《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

そんじょそこらの少年誌に負けない露出度の高さ。でも少女誌だからOK。

うわさの翠くん!!(1) (フラワーコミックス)
池山田 剛(いけやまだ ごう)
うわさの翠くん!!(うわさのみどりくん!!)
第01巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

山手翠(やまてみどり)。趣味.サッカー。特技.サッカー。好きな言葉.サッカー!!その大好きなサッカーを教えてくれた司(つかさ)と久しぶりに再会。初Hしちゃったのに、遊ばれたと知って翠は大ショック!乙女の純情を踏みにじった司を許さない!!髪を切り、サッカーで有名な男子高に入学した翠だけど!?

簡潔完結感想文

  • 翠。貞操を捧げた相手がサイテーだったので、彼にサッカー勝負を挑みます。なんで⁉
  • 司。貞操を奪った相手が男装してまで追ってきた。飛んで火にいる夏の虫。ゲッ虫ー。
  • カズマ。男子校の下宿の隣人は女子⁉ ラッキースケベ体質のオレが主人公の少年漫画。

ッコミどころが多い漫画は良い漫画の証拠なんじゃないか、の 1巻。

初・池山田作品。
性格的には発表順に読みたいところですが、手近にあったので本書が最初になりました。
それ以前に発表した長編との関連もあるみたいなので、そこは ちょっと失敗したかな。

そんな人気作家だけど、全く読んだことのなかった池山田作品は、
良くも悪くも、1巻の1話目からツッコミどころが満載。
1話目のあらすじは、↑にある通り。

自分にサッカーの楽しさを教えてくれた初恋の人・氷野 司(ひの つかさ)に、
3年ぶりに会った その日に身体の関係を結んでしまう中学三年生の山手 翠(やまて みどり)。

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愛の言葉を囁かれても流されてはいけないことを読者は肝に銘じましょう。

だが自分の身体が彼と彼の友人たちの賭けの対象になっていたことを知り、
乙女の純情を踏みにじった代償を倍返しさせることを決意する。

その最終目標が、サッカーでの直接対決での勝利。
そのために翠が選んだ手段が、サッカー名門校の男子校への入学であった…。

…ハイ、ツッコんだら負けです。

なぜ、乙女の純情とサッカーでの勝利が等価値になるのか全く分かりません。

天才サッカー選手と名高い氷野の、天狗の鼻を折るのはサッカーしかない、
というのが、翠の頭で精一杯考えた結果なのでしょうが。

むしろ氷野との再会で発情してしまった翠が、
彼との接点を失いたくがないために、接点が少しでも多い都会へ進出し、
サッカーを彼に接近する手段にしているとしか思えません。
(実際、そういう部分もあるだろう)。

これは憧れのハイジャンプ選手と同じ学校に入った「花ざかりな」あの人と同じ心理状態でしょう。

そういう無自覚な心理状態を含めて、
幼くて足元の覚束ない翠が どう成長していくのかが、見どころなのかな?

名作は、それだけツッコミどころが多い作品という意見もありますので、
引っ掛かる部分が多いだけ、忘れられない作品になるのではないでしょうか。

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女性を捨て駒にする司にとって、女性である自分に負けることが一番の屈辱だろうという考え、なのか?

かし翠が男装する理由はなんでしょうか。
メタ視点から言うと、男子校の中の女子という状況自体が読者に好まれるから、でしょう。

ただフィジカルの強い司(つかさ)を翠はシュート一つで吹っ飛ばしているので、
そんな翠が女性として男性に交じってサッカーをすることも可能なはず。

実際、翠は男装して(していないも同然だが)はいるものの、
男性と一緒に競技をしながらも肉体的・体力面の弱さの描写は一度も出てこない。

それならば共学のサッカー名門校に入って、
困惑する男子部員を実力で認めさせて、女性として勝ち上がっていく姿も描けたのではないか。
高校野球と違いサッカーは女子生徒のチーム入りもルールとしては可能らしい)

