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表紙と本編に理子が復帰! でもそれは場面転換の幕間を埋める時間稼ぎにすぎない

カノジョは嘘を愛しすぎてる(19) (フラワーコミックス)
青木 琴美(あおき ことみ)
カノジョは嘘を愛しすぎてる(カノジョはうそをあいしすぎてる)
第19巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★★(6点)
 

“山本姉妹バンド”でイベントノステージに立った理子。だけど歌いたい衝動を止められず、トラブルが起きてしまい...!?

簡潔完結感想文

  • CRUDE PLAY活動休止の余波。メンバーたちはセカンドキャリアを考え動き始めている。
  • 理子は物語をCRUDE PLAYに繋げる導入部であり、CRUDE PLAYが活動休止した際の予備。
  • 描きたいCRUDE PLAYに注力する余り、読者のMUSH&Co.熱を冷めさせてしまうPの失敗。

イン電源が落ちたので非常回線に切り替わる 19巻。

久々に理子(りこ)がメインの話になるけれど、出番が多くなると それだけ嫌われる うざヒロイン。以前も書いたけれど寺田(てらだ)という憎まれ役がいたから理子のウザさが相殺されていた節があり、寺田が大人しくなると理子の独特な匂いが鼻につく。作者の作品で好ましい女性キャラって いた覚えがない。それだけ男性特化型の作風なのだろう。

今回の理子の表紙の復帰と本編での活躍はCRUDE PLAYの活動休止が理由である。もはや作者は理子の活躍を描きたいのではなく、CRUDE PLAYが動けないから その間に作品を動かす存在として理子を利用しているだけのように見える。考えてみれば理子と秋(あき)との出会いも作中にCRUDE PLAYを登場させる取っ掛かりでしかない。だから恋愛が おまけで おままごとのように見えるのだ。

そもそもCRUDE PLAYの内情を描きたいあまり理子たちが活動休止状態になっていた

理子を本格的に活躍できない作品の中に留める作者という名のプロデューサー

た作者が描きたいのは群像劇で それぞれの過去を描くことに注力している。これはまた自然と まだ10代で これまでの人生に厚みがない理子たちの軽視に繋がっている。

秋はもちろん、瞬(しゅん)や心也(しんや)、茉莉(まり)ときて これまで語られなかった高樹(たかぎ)の来歴も次巻で語られる予定。音楽業界に生きるものの現実の苦悩を描くための過去の背景が念入りに作られており、今現在に起きる事象(恋愛)は やっぱり おざなりになる。

CRUDE PLAYが描きたい作者の狙いが透けて見える終盤で理子たちが活躍しても読者は理子の起こす波に乗れない。理子たちをトントン拍子にデビューさせて理子の活躍に読者の熱狂を巻き込んだのに、それはCRUDE PLAYという本命の前座に過ぎなかった。この構成により読者にMUSH&Co.ファン離れを引き起こしてしまった。茉莉が そういえば現役の歌姫だったっけと思うぐらいMUSH&Co.も旬が過ぎている。継続的な活動がないと忘れ去られてしまうような厳しい世界なのにMUSH&Co.のファーストからセカンドシングルの間が空きすぎている。作中の時間経過は短いのかもしれないけれど読者の体感時間として長すぎる。ファンを獲得・維持するための二の矢三の矢を続けて放たなかったのはプロデューサーである作者の失敗ではないか。


CRUDE PLAYは活動休止を発表。瞬(しゅん)はファンクラブの会報で自分の素性と現在の心境を率直に綴る。ここで瞬が一流大学(実名あり)を卒業していることが初めて語られる。入学していたことにも驚いた。父の会社を継ぐ選択肢も音楽を捨てる選択肢も選べない。だから その逡巡に答えを出すために今現在のツアーを完走させて活動休止に入ると宣言。

夏休みの登校日、理子の学校でも その話題で持ち切り。CRUDE PLAYに近い理子たちは事情を聞かれる。その騒ぎを見て担任が芸能を揶揄したことで理子のメンヘラが爆発。完全に寺田よりも厄介なファンである。そして相変わらずプロとしての意識がまるでない。その理子のメンタルを鎮めるのは、川辺で見かけた秋がCRUDE PLAYのための曲を口ずさんでいた事実だった。


