時計野 はり(とけいの はり)
お兄ちゃんと一緒(おにいちゃんといっしょ)
第7巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★☆(7点)
中間テストがあることをすっかり忘れていた桜。中ちゃんたちとテスト合宿をすることになったんだけど、そこで始まった恋愛相談話を正お兄ちゃんに聞かれてしまい…!? おまけに、正お兄ちゃんから「襲っちゃうぞ」発言が飛び出して!?
簡潔完結感想文
- 聞いていないと思って言ったことは大抵 聞かれています。仕事・勉学に支障が…。
- 「お兄ちゃん」が張ってくる予防線なんて こっちから突破しちゃうんだからねッ。
- 修学旅行編。妹を魔の手から守る兄と 妹を狙う女(っぽい)恋の暗殺者の剣戟。
セクハラ男に対抗するには、コチラから動かなければ、の7巻。
「セクハラ」と書いてみて初めてそういう感情になりましたが、正(まさし)のやってることってセクハラですよね。
妹の桜(さくら)も正のことが好きだからとか、シスコン漫画だからと桜主観を知って読んでいるから嫌悪感が全くなかったですけど、
桜が他のお兄ちゃんやクラスメイトを好きだった場合、寝ている妹を膝枕して耳かきとか「襲っちゃうぞ」とか、なかなか気持ち悪い言動にも思えてしまいますね。
しかも女装やオネエキャラを取り入れてるから性質(たち)が悪い。
お兄ちゃんオネエという立場も利用して、妹へ性的な言葉を投げつける20代中盤の男性、キモチワルイです。
更には妹の学校やデート先・旅行先、どこにでも現れる粘着質のストーカー体質ときたもんだ。
今まで男として煮え切らないヤツだと思っていましたが、もしかしたら嫌がらせに快感を覚えるタイプなのかもしれない…。
…と、独自視点を取り入れた感想文を目指したところ、何だか本書の印象がガラリと変わりました。
私自身は正にマイナスな感情を一度も持ったことありませんでしたが、正の言動や女装趣味の設定を苦手と思っている人には本書は地獄ですね。
そうでなくても、桜が好意をハッキリと示した後の正の行動は中途半端で モヤモヤする。
作者があまり得意ではないと思われる恋愛を解禁してからというもの、桜と正の恋愛になると持ち味である飄々としておかしみが少ないように思われる。
しかも単純な恋愛ではなく、この恋にはブレーキが多すぎるんですよね。
正はずっとお兄ちゃんとしての立場に揺れているし、桜の側も今は亡き母親と恋のライバルの構図が浮かび上がる。
正の初恋は母がゆえに桜は自分が母の代替品なのか、なんて思い悩む設定は要らなかったかなぁ。
そんな自制と抑制のお兄ちゃんに対して行動を起こしたのは桜。
何とお兄ちゃんに口づけをして襲ってしまう。
子供だからこその身軽で、少し軽率な行動なのだろうけど、物語を停滞から救ってくれたことに感謝。
ここまでハッキリとした行動で態度を示したわけですから、お兄ちゃんとしてではなく、一人の男性として答えを出さなければなりません。
そんな二人のキスを目撃してしまったのが、三男・剛(つよし)。
以前も書きましたが、恋愛解禁がこんなに早いのなら兄弟間の争いも見たかったなぁ。これまで正のツッコミ役として活躍していた剛ですが、これを機に正ライバルになって欲しかった。
駆け落ちでも奪略でもして桜の心を射止めようとすれば、中~終盤の(恋愛面の)動きの無さもカバーできたのに。正と剛は自由業だからということもありますが、表立って動くのはこの二人が多いですね。
今回は修学旅行先の京都まで付いてきて大騒ぎ。
もう兄妹間でも恋愛解禁なので、桜からお兄ちゃんを大々的に困らせることも可能になりましたね。
振り回されるだけでなく、振り回す。新時代のヒロインとして頑張ってください。
この修学旅行編、さすがに平日の泊まりなので、京都組は正と剛だけ。
もしかして本書には四兄弟じゃなくて動けるボケツッコミの二人がいれば事足りるってこと…⁉
まさか! 次男・隆(たかし)には万が一の時、正を真剣で斬るという大役があるし、
四男・武(たけし)も武で、桜の様子を敏感に察して、陰で動いていたこと、忘れないよ…。
「白雪姫の童話」…
小説家志望の男性の部屋にやってきたのは「白雪姫」⁉
男性が終わらないお話を描き続ける理由とは…。
『6巻』収録のデビュー作「サンタのいる街」同様に、ほろ苦い現実にファンタジーをコーティングしたようなお話。
境界線が入り混じり過ぎて後半の展開がよく分からなかったなぁ。
目覚めのキスは淡い初恋の自覚と成就なのか?
未完の小説が現在の主人公に影響を与えたように、
最初の小説をハッピーエンドで完結させたことが現実にも影響したとも考えられる、のか…?