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悪魔の所業 その2。彼女が14歳なら親のように接するが 17歳ならキスを迫るし結婚もOK!?

花と悪魔 2 (花とゆめコミックス)
音 久無(おと ひさむ)
花と悪魔(はなとあくま)
第02巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

ある日、フェルテンから誕生日を尋ねられたはな。でも、自分の誕生日が分からなかったはなは、ビビに誕生日を決めて貰いました。そして迎えた誕生日だというのに、ビビははなを置いて、朝からフェルテンと二人でお出かけしてしまい…!?

簡潔完結感想文

  • 本格連載スタート。季節ネタと新キャラに頼るのは白泉社作品の王道展開。
  • 愛の象徴・花のネックレスや17歳なら恋愛対象など大事な要素が出てくる。
  • 屋敷破壊以外にキャラの無いエリノアは魔界に帰った方が良かったのでは?

ロインの満足は女性の悲しみの上に成立している 2巻。

『2巻』収録分から本格連載がスタートし、ゲストキャラがレギュラーに昇格したり、新キャラを投入したり、また後に重要な役割を担う人物がゲストキャラで登場したりと人の輪が広がっていく。登場人物の数がやたらに多いのが白泉社作品の特徴だが、当然 中には跳ねるキャラもいれば不発に終わるキャラもいる。
大悪魔・ビビに人間の血を供給する菖蒲(あやめ)は大人の女性でありながら、ヒロイン・はな をライバル視する切ない立ち位置で良かった。逆に言えば、そんな完璧な大人の女性ではなく、天真爛漫な はな が選ばれる展開が、ヒロインを自分と同一視しがちな読者にとっては快哉を叫ぶところなのだろう。

残念なキャラは今回が初登場のエリノアだろう。ビビの幼なじみ・フェルテンに全力で恋をする女性なのだが、彼女の魅力が分からないまま物語が終わってしまった。今回の騒動を経てエリノアは新たなレギュラーになるのだけれど、特に活躍することもなく、ただ居るだけのキャラになったのが残念。よくテレビ番組で、どうして この人を追加レギュラーに起用したのだろうか、という人選が見られるが、エリノアは そんな感じの人だった。作者は どういう勝算があって彼女をレギュラーにしたのだろうか、その辺を問い詰めたい。

フェルテンのためなら屋敷を破壊するエリノアは、『うる星やつら』のラムちゃんみたいな突撃少女をイメージしたのだろうか。でも今回の話以外で彼女は爆発するようなことはなかった。それなら彼女がセミレギュラーとしてネタに困ったら魔界から騒動を持ち込む、みたいな お騒がせキャラになれたら良かったのだが、下手に地上に残ってしまって身動きが取れなくなったように思う。彼女が輝くのはレギュラーじゃなかったのではないか。


して気になるのが、話の基本構造。『1巻』の感想でも書いたけれど、幼稚な はな のワガママを聞くという内容が多く、彼女が愛されていると満たされる気持ちよりも、甘やかされているという嫌な気持ちが先行してしまう。それに はな が落ち込んだり失敗する原因にビビの気遣いの足りなさがあるのも やっぱり気になる。彼の心が狭かったり、人と向き合うことに億劫がったりすることが はな を悲しませ、それをビビが自作自演で助けている印象が否めない。

ただ この欠点は『2巻』の後半から徐々に改善されているように思う。

それでも はな の幸せが菖蒲やエリノアの不幸と表裏一体のような構造は気になる。飽くまで はな は無自覚なのだが、彼女は間違いなく女性たちを傷つけている(エリノアには後に謝罪しているが)。彼女たちは はな との交流で あまり得をしていない。はな ばかりが無邪気な聖女のように描かれていくのに不平等を感じる。
無自覚最強ヒロインが もてはやされる白泉社作品だが、はな も その例外ではない。ビビが無自覚に人を傷つけるのは悪魔だから仕方がないという逃げ道もあるが、200年生きている者の思慮深さや経験値を一切感じない点が非常に残念なヒーローである。

2人の特別な関係を証明するために、周囲を巻き込んでいく迷惑系カップルに見えてしまう話の構造が序盤の欠点ではないか。


中では新年を迎える。
はな が着物を着たいとワガママを言って、ビビは いつも吸血させてもらっている女性を屋敷に呼ぶ。ここから彼女に二条 菖蒲(にじょう あやめ)という名前が付く。菖蒲はビビの寵愛を ほしいままにする はな に対して思うところがあるのだが、はな の素直さに触れ、菖蒲は はな に感化されていく。

そこから再び はな のワガママに付き合って全員で初詣に向かう。その境内で はな はビビたちと離れてしまう。ビビは昔も こんなことがあったと回想する。毎回、子供の頃を回想するのはノルマなのか。

