《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

或る日5人の若者が我が家に来て ”お嬢さんを僕、俺、私に下さい”と言った。

私がモテてどうすんだ(8) (別冊フレンドコミックス)
ぢゅん子(ぢゅんこ)
私がモテてどうすんだ(わたしがもててどうすんだ)
第8巻評価:★★★(6点)
   総合評価:★★★☆(7点)
 

寝ぼけて花依にキスをしてしまった七島。必死に謝る七島だけど、怖がる花依は全力で拒否!七島、挽回できるのか――!!?さらに花依の父が初登場! 花依の逆ハーレムな状況を知った父は「俺が男たちを見極めてやる」と言い出して……!!?ぢゅん子先生による超豪華な描き下ろし!

簡潔完結感想文

  • It's show time! 2次元キャラが3次元迷惑オタと闘うカオスなショー。
  • 父帰る。2次元キャラが3次元のハエどもを駆逐する年頃の娘の脳内。
  • 僕かえる、いやイグアナ。四ノ宮回2。彼に自活は無理だと思われ…。


もう個人を掘り下げても水の一滴も出ないので、家族にまで手を広げた8巻。

『前巻』に続き、高熱の七島に唇を奪われた花依の動揺から物語は始まる
この行動全体が七島が七島たる所以でしょう。
熱にうなされて現実との区別がつかないと花依に強硬な手段を取れない七島。
そして熱にうなされると強硬な手段を取ってしまう七島。
どちらも花依に嫌われる要素たっぷりだ。

そんな七島も誠意ある謝罪と、妹の存在によってどうにか花依と着ぐるみショーに出演する事が出来た。
更にはショーのピンチも仲間たちの協力と、自身のアニメ知識によって乗り越えられた。
アニメのジャンルは違うけれど、歌って踊れる七島もなかなか濃いオタクなのかもしれない…。
彼の最大のチャンス到来でもプラマイゼロという結果が悲しいところ。
これ以上、彼に活躍の場があるとは思えない。
アニメの酷似キャラのシオンの復活ぐらい(白々しい…)?

今回、七島はちゃんと汚名返上したとはいえ、七島事件の後の話で花依がなんの屈託もなくナンバーズの面々と一緒にいるのがやっぱり引っ掛かる。
仲良しゴッコの存続のためには後腐れのないリセット機能はとても便利だけれど、物語としての進捗も一切ないのは読者に虚無感を抱かせてしまう。
作中の季節も何巡もしてるし、多分、最後の正式ルート以外は夢や幻のような扱いだ。
ゲームなら全キャラ攻略の喜びもあるだろうが、漫画だとただの先延ばしである。


続いての家族紹介は花依父。
国家機密に関わる仕事に就いている設定の花依父が、お正月に単身赴任(?)先から我が家に帰ってくる事で巻き起こる騒動が描かれる。
花依父が未だに娘の変貌を知らないというのが今更ながら面白い。
祖父母にも会ってるし、親族はこれで最後か。
そして現在の花依が在りし日の妻に似ているため変貌には父はそれほど驚いていないという…。

f:id:best_lilium222:20200604021449p:plain
父もまた どんな姿であろうと花依を溺愛している
その代わりに花依の周辺に複数の男性=ナンバーズ=ハエにたかっている事が気になる様子。
花依兄の資料を手にナンバーズがバイトしている遊園地に潜入調査する。
この資料、大雑把すぎるけれど、花依兄の各人の一言印象が面白い。
やっぱり七島が高評価なんですね。
花依兄に気に入られている、というのも七島の数少ない武器かもしれない。
低評価の5・6も手厳しいが、蚊帳の外の4も哀れだ。

ある事件をきっかけにナンバーズが好青年であることを知り心を許した父。
父親という現実での最大の難関をクリアした彼らだったが、ライバルは文字通り次元が違ったという、いつも通りのオチ。
彼らを焚きつける言葉を残して花依父はまた海へ帰っていった。
父親にとっては娘にハエがたかるより、娘の心が別次元にある方がショックなんですかね。


後半は四ノ宮回。
彼も家族構成やペットの存在が明らかになる。
なるほど温泉での乳首すら家族構成の伏線だったんですね。
珍しく、というのも失礼だが、四ノ宮にペットがいる設定は前から出ていましたよね、名前も。
だが、まさかの爬虫類には驚いた。

花依の絶対的な拒絶と、それによる四ノ宮の決意。
花依よりも優先するものがあるのか という驚きはあるが四ノ宮にとってそれほど大事な存在なのだろう。

この頃から四ノ宮特有の拗ねたり恥ずかしかったりする時のデフォルメ顔が頻出しますね。
後半は本来の綺麗な顔より、このキャラ絵みたいな感じの方が印象が強い。

f:id:best_lilium222:20200604021638p:plain
美形よりもヘタレがキャラ立ちしている四ノ宮
四ノ宮のペット・トールの脱走事件によって描かれる花依の強さ。
困難に直面した自分や他者を奮い立たせる力が彼女にはある。
間違っても好きな人の大事な存在だから、私も克服しようという動機ではないのが悲しいところ。
この騒動で得たもののはナンバーズの結束が強くなったのと、四ノ宮がまた花依に恋に落ちたこと。
花依自身に心境の変化はない。
頑張れ四ノ宮、相当に。

あとは次巻に向けての「引き」だろうか。
『前巻』辺りから単行本の構成を踏まえた展開を持ってきていますね。
7と4じゃ恋愛面の引きとして弱いのが悲しいところ。
水の中に落ちる大切なもの、というのが2回連続で共通するところ。
この時の花依は『前巻』や七島と違って高熱出ないんですね。高熱って便利なツールですね。