《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

この気持ちは自分の中で ちゃんと消化するつもりだったのに、君が あまりにもカッコいいから…。

キラメキ☆銀河町商店街 7 (花とゆめコミックス)
ふじもとゆうき
キラメキ☆銀河町商店街(キラメキ☆ぎんがちょうしょうてんがい)
第07巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

ここは天下の台所、銀河町商店街。恋に友情、人情そろってます! 商店街が「ドラ街」で特集されることに。活気あふれる銀河町、はたしてNo.1にはどの店が輝くのか!? 一方、高2になったミケたち。上手くいったように見えたミケとクロの関係は相変わらず平行線を辿っていて…!?

簡潔完結感想文

  • 思わせぶりな展開からリセット機能が発動。けど想いの成仏のためには必要か。
  • 作品自体もリセットされ序盤のような商店街の話が復活。富士ばぁの生存確認!
  • 私にしかなれない私になるために、いつか じゃなく今の自分を紙に描き込む。

20年後に一緒に笑うために、未練は一切残してはいけない、の 7巻。

てっきり互いの想いを告白するとばかり思った『6巻』ラストの満開の桜の上のシーン。だが作品は両片想いという現状維持を選んだようだ。さすが白泉社漫画と言ったところか。

このリセット機能によって、作品全体も初期型に戻ったような印象を受けた。暫くなかった商店街を舞台にした話や、商店街の中の1つの お店に焦点を当てた話など序盤でよく見た構成になっている。
ただ これが銀河町商店街の最後の輝きになるかもしれない。ミケたちも高校2年生になり恋だけでなく将来を考える年齢になったため今後は商店街が舞台になることは少なくなることが予想される。その前のラストチャンスとして商店街をメインに据えたのかも。

そしてミケとクロの現状維持は、冒頭の1文の通り、幼なじみ6人が将来的に ずっと一緒に居られるための布石でもあると思う。ミケとクロが両片想いであることを誰よりも知っているのは、クロに片想いし続けていたサト。サトは自分の気持ちが自然消滅するのを待とうとしたが、その直後に自分で気持ちの封印を解く。
この衝動にも似た動きは、サトがクロを好きで好きでたまらないことを示している。確かに その衝動を覚えるぐらい その直前のクロは格好良かったもの。私も身近にい過ぎて感じなかったが、クロという人間は こんなにも素敵な人なんだ、ということを実感した『7巻』だった。

たとえ恋愛感情を抱かなくても、こんな素敵な人と出会えて友達でいることが嬉しくなるような言葉だ。

サトも まだハッキリと口にはしていないが、目は口程に物を言うように、その熱を持ったサトの視線はクロにも伝わったと思われる。サトだって結果は分かっているが、動き出さないと結果も分からないことは今回の漫画の投稿の件で身をもって知ったはず。自然消滅を待つよりも、希望が断ち切られ、事実を受け入れる方が より良い未来を掴めるかもしれない。そして どんな結果であっても受け入れられる強さをサトは持っていることも今回の件で証明されている。

成長に挫折が必要なように、今後6人の友情をより強固で永続的にするためには、叶わぬ想いを きちんと届けることも必要なのだろう。『6巻』ラストでは裏切られたミケクロの告白へのカウントダウンだが、おそらくサトのカウントダウンは始まっている。もう既にサトは強い子だから想いが伝わらなくても大丈夫だし、サトを見てくれている人の存在も ほのめかされている。

だからサト、安心してフラれてきなさい!


想いの前に やることを思い出したから、現状維持とばかりに変わらない日常が続く。『6巻』ラストで互いに好きと自覚して、捜し回ったのに こんな茶番劇に終わらせてしまうのは、うん、実に白泉社らしい。

そのまま高校2年生に突入する。ここから早くも進路の話になり、彼らは恋だけでなく将来のことも考えなくてはならなくなる。この話からマモルの姉・満(ミチル)が初登場。満はミケの姉・飛鳥(あすか)の親友という設定。ということは必然的にクロの兄・遥(はるか)とも同級生である。ちなみに飛鳥と遥は学部が違えど大学も同じだという。ここに恋が芽生えないのは飛鳥が別の人に恋をしているからか。
そういえばミケたちの高校1年生後半が駆け足だったのは、飛鳥と遥の受験があり、家の中で大騒ぎをすると迷惑がかかるから自粛するためでもあったのだろうか(この2人、『5巻』では高校3年生の夏休みに3泊4日の海旅行に行っていたが…)