ようやくビビを見つけた はな は彼と菖蒲が抱擁しているのを目撃しショックを受け、倒れてしまう。その直後、菖蒲はビビに置き去りにされ、ビビの目には はな しか映っていないという、はな の無自覚な幸福と、菖蒲にとっては残酷な現実が描かれる。ただし、はな が倒れたのは飲んだ甘酒で酔ったからで、菖蒲とビビの抱擁もバランスを崩した菖蒲をビビが助けただけだった。

なんだか菖蒲ばかりが損をする話だなぁ。はな が勝手に落ち込んで、手厚くフォローされて、という展開も好きじゃない。それにビビも はな との外出でトラブルがあるのを経験則で学んでいるなら、同じような失敗をしないように自分が気を付けるべきなのに。

この話で良かったのは おみくじの結果と恋愛の勝敗は一致しないという皮肉な現実。神の宣託など悪魔には関係ないのだ。


いては誕生回となる。拾われた はな には正式な誕生日がない。フェルテンに誕生日を聞かれて はな は そのことについて考える。
はな が拾われた=捨てられたのは雪の日だったからか、はな は雪に対して寂しさや恐怖を抱いている。雪が降るのを見上げながら はな は自分の誕生日を決めることにする。

一方、ビビは はな が年を取ることは、自分と過ごす僅かな時間が更に減ることを意味していると考えているので不機嫌。

そんな中、はな が屋敷の敷地外に出たと聞き、ビビは嫌々ながらも彼女を捜索する。はな は自力で戻ってくるが、彼女はビビのために冬に咲く花を探していた。それは自分を拾ってくれたビビへの感謝の印。誕生日は自分が祝われるものではなく、産んでくれた親に感謝をする日、ということなのだろう。

そしてビビも残り時間に怯えるのではなく、積み重ねた時間を慈しむよう発想を転換する。そして この翌日を はな の誕生日に決定する。


生日当日。ビビの外出に はな も同行しようとするが、ビビは彼女に自宅に留まるよう厳命する。これはビビが はな の誕生日プレゼントを ゆっくり選ぶためであった。

この回で登場するのが花屋の息子。この時は名前もついていないが、菖蒲と同様、後に重要な人物となる。こうやって出てきたキャラを再活用していくのは面白い。

女心を分からないビビは菖蒲に はな の誕生日プレゼントについて相談に行く。そんなビビのデリカシーの無さをフェルテンが詫びる。ここでのフェルテンと菖蒲の会話は大人の男女のもので、この2人が結ばれる未来が見えたような気がした。ただ悪魔と人の間柄なので、そう簡単にはいかないし、その組み合わせはメインの2人で十分なのだろう。菖蒲とのフラグを打ち消すように、この後、フェルテンには婚約者が登場する。

ビビに祝ってもらいたい はな が捨てられていたのと同じ場所で泣いているとビビが現れる。わざわざ一緒に出掛けたはずのフェルテンと別れたのは1話目、14年前の出会いを忠実に再現するためだろう。

そして はな はビビが自分へのプレゼントを買いに出掛けていたことを知り、ビビと一緒に お祝いしたいという はな の願いは すぐに叶うことになる。ビビが選んだのは薔薇の花(?)のネックレス。ビビが はな のことを考えて選んだ最高のプレゼントである。これが2人の愛の象徴となる。

しかし悪魔は どうやって現金を入手しているのか。魔術で葉っぱを紙幣に変えている!?

に登場するのはフェルテンの婚約者・エリノア。彼女もまた、ビビとフェルテン同様、フェルテンとは50年ぶりの再会だという。この世代の悪魔にとって50年前が子供時代の終わりなのだろうか?

この話で重要な伏線になるのが、エリノア登場前に交わされるビビと はな の会話。相変わらずビビは菖蒲の家に通っていて、はな はそれが不満。はな もビビと一緒に寝たいと言い出す。それに対しビビは あと3年くらいしたらと条件を出す。17歳前後、というのがビビの恋愛の範疇らしい。これは最後まで揺るがないビビのラインとなる。

フェルテンは博愛主義で誰かと まだ結婚したくはないがエリノアは結婚を望んでいた。そこでフェルテンは出まかせで人間の女性との婚約があると言ってしまう。フェルテンは菖蒲にその役目を頼むが、彼女に何も得がないので拒絶。ここで菖蒲が恋人役を偽装したら2人は結ばれただろうか。

