《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

水波作品あるある。ヒロインの在籍する学校の理事長 替わりがち。あと ヒーローは無力。

蜜×蜜ドロップス(7) (フラワーコミックス)
水波 風南(みなみ かなん)
蜜×蜜ドロップス(みつ みつドロップス)
第07巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★(4点)
 

千駿(ちはや)と茅架(かやか)の妨害で一度は引き離されたけど、なんとか可威(かい)のHONEY(ハニー)に戻った柚留(ゆずる)。ところが始業式の日、新理事長の元、絃青(げんじょう)を生徒会長とする新体制が発売されて、蜂城(ほうじょう)学院に激震!HONEY制度が廃止されて久華(くげ)科が隔離されちゃう!?可威と柚留の運命は?そして絃青と那由太(なゆた)の関係は!?

簡潔完結感想文

  • 新章開幕。九華科という根幹を壊しにかかるが、本質は2人の引き離しでテーマは同じ。
  • 九華科 一致団結だが、ほぼ初対面の人々。エロ描写 抑えて 個人回用意して欲しかった。
  • 千駿が暗躍するのは見飽きた。今回は愛の結晶を奪えずに、恋愛面で彼は完全敗北する。

品全体を美談にしようという雰囲気に違和感を持つ 7巻。

作者は きっと真面目で常識的な人なんだと思う。
ちょっとエロい描写が好きなだけで。

実は一般常識の外にある本書のような設定は身体に合わないんじゃないだろうか。
だから今回、その無理の反動で物語の土台を壊しにかかったように見える。

それが「HONEY」制度の消滅。
MASTERの身の回りの世話をするHONEYがいるから、MASTERが堕落する、
という今更、制度の欠点を正すため、新体制に移行する。

ヒロインが あれだけ苦悩したHONEY制度の廃止が宣言される。えぇー 恋人と もう会えないの~⁉

本書には色々な学校制度が出てくるが、
それが何のために作られたか、どういう必要性があるのか、と考えると全く無意味なものが多い。
HONEY制度も誰のためにならないと分かっていながらも、
序盤でヒロインが振り回される制度として利用していたのに、急に その制度の欠点を列挙するから戸惑う。

この制度に心から憧れて読んでいた読者もいるだろうに 作者は容赦がない。
また、長期連載としてキャラたちが徐々に この制度へ疑問を持ち始めるという主体的な流れもなく、
彼らは ただ学校側から制度の廃止を告げられて 狼狽えるばかりであった。

総じて本書は、キャラクタの立ち位置が格好悪すぎる。
何度も言う通りヒーローの可威(かい)は その登場場面から最悪だし、
お金持ち学校の生徒たちも親の金で人を雇っているに過ぎない、という現実的な側面も見せてしまった。

制度に対する疑問や改革案を出さずに彼らは漫然と学校生活を営んでいた。
ヒーローや九華科(くげか)は手の届かない存在だからこそ輝くはずが、彼らの輝きは ただの親の七光りでしかなかった。


今回は生徒たちが奮起する大事な展開なのに、なんか全体的にダサい。
問題が起きると親に頼るという図式が出来上がってしまっているからか。

また、彼らが日頃やるべき事(勉学や授業への出席)をしていないから、
土壇場で頑張る姿を見せても胸を打つ場面とならない。

それは作者も同じ。
これまで九華科の繋がりをしっかりと描くことをしなかったから、感動は薄まるばかり。

今回初めて 九華科の横の連帯を描いているが、
九華科の9人、そして各主従関係の描写がまるで足りていないから、上手く繋がりが描けていない。
こんなことならエロ描写を割愛して、9人の生徒のエピソードを挿入していれば良かったのに。


頭から新展開。
2学期になってから九華科に革命が起きる。
これは このところずっと可威と千駿(ちはや)の ゴタゴタが続くばかりだったので、良い場面転換になっている。
(が、結局 千駿が目立つことになって、これまで通りの図式になる。
 千駿を早々に追放できなかったことが本書の足を引っ張り続けている)

今回、理事長が交代し、学校の方針も一新される。
そういえば前作『レンアイ至上主義』でも理事長 交代してませんでしたっけ??

