《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

彼女は知らない。彼の初めてのキスの相手が自分ではなく、彼女の友達だという事を…。

俺物語!! 5 (マーガレットコミックスDIGITAL)
作画/アルコ 原作/河原 和音(かわはら かずね)
俺物語!!(おれものがたり)
第5巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★★☆(9点)
 

体育祭で、リレーの選手に選ばれた猛男とまりや。まりやは一緒に練習するうち、何と猛男のことが好きになってしまった…。ライバル出現に戸惑う大和! 猛男と大和のふたりはこの危機を乗り越えられるのか!? そして、大和が心待ちにしていた猛男のバースデイ到来! 忘れられない誕生日にしてあげたいと思う大和は、猛男との初キスを心に決めるが…!?

簡潔完結感想文

  • 片想いの西城を通すと気は優しくて力持ち猛男を良さを再確認。
  • 俺史上2回目の告白される。だが今回は断らなくてはならなくて…。
  • キス回。誕生会。キスは一生の思い出を、トラウマを生むんです。

猛男がますます大和の事を好きになる5巻。

猛男は1巻につき20回、大和が何をしてても「好きだ」と思ってるんだから、そんなの分かりきってるよと思うだろうけれど、今回はその深化が見られる回。

本書では『前巻』から続く、クラスメイトの女子・西城が猛男に恋をしている疑惑に決着が付けられる。
この物語なので猛男カップルの気持ちは揺るがないのは分かっていたが、その顛末での作用が少し違った。

私はてっきり少女漫画にありがちな猛男を明確に好きな人が現れたことで、大和が嫉妬の心にさいなまれ、自分の暗い気持ちに悩む、という展開と予想していた。
しかし今回の展開では、大和に西城の好意を人間としての好意だと思わせておくことで、その問題は脇に置いた。
彼女のいる猛男に恋をする辛い状況の西城に告白を促した砂川。そしてついに自分の本心を猛男に伝える西城だったが…。


俺史上2人目の自分への好意を打ち明けてくれた西城という存在に猛男は不器用なりに向き合わなければならなくなった。
大和と恋愛している猛男を見て、砂川が恋愛は人を成長させるね、と言っていたが、本当にその通りで、猛男は眠れなくなるほど悩む。自分を好きだと言ってくれた人を大事にすることによって自分の配慮の無さや考えの至らなさを猛男が自覚し、それを克服せんと思考するほど、猛男は賢くなっていく。
実戦で失敗しながらも経験値を重ねていけば砂川よりもスマートな人間になる日も近いかもしれない。

自分を好きになってくれた西城が登場する事によって、猛男は大和が自分を好きと言ってくれたから好きになったのではなく、他の誰でもない大和を好きなんだという事を自覚する。
事あるごとに「好きだ」と思っていたけど本当に好きが積もってたんですね。
その想いを伝えに猛男は大和の女子高に走る。
猛男が大和の学校に直接出向くのは初めてかな。
猛男の身体に駆け巡ったのはそれだけ強烈な想いなのだ。

ぶっちゃけ西城の好意よりも、砂川が猛男への親愛を素直に認めている点に萌える。

西城に対しては砂川は当たりが強い。
猛男の勘の悪さを利用する西城に怒ってるのかな、などと思っていましたが、後々それも西城のためだという事が分かる。
さすが名カウンセラー。
そしてアフターフォロー付きのサービスだ。さすが砂川。

でもその前の自分の本心を偽ってまでも猛男の傍にいようとする西城に対する砂川の視線は怖い。
ヤツはマザコンみたいに猛男コンを患っているに違いない。
敵には回したくないものだ。
しかし猛男一味(大和と砂川)は、情報共有が実に迅速ですね。
西城さんにしてみれば「人間として好き」情報が出回っていること自体が赤面ものだ。


そしてクリスマスがあって、年明け元日は猛男の誕生日である。
今回はいよいよキス問題に直面。
ここで読者には公然の秘密となっている砂川と猛男のキス問題がぶり返される。
…うん、しましたね、これは。悲鳴だけで未遂かなと思ったこともありましたが、どうも猛男のスマートなやり方を見ると相当練習を重ねたのではないかという疑問も湧き上がる。南無南無。

砂川の数少ない黒歴史? それとも青春の一ページ? これは絶対に大和には言えない秘密。

肝心のキスは二人の性格が表れていますね。
恋に関しては何かと用意周到で計算高さを見せる大和と、勘の鈍さを見せる猛男。
今回も砂川がいなかったら大和は恥ずかしさに押しつぶされていたかもしれない。
全速力で走る猛男は良いですね。
彼が走る時は、人を想う時でもありますから。
誕生日おめでとう。


にしても砂川姉といい西城といい、大和は猛男を好きな人と仲良くなりますね。
とっても罪な人ともいえるけど、それは地下アイドルとか深夜ラジオとか限られたジャンルの希少なファン同士みたいな共通項が会話を弾ませるのかもしれない。
多分それは砂川にも適用されることであって、大和はもちろん今回の西城へのお節介ともとれる助言も気持ちが通じる部分が多いからだろう。