《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

3巻じゃないけど 巻数が少ないので 三角関係はじめました。

初恋はじめました。(2) (講談社コミックスなかよし)
山田 デイジー(やまだ でいじー)
初恋はじめました。(はつこいはじめました。)
第02巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★(4点)
 

恋愛から解脱した“脱モテ”生活をエンジョイ中の姫子(ひめこ)。学園一のアイドルで年下の春樹(はるき)に告白されて以来、学園中の注目の的になって…!? 転校してきた春樹のライバル・本田(ほんだ)にまでオレ様モードでアピールされて、まさかの三角関係、勃発!?

簡潔完結感想文

  • 本物の俺様キャラが登場。初めは遊びなのに冴えないヒロインに夢中になる お約束。
  • 上目線キャラを譲った主人公はオバさん化⁉ 実際の年齢以上に年齢差を感じる。
  • 少女漫画の男性の造形は否定するが、ヒロインのモテモテは否定できないジレンマ。

変わらず楽しみ方が分からない 2巻。

本書は、昨今の過剰にキャラ化・ネタ化した少女漫画の原点回帰を狙っているのだろうか。
昨今の少女漫画の「記号」を否定して、丁寧に気持ちに寄り添っていこうとする意思は見える。

見えるのだが、だからと言って 漫画として楽しいかというと別の話。

本ならなんでも(少女漫画でも)読む、という主人公・姫子(ひめこ)が、
いちいち男性キャラの違和感について「少女漫画じゃあるまいし」みたいな
ツッコミを入れているが、それで雰囲気が愉快にコミカルになる訳でもない。

というか姫子が いちいち少女漫画を持ち出すこと自体が不自然だ。

男性キャラに少女漫画世界からの脱却を目指させてをおいて、
結果的に自分は その世界を自由に行き来しているチグハグさが目に付く。


今回、第2の男、本田(ほんだ)が登場することで姫子の立ち位置が少し変わるのだが、
そこから見えてきたものは新たな姫子の本質で…。


て、『1巻』の感想文で姫子の精神には少女漫画の「毒舌王子キャラ」の要素が潜んでいると分析しましたが、
『2巻』から本物の「俺様キャラ」の本田が本格的に物語に参入する。

この本田、本当に性格が悪く、『1巻』では本書のヒーロー・春樹(はるき)に、
自分の優位を示すため、ペットボトルの水を頭から浴びせた。

そんな本田が同じハイジャンプ競技のライバル・春樹の在籍する
この中高一貫校に転入してきたことで、姫子はまた騒動に巻き込まれる。

本田は春樹の心に姫子の存在があることを見抜き、彼女に接近してきたのだ。

壁ドンして「いいからだまって口説かれてろ」と姫子に顎クイをする本田。

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俺様キャラの冴えないヒロインの落とし方。少女漫画が生んだ悪弊です。

…だが、それを彼を殴打しながら全力で拒絶する姫子。
「女はこうすればみんなおちると思ってる あんたの思考回路がきもちわるい」と一喝。

確かに、これは私も同感です。
こういう上から目線の男が出てきた時点で その漫画への心が閉ざされます。

でも こういう男がヒーローの漫画が何百万部も売れているから、
実際に需要はあるんでしょうね。

なので そういう部分を是正してくれる本書には期待したのですが、
どうにも本書も馴染まないのが残念な現実でした。

そういえば本田の名前に姫子が好きな「本」が入っているのは偶然か必然か。

常に上から目線の本田の登場によって、姫子は春樹を上から目線で励ますポジションを失う。
そうして本田のお陰で、姫子は正当なヒロインの座に納まり始めるのだが…。


ただ、『1巻』の感想文でも書きましたが、姫子が努力せずモテている部分に説得力がない。
そして『2巻』からは なぜだか本格的な三角関係も始まって、複雑な様相を呈すばかり。

男性陣が姫子を「好き」になる肝心な部分が弱すぎる。

あと本田の初登場に強烈な印象を与えたのは間違いないが、
春樹に頭から水をかけた時点で、当て馬にも値しない最低野郎でしかない。
作者の周辺で人気なことが不思議でならない。


んな強引な本田に対して、春樹は全力で姫子を守る。

三者という比較対象がいることで、春樹の良さが鮮明に浮き出ます。

他にも春樹に守られるなど、胸キュン場面も無理なく創出できるし、
これまで唯一王子として君臨していた春樹に対して、黒王子が出現したことで、
春樹もまた余裕がなく、姫子に強引に急接近する展開も生まれる。

本田によって春樹側が普通の中学3年生の男子に戻る様子も面白いですね。
『1巻』のままだと、春樹が姫子に惚れるだけの話で終わってしまう。

恋愛面では春樹もまた発展途上というところを今後も見せて欲しい。

そして意外なことに、姫子は本田の部活動での取り組みを近くで目の当たりにする内に、
彼にもまた、スポーツマンとして尊敬できる部分を見つけるという構成が面白い。

ちなみに本田と春樹は同じスポーツクラブの先輩後輩で、旧知の仲という設定らしい(後で判明)。

春樹が本田のことを呼び捨てにするなど違和感はあったが、
作者の脳内設定だけじゃなく、こういう話は先に出してもらいたい。
何かの伏線じゃあるまいし。


は精神的イケメンキャラを奪われた姫子がどうなったかというと、
私が思うに、ババア化した(失礼ながら)。

これまでは春樹に謎の立場から偉そうな口を叩いていたが、
『2巻』になって(本田よりは)春樹に肩入れするようになってからは、
アドバイザーとして彼に肯定的・好意的な意見をするようになった。

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TV「ゴッドタン」 私の落とし方、阿佐ヶ谷姉妹・江里子さんの脚本かと思ったよ…。

それは姫子の前進のようであるが、
これで変に炙り出されたのは 彼らの年齢差。

実際は中学3年生と高校2年生の2歳差なのだが、
2歳差どころか、姫子の年齢が2倍の30歳にも見えてきた。
教師の姫子が禁断の恋に落ちる「中学ハルキ日記」になった気がする。

これまでの上から目線も30歳だとすれば腑に落ちる…。


姫子の成長といえば、『2巻』の後半、本気になった本田の告白を お断りする際に、
春樹と共にスクールカーストのトップの特徴を十把一絡げにしてしまった場面だろう。

自分勝手さを責めたはずの本田に、姫子こそ人を個人として扱ってないと指摘され、
これまでラベリングしていた自分を恥じて、姫子は謝罪する。

逆ギレはするものの、結果的に古色蒼然とした「愛されヒロイン」を体現している姫子が、
少しでも変化していくように祈るばかりです。


本田の登場によって、春樹の姿が立体化したように、
姫子にも同性のライバルがいた方が、彼女の性格が浮き上がるのかなぁ?

でも この学校、王子様の恋は全員で見世物にしようという謎の校風があるから、
姫子の現状を見て、それでも恋のライバルに名乗りを上げようとする人はいないか。

学校中の注目の的、という図式が姫子のヒロイン感を悪い意味で強めている気がする。
あんまり この学校自体を好きになれないんだよなぁ…。


しかし この2人、姫子を賭けて争い続ければ世界記録まで更新する勢いである。
学校側がある程度、春樹に自由な裁量を与えるのも頷ける。