そして大学生になった年上の幼なじみ3人の進路を聞き、ミケは参考にする。実家の八百屋はミケの兄の大悟(だいご)が継ぐから、ミケは何にでもなれるけれど、だからこそ何になればいいのか分からなくなる。

その後、幼なじみと集まった際にも将来の話になり、唯一 サトだけが漫画家になりたいという夢を語った。イバちゃんも希望する進路はあるみたいだが現時点では秘匿した。


河町商店街がテレビ番組「アドドラ街ック☆天国」の取材を受ける。久々に商店街が舞台として戻ってきた印象を受ける。商店街全体がテレビという魔力に振り回されるコメディ回で楽しい。

自分の店が1位に紹介されれば宣伝効果バツグンだから、各店が しのぎを削る。ミケクロも久々に空中戦バトルを披露し、プロデューサーの度肝を抜く(演出の指示するんならディレクターでは?)。

この回で富士ばぁが久々に登場し、健在であることを示した。

続いては、そのテレビ取材を受けての次の策として、子供たちを呼び込むヒーローショーが企画される。そこで担ぎ出されたのが幼なじみ6人組。1人3000円という出演料で、戦隊モノになりきる6人。

だがヒーローショーの最中に漬物屋の親子ゲンカが始まる。その仲裁をするのは いつも通り恋愛以外において万能なミケ。なんだか話の作りや内容が初期型に戻っている。

ふくよかなイバちゃんの体型が作中でイジられることはないが、この配役は少々の悪意を感じてしまう。

の春の日に「桜の森の満開の上」で、なんとなく いい感じになった2人は、「言わなくても伝わってる気がする」という理由でハッキリと告白しないまま。

そんな雰囲気のまま、プリントを学校に忘れたミケのため、クロと2人で夜の学校に潜入する。そこで手を繋ぐ場面があり、明らかに相手のことが好きという気持ちを再確認するが、現状維持という結末。これも かつて1巻に1度ぐらい描かれていた内容だなぁ。これが続いたら読者に飽きられただろうが、2人が両想いになるまえに やっておかなければならないことがあるのだから仕方がない部分もある。


れがサトの片想いの話。サトは、クロのことを一番近くで見てきたが、ミケのことも一番近くで見ており、彼女の気だての良さを誰よりも理解している。

漫画家の夢を発表し、投稿も考えるサト。だが もっと力がついてからと勇気が出ないこともあり先延ばしにする。そんな頃、クロが助っ人で入ったサッカーの試合で負けてしまい、次に呼ばれた時に より戦力になるように練習を重ねていた。なぜ助っ人のために こんなにも練習するのかと問うサトにクロは「『いつか』って自分で作んないと 一生 来ない気がする」と返す。このクロの言葉にサトは背中を押される。クロは行動も言葉も本当に素敵な人だなぁ。

ミケに憧れ続けてもミケには なれない。サトは自分のなりたい自分になるために一歩を踏み出し始める。

ただしサトは自分の気持ちを消化させようとしていた。どれだけ時間が かかっても、踏ん切りをつけるようにシフトするらしい。確かに ここ最近のサトは自分の想いに過去形を混ぜていた気がするし、この恋は絶対に叶わないこととして語っていたような気がする。

初めてサトが投稿した漫画は箸にも棒にも掛からなかった。その日、サトは雨の中、1人高架下に佇んでいた。クロがサトを発見し心配するが、サトは前向きだった。
選外という結果だったが、サトは漫画での表現力が足りない自分の力不足を痛感した。勇気を出して投稿したからこそ第三者からの評価が分かり、そして夢の実現が困難だからこそ頑張るという気持ちが湧いてきた。

そんなサトの姿勢をクロは「好き」と評する。だが、それが封印したはずのサトの気持ちを解き放つことになる。自分のためにも周囲のためにも漏れさせない様にしていた気持ちは その表情に出てしまった。