子はテレビ局の夏のイベントに参加。3回目となる生歌披露も大盛り上がり。一方で理子の能力が評価されるほど演奏能力が不足しているバンド活動は足枷にしかならない。それでも高樹は事務所所属の全員を守ろうと慎重に足を進める。無軌道で乱暴な言動ばかりが目立つ高樹だけれど実は「過保護」というのが業界内の評価となる。

やがて理子の歌は聴衆を集めすぎて、事故の危険が生じたためテレビ局側は想定よりも早い幕引きを計る。しかし理子は その指示を無視して自分の胸の高まりに従い歌唱を続ける。それによって出番を奪われる人たちの存在も知らず。


走により観客同士が接触し危惧していた事故が起きる。スタッフの早期終了のカンペを見ていた被害者が責任を指示に従わなかった理子に押し付ける。それに対して理子は真摯に謝罪するが、それにより周囲は被害者が理子の顔に泥を塗ったという雰囲気を作り、周囲の圧力に被害者が泣き出す。理子が次の一手にあぐねていると、そこを番組出演者が機転を利かせて場に音を取り戻す。それもまた被害者の感情を強制的に引っ込めさせる圧力だと思うけれど、被害者に歌うことを促されて再び理子の歌が会場を包む。

理子の行動が主催者側の女性プロデューサーから責められることはなかった。むしろアーティストが歌えない事態を招いたことが運営側のミスだと謝罪される。しかし同時に理子の暴走を、観客の乱れを制御するプロの演奏者がいなければ事態は収拾しなかったとプロの視点で危うさを指摘される。これは理子が お友達バンドで収まっている女性プロデューサーの、理子がバンドを切り捨てるよう促す再度の勧告する。

シバケンを含め出番を奪われたアイドルたちが大らかだから問題にならなかったけれど、ワガママな天狗アイドルだったら事務所同士の問題になりかねない。またシークレットゲストのシバケンはともかく番組MCの登場を期待して ここに来ていた人たちもいるかもしれない。結果的にではあるけれど そのファンの行動力や熱意を理子は奪っている。CRUDE PLAYの活動休止で教室内で自分勝手に泣く理子なのに他のファンの気持ちを考えていないと言える。

大人気アイドルのスタンバイを無駄にさせる理子はテレビ局に損をさせている

の場面を見ていた蒼太(そうた)は どこまでも食らいつくことを宣言するけれど、祐一(ゆういち)は逡巡の中にいた。それでも2人は練習を重ねる。それぞれの師匠はCRUDE PLAYのドラムとギターという豪華な顔ぶれ。彼らだけは蒼太たちの心情が完全に理解できる。

一方、瞬は父の会社に これまで以上に関わり始める。どうやら会社員として優秀で、上に立つ資質も備えているらしい。作品が違えば御曹司ボーカリストとしてヒーローになれる逸材である。それにしてもCRUDE PLAYのツアーの日程は どうなっているのか。数週間単位で暇なの?

心也はセカンドキャリアとしてMUSH&Co.加入を考える。そしてMUSH&Co.のセカンドシングルの収録に秋の同席を希望する。これは曲の収録方法を変えたことが原因。ライブに強い理子に合わせて心也はボーカル以外の音もスタジオで一緒に録音する手法が適していると考えた。ベースで心也が入るため、秋にディレクションを担当してもらう。これは この曲が2人のセンスを持ち寄った曲だから でもあるだろう。

その収録に蒼太と祐一も参加を希望する。しかし高樹はトライアウトさえ許さない。それが高樹の音作りなのだ。その信念には高樹の過去が関係していると次巻予告で明らかになる。

「カノジョは嘘を愛しすぎてる 番外編」…
好きな相手の情報が待ち遠しいことを学んだシバケンはファンのためにSNS更新を頻繁にするようになる。シバケンはプロのアイドルになりつつあるのかもしれない。