《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

魔法が掛けられたのはヴァイオリンだけ。ドレスは王子の支払いで 王子好みのシンデレラ。

金色のコルダ 5 (花とゆめコミックス)
呉 由姫(くれ ゆき)(原案:ルビー・バーティー
金色のコルダ(きんいろのこるだ)
第5巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

学内外注目の音楽コンクール、第2セレクションの幕がついに落とされた!月森の両親出席の下、土浦、香穂子と演奏が進行していく。そのころ楽屋で最後の調整をしていた優勝候補筆頭の月森は、出番直前に…!? 大注目の特別編☆火原和樹・12歳の物語も収録!

簡潔完結感想文

  • 第2セレクション開幕。セレクションの度に参加者が揃わないミステリ。
  • 終幕後の月森のソロリサイタル。彼の演奏は香穂子の心に光と闇を運ぶ。
  • 貸しは借りの前払い。さっ、借金はその身体で払ってもらうよ☆(柚木)


セレクションの度に生徒から罪人が出る5巻。ゆくゆくは「金色のコルダ殺人事件」もあるかも⁉

第1回のセレクションでは香穂子の伴奏者が会場に現れなかったが、
今回は演奏者本人が会場から姿を消す。
被害者の名は何と月森!
両親が自分の演奏を聴きに来るプレッシャーから逃げ出したのか、それとも…。

名探偵・香穂子の見立てによると月森は自分の意志の逃亡ではない。
なぜなら被害者は大切にしている楽器を置いて、どこかに行ったりはしないはずだから。

自称・目撃者の証言がミスディレクションしている所もミステリっぽいですね。

周辺を捜索していた土浦警部は犯人の一味らしき者たちを目撃し、聴取をかける。
「壁ドン」で犯人をトキめかせ平常心を失わせ、自白を促す警部。
その行動の根拠は被害者・月森の音楽への姿勢の信頼である。

名探偵にとって事件は後味の悪いものになってしまった。
なぜなら時すでに遅し、月森のセレクション参加が認められず棄権扱いになってしまったから。
そして、セレクション終了後に一人で演奏する月森のヴァイオリンに、自分にはない強い意志を感じてしまったから…。

セレクションの結果、香穂子は上位に入るがそれを素直に喜べない。
喜べないどころか、罪悪感は日ごとに増すだけ。
香穂子は名探偵ではなく、彼女もまた罪人の一人なのでしょうか。

香穂子にとって魔法は、キャラ作りやメイク・整形みたいなものなのかな。
自分をよく見せる術は持っているけれど、本来の自分とはかけ離れている。
そして香穂子自身がその人=音楽を知っていくほど、好きになっていくほど、魔法が疎ましくなり、憎らしくなる。
柚木、月森に続いて香穂子のストレスが溜まらないといいのですが…。

そういえば同じくセレクションの結果、掲示だけでの扱いでしたが火原は3位に入ってるんですね。
金澤先生の発破の掛け方が良かったのか。
何を食べ放題したんですかね。
逆に冬海ちゃんは賭けの被害者と言えますね。
香穂子と火原はこの回が自己最高位なのかな。


『コルダ』はセレクション終了の鐘が本編開始の合図。
『5巻』後半では、その前から顔見せはしているけれど、本格的な活躍は初めての王崎先輩が登場。
が、その前に何だか似ている人が悪人だったこともあり、私の中での王崎先輩は「胡散臭い」。

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(左)月森監禁の主犯格 (右)無辜の王崎先輩
『4巻』で表裏が判明した柚木先輩なんかに続いて、笑顔を絶やさぬ この人も何かあるのではと勘ぐってしまう。
しかも、直前で似たメガネくんは悪行をしているし。

王崎先輩や吉羅理事など、(多分)攻略可能なキャラを出すのはファンサービスなのだろうけれど、私のような漫画世界だけの人にとっては、中途半端な登場と活躍に戸惑ってしまう。
漫画版でも終盤いきなり大きく舵を切って王崎先輩ルートを進んだりしたら面白かったけど…。


そして巻をまたぐ重大事件は柚木と香穂子の結婚(詐欺)。
火原に誘われたオーケストラ部の見学を一緒に行ってもらった見返りとしての偽装恋人の要請。
貸しと借りが見合っていません。
お金持ちほどがめついというのは本当だったんですね。

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てぇーへんだ てぇーへんだぃ 電・撃・結・婚!!
柚木と香穂子のコンビには他にはない緊張感があって、気に入り始めています。


何だかんだでコンクールメンバーの面々は団体行動が多くなっています。
もう、ぶっちゃけ香穂子がいなくてもお話に事欠きませんね。
この回(第23楽章)の扉絵みたいに5人組アイドルユニットとして活動しても絶対楽しい。
グループ名はプラネッツもしくはデイズでどうでしょう。
キャラも立っているし、今からでもアイドルユニット乱立のアニメ界に殴り込んで欲しいものだ。

しかし土浦は完全に月森の操縦法をマスターしてますよね。
かなり似た者同士の二人なので自ずと言われたくない言葉や弱点は分かってしまうのかもしれませんね。
月森には土浦のような柔軟性を伴う発想が出来ないので、土浦がやり込められることは少なそうだ。

さて、名探偵の次は恋人。香穂子は無事に演じきれますでしょうか。

金色のコルダ 特別編~Tempo Primo~」…
陸上部の有望新人だった中学1年生の火原。
だが、ある日、屋上でトランペットを吹く女性に出会ったことで違う道に全力疾走することに…。
火原もまたトランペットの魔法に掛かったのだろう。
火原の練習場所の多くが屋上なのも、この体験が関係しているのかな。
この短編は後々の土浦の体験と共通するものが多く。
ほとんどの内容を5年後の土浦の選択としても読めるだろう。
才能に嫉妬し、怒る役割はサッカー部の佐々木くん か。
少年・火原と土浦が登場するのもそんな意味も含まれているのではないかと。
自分からは何も言わずに失恋してるのも5年後との共通点だったり、する⁉