フェルテンは女癖の悪さから爵位を格下げされた過去がある。現在はクラウスと同じ男爵の身分だが、そう考えるとフェルテンはクラウスよりも能力的には優秀なのだろうか。その降格人事が発端となり、フェルテンは自分の本能に従う旅に出たのが50年前だという。そこから彼は魔界と地上の両方で女遊びを楽しんだ。だが久々に魔界に帰った際に長老に捕まり、ビビの奪還を命じられて1話目に繋がる。


分によくしてくれるフェルテンのピンチを救うため、はな は恋人役に立候補する。だが見た目に無理があるので、魔界の秘薬である成長薬を服用することになる。それを前に はな はビビから贈られた愛の象徴のネックレスを一時 返却する。ビビへの愛を忘れて役に没頭するためだろう。

こうして はな は3年ほど成長した通称・はな弐號(にごう)となる。「弐號」はビビの恋愛対象で、彼はフェルテンに嫉妬を隠さない。だが はなは そんなビビの心境に気づかず、役割を全うする。こうしてエリノアを諦めさせることに成功した はな。しかし ビビは弐號の存在に心が落ち着かず、彼女を拒絶するような態度を取ってしまう。この話は はな のワガママで落ち込むのではなく、ビビ側の勝手な心の動きで はな が傷ついているので落ち込みに共感できる。

落ち込んだ はな は庭でエリノアに遭遇する。そこでエリノアが本心からフェルテンの恋人に傷ついていることを知り はな は罪悪感を覚える。この時、偽装とは言えライバル関係にあるにもかかわらず、はな は あっという間にエリノアの心を掴む。菖蒲・フェルテン・クラウスなど来訪者の心をすぐさま掴むのがヒロインのお仕事なのだろう。

はな は成長したが(左)のページの男性陣は若返っているように見える。フェルテンは女性化も!?

な はフェルテンを助けたい気持ちと、エリノアを悲しませたくない気持ちが拮抗する。またビビはフェルテンへの友情と、彼のこれまでの功績に感謝を示し、自分の権威を使ってフェルテンを地上に留まらせる。ビビは全てを一瞬で解決するが、その解決に乗り出すのが遅い。殺人を止められない名探偵のように無力である。最初からビビが裁定に動けば誰も傷つかなかったのに(話はすぐに終わってしまうが)。

こうしてフェルテンへ恩返ししたはずのビビだったが、はな は自分の物だと これまでの演技を台無しにする。ビビは はな にネックレスを掛ける。それは2人の愛の象徴で、その返却により はな は嘘から解放される。ビビに触れたいという はな の願いを聞き入れ、ビビは彼女を抱き寄せる。それどころかキスをしようとしたのだが、そこで薬の効果が切れる。17歳でなければ恋愛対象外なので、ビビは そこで冷静になる。ロリコンではないぞ、という話なのかもしれない。


の翌日、はな は屋敷の庭で黒い子猫を発見する。

この回で ようやく はな はエリノアに正式に謝罪をしている。その後、エリノアは はな と恋バナをする。この時、エリノアは悪魔と人間の結婚は無理だと告げている。なぜ無理なのかは最後まで分からない。エリノアは はな の恋愛の相談相手として置かれたのかなぁ。でも その役割はフェルテンもしていて立場が重複している。はな が幼いから、エリノアの同性の強みが出せなかったのかなぁ…。

黒猫をビビに見せると彼は過剰な反応をする。どうやらビビは猫が怖いという。意外な彼の弱点である。そして気に入らないから猫を殺すことを厭わない悪魔のビビ。だが はな が一人で面倒を見る黒猫もまた花を枯らす悪魔であった…。

ビビは猫が嫌いだから、猫と許可のない人間を外から屋敷に入れない結界を施している。そうなると『1巻』の感想で書いた通り、14年前に はな が屋敷の敷地と思われる場所に捨てらていたことと矛盾が起きるような気がしてならない。


と一緒に過ごす はな は次第に体調が悪くなる。それを知ったビビは はな に部屋に駆けつけ、猫に人間の生気を奪う魔力がかけられていて、このままでは はなが死ぬと告げる。それでも はな は猫を手放さない。この猫は魔術の媒介に使われただけで罪はないというのが聖女ヒロインの考え方。

ビビは はな の言いなりなので、猫の呪いを解いてあげる。そして この猫が長老によって遣わされたことに気づく。何かと出てくる「長老」だが正体は謎のまま。作者の脳内ではイメージされているのだろうが、読者には伝わっていない。そしてビビが魔界に帰ることで、長老たちに何のメリットがあるのかも分からない。「なんとなく」で話が進んでいる感じが気持ち悪い。

そして はな のためならビビは木に登って降りられなくなった猫を助けてあげる。まことに甘い父親である。娘のためなら強くなれるのが父親か。これで猫嫌いを克服してしまったのかと思ったが、そうでないことは後に判明する。