呉 由姫(くれ ゆき)(原案:ルビー・バーティー)
金色のコルダ(きんいろのこるだ)
第6巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★☆(7点)
強引に香穂子に恋人役を演じさせる柚木! なりゆきを心配した他の男子4人の助けや柚木の祖母の帰宅で、お芝居の行方は!? 一方、火原は自分の想いを…!? そして魔法に頼る自分に罪悪感を感じ始めた香穂子は…!? 男子5人の楽屋裏話&土浦の想いを描いた特別編も注目!!
簡潔完結感想文
- 柚木の本妻の座をかけた戦い。だがストレスの源が現れ、敵の敵は味方に。
- 休日に練習場所を探す公園で火原兄弟に遭遇。香穂ちゃんへの想いの名は…。
- 弦楽器3人と王崎先輩で子供たちへにヴァイオリン体験教室。つ、月森も⁉
被害者を助けたはずの探偵が今度は経歴詐称で追い詰められるサスペンスフルな6巻。
「心に決めた人」というその場しのぎの嘘に続いて、香穂子(かほこ)の長期的な嘘が露見しそうになる。
それによって香穂子の会いたくないランキングは柚木(ゆのき)と月森(つきもり)の順位が入れ替わってしまう。
そしてヴァイオリンに関する嘘は月森との関係の中で最も嫌悪されるものであることを香穂子は知っている。
これまで少しずつ築いてきた月森との関係は、このまま失われてしまうのか…。
冒頭は『5巻』から続く、柚木の婚約者候補とのトラブル回避編。
柚木にとって香穂子こそ最も大切な女性であることを見せつけることによって、
強すぎる相手からの熱意を奪おうという柚木らしい冷徹で周到な計画。
計画に穴があるとすれば、香穂子の女性としての説得力だろうか…。
役を演じているどさくさに紛れてセクハラをする柚木のあくどい一面も見られるが、
真骨頂は、柚木のストレスの源、柚木家のおばあ様が登場してから。
独善的で高圧的な人に対して、香穂子は思わず おばあ様に柚木の良いところを褒め連ねてしまう。
敵の敵は味方という状況の中、香穂子と柚木の心は連帯感を持つ。
柚木の婚約者にアドバイスした言葉
「あまりにも周りが見えなくなっている」
「色々なことを吸収して色々な出会いをして自分自身を磨いて」
は、そのまま自分の行く末を諦観とともに受け入れている柚木自身に還ってくる言葉だ。
だから香穂子の「柚木先輩だって これからじゃないですか」という言葉がストンと腹に落ちるのだろう。
そしてワザと冗談とも取れるような言葉を使って、本気の言葉を大事な人に伝えるのだった…。
テンポや面白さという点では柚木と香穂子ペアの会話が今は一番好きかもしれません。
そして、ふとしたキッカケで香穂子が「普通」のヴァイオリンを手にして演奏したことから始まる月森とのサスペンス劇場。
「普通」の香穂子が余りにもコンクールなどでの香穂子とかけ離れていることから疑念を持った月森。
彼の推理は真実といってもいいところまで肉薄している。『5巻』では監禁された月森を救出した名探偵として香穂子でしたが、今回は立場が逆。
名探偵・月森の尋問に香穂子は追いつめられる。
しかもこの件に関しては香穂子は不正の張本人。
捕まったら大変だ。
真相を自供しようにも、香穂子側の証言など、
「なお、この件に関して日野容疑者は『これは魔法なのだ。私は妖精の指示に従っただけ』などと訳の分からない供述をしており、捜査側は日野容疑者の薬物使用の可能性も視野に入れて捜査を進めています」と報道部の天羽さんによって学校新聞に張り出されてしまうだろう(笑)
ただでさえ、魔法の無い状態の自分の音色に落胆している香穂子に、泣きっ面に蜂状態で月森の追求。
しかも純粋にヴァイオリンを究めようとする月森の侮蔑を感じ取って、更に動揺する香穂子。
香穂子も自分の足でその道に踏み入れたところで、その道の先に月森がいると思っていたところに半分は自業自得の不正。
コンクール辞退も含めて、香穂子の岐路になりそうで次巻での展開が怖いところ。
このところメンバーとの雰囲気も良くなってきたところなので衝撃は大きい。
後半の1/4 ~ 1/3ほどはかなりの頻度で番外編が占めていることが多い『コルダ』。
でも、本編のこぼれ話ならともかく、漫画だけしか知らない私としては、後半頻出する「コルダ3」のように馴染みのない面々のお話も興味がない。
そして作者の初期短編も短編集としてまとめてくれよ、と思う。
まぁ、短編集の形態よりもコルダ内に入れた方が読まれる確率も高いし、1巻分のページも確保でき、「コルダ」名義の本が早く世に出るので、出版社にとってはメリットしかないのだろう…。
「金色のコルダ 特別編~男子楽屋裏~」
5者5様のお着換え模様。
月森が一番の被害者に見えますね。
本編を通じても柚木は火原にラブなのではないかとも読めるが、どうなんでしょう。
香穂子はあくまで女性で一番イジメ甲斐がある子、
長髪がまたお耽美な感じを醸し出してるんですよね。
「金色のコルダ 特別編~coda~」
休部中のサッカー部に「戻ってくるよな?」と問われた土浦は…。
これは、まんま『5巻』収録の火原の短編と同じですね。
「Another World」…
父親の死後4年に亘って「家」を守ることを第一に生きてきた若き女性伯爵。
息苦しい世界から、広い世界を見せてくれたのは…。
口さがない人なら、所詮は成り上がりの伯爵。とってもお似合いのお相手ですわね、と言うのだろう。
どの少女漫画でも赤髪の女の子というのは、特別な存在なのですね。
結局、恋のために自分優先で弟たちに家督を譲る、というか押し付けているのも無責任では?
まぁ若くしてこれまで頑張ってきたのですから、「トリッシュだって これからじゃないですか」ってところですかね。