれもこれも環の心の問題として扱って、恋愛問題を棚上げしたのは疑問である。

そして大人側の理論を子供である純真な環が打ち壊していく、という構図を見せたかったのだろうが、
理論武装するために大人側の事情を複雑化しすぎて、硬質な企業小説みたいになってしまった。

取締役会でのクーデターの場面は、
土下座してください、やれーーッ!! と言い出しかねない雰囲気だった。

『16巻』の感想でも書いたが、ハルヒの性別詐称を最終議題にしないためだと思うが、
物語の後半から持ち込まれた恋愛要素と環の内向世界、そして家族背景に切り込んだ展開は
色々と欲張りすぎたかな、と思わざるを得ない。

これは物語が破綻しているとか駄作という意味ではない。
ただただ 環に全部を背負わせすぎた無理が祟っただけである。


回、一身上の都合によりホスト部を自主退部し、独りで殻に閉じこもろうとする環。
彼を説得するも、冷たく拒絶されたハルヒは、環の祖母に直接 対話するために須王の本社に乗り込んだ。

だが、それが引き金となり、ホスト部は無期限活動停止を命じられてしまう。

このハルヒの行動も、環の父親と同じく本来の性格との不一致を感じる点。

活動停止というゴールがあってのハルヒの暴走がスタートするんだろうけど、
まことにもって ハルヒらしくない。

ハルヒは恋や、他人の言動に我を忘れるタイプでもないと思うのだが。
いくら その場にホスト部のブレインの鏡夜がいなかったとはいえ、
ハルヒが頭脳戦を繰り広げないでアクティブに、過激に行動するのは無理がある。
ここは光にでも暴走させれば良かったのではないか。

そして翌日、学校を休んで思索を巡らせているハルヒが本来の姿なのではないかと思う。

問題から適切な距離を置くことが出来たハルヒは、環の思考を正確にトレースすることが出来た。

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知り合って1年ちょっと(実質4年以上)、学年主席のハルヒは好きな人の考えていることぐらい分かるのです。

そうしてハルヒは全てを「リセット」する。
環と会う前の、ホスト部員ではない『1巻』登場時の 藤岡ハルヒに戻り学校生活を送るハルヒ

今は雌伏の時として、敢えて違う道を行く2人。
だけど思いは同じ2人。
この巻の中で私が一番好きな感動的な場面です。

というか、ハルヒの言動によるとハルヒホスト部に入学してからは
あれでも一応、本人なりに身だしなみに気を付けて学校に登校していたんですね。


回、どんな立場であっても物語の中心に居続けるのは環の祖母である。

権力を一手に振りかざしている祖母には数々の疑問が湧きあがる。

まずは環の祖母が、ハルヒを排除しきれない弁護士の高坂(こうさか)に、
「ここで失敗して 弁護士資格を失いたくないでしょう…?」という場面。

これの意味が分からない。
今回の失敗が、実績と引き換えに高額報酬を要求する弁護士としての面目を失う、というのは分かるが、
弁護士資格を失う、というのは意味が通らないのではないか。
いくら祖母でも資格を個人で どうにかできるものではないだろう。


…というか高坂弁護士って物語に必要だったのでしょうか。
ハルヒの両親(特に父親を昔から)を知っていて、敵でありながら味方というスパイのようなポジション。
環の父もそんな彼女の境遇を利用して彼女をハルヒへの防波堤として利用していた。

でも、いなくても話は通用するような気がしてならない…。
ハルヒの目標である弁護士といっても彼女が目標とするようなタイプじゃないし。
抑止力の面でも感情の面でも上手く作用していなかったなぁ。


次に、祖母の須王(すおう)グループを「最後まで見届け」たかった、という希望は何を意味するのかが分からない。

このまま会長として生涯現役を目指した言葉なのか、
解任という形ではなく自分の納得がいくまで会長職を全うしたかったのか。

彼女の執念と才覚は確かなものだが、
いずれにせよ遅かれ早かれ不満分子にクーデターを起こされていたでしょう。

そして夫を亡くして30年余(推測)、トップが交代しない企業はあまり健全ではない。
また巨大グループ企業の同族経営自体が時代にそぐわない気もする。

蘭学院のクラス分けの基準である「家柄 + 成績」の家柄の部分が、
時代の変化と合わなくなっているのかもしれません。

今なら外資投資ファンドに経営権を奪われる危機が描かれたかもしれませんね。
そうしたら須王の3代が即刻 和解して 手を取り合ったかもしれません。
もうジャンルが完全に経済小説ですが。


