《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

告白までは全速力、ご好評につき長期連載になってからはスタミナ切れ。ぴえん。

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水瀬 藍(みなせ あい)
なみだうさぎ ~制服の片想い~(  ~せいふくのかたおもい~)
第6巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

幸せいっぱいの初デートも終わって、夏休みがやって来た!快里の発案でみんなで海旅行へ行くことに。もちろん鳴海も一緒でドキドキの桃花だけど、旅行ってことはいろいろ意識しちゃったりするわけで、鳴海と桃花はちょっぴりぎくしゃくムード。そんな2人の前に現れたのは、ペンションでアルバイトをしている久遠斗真(くおんとうま)。コイツ、何かと桃花につっかかってきて…!?

簡潔完結感想文

  • 「明日で世界が滅亡しても悔いはない」訳:もうこの恋愛漫画で描けることは何もない。
  • 夏だ海だ初キスだ! それは嘘だ三度目だ! 初めてのふりしても読者に嘘は通用しない。
  • 読者受けを狙ってか男子の性格も大人しくなり、何の事件も起きない漫画になったお。


花火 + 夏休み + 海 + お泊り とイベント盛りだくさんだけど、内容は果てしなく薄い6巻。

当初のコンセプトとしては「片想いを中心に描こう!」と始めた作品らしいので『5巻』中盤から始まった「両想い編」は作者の中での構想はノープランなのでしょう。

今巻のメインは両想い編の一大イベントである交際して初めてのキス。
なのですが「片想い編」の時に、男性側から2回もキスされているので、読者の心には一度目以上の衝撃は訪れません…。
心理的には女性の方では交際以前のキスは魔が差してしたもので「ノーカウント」とされているので、両想いの特別なキスを待ち望んでいる、という体裁は整えられているのですが、やっぱり初キスではないので、どうしても説得力に欠ける。

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キスは愛情表現ではなく目的。ヤリたい盛りの桃花さん。
ノープランの上に、これまでの経緯をノーカウントにしようとする繕いが、作品の綻びになっている気がする。


本書は掲載誌に「純愛旋風を巻き起こした」らしいが、その純愛の縛りがどんどん作品の足枷になっているように思えます。

主人公の桃花(ももか)というのは主人公のタイプとしては当初から受動型、巻き込まれ型だった。
そういう人は波乱が来てこそ輝くタイプ。
性格もかなりの自己憐憫型で『なみだうさぎ』の書名通り、高い頻度で泣いている。
でも、それに見合うだけの事件が起きていたし、どんな困難にもめげずに鳴海への想いだけは貫いていた。
これでもかと見舞われる不幸の中でこそその涙は輝いていたのだ。

が、鳴海(なるみ)と両想いになってから、その性格や設定が悪い方ばかりに作用している。
今巻で延々と続く、鳴海と両想いになった幸福と、その一方で彼との関係性や距離感の難しさに悩む描写も全ては、両想いという最大幸福の前には些細なことなのだ。
それこそ今巻の作中で桃花が言うような世界が滅亡しちゃうとか、『1巻』のラストのような鳴海の引っ越しなどの事件が起きれば、桃花はヒロインとしてこれ以上ない活躍をしてくれるだろう。
が、世界の滅亡は冗談としても引っ越しネタ、遠距離ネタを先に使ってしまったのは失敗だったかもしれませんね。

今巻で初登場するちょっと口の悪い男の子・久遠斗真(くおんとうま)みたいな人に、意地悪をされて涙目になってるぐらいでは桃花は輝きません。
結論としては桃花は片想いの時の悩む姿こそ輝いていたが、両想いの時にはウザいヒロインに一変するということです。

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自分をよく見せたい鳴海には絶対に見せない表情
キャラの変化としては鳴海にも不満があります。
やはり「純愛旋風」の影響に作品自体が巻き込まれてしまった影響からか積極性が奪われてしまいました。
もともと口数は少なかったですが、桃花をヤキモキさせるためか、伝えるべき言葉すら伝えていない気がします。
はっきり言って桃花にあらぬ期待ばかりを持たせていた片想い編の時の方が言動ともに魅力的です。
桃花に様々な事件を起こさない退屈で読者には彼女がぶりっ子にしか見えなくなるというのに、鳴海はその辺り分かっていません。


今巻の内容としてはカップル2組 + ぼっちの男女 + 鳴海の妹・夕凪(ゆうなぎ)の計7人でクラスメイト・阿久津(あくつ)のいとこが経営している海岸の近くのペンションにお泊りをしにきた高校生たちの2泊3日の海旅行がメイン。
夏休みという書き入れ時にタダで泊る図々しい高校生たちの物語だ。

桃花は鳴海のことや彼との「初キス」のことで頭がいっぱい。
だから旅行中、友達の皐月(さつき)ちゃんが孤立していることに気づかないままでいた。

部屋で一人皐月が、「恋が分からないから」桃花たちが恋バナばかりで「正直 一緒にいるのが つらい」と告白するまで彼女の気持ちなんて考えもしなかった様子。
桃花が、一人みんなの輪から離れている皐月に気づいてフォローするとかあれば桃花の株も上がるのだが、気の回るようなタイプじゃないんで、こういうところも後手後手なんですよね。
自己憐憫型なので自分以外の悲しみには鈍感なのです。

片想い編の時から微妙な存在感の皐月でしたが、作者は皐月にどんな役割を与えようと思ったんですかね。頭数?
これで後半に、ほとんどの人が興味ない皐月の恋模様なんて描かれたら目も当てられませんでしたが、それだけは回避してくれて心から安心した。
今巻で出てきた漫画家志望の設定は少し動き出しますが…。