ふじもとゆうき
キラメキ☆銀河町商店街(キラメキ☆ぎんがちょうしょうてんがい)
第10巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
ここは銀河町商店街。いつも笑顔が溢れてます!高3になったミケ達はそれぞれの想いを胸に、残された高校生活を過ごしていく。6人で過ごす最後の夏、いつかも見上げた星降る丘で、再び皆で誓った約束とは──!? 大人気☆はっちゃき下町青春ドラマ、大感動の最終巻!!
簡潔完結感想文
- 最終巻の寂しさと旅立ちと別れの寂しさが相まって切なさを倍増させる。
- 最終話は どーんと100ページ。幼なじみたちの友情は永遠だけど、恋は⁉
- 3年前発表の番外過去編が収録。いや、読みたいのはXX年後の未来の話だよ…。
いつでも どこにいても私たちはズッ友だよ☆の 完結10巻。
終わってしまった。大切な人と別れた時のような寂しさが胸に残る。
そして そのままネガティブな思考に引きずられ、もしかしたら本書が商店街を舞台とした少女漫画のラストの作品かもしれない、と思った。00年代中盤に始まった本書だが、きっと この後はネット通販の一層の普及によって商店街は大打撃を受けたのではないか。そんな現状なのに少女漫画界では「商店街の福引」で当たったことを発端とする異性との お泊り回だけが残る不思議な現象は続くのだろう。
『10巻』の構成は100ページにも及ぶ最終話と発表時期は随分前の番外編(小学生編)と本書連載前の作者の読切短編が2編である。最終話は掲載雑誌が最初に戻り100ページで最後のお祭りと言った感じで、内容も商店街のお祭り「銀河町商店街まつり」がメインに据えられている。駆け足でミケたちの高校3年生の1年間が描かれ、読者が気になる幼なじみたちの恋愛や これからの未来を暗示しつつ終わる。
その余韻を引きずったままの番外編が その後の話じゃないのが残念。単行本収録の問題なのだろうが これには大いに落胆した。発表はこちらの方が早いのに、『8巻』収録のイバちゃんの双子の弟たちの家出と内容も似通ってるし、内容も初期型だからミケだけが最強という構図になっていて最終話読者からすると違和感がある。上述の『8巻』の番外編も、ミケとクロの両想い直後の番外編で、読者の読みたい内容とは違った。だが その短編が素晴らしかったから不満にならなかったが、今回は完全に読みたいものとは違ったので コレジャナイ感が拭えなかった。
本編の最終回は再び舞台が幼なじみの恋愛問題から商店街に戻った気がした。ただミケたちの受験と重なってしまったこともあり中途半端な内容にも思えた。結局、高校3年間で銀河町商店街まつりで ちゃんと出演したのは太鼓を披露した1年目だけで2年目は恋愛のごたごたで不参加、3年目は代打出演となった(1年目も代打に近い)。商店街でフィナーレを迎えることとか、見たかった流星群が形を変えてミケたちに降り注ぐとか良い場面はいっぱいあるんだけど、こんなに上手くいくかなーと ご都合主義に首を傾げる部分も多い。子供たちの用意したサプライズが、どうしてステージではなく予定変更となった商店街の中に降るのだろうか。この辺は子供たちが急いで準備したなどの描写が欲しいところ。作中で開催されるイベントが客観的に見て そんなに楽しくなさそうなのが本書の瑕疵だと思う。
あとは最終話にしてクロの身長を伸ばしたことに納得がいかない。少女漫画は どうして小さい男性キャラの背を伸ばしてしまうのだろうか。170cm以下の男性には人権がないってか!?と思わずにはいられない。特にクロは背の高さではなく その性格の大きさで人を魅了してきたから背の大きさなんて飾りなのになぁ。
高校3年生になったミケたち。いよいよ皆で過ごす最後の1年が始まる。
7月7日の銀河町商店街まつりに参加したいが、受験勉強もあり、参加できない。そんな中、キューがイバちゃんにピアスを開けてもらったり、サトは漫画の投稿が評価され始めたりという変化があった。サトのお祝いをしている最中、前触れもなくマモルがサトに告白する。しかも2人きりの時ではなく6人全員集合している前で。
どうやらマモルの中では彼なりのスタートラインがあって、サトと同じく自分の夢を見つけるという目標の達成がスタートの合図だったらしい。そして勝手にレースが始まったと同時に全速力でサトにアタックしていくマイペースなマモルであった。言葉でグイグイ迫るし、いきなりキスをするし。まさか こんな柔らかい俺様のマモルが見られるとは…。
イバちゃんもキューに少し好意をほのめかしたり、キューもそれを満更ではなく思っている様子。