母はともかく、父は環の咬ませ犬に成り果てましたね。
環の正しさを貫き通すために、父が犠牲になった気がする。

これまでの経緯からすれば父にとって妻と子は第一優先事項であり、
母へのコンプレックスで目が曇ったりしないと思うのだけど。

ここも暴走したハルヒと同じく性格の破綻を感じるところです。

そんな誤った手段を使った環の父と、ホスト部の対面で、一番 激昂しているのが鏡夜だというのが良いですね。
『17巻』後半のシーンといい、やっぱり鏡夜は単純に環の親友なのです。

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画竜点睛を欠く。自分の家族を再集結させるはずの計画が再破綻を招いてしまった。

結局、理想論や正義感が勝つのは少女漫画だからか。
それとも環たち一族が大好きな時代劇の日本人的な人情だろうか。

ただ今回は環の人道主義が、祖母や父の現実路線より勝ったが、
環もいつか厳しい経営者としての視点を持つようになるのだろうか。

このままでは環は、自分の子供がどんなに経営の才能がなかったとしても
子供に厳しく接することが出来ない気がするなぁ。

環に追放されたのは『1巻』1話の綾小路(あやのこうじ)さんぐらいか。
彼女は今回の ほぼ全キャラ登場回でも出てきてませんよね。
ハルヒに悪意を持った者は完全に排除か。ガクブル。


ハルヒは自分が守りたい世界を守ってきた弁護士の母と同じ道を行けばいいが、
環は大局的な視点を持つことが出来るのでのか疑問符が付く。

須王グループの維持や発展という点では非情になれなくて赤字部門を切り捨てられなそうだ。
一方で、運には恵まれていそうなので思わぬ分野で利益を上げそうですが。


書を恋愛モノとして見た時は非常にオーソドックスな少女漫画である。

お互い高校生にして初めての恋愛感情を抱く初心な2人だし、
ハプニングキスとか三角関係とか古典的な場面が多い。

そして少女漫画のクライマックスの場面が空港なのも王道展開だろう。
といっても空港で呼び止めるのはヒロインではなく、来日していた環の母なのだけど。

この母との再会場面では、環のホスト部員としての活動が身を結ぶ。
ホスト部の活動が桜蘭学院の生徒たちを繋いでいく。

自然な流れでこれまでの登場人物を再登場させられているし、
物語の核であった「ホスト部」が再び主役に返り出た印象を強く残す。

やっと らしさが戻ってきましたね。
須王グループとか どうでもいいんで、学校内の描写に終始して欲しかったものだ。

そしてホスト部員がバトンを繋ぐように環たちを輸送していく様子はテンポも良く映画のようである。

その輸送では3年生コンビ、常陸院(ひたちいん)の双子、鏡夜と、物語の重要度順に脱落していく(笑)

これは主人公とダンスを踊った順に脱落していった(と私は考える)『金色のコルダ』のように、
ハルヒの心の最終順位を表しているのかと考えたが、
光を差し置いて鏡夜が2位に躍り出るのは不自然なので、素直に環の友情度と考えるべきか。


巻末のあとがきで 新薬のことや企業のこと、輸送ルートを入念に考えた様子が うかがえるが、
余り理論的になり過ぎるよりは、ホスト部らしいバカバカしい笑える展開も欲しかったなぁ。

物語の後半は動きよりも言葉で説明している部分が多い。
それが初期の勢いを感じさせない一因でもあるのではないか。

作者も変に真面目にならず、環のような純真さと幼稚さで物語を楽しめば よかったのに(他人事)。


そして少女漫画的 結婚フラグで言えば、
環はハルヒの父と母の遺影に挨拶済みで、
今回、ハルヒが環の母親にも面識が出来たということで両家への御挨拶が終了した。

さぁ、勢い余って環が本当に結婚を口走るのか、
最終巻がどうなるのか、今から楽しみです。

桜蘭高校ホスト部 17 (花とゆめCOMICS)

桜蘭高校ホスト部 17 (花とゆめCOMICS)