新しく就任したのは那由太(なゆた)のHONEYである絃青(げんじょう)の父親。
新理事長は第一声で、
「生ぬるい温室的教育を一新し この高等部 九華科を完全なエリート育成の場とすることを宣言する」。

そして新生徒会長は絃青。

この発表に、絃青の幼なじみである可威が、同じく幼なじみの那由太のために説明を求めると、
絃青は、いきなりナイフを取り出して可威の顔に当てる。

意味不明。
ナイフ持ち歩いてるの??
で、偉くなったら それで周囲を威圧するの??
いきなり武力をもって不平不満を鎮圧しようとする生徒会長です。

この行動に意味を見出すのなら、このナイフは那由太のお気に入りである絃青の長髪を切るために必要だったから。
こうして絃青は、那由太から、九華科から決別を宣言する…。


いて発表されるのが、
「日本の将来を己の力で担う 優秀な人材育成の場となることを目標と」するために、
その第一歩として「HONEY」制度の廃止が提言される。

世話係がいるようでは自立した優秀な人材は育ちません、という もっともな お考え。

これによって「HONEY」は普通科に戻る。
これは可威と柚留(ゆずる)の別離を意味していた。

制度を根本的に崩壊させる、という新たな展開はあるものの、
結局 お話としては、2人を何とかして引き離したい、という従来通りの内容でしかない。

そういえば絃青(と副会長)は どんな立場なんですかね。
HONEY制度を中止したら彼らも普通科の一般生徒になってしまう。
かといって九華科の9人には空きがない。

この方針が進んだ時、絃青が どんな立場に収まるのかが知りたい。
もうMASTERになる算段が付いているのだろうか。


体制への移行期間は1か月。
それまでに この方針を撤回させなければ、主従関係は消滅してしまう。

落ち込む那由太を前向きにさせるのは柚留。
さすが実質的な紅一点。
全男性のアイドルです。

可威は父親から九華科の生徒たちは退学すらも許されないことを知る。
それは新理事長が 各親の弱みを握っているからだと可威は推察する。

柚留がHONEYDROPの危機でも、親の顔色を窺わなくてはならない可威だったが、
今回も 結局、大きな権力の前には逆らえない。
前半 あれだけ大きな顔をしていたヒーローが こんな小物になるとは。
ここも『レンアイ~』のヒーローと被るなぁ。


華科の生徒たちは親の力を借りられないことを知って、初めて自分たちで反逆を企てる。
まず、パパに言いつけるぞ、とばかりに親の権力を使おうとするところがダサい。

それぞれが父親から入手した情報を統合すると
「九華科が成り立つための裏金リストを理事長が代々 受け継いでいる」らしい。
そしてそれは「理事長の机の引き出しの中に極秘リストのCD-ROMが収められている」という。

それを奪還すれば、前理事長の復帰も叶うかもしれない。

これは ちょっとしたロールプレイングゲームである。
そして本当に各自が役割を果たしているんだけど…。

クラスメイトそれぞれに「HONEY」を手放してくない という共通点が浮かび上がり、
九華科2年生の生徒の大多数と そのHONEYは初めて一致団結をするのだった。

DROPゲームを通して、他の九華科生徒のことを描けていれば、受ける印象は大分ちがっただろうなぁ…。


が、2年の九華科には何度も人を裏切ってきた男がいる。
それが千駿。

内通者として絃青に、CD-ROM奪還の決行日を教えてしまう。
うーーーん、千駿が暗躍する場面は飽きたよぉ。
単純な三角関係じゃないから、柚留との場面もドキドキしないし。

奪還の日、九華科の生徒たちはDROPゲームで鍛えた特技を駆使して警備の妨害を攻略していく。
まさか 謎の生物や薬物、爆発物がこんな形で役に立つとは。
正直ここは ちょっと楽しい場面だった。

人を妨害する手腕を磨く という意味ではDROPゲームも無駄ではなかった、のかもしれない…。

だが理事長室の扉は開かず、そして現れた絃青が携えていたCDケースは空。
彼らの目論見は全て外れてしまった。

あえなく退散する九華科生徒だったが、実は絃青も裏切り行為の途中であった。
彼も独自に裏金リストを盗み出そうとしたが、先に父によってケースを空されてしまっていたのだ。


