《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

算数の問題。日帰りの遠距離恋愛で2人が最長の時間を過ごすには どうすればいい?

僕は妹に恋をする(5) (フラワーコミックス)
青木 琴美(あおき ことみ)
僕は妹に恋をする(ぼくはいもうとにこいをする)
第05巻評価:★★(4点)
  総合評価:★★(4点)
 

休日に郁が頼に会いにきて、今日は一日恋人同士!ところが、別れ際のキスを元カノ・友華に見られたうえ、写真に撮られてしまった頼。そして、その写真をネタに脅かされ、友華とキスするはめになってしまう。それを見てしまった郁は…!?

簡潔完結感想文

  • 頼に会いに来た郁。点呼をパスするため寮に戻って、寮の中に郁を隠し夜を待つが…。
  • 夜になり、郁の要望通り2段ベッドの下で人が寝る部屋に入る2人。展開が雑過ぎて唖然。
  • 郁とのキス写真を友華に激写され脅迫される頼。友華とのキスを目撃して落ち込む郁。

えは、中間地点で会う。
そう、この町で会う必要性がないと気づいたら どうでもよくなった 5巻。

兄妹間の恋愛という倫理的問題を差し置いて、
このところ遠距離恋愛に悩む 一組のカップルとして描かれる双子の頼(より)と郁(いく)。

時間とお金を何とか捻出して会いに行く姿は健気。
頼は自分の彼女を褒めることに照れがないところが良い。
そんな頼のストレートな愛情表現を喜ぶ郁の姿も共感できる。

…が、いかんせん本書は中盤の内容がなさすぎる。
そして中盤で起こることは大体が回避できる。


ず、何といっても密会の場所だ。
なぜ、毎度毎度、頼の学校の周辺で会わなくてはならないのか。

兄の頼は寮生活で、無断外泊を3回すると退学処分になるらしい。
だが、これまでの描写からも休日に外出が出来ない訳ではないのだから、頼がこの町に縛られている訳ではない。

頼がエスカレーター式の中高一貫校の途中で外部受験し、
高校から県外の学校に行ったのは、
「でも県外(の高校)なら 誰もオレ達のことを知らないし ここにいたら できないことが堂々とできる(『3巻』)」からであった。

ということは自宅周辺以外なら どこでもいいはずだ。
片道3時間かかるという移動時間。
そして門限や終電などの問題があって週末に会える時間は限られている。

ならば、お互いが移動して中間地点で会えばいいのだ。
それこそ2人で新天地に行けばいい。

問題は双方ともに電車代がかかることだが、
そこは それぞれがバイトを始めたことでクリアしている。

難関高校の編入試験をただ一人通過した頭の良い設定の頼ならば、分かりそうなものだが、
郁と作者の頭のレベルに引っ張られたのか…⁉

そして頼に関して言えば、もっと時間の使い方に計画性を持てと言いたくなる。

謎の学校周辺縛りがあるから問題が ややこしくなる。
いや、本来何も起きないことに問題を起こすために そうしてるのか。
作者も連載の存続のために、諸問題を分かっていながら やっている気がする。


盤の展開の問題点は それだけではない。

読者への引きが不足していることだ。とえば2人がまだ結ばれていないのなら、
今回こそ 次のステップに進むのか⁉と読者の興味を惹けるだろう。

だが、本書はその一番の問題点を早々に、そしてやや安易に乗り越えてしまった。

やっぱり2回目って興味が半減しますよね。
郁が頼に会いに行くのも今回が2回目。
色々と工夫の跡は見えますが、どうにも興味が湧かない。

工夫の一つが、郁の男子寮潜入というドキドキの展開だろう。

ただ、これは本当に意味が分からない。
点呼があるため寮に帰らなければならない頼は、郁までも寮内に入れる。
安全のため、と郁を数時間、寮内の男子トイレに軟禁する郁。
その後、深夜になってルームメイトが寝静まってから郁と抜け出す算段だったらしい。

全ては郁とラブホテルに行くために!と欲情した頼はバカになったのでしょうか…。
郁を先にラブホテルに置く、ということも考えられないほどに。

2人の間には携帯電話があるのだから、寮を抜け出せないなどの不測の事態にも柔軟に対処できるはずだ。

秘密の関係を守るために、頭脳派の頼が口八丁手八丁で、
周囲の疑惑の目を逸らして、窮地を切り抜ける姿が見たかった。

それなのに離れたら時間的に精神的に余裕がないのか、
強硬手段とバレバレの嘘しか出てこないのが残念。
恋愛漫画界の夜神 月(「DEATH NOTE」)を目指して欲しかったのに…。

まぁ、これも作為でしょうね。
全ては興奮するシチュエーションのための ご都合主義。

男子トイレに女性が入っていること、
その外から聞こえる性欲丸出しの男子生徒たちの会話、
何度かバレそうになるスリル、
2段ベッドの下に人がいるのに情事を始める男女、
などなど、成人動画 顔負けのシチュエーションが用意される。

演出を頑張ってはいるけれど、不自然さがそれを超えていて夢中になれません。

あとは犬ヨリの存在。
作者は本書のマスコットキャラクターにしたいのでしょうが邪魔です(今回は役に立ったが)。
毎回毎回、閉所にいなきゃいけない彼が不憫でならない。
今回は臭いトイレに数時間、その前に移動で数時間 閉じ込められていた。
鳴き声とか排泄とか色々とあるだろうに、まるで ぬいぐるみのように扱われる。
頼との密会は休日なんだから、親に預けてこい、と郁に言いたい。

まぁ小学生の知能しかない郁にとっては それこそ手放せない ぬいぐるみ なんでしょうねぇ…。

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男女の寮長は どちらも頼に似ている。まさか姉さん まさか兄さん オレたち4つ子⁉

この時、お世話になったのが男女双方の寮長。
この2人の関係はまた別のお話。

しかし、誰も彼も顔が似すぎてますよね。
男の寮長が男子トイレで大量の薬を服用している場面、
その前のコマが頼が部屋を出て行ったシーンだったので、服用してるの頼かと思っちゃいましたよ。

双子の近親相姦に加えて謎の重病設定まで乗せた!と悪い意味で白目 剥いちゃいました。

まぁ私の誤読だったんですが、描き分けにも問題があると思う(責任転嫁)。
画力といえば、こんなシーンも。

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(左下)カップの傾け方 (右上)ケータイの持ち方 ところどころで違和感を覚えてしまう画力。

(左)は カップの底でも舐めてるのかと思ったし、
(右)は こめかみで音を拾う生物なのかと思いました。


半は暗躍する2人の男女がいる。

1人は矢野(やの)。
郁が好きだと頼に宣戦布告をしながらも、何かと頼と郁を助ける優しい人。
今回から郁の両親に対しての偽装彼氏となって、頼との関係を隠す盾となる。

将を射んとする者はまず馬を射よ、という感じの長期的計画なのだろうか。
前回も書いたけど、募る想いとしては矢野くんの方が共感できる。

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「昔の女」「簡単な方程式」 矢野くんのワードセンスは痺れるものがありますよ。

そして、もう一人が謎の転校を果たして頼に接近する元カノ・友華(ともか)。

ずっと頼をストークして郁とのデート現場を押さえる執着心を見せる「昔の女」友華。

遂には駅でキスする2人の写真を激写(郁の顔が分かりにくいのでは…?)。
その写真で頼を脅迫して、手始めにキスをさせる。

誰にも支配されない尖ったナイフの頼を、
友華が調教してしまうのか⁉というところで今巻はお終い。

次こそ頭脳戦が見られたらいいな…。