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少女漫画と小説の感想ブログです

不器用や能力・動力の差など、上手く生きられないマイノリティーの優しい連帯。

カラクリオデット 4 (花とゆめコミックス)
鈴木 ジュリエッタ(すずき ジュリエッタ
カラクリオデット
第04巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

博士のお使いで、林檎坂家のお屋敷を訪れたアンドロイドのオデット。そこで出会った少女・白雪は、触れた相手の心の声が聴こえてしまう特殊能力を持っていた! その能力ゆえに、人を遠ざけて暮らしていた彼女は、心の声が聴こえないオデットに興味を示し!?

簡潔完結感想文

  • 人であっても一律に周囲と同じではない、という実例でサイコメトラー・白雪 登場。
  • オデットをロボットだと知る白雪と育む友情。互いに その存在に助けられて生きる。
  • 幼いボディで柚木村と着物デート。その次に朝生に猛アタック。フタマタオデット。

だ新キャラを大量投入して人気獲得の鉱脈を探している 4巻。

本書が優しい世界なのは登場人物が それぞれに不器用であり、そんな彼らが身を寄せ合って生きているからだろう。オデットはロボットで時に人の気持ちを読み取れずにミスをしてしまうが、逆に自分が その人と同じ境遇になることで身をもって人の感情の機微を学んでいる。

ヒーロー役の朝生(あさお)も生来の優しさを理解されず、性格的な不器用さから周囲と軋轢を生み、そして誤解されてしまう。朝生はオデットがロボットであることを知っている唯一の人間の男性で、彼はオデットに対してロボットとして対処する。オデットは人間になりたい志向を持っているから時にその言動で傷つくこともあるのだが、考えてみれば朝生はオデットに純粋に接していると言える。オデットの正体がどうであろうと態度を変えない。それは もう一人の男性・柚木村(ゆきむら)にオデットが正体を話すことを躊躇したのとは対照的だ(他者による暴露だったが)。
オデットの方も朝生を朝生として扱う。本書の中で聖女ヒロインのような洋子(ようこ)も朝生を怖がっているのに、オデットだけは彼に対して偏見がない。だから朝生も迷惑がりながらもオデットと真正面から向き合うのだろう。

そして『4巻』から もう1人オデットの正体を知る人間が登場する。それが後にオデットのクラスメイトになる林檎坂 白雪(りんござか しらゆき)。白雪は人に触れるとその人の心が読み取れてしまう特殊能力があるため、学校に通ったことがないまま17年間を過ごしてきた人。だが「心」がないオデットの交流には安心感を覚え、そしてオデットがロボットであることを知り庇護欲に目覚めたことで、彼女は通学を決意する。この心の動きが唐突な気がするが、白雪が ずっと人形遊びに興じていたから、同じように心がないと思ったオデットの世話を焼いてしまう、と補完できなくもない。

白雪は、学年が違う朝生と違って、クラスメイトとしてオデットのフォローに回る立ち位置となる。そして洋子とは また違う、嘘のない関係での友情が描かれる。2人は不器用だから時に互いを傷つけてしまうこともあるけれど、それを簡単に乗り越える普遍的な思春期の友情が見られる。

白雪はツッコミ&フォロー役。ただし その役目は時には学校生活の先輩であるオデットも担う。

の白雪の立ち位置が良かった。新キャラの中で1番 立ち位置が明確で分かりやすく登場の意味が伝わる。正直、他のキャラは白泉社の新キャラ祭りの一環でしかなく、どうして出て来たのか分からない人も多い。
例えば上述の柚木村も、朝生というヒーローがいながらも登場した意味や意義が いまいち分からないままだ。作者としてはヒーロー候補として送り込んだみたいだが、朝生以外にオデットの気持ちが向くことを読者は快く思わないだろう。
そして柚木村 → オデット →(?) 朝生という三角関係は面白いのだが、柚木村と違うボディでデートした後に、朝生に猛アタックをする話が続くと まるでオデットが、柚木村をキープしながら朝生に粉をかけるような二股しているように見えてしまった。柚木村の良さが伝わってこないのも残念だ。

また『4巻』初登場の栞(しおり)も、なぜオデットのライバル役として登場させたのか謎だ。その位置には『3巻』でミカが立ったばかりなのに。どうも人は増えても、あんまり世界が広がらないのが惜しい。この回では、作中で会ったことのない白雪と朝生なのに、白雪が朝生のことを何となく認識しているのも変だった。

新人作家だから悠長なことは言っていられないのは分かるが、もう少し丁寧に人と人の関係を描いて欲しかった。洋子と白雪の関係など深くゆっくり描いてオデットの学校生活を楽しいものにして欲しいと、親心にも似た気持ちで思った。
休眠中のクリスも含めて、人の出入りが激しくて散漫な印象を残す。


18話。ある日、博士から届け物を託されたオデットは、その家で白雪に会う。白雪は人形遊びに没頭する、オデットと同じ年の女性で、そして人に触れると その人の心が読める。そのこともあり人と触れ合うのが嫌で白雪は学校に行っていない。

