《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

「わたしは その意味に もうすこし はやく気づくべきでした。」→ 意味は永遠に不明のまま。

甘い悪魔が笑う(2) (なかよしコミックス)
鳥海 ペドロ(とりうみ ペドロ)
甘い悪魔が笑う(あまいあくまがわらう)
第02巻評価:★★(4点)
 総合評価:★☆(3点)
 

そんなにこわいの? 執事(オレ)といるのに?あこがれだったカレが、ある日とつぜん執事としてあらわれた! そんな一心(カレ)は、いまやハルルのいちばん近くにいてくれる人。一心に少しでも近づこうと、一生懸命がんばるハルルだけど、つぎつぎに新たな“悪魔”がせまってくるから、タイヘンなんです! 自分だけの執事になってくれた、あこがれの人・一心。強めのスキンシップに、ハルルは毎日ドキドキしっぱなし!

簡潔完結感想文

  • 2巻になって作者の集中力が落ちたのか作画のツッコみ所が満載。ネタ漫画に。
  • 離れ離れになって作中で唯一(?)ヒロインがイケメンゲストを黙らせた回あり。
  • 悪魔な執事の問題解決方法が全く格好つかないので、毎回ラストで首を傾げる。

学生向け漫画って小学生が描いてるの? の 2巻。

『2巻』は色々と伏線を張っているような描写があるが、結局 回収されないから意味はない。『1巻』の感想でも書いたが、これは作者が全く用意していない設定なのに読者の興味を引くためだけに盛り上がるような演出をしたのか、それとも その設定を出す間もなく連載が終了することになったのか気になる。

花音(かのん)という名前や初期の構想や伏線ガン無視は、宮城理子さん『花になれっ!』そっくり。

そして伏線が意味をなさないと知っている再読では支離滅裂さだけが悪目立ちする。ヒーロー・一心(いっしん)に裏設定があるようで ないところだけでなく、物が消失したり出現する謎の現象や、人だけでなく物の作画も怪しかったりするデビュー直後の作者の技量の無さが白日の下に晒されている。

お話の作り方も褒められたものではなく、ヒロインのハルルが一心を好きなのはわかるが、一心が どういった心境でハルルに接しているかが全く分からない。繰り返しになるが彼の裏設定が活かされれば良かったのだが それもないので、一心が どうしてハルルに こうも執着し関わるのかが謎のままとなる。一心の家庭に問題があれば分かりやすいクライマックスとなり、彼を理解する一助になったのに。なぜ少女漫画らしい展開を選択しなかったのか。巻を重ねるほど近くなっていく距離が分かるほどのグラデーションになっておらず、お嬢様と執事の恋愛っぽいもの、という なんとなくの雰囲気しか感じられない。

これも作者が低年齢読者のために難しい話を描かないように わざとやっているのか、それとも成人している作者が一生懸命 考えた結果の支離滅裂さなのか判別がつかない。とにかく派手に、という意気込みは伝わってくるが、派手に滑っているのは見るに堪えない。

ハルルがバカなのは記号として仕方ないが、万能な執事である一心の行動も間抜けに見えることが多いので物語が締まらない。『2巻』でも おフランス帰りのピアノ教師に負けないピアノの演奏と仏語を披露したり万能性を見せつけるが、彼がイケメン刺客からハルルを守るシーンが せいぜい高校生の強がりにしか見えないのが残念。もっと一枚上手の感じを上手に演出して欲しかった。


「devil's lesson 5」…
一心と一緒に下校する際、ハルルの学校の教会に立ち寄る2人。だが そこで2人は閉じ込められてしまう。朝まで2人きり!?

