《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

4巻かけた高校1年生前半だが、後半は1巻で駆け抜ける。次の季節は春ではなく恋。

キラメキ☆銀河町商店街 6 (花とゆめコミックス)
ふじもとゆうき
キラメキ☆銀河町商店街(キラメキ☆ぎんがちょうしょうてんがい)
第06巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

都会のはしっこにある天下の台所、ここは銀河町商店街。恋にトキメキ、切なさそろってます! 高1も終わりに近づき、ずっと隣にいたクロを意識し始めたミケ。2人は上手く話せず会えない日々が続き…。それぞれに高まりゆく想い。ミケ達6人の恋模様に少しずつ変化が!?

簡潔完結感想文

  • 誕生日、クリスマス、雪、今年も新しい思い出の傍には大事な人たちがいてくれる。
  • 大人と子供の中間地点の高校生たち。彼らは自分たちが守られていたことに気づく。
  • 変わってしまう関係性を恐れて2人は互いに相手を遠ざける。もうすぐ恋の花が咲く。

泉社漫画には珍しく現実よりも早い時間の流れを見せる 6巻。

『6巻』から時間の流れが急速に早くなった。これは良い判断だと思う。『5巻』の感想文で書いた通り、イベントは内容も結果も似たようなものが多く既視感を覚えていたから、誕生日やクリスマスなど秋冬イベントを ざっと攫って最初の1年を終えた。

白泉社漫画の恋愛は作中時間の2年目から始まる、と相場が決まっている。最初の1年は季節のイベントを取り込んで つかず離れずの2人の関係性を楽しむのがマナーと言えよう。葉鳥ビスコさん『桜蘭高校ホスト部』なんて「サザエさん時空」に突入することで4回ぐらい春を迎えていたなぁ…。

舞台となる商店街ネタでは似たような内容になってしまうからか、ミケたちの高校1年生後半は重要なイベントだけを使っていく。そして この間にミケの中で蒔かれていた恋の種が芽生え、そして花を開こうとしている、というのが本書の狙いだろう。ミケが無自覚に育てていた恋が、もう身体の中には収まり切れなくなった桜の季節に物語は一気に動いた。恋の種が蒔かれたことが伏線になっているので、順調に育っている場面はなくとも、このミケの反応に読者は納得できる。


『6巻』は全体的にモラトリアムの終わりが描かれていたように思う。恋愛面を持ち込むことで変わってしまうクロとの関係性を恐れて気づかないようにしていた自分の気持ちに気づくという成長の他、高校生という大人と子供の中間の年齢になったことで、商店街の中で新しい役割を担うことになる。そして その役目を果たすことで大人たちの子供を見守る温かい目が見えてくるなど、子供時代の視点から離れていく彼らの様子が見られる。

年齢も視点も変わっていくから見えてくるものがある。それは恋愛においても同じかもしれない。

『4巻』の商店街イベントのクイズ大会も高校生からアダルトの部に参加できたり、『6巻』のクリスマス回でも初めてサンタ役に回ることが出来た。そしてラストの お花見でも暇だけど好き勝手に遊ばない頼れる存在として高校生たちは席取りに駆り出されていた(暇なのはモラトリアム真っ只中だから といえるかも…?)。

こうして時間の経過・成長によって自分たちが もう無邪気な子供では ないこと/いられないこと と、恋愛においても それぞれの関係が変わっていくことがリンクしていているのが大変 良かった。受け入れられる成長と られない成長、そんな喜びと焦燥の入り交じった10代半ばの彼らの姿が よく描かれている。

ダラダラと最初の1年の季節イベントを描かないで、ここから1つ作品のギアを上げていったこと喜ばしく、これは作者の功績の1つだろう。

そして中学時代に疎遠になった彼らが再度その絆が試される時が近づく。なんでも願いが叶うと思っていた子供時代ではいられないことを痛感する彼らは、この時期の終わりに何を思うのだろうか。関係性が変わっていく作品の後半戦が始まった。


