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少女漫画と小説の感想ブログです

2巻続けて、アラフォーおばさんが顔色を変える巻末。ヒロインが逆 世代交代⁉

,そんなんじゃねえよ(6) (フラワーコミックス)
和泉 かねよし(いずみ かねよし)
そんなんじゃねえよ
第06巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

学園祭の美男美女コンテストで、なりゆきでクラス代表に選ばれた静(シズカ)。だけど、美形の兄達をもつコンプレックスからか小心からか、静の心はどんより灰色気味。そして学園祭当日、何と会場に静の母・涼子(りょうこ)と仁村(にむら)の父が一緒に現れて…!?絶好調ハイテンションLOVE2兄妹ストーリー衝撃の第6巻!!

簡潔完結感想文

  • 『6巻』のメインは主人公の真宮家が仁村家との交流を深めること。文化祭も飾りです。
  • 似た者同士の静と仁村が交際開始。要はヒーローとの関係が行き詰まったから当て馬に。
  • 通常営業で困ったちゃんとヒロインたちの間にトラブルが起きるが話の脇道でしかない。

自然な交際も、両家の親交を深めるためにある、の 6巻。

『6巻』でヒロインの静(しずか)とクラスメイトの仁村(にむら)の交際が始まる。

この交際の意味は大きく2つ。
そして当て馬の仁村は その2つの意味で利用されている。

1つは、静が行き詰まった想いの出口を探すこと。
自分が大事に想う兄(烈・れつ、哲・てつ)と血縁関係があることが分かり、
兄の内、どちらかを選ぶという選択肢もなくなった静。

そこに自分に似て不完全な仁村を見て、静は彼の好意を受け入れる。
こうして 真っ当な男女交際をすることが、
今回の失恋を乗り越える鍵だと考えて。

勿論、少女漫画的には恋心が高まった結果ではなく、
後ろ向きな選択による交際なのは明らかで、この先のトラブルも容易に想像できる。

見た目以上に純真な仁村。だけど彼もまた「仕組まれた子供」。作品の鍵は両家の母親⁉

して仁村が可哀想なのは、彼の存在が作品的にも利用されていること。

作品として重要なのは彼ではなく、
彼を通して静の真宮(まみや)家と仁村家に交流が生まれればそれでいいのだ。

それが如実に表れるのが巻末。
『5巻』『6巻』と、静や兄が仁村家に出向くことで、
仁村家の母親と対面を果たし、彼らに思う所がある母の顔色が変わる。

この両家の接近の架け橋になるのが仁村の役割。
本来の ちょっと意味とは違うが、仁村は その家柄だけで静の彼氏に選ばれた男なのだ。


の意味では、ヒロインの静や2人の兄達も、
仁村家(特に母)との繋がりを生むための装置に過ぎない。

兄妹関係において血の繋がりの有無の結論が出ないことには、
恋愛的にも発展性がなく、物語の主役は、彼らを生んだ親世代へと移行していると言える。

その出自によって、兄妹でありながら惹かれ合う関係になってしまったことは
静たち子世代の不幸で、親世代を恨んで仕方のない部分もある。

だが、彼ら親世代が墓場まで持っていこうとする真実を、
自分の恋心をモチベーションに探偵していくのもまた親不孝である気がする。

今回も「困ったちゃん図鑑」を開いて、
彼らの正義や悪意が静たちに向かう場面もあるが、
それは静たちに決められた行動を取らせるための理由に過ぎない。

話が佳境に入っていっているようだが、その反面、登場人物に自主性が失われ、
仕組まれた方向に進まされているような感覚が残る。
静も強くなったり弱くなったり安定しないし。

血縁の有無ばかり探して、恋愛が お預け状態なのも少女漫画としては寂しい。
仁村との交際も胸キュンとは かけ離れてるし…。


化祭で、消極的な理由からミスコンに出場する事になった静。

その本番の日、医師の仁村の父親と、同じ病院で働く看護師の静の母親が来校する。

仁村は彼らが不倫をしていると踏んでいる。
そして父が不倫しているから、母は家庭内で笑わない人になってしまったのでは、と類推していた。
だが本人たちの口から それは否定され、不倫は無いと判定された。

仁村にしてみれば、自分が母から冷遇される理由を、
父に求めることで納得していた部分もあったのではないか。
家庭内に愛がないから、母は自分にも冷たい。

だが、父は母をしっかりと愛していて、その理由には当てはまらない。

最強の母は、実は身持ちが固い。病院内、ましてや仁村家の者と不倫なんて絶対にしないだろう。

そんな仁村は静に三度目の交際を申し込む。
兄とは違う、弱っている男の子。
自分と似ている不器用なところに共感し、静は交際を受け入れる。


静は仁村に 兄への特別な想いを打ち消して欲しかったのは分かる。
ただ もう少し、静の苦しさや 逃れるように他の恋に走ってしまう気持ちを丁寧に描いて欲しかった。

結局、静は兄達と同居していて、困り事にも兄の協力を得られてしまう。
しかも兄は2人いるから、どちらかがダメでも どちらかは妹のために動いてしまう。
だから彼女自身が強くなったとか、
自分の気持ちを抱えられないといった切迫感が少ない。

ここも仁村との「縁」のためだけの交際に見えてしまう点である。
ただでさえ仁村には当て馬感が満載だというのに…。


いてはデート回。

仁村とのデートは案の定、兄達によって妨害される。
ただし、仁村は それも想定した上で、兄達から静を奪う覚悟もある。
それに仁村は本書で唯一、あの兄達に対抗できる能力や外見を持ち合わせているのだ。

そんな仁村が静のために下調べをしたり、
一生懸命に行動してくれることが、静の愛され感に繋がっていく。

本書、いや世界のトップ3から愛されるなんて、静は愛されヒロインである。

現実的な観点から少女の夢を打ち崩しにかかる本書だが、
実は どの漫画よりも古典的なヒロインとしての立ち位置と幸福が待っている。


んな中でも本書の売りである「困ったちゃん図鑑」は展開される。

今回は いつも烈の隣に我が物顔でいるのに紹介がなかった先輩女性と、
青臭い正義感で生徒を正そうとする教育実習生の男性が、図鑑に加わる。

前者は静も巻き込まれる部分があるが、
後者は烈を目の敵にして、自分の望む生徒像に染め上げようとする。

このところ、2人の兄の中では烈の方が目立っている。
といっても彼は2人の兄の中では当て馬感が強いため、
こうやって作品で個人回を作って盛り上げてあげよう、としている印象を受ける。

そして烈の方が目立つのは、烈が親世代の重要人物・享一(きょういち)に瓜二つだからである。

これは美貌の持ち主である母とは似ていない(設定)静や、
烈ほど誰かに似ていないらしい哲には出来ない役割。

ラストで、色々と理由をつけて、烈と静が仁村の家に向かい、
そして仁村の母親と面会するところで今回は終わり。
ここ数巻で一番 心を乱されているのは仁村の母と言える。

子供たちは母親が知らせずにいる真実に辿り着いてしまうのか⁉