《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

会長がメイドであることが露見する危機もなく、単に「会長」と「メイド様」の二本立て。

会長はメイド様! 3 (花とゆめコミックス)
藤原 ヒロ(ふじわら ヒロ)
会長はメイド様!(かいちょうはメイドさま!)
第03巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

体育祭も後半戦開始。仮装競争で美咲&碓氷が大変身!? 一方、メイド・ラテでは企画が目白押し!“戦隊モノ”や“妹DAY”と、美咲の知らない世界が広がります☆ 更に、ネットアイドル・AOIや、謎のメガネ男・叶が登場!ご主人様も大満足!!

簡潔完結感想文

  • 文化祭の内容に口出しした美咲が、体育祭の競技には関与しない矛盾。
  • メイド喫茶コスプレ喫茶になっていき、タイトル詐欺が横行し始める。
  • 学校・喫茶店 双方に個性的なキャラを続々投入して、一層 騒がしくなる。

者を二次元好きに絞ってきたのかな、の 3巻。

『2巻』でも書いた通り、最早メイド喫茶というコンセプトは崩壊し、ただ店員がコスプレをする店に成り果てている。葉鳥ビスコさんの『桜蘭高校ホスト部』はエンターテイメントとしてコスプレをして女性客を喜ばせていたので まだセーフだが、本書は『メイド様!』がタイトル詐欺になってきている。

ヒロイン・美咲(みさき)が生徒会長でありながら、放課後はメイド喫茶のメイド様という2つの顔があることが本書の売りで、その秘密の漏洩を美咲は怯えていたはずなのだが、『3巻』は危機感が薄い。完全に学校とメイド喫茶がバラバラの舞台として描かれており、どちらの世界でも美咲と碓氷(うすい)のカップルが どちらかの世界で起こる問題に対処しているだけ。『3巻』の表紙はメイドの面々だが、半分ぐらい知らない人状態なのが気になる。作者の中では区別がついているんだろうけど、印象的な場面が無いから読者が自然と彼女たちを知るのは難しい。

『3巻』で読むべき所は碓氷が施されてきた教育と兄弟構成に兄がいるという2点のみだろう。あとは読まなくても大丈夫(笑) 今後も登場する新キャラが出てきたりするが、基本的に美咲が頭でっかちな割に仕事の出来ない無能で碓氷が彼女をサポートするという立ち位置は同じ。美咲に関しては不器用すぎて可哀想でもあるが、その割に何でも自分で対処できると思う点が好きになれない。


えば『2巻』から続く体育祭編では、美咲は他の女子生徒を守るために自分で全て背負っている。美咲の こういう不必要なものまで背負っている感じが苦手だし、何も競技に出場していない状態の女子生徒たちは果たして この体育祭が楽しいのか疑問に思う。そもそも女子生徒に不利になるような競技を どうして生徒会長の美咲が通しているのかも分からない。

相変わらず美咲を「正義」にしたくて他の男子生徒を悪者にする感じも苦手だ。男子生徒の反感は美咲の強権的な手法にも問題がある。それに絶対的な権力を持つ生徒会長の美咲が、男女の差や運動能力の差なく、誰もが楽しめるようにどうして競技の見直しを最初にしなかったのかも疑問だ。学園祭の話では出店から携わっていたのに、体育祭は美咲は学校のルールに従っているのが気になる。真面目に読んだらダメなんだろうけど、美咲が学校行事や伝統に巻き込まれる展開は これまでの話との整合性が取れていないのも気になる。

美咲は頑張っているのは確かだが、空回っているのも確かで、それを繰り返すことによって彼女が成長していないことが強調されてしまっている。ヒーローが格好良ければ それでいい という人もいるだろうが、私は最終的に女性側が無能に描かれている本書が好きになれない。美咲からヒステリックなゴリラ感が消失するのは いつになるのだろうか…。

仮装競走で学校でもコスプレ。コスプレはファンサービスになるし見せ場の演出に便利なのか?

いては舞台を変えてメイド喫茶。「メイド戦隊」を組むことにした店長は碓氷に美咲の担当カラーを考えてもらう。この辺から碓氷の背景(家庭環境)が少しずつ語られる。今回は教育について、そして その次の話では兄弟構成が判明する。碓氷が完璧な王子様で、美咲がそれに渡り合える唯一の存在、という結末なのだが、周囲の称賛がわざとらしくて白泉社特有の選民思想を感じた。

続いてもメイド喫茶で「妹DAY」で妹になろうとするが不器用な美咲は自分が甘える演技が出来ない。それに対し店員の ほのか がキレて、責任感の強い美咲は妹の習得に励むという お話。
だが結局、美咲は妹キャラが習得できず終わる。これは彼女が真面目すぎるから。こうして「妹DAY」は他の店員たちに任される。これで自分には出来ないことを他者に託すことを覚えてくれればいいが。作者は詳しくないと言っているが、オタク的な専門用語が飛び交っているのが気になる。どんどん内輪受けが酷くなって作品の間口が狭くなっていっているような気がする。


13話から店長の兄の子供・葵(あおい)が登場する。中学生の葵はAOIとして活動するネットアイドルの新星でもある。自由奔放な葵は何もかも自分のペースで進めようとし、一目見た碓氷を攻略しようと躍起になる。ちなみに この回から碓氷を表現する言葉として「フェロモン」が使われるが、私はフェロモンを感じないので「?」となる。オタク用語もそうだが、読者がどう思うかの前に作者は そういう言葉でキャラを定義しようとしている節がある。他にも「色魔」という言葉は日常で使っている人を見たことがない。

葵はメイド喫茶に集まる男性陣の心を瞬時に捉えるが、美咲しか目に入っていない碓氷は無反応。そこで今度は碓氷が興味のある美咲を研究対象にするのだが、彼女からも軽く あしらわれる。そこで碓氷に強引に身を寄せるが、逆に碓氷から押し倒され、それを美咲に救出される。葵を救出した美咲だが、葵にビンタを食らわせ、彼女の手法を糾弾する。葵は「可愛い」が好きな自分を嘲笑した周囲を見返すために、男性に復讐していた。
葵に関して最後の秘密が明かされて この回は終わる。御曹司と同じく こういうキャラも白泉社作品に一人はいるなぁ、って感じである。設定も含めて二次元が好きな人のためのキャラという感じで私は あんまり。

新キャラによって碓氷と美咲の良さが掘り下げられる。フェロモンがあると言えば あるんです!

ビックリするほど短い生徒会副会長・幸村の話を挿んで、生徒会メンバーに次々と怪現象に襲われる。犯人の男子生徒は催眠術を使うようで、犯行動機は この学校からの女子生徒の排除。そのために学校の心臓である生徒会長の美咲を狙う。

そして美咲にも泥酔の催眠がかけられ、その様子を教師に見られて問題になるというのが犯人の筋書き。だが教師が呼ばれる前に碓氷が美咲を回収する。その犯人を突き止めるのは碓氷の役割になるが…。うーん、美咲に良い所がないなぁ…。