日の理事長との話し合いで、各学年の代表者(2年生は可威)は、それぞれにHONEY制度の存続を求める。

可威は「『HONEY』をもつことで 人間として大切な多くの感情を学べる」と その効用を訴える。
彼がこんなことを言えるようになったのは、心から信頼できるパートナー・柚留と出会ったからであろう。

でも口先ばかりでHONEYの重要性を訴えているけど、
そうなるとDROPゲームの目的って何なの??という問題が浮上する。

半年に一回、その人の半身と言うべき存在を引き剥がす余興に興じていたのは お前らじゃん?
しかも可威たちの学年は1人を標的にしてイジメみたいな大会を開いて、自分たちの安全は保障されていた。

これは性的暴行をした可威に名誉が挽回しないように、
いくら美談に仕立て上げようと、過去の行為が彼らの信頼性を損ねる。
作中の どっかしらに穴があって、純粋に楽しめない。

だが、これも彼らに与えられたロールプレイング。
この発言を受け、
新理事長は3週間後にテストを実施し、
MASTER1人で受けたテストで全員が合格点をクリアすれば制度の存続を認める、という譲歩案を出す。


の事態に、MASTER1人では何もできない九華科の面々は大ダメージを負うのだった…。
いかに彼らが自分たちを律せていなかったかが よく分かる。

実は可威にも苦手な分野があって、彼は そこでつまずく。
可威はバイオリンの練習で苦戦し、そのストレスを 柚留との愛欲で解消しようとする。
さすが性欲お化け。

でも ここは折角、可威たちが人間的に まともになろうという流れなんだから、
作品的にはノルマなのかもしれないが、エロ描写なんて いれてほしくなかった。
流れが台無しだよ。
それにヒロインの柚留は 今もって男性のストレスの捌け口、性欲処理機でしかないみたいじゃんか。

可威は情事の後で、柚留に励まされて何とか課題をクリアしようとする。
結局、女性に甘えた お坊っちゃんでしかない。


が試験当日、千駿がボイコット。
これによって全員合格の条件が達成できずに、戦わずにして負けそうな九華科。

彼の説得に向かうのは、自分以外のピンチの際には聖女になる柚留。
数々 受けてきたセクハラにも負けず、彼を動かせるのは自分だけだと彼を呼びに行く。

まぁ 実際、MASTERは試験があるので暇なのはHONEYだけで、
これまで千駿と関わったHONEYなんて柚留ぐらいなもんでしょう。

可威はセクハラを心配するが、その心配を払拭するために、絃青が付き添いを申し出る。
今は理事長派の筆頭の絃青だが、可威は彼の言葉を信頼して任せる。
これは以前、絃青が千駿の企てにハマって 柚留をピンチに追いやった彼の反省があるから活きる言葉だ。
この男性同士の信頼感は良いですね。


かし実際、千駿の邸宅に入れたのは柚留だけ。
それでもピンチの時だけ強くなる典型的な少女漫画ヒロイン属性を発揮して、柚留は家に乗り込む。

千駿は再び柚留の指輪を狙う。
この新しく出来た可威との絆と引き換えに、千駿はテストを受けるという条件を出す。

1つ目の指輪は千駿に奪われ、その代わりに新しい指輪が贈られた。
この指輪は今度こそ2人が繋がり続けるためのもの。
なので柚留はこれを決して失う訳にはいかない。

だから千駿に対して キッパリと拒絶をする。
千駿にとっては これが正解。
柚留の態度を見て、彼はテストを受ける事を約束する。
こでは、柚留の可威への確かな想いをしって、千駿の柚留への想いが完全に断ち切られた、という場面でもあるのかな。
これ以降は千駿は邪魔をしない、はず。


そして絃青も、試験期間中ではあったが那由太に真相を告白する。
その際、この件が終わったら那由太のHONEYに戻りたいという希望も伝える。
那由太もまた自分の成長を誓い、彼を受け入れる。

全ては この試験が終われば、丸く収まる算段は付いたのだが…。