それをしなかったのは、上記の通り女子 in 男子校という付加価値のためだろうか。

ただ、時代が進み本書の連載の2006-08年から数年後の2011年における
なでしこジャパンの目覚ましい活躍の後なら物語も変わったのだろうか。

または現在2020年前後に本書が描かれたのならば、
女性を女性のまま活躍させる手法が採られただろうか。

それとも女子 in 男子校は様式美として残るのだろうか。
男女の平等という問題と少女漫画の未来はどう関わっていくのか…。

ちょっと話が ズレましたね。

性別の越境入学とか、翠の警戒心の緩さとか、
色々と気になる点はあるけれど、それを無視して読み進めるのが少女漫画のマナーかな。

ただ、作者にとってサッカーが単なる題材(扱いたいテーマ)であって、
サッカーに対する敬意が全く見受けられないのは気になります。

もうちょっとサッカーの楽しさを描いて欲しかった。


なり無茶苦茶ではあるものの、1話目を読めば読者の多くが その先を気になって仕方なくなるだろう。

こんなに心の引っ掛かりの多い漫画は誰にでも描けそうでいて描けない。

私も序盤こそ、いかにも小中学生の ませた女子たちが好きそうな、
ちょっと過激で、それでいて幼稚な描写の、
小学館少女コミック(のちのSho-Comi)の悪い部分には眉を顰めたものです。

しかし読了して言えるのは作者の物語の構成力は悪くないということ。

デビュー前から温めていた お話ということもあり、全体の構成がしっかり整っている。
しかも結末を進路変更させながらも、そこに大きな破綻が見当たらないところに手腕を見せる。

いかにも漫画的な設定と展開ではあるが、
ストーリーテラーとしての実力も備えているからこそ人気があるのだろう。

漫画が好きで仕方がない。
労力を惜しまず作品に打ち込む姿がしっかり感じられる。

絵は上手いけど長編に向かない人、段々と手を抜くことを覚える人が少なくない少女漫画の世界で、
コンスタントに作品を発表し続けることは それだけで評価に値します。


書は少女漫画と少年漫画の中間のような印象を受けた。

甘い絵柄と、トンデモ設定はややハードルが高いと思われるが、
本書は男性が読んでも かなり楽しめるのではないか。

何と言っても『1巻』の段階なら女性(翠)の裸の方が男性の裸よりも多いし(笑)

これは作者が兄と弟に囲まれているのも影響しているかな。
どんな漫画も貪欲に吸収した結果が、このような作風に繋がったのか。

翠の下宿先の隣人で、のちの「青葉の黄金コンビ」と呼ばれる
新橋(しんばし)カズマの目線で見れば、本当にラッキースケベ体質の持ち主が主人公の少年漫画である。

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本書におけるサッカーボールは凶器。この意地悪な先輩の行く末を誰も知らない。

2006年という時代もあるだろうが、こんなに女性の裸を堂々と掲載している漫画も珍しい。

少年誌に同時掲載してもかなり人気が出たはず(小学館なら「サンデー」か?)。

まぁ、最後まで一線を越えない少年誌よりも えげつなく、
簡単に一線を越える少女誌の貞操観念の軽さに、純朴な少年たちが青ざめるかもしれないが。


このように視点をどこに置くかによって楽しみ方が変わるのも本書の美点だろう。

司を憎みながらも、憎いどころか好意すら持ち始める翠、
翠の秘密を知って惹かれるカズマの、翠よりも純度の高い純情、
そして、憎まれ役を買って出ながらも、
翠を守っている様子も見え隠れする司。

三者三様の恋愛模様がどう描かれ、どのように影響するのか、
色々とツッコミながらも、楽しく読むのが本書の正しい読書法だろうか。


私は作者が描くデフォルメが苦手です。
作画の手間を削減するためなのか頻出するデフォルメが嫌いです。

等身大(?)の時より太くなる脚や、
年齢以上に幼く見える感じが好きになれません。