オデットと白雪は敷地内で行方不明の猫を探している最中に地下室に閉じ込められてしまう。その際に白雪は自分の家系の中に時々 生まれる能力について語る。白雪は この能力で孤立を深めてきたが、オデットには「心」がないため白雪は安心して触れることが出来る。白雪にとってオデットは特別で安心できる存在なのは分かるが、オデットは自分に心がないことを恥じ、逆に心を望むのではないかとは思うが。

白雪が眠ってしまった後、オデットは自分の怪力でドアを壊す。自分の素性=ロボットを明かしたくないオデットは嘘をつく。しかし その嘘が白雪からの信頼感を損なう。ここで能力を使わずに白雪が嘘だと思ったこと、そしてオデットが傷ついたような表情を見せることは とても人間的な交流である。

そして白雪は迎えに来た吉沢博士の心を読み、白雪がロボットであることを知り、自分が彼女を責めて、悲しませたことを反省する。この後、白雪はオデットのことをロボットだと認識している2人目の人間になるのだが(1人目は朝生)、白雪は自分が真実を知っていることをオデットに伝えず、彼女と秘密を共有しながら守る半分 保護者のような立場になる。

世界の端っこにいる2人は手を取り合う。お互いのマイノリティーを奇異に思わない2人の交流。

19話。白雪はロボットのオデットが学校に行っていることを不思議に思い、秘密を知る自分がオデットを傍にいようと通学することを決意する。ちなみにオデット・白雪の途中入学は問題児でも金をつめば引き受ける この学校の自由な経営方針があってこそ。

オデットと同じクラスになった白雪だったが、オデットに友達がいることに落胆する。これは秘密を知るからこそ彼女を守りたいという庇護欲が宙ぶらりんになったからだろう。
そして白雪は助けるはずのオデットにフォローされ自信を喪失する。オデットよりも人間として欠陥品は自分だと落ち込む白雪。だがオデットに白雪が来てくれて嬉しかったと言われ心が動く。

この頃、一部のクラスメイトに良いように利用されるオデットの現状を知り、陰から彼女を助ける。そうして自分の意義を再確認した白雪の学校生活が始まる。


20話で七五三という人間の風習を知ったオデット。だが過去も小さい頃も存在しないオデットには七五三などしたことがない。それなのに七五三の写真を持ってくるというオデットと、彼女の素性を知る白雪の気軽さと心配の対比が面白い。白雪のポジションは考えられている。生後48日目のオデットの写真も衝撃的。

ある日、プール清掃で ふざけた男子生徒に巻き込まれ、オデットは故障。相変わらず水に弱いらしい。そのボディの故障・修理中に、オデットは博士の古いモデルのボディを使う。それは7歳の子供相当のボディで、オデットは七五三をする。

彼女を神社に連れていくのは見舞いに来た柚木村柚木村にとっては知らない子供のお守りだろうが、なんだかデートのような1日である。しかし なぜ朝生じゃなくて柚木村なのだろうか。直前の迷惑をかけないという誓約書のせいだろうか。柚木村の存在意義が いまいち分からない私は朝生なら良かったのに…、とか思ってしまう。

それにしても『3巻』から作中で指輪の数が増えている。あと猫も。


21話。秋になり学校行事・登山教室が始まる。白雪にとって初めての学校行事と山登りで会った。持病のある洋子が過去に克服したという山だから自力で登り切りたい白雪。
だが白雪は途中で倒れ、実家の手厚いサポートを受けてしまう。それでも白雪は体調回復後に山に登ろうとする。白雪を気遣うオデットも合流し、2人は山に登る。この達成感は白雪が初めて自分の努力と意思で勝ち取ったものとなる。


22話ではオデットのクラスメイト・栞が朝生に恋をする。栞と朝生の橋渡しをしたオデットだったが、彼らが連絡先を交換し、朝生が栞からのメールに返信した事実を知ってオデットのバッテリーは消耗する。

オデットが栞のすることに対抗したことで2人はライバル関係になる。ここから調理実習での対決になるのだが、白雪がオデットの恋を応援するような発言をすることが上述の通り、ここが ちょっと変。白雪は朝生の存在や立場を知らないだろ、とツッコみたくなる。

ここの朝生の行動は、彼もオデットを憎からず思っているということなのだろうか。そして没収品が朝生に戻って来たのは、彼が真面目に学校に通うようになったからだという理由があるが、それはオデットとの出会い以降の彼の変化だろう。ムシャクシャして喧嘩を吹っ掛けるような真似もしていないみたいだし、彼の精神が安定しているということか。


23話で洋子の家に初めて訪問するオデット。洋子の家は皆 朗らかで代わる代わるに洋子の部屋に顔を出す。そんな温かい家庭に接したからか白雪はナイーブになる。だから その日、家にオデットを招こうと試行錯誤をする。

だが白雪の誘いを断って帰る。だが家には博士がおらず、オデットは孤独の寂しさを理解する。だから今度はオデットは白雪の気持ちに寄り添う。新キャラの白雪だが、オデットと同じように可愛い所を発見できる良いキャラである。白雪が朝生にどういう印象を持つのか、またオデットをロボットだと知る者同士の連帯は生まれるかなど、見てみたい場面が多い。