遠山 えま(とおやま えま)
わたしに××しなさい!(わたしに しなさい! または わたしにバツバツしなさい!)
第12巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
おまえのゆがんだ愛情 わたしに教えてもらうぞっ!!
時雨とすれちがったまま夏休みになり、モヤモヤな雪菜の前に現れたのは、時雨の「凶悪すぎる弟」氷雨だった! 時雨を嫌い、マミをいじめる氷雨を見てあることに気づいた雪菜は…⁉
簡潔完結感想文
時雨OUTの氷雨INで、雨が雹へと変わり、身体を痛めつける12巻。
少女漫画的「ラブ」の結論は見えているのに、それでもこれだけ面白くさせる手腕は本当に素晴らしい。
最初から最後まで雪菜の行動には疑問符が付く、という唯一最大の欠点はあるものの、どの巻を切り取ってもちゃんと面白い。
4巻に1巻ぐらい入る過激なエロ要素に目を奪われがちだが、全体の構成が本当に整っていることに感心する。
全19巻ながらも無駄な部分や間延びしている部分が少ない少女漫画と言えるだろう。
しかもヒーローである時雨を途中退場させても面白いのだから、これはただ事ではない。
新キャラ・氷雨は、夏休みは別荘でお勉強する兄・時雨と入れ替わるように登場した強烈なキャラクタ。
どうやら人を貶めることに闘志を燃やす迷惑極まりない性格。
ターゲットは時雨が大事にしている雪菜、時雨を大事に想う(想っていた)マミ、そしてマミの周囲になぜかいる晶。
要するに全員気に入らない。
しかし「ガキ」っぽいところも見受けられるので、なぜだかそんなに怖くない。
小物感ともいえるけど、生き方に不器用さが垣間見られるから、安心できる。
雪菜は相変わらず肝心なところをスルーする。
時雨のことを考えると涙が出たり、小説が書けなくなったり、様々な症状が現れているにもかかわらず、時雨への気持ちはまだはっきりとは自覚できていない。
自分が肉体的感覚からラブを追求する、というアプローチ方法は自覚しているみたいです。
だから官能小説のような熱い吐息にまみれた描写になってしまうんですね。
ドルチェの小説を読んで激甘だと揶揄するようなこと言ってましたが、主戦場がそういう場所なんでしょうが、とツッコみたくなる。
そういえば以前、恋人は出来たが男女交際の仕方が分からない人が少女漫画を参考にするという不思議な構造の『少女漫画』を読んだけれど、雪菜も少女漫画を参考にすればいいかもしれない。
甘いモノから刺激的なモノまで揃っております。
またもや男性に呼び出されたらホイホイと誰もいない家に入り込む雪菜。少なくとも4人目4回目。
間違いが起きないことが奇跡、もしくは少女漫画という見えない倫理観のお陰だと分かっているのだろうか。
こういう時に晶を呼び出さないのは、そもそも頭に浮かばないからか、それとも頼りないからか…。そんな晶は晶で何かを悟った様子。
女王様が強い、というか単独行動上等の雪菜なのでナイトなど必要ないと、いうことか。
けれど、自分よりも弱く、誰かの助けを求めずにはいられない人にとっては、晶もまたナイトになる。
晶は見た目に反して割と好戦的な応戦をしますよね。
時雨にしろ氷雨にしろ偉そうな態度をとる兄弟には容赦なく嫌味を返している。
そうやって毎度助けられるうちにマミは完全に晶に好意を持つようになっていく。
晶は例え自分の想いが届かなくても雪菜の傍にいそうな気がするので、それを心身ともに引きはがすのが大変そうだ。
肉体的には電話一本で助けて―!と呼べば来てくれるだろうが、心の問題は時間がかかりそう。そしてマミが髪にずっと付けていたピンの謎が明らかに。
これも初登場からかなり経っての真実で、それを語るまで人気を落とさずに連載を続けられていることが凄い。
漫画の絵としても巻によって作者の流行があるのかなと思う顔の描き方の違いは見受けられるが、どんだけ連載を重ねても絵が雑だったことが一度もないのが凄い。
作品の人気が出ると、漫画の連載以外の仕事が増えたりするせいか、手を抜いてページが白っぽくなったり、表情、特に目の描き方が簡略化されたりすることがあるけれど、この作者にはそれがまるでない。
描く事への熱量の高いレベルでの維持は本当に尊敬します。