結論から言うと この2組のハッキリとした恋愛の結末は分からないまま。サトとマモルは どうやら上手く生きそうだが、キューとイバちゃんの その後は分からない。女性全般に好意的なキューだからイバちゃんを体型で振り分けたりはしないだろう。ただ幼なじみだとばかり思っていた女性を いきなり恋愛対象に見る難しさは古今東西の「幼なじみモノ」の少女漫画が教えてくれる。だから時間が必要で、マモルと同じく、キューも恋愛のスタートラインに自分が立つまでは動かないかもしれない。この辺は最終回だからと気持ちの変化の速度を捻じ曲げてまで 内輪カップルを続出させなくて逆に安心した。ここでは上手くいく確率の方が少し高いぐらいの予感で満腹である。ただ、だからこそ2組のカップルの その後を見るためにも番外編は未来の話であって欲しかった。過去の旅の話なんて誰得だし今更なんだよなぁ。
7月7日は全員が浴衣を着て、まつりを堪能する。
この頃、ミケは背だけじゃなく、交際におけるクロの余裕が自分との差があるように思っていた。だけど話してみればクロにも余裕がないことが分かり一安心。もう交際してから随分経つのに まだまだ2人とも初々しくて微笑ましい。
そんな中、おまつりの大トリを飾るフラダンスショーが急遽中止になり、ミケたちに白羽の矢が立つ。2年前のように太鼓は出来ないが、商店街中を巻き込んだ盆踊りを提案するミケ。イメージとしては各地の商店街やメインストリートで披露される阿波踊りなのだろうか。しかし『5巻』の演歌歌手に続いてフラダンスショーの中止、銀河町のまつりは呪われているのではないか…。もうちょっと商店街中が協力して最後の出し物を何とか成立させようとする裏側を見てみたかった。ミケがすることは何でも成功するという初期型の安易な感じになってしまっている。
それが終わるとあっという間に次の春。それぞれが希望の進路に進み、マモルは北海道へと旅立っていく。どうやらサトとは相思相愛のように見える。
そして そこから25年後、その年の流星群を6人の男女が見ることを予感させて終わる。高校3年生の最後の年に商店街に降り注ぐ流星群を見たことが代替になっているんだろうけど、25年後に流星群を見るシーンも欲しかったなぁ。商店街や流星群といった重要なテーマがちょっと中途半端に終わってしまっている。
商店街は もう一度 商店街の関係者が一つになるようなイベントが見たかったし、流星群も何度も繰り返して強調するなら最後も しっかりと描いて欲しかった。
特に商店街はショッピングモールやネット通販のメタファーとして台風などの大災害を用意して、それに対して一致団結して この危機を乗り越えてるなどの展開が見たかった。そうすることで これまで登場したお店の店主たちが再登場するなどの活用法も出来たのではないか。序盤に出てきた商店街の店が再登場しないのは ちょっと残念(富士ばぁ以外)。恋愛要素の強化と共に商店街という舞台が薄れていってしまったように思う。
「キラメキ☆銀河町商店街 番外編」…
6歳の幼なじみ6人の話。商店街を遊び場にしていると怒られるので、この小さな世界を出て旅に出ることにした6人。
子供だから仕方ないが自分の商店街を褒めるために、他の地域の店に文句を言うのが不快だった。そして初期だからかミケ最強という構図が見える。このミケが突出した感じが中盤以降に消えていったのは本当に良かった。
収録の関係で ここに位置したとはいえ、読者が読みたい番外編は これじゃないんだよなぁ…。
「キラキラ星」…
目標もなく大学受験の勉強をする苦痛から逃れるため夜に家を抜け出した高校3年生の藤 椿(ふじ つばき)は、公園で綺麗な歌声で歌う青年・皆川 政宗(みながわ まさむね)に会う。
彼のペースに巻き込まれて過ごす一夜の物語。そして それが椿の苦痛が消失する奇跡の一夜になる。真っ暗な道を歩いているような不安を抱える2人が、それぞれが星となり未来を照らし、そして新しい1日を迎えるという清々しさが残る。冬という季節が夜の闇が深くし、朝の空気を澄んだものにしている。
「ミラクルキッチン」…
高校1年生の皐月 裕里(さつき ゆうり)は母亡き後、自宅の喫茶店を手伝うのが日常。だが豪快で客に慕われていた母の幻影を追おうとすると失敗してしまう…。
その失敗も母のいない悲しみも、同じ思いを抱えている家族たちと補完し合うというハートウォーミングな内容。ただ本編を読んだ後だとイバちゃんちの話に似ている、という感想しか浮かばない。作者が得意分野を見つけた お話でもあるのかな。