頭は10月02日のクロの誕生日回。10月01日はミケの誕生日で、幼なじみたちで2人合同で誕生会を開いてもらったので、今回はクロの個人的な誕生回となる。

前回まで夏だったのに、一気に時間が進み、季節が変わった。1話ごとに季節を確かめないと頭が混乱してしまう。

そういえば本書では当たり前のように自転車2人乗りをしている。私は この点が古臭く感じてしまう。タバコや お酒は本当にレアになってきたが、本書は自転車に関しては時間が止まっている(クリスマス回で飲酒していたが)。このせいで雑誌連載をしていた00年代中盤よりも 随分 前の作品のように感じられてしまう。もしくは作者が自分の当時の青春時代を基準にしていて、時代に則した情報更新をしていない感じを受ける。随時アップデートをしないと、少女漫画家は厳しいのではないか。


いては『5巻』で明らかになったイバちゃんのキューへの片想い話。中学入学後、キューがミケの姉・飛鳥(あすか)に片想いを始めて、彼の真剣な様子にイバちゃんは胸が痛み、それで自分の恋心を自覚した。

もしかして中学入学後に一度 皆が疎遠になったのは、思春期を迎え、鈍感で自由なミケ以外は、自分の抱える気持ちの大きさとの折り合いがつかずに、片想いの相手に会いたくないという事情もあったのかもしれない。クロとは違って女性への気持ちに目ざとそうなキューから、自分の気持ちを隠すために尽力するのは大変だろうなぁ。

イバちゃんが、飛鳥に似ているミケに八つ当たりしてしまうのは間違っているけど分かる。意地悪な見方をすれば この姉妹は無自覚に最強だから、ミケ姉妹には願いが届かない人の感情なんて分からないんだ、と被害者意識を持ってしまうのだろう。

仲良しでも時には顔を見たくないこともある。今後は こんな場面が増えてしまうのだろうか…。

してクリスマス回。商店街の子供たちにプレゼントを配るサンタ(とトナカイ)役に、高校生になったことで初めて選ばれた幼なじみたち。そこで目にするのは、子供たちのために書き入れ時でも多少の無理をする商店街の大人たちと、そして訪れた家での大人からの心遣い。同じ商店街の同じイベントでも視点を変えることで見えてくるものがある。そして彼らもまた子供たちのために奮闘する大人になっていくのだろう。

打ち上げでは、ドリンクの中に お酒が入っており、サト・マモル・クロの3人が酔っぱらう。酔っぱらったクロは誰彼 構わず抱きつき、ミケにも同じことをする。この狼藉を本人は覚えていないが、ミケは累計3回目の抱擁に また彼を意識し始める。いつかキューが言っていたように、抱きしめられることが恋の試金石になっている。


は貴重なマモルの個人回。ボケ役で目立たないことが美味しいポジションのマモルは、1番最後に幼なじみたちに合流した、という過去回。

色々なことに興味を持つ少年だったマモルは、銀河町の前に住んでいた土地では周囲から白眼視され孤立しており、同じく周囲が忌避するような1人の男性と交流していた。その後、ミケたちと出会い、初めて同年代の友達が出来る。初めて自分から仲良くなりたい人が出来て、物静かだったマモルは自分の意見を伝えることが出来た。

この日は冬で雪が降った後だった。それから約10年が経過しても雪の日には皆で遊ぶ。皆で見た流星群といい1年中 どこを切り取っても6人の思い出がある。


校1年生も終わりに近づき、クロの学校内での人気は高まるばかり。自分の知らないクロを見ているとミケは焦燥を感じる。これまでは何にも感じなかったクロからの行動にも赤面するようになった。
このような内容は過去にも何度も描かれていて既視感があったが、今回は しっかりと物語が その先へ続いていく。作品としては現状維持が目標だった高校1年生が終わり、物語は しっかりと動き出したようだ。

ミケは自分の気持ちに振り回され、そしてクロは自分の気持ちを伝える勇気が出ない。そして彼らは そのまま おそらく過去最長となる4日も相手の顔を見ないままになる。

そんな状況に、2人のそれぞれの姉と兄が、恋の季節を迎えつつある妹弟に助言をしているのが印象的だった。不器用で分かりやすい自分の妹や弟が可愛くて仕方ないんだろうな、と家族愛に癒される。

っして相手から逃げずにいることに決めた2人が、それぞれ その人を走って追いかけ、そして2人は満開の桜の木の上で対面する。身軽な彼ららしい集合場所だ。そして彼らは自分たちの心にも恋の花が咲き誇っていることを今は知っている。さて、どうなる!?