密室劇の犯人が唯一の読み所か。

燃えるって!! この後も蝋燭は消失と出現を繰り返す。密室トリックより この謎を解いてほしい。

教会の場面は不可解な作画が多い。例えば この蝋燭の配置だと確実に布が燃える。そして この後も蝋燭が消失したり出現したりと意味不明。本当、こういう場面で作者の想像力は どうなっているのだろうか。描いてて不思議に思わないのか、それとも展開を優先させるために分かって無視しているのか。

教会の椅子の幅も場面によって違うし。最初は普通の椅子と同様、腰掛けるのが精一杯の幅だったのに、後のシーンでは2人並んで眠れるシングルベッドサイズにまで巨大化している。

冒頭だけ前回に引き続き虎城(こじょう)がゲスト参加。一心のことでハルルに忠告しに来るが、一心の過去や背景など本書では忘れさられるのでスルー。この回の一心の誓いも、彼らが大きな渦に巻き込まれることを示唆しているように見えるが、そんなものはない。

「devil's lesson 6」…
続いてはイケメン音楽教師・花音(かのん)の出番。わざわざ教師が自分のピアノを学校に持ち込むという謎の設定が気になる。さらにフランス仕込みのセクハラ攻撃。猫好きで花音のキャラ作りをしているつもりなのか。

花音は最初からハルルを知っているようで、ハルルから話を聞いた一心は花音のことを知っているよう。

ハルルは花音に誘導されて音楽室で2人きりになり誘惑されそうになるが、一心が止める。そして調律だと言い訳する花音に、一心が一曲弾き、調律を確かめ、そして花音の監視者役として女子生徒を集める。

2人は面識があることをフランス語で話す。「緊張した一心くん 私は その意味に もうすこし はやく気づくべきでした。」というハルルのモノローグが入るが、この伏線も回収されない。前半は大きな設定を匂わせるだけ。

「devil's lesson 7」…
母親の会社のパーティーに急遽 参加することになったハルル。ハルルは一心を連れて行こうとするが入口で一心の入場を断られる。一心の代わりに花音がエスコートする。ゲストキャラは2話連続で登場するのが序盤の決まりなのか。

パーティーでは花音がハルルに意地悪をし、そして一心にも実家のことを持ち出し、そして一心への見せしめとしてハルルの全てを奪おうとする。実家は倒産危機なのに、なんだか巨大組織かのように語られている。
イケメン刺客がハルルに魅了される話を描きたいのか、それとも一心の背景がイケメン刺客たちにとっては畏怖の対象で一心スゲーという物語が描きたいのか、話がブレていて落ち着かない。

今回は離れ離れになった2人なので、珍しくハルルが自力で困難を乗り越えるという話になる。彼女が動くのは久しぶりだが、再びパーティーに参加した2人の服装に感心する服飾関係者たちには違和感がある。だって一心は別の人(花音)が着ていたジャケットを着てるんでしょ。参加者たちが なんで?とならない本書に なんで??と感じる。

そして これが会社の宣伝となったようで、次の回では海辺のレストランのランチをプレゼントされる。ってかパーティーに主催者の母は出てこないんだ。母を出さないのは一種の お約束なのかもしれないが、ハルルを名代にするとは奇想天外な親である。

「devil's lesson 8」…
ランチを食べに海に行った際、ハルルは海の家で働く南斗(みなと)に迷惑をかけてしまう。そこで お詫びに海の家で水着で働く ことになったが…。南斗は本書初の年下イケメンである。

ハルルお嬢様の労働を一心が助けることで、この回はハルルは一心が主従関係ではなくなり同じ従業員という立場になる。ハルルは それが嬉しい。彼女にとっての2人の理想の関係は対等になることなのだろうか。

この回で一心に助けられるのは南斗。接客中にミスをして責任者を出せと言われた南斗を一心が敬うことで彼をオーナーに仕立てる。すると なぜか被害者である客がオーナーという響きだけで委縮する。根本的に問題は解決していないのに。一心が何を狙って茶番を演じたのかが意味不明。自分のような高貴な外見をした者が ひざまずくから、この人は偉いんだ、という回りくどい演出である。

ちなみに南斗は もう二度と出てこない(はず)。