《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画で男性が女性に贈る品 第1位はネックレス。えっ、これはネックレス風の ヤーツ??

ラブ・ミー・ぽんぽこ!【電子限定おまけ付き】 3 (花とゆめコミックス)
赤瓦 もどむ(あかがわら もどむ)
ラブ・ミー・ぽんぽこ!
第03巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★★(8点)
 

イケメン双子を欺きながら、人間の雄との婚活に励む化けだぬき・ぽんこ(♀)。兄・一に首輪をつけられたことが嫌で、家出したぽんこ。お腹が減ったので帰ろうと即座に心変わりするが、色々あって帰れなくなってしまう。見知らぬ土地で出会ったのは、イケメンの化け狸…!? 文字通り、笑って泣ける化けだぬきの四角関係(?)婚活ラブコメ、第3巻!!

簡潔完結感想文

  • 彼の真意は上手く伝わらず男女は喧嘩する。家出した彼女が出会ったのは…。
  • その人に会いたくて泣いてしまう。それって家族じゃないか。いや家族以上⁉
  • やはりイヌ科の敵はイヌ科だったな…。人の恋路を邪魔する奴は狸が蹴るぞ!

女は実質 ぽんこ のパクリ(『1巻』の一の迷言をアレンジ) 3巻。

一見、無法地帯なのに ちゃんと少女漫画の骨組みを死守している本書。
少女漫画界で異質なヒロインの たぬき の ぽんこ であるが、しっかりとヒロインらしい役割を果たしている。
それが「聖女」。

インパクト重視でキャラ付けされたドSも、
最終盤で出てくるヒーローのトラウマも、全て丸く収めるのが少女漫画における聖女、だと私は思っている。

そして本書が少女漫画である以上、聖女は実在したんだ…。
たぬき の姿をしていますが、間違いなく ぽんこ は聖女である。

本書における聖女の役割は男性たちのコンプレックスのケアだろうか。
そして この男性たちは一律に、人語を操り 人間に変身する化獣(ばけもの)である。

家柄があっても お金はない農家の息子・根須(ねず)にとって ぽんこは、
そんな自分のコンプレックスをふっ飛ばしてくれた人。
これは双子の兄の一(はじめ)にコンプレックスを持っていた真(まこと)や、
今回 初登場となる、とある後悔を抱える拓(たく)も、ぽんこ の聖女パワーに救われてきた。

では逆に完璧ヒーローに見える一のコンプレックスは何だろうか。
どうも考えつかない。
いや きっと、彼にコンプレックスを気づかせるのが ぽんこ の役割なのだろう。

一が弟・真のことを羨ましがったり、
今回の首輪から始まる家出騒動では良かれと思った彼の行動が言葉足らずで ぽんこ の尊厳を傷つけた。
こうやって彼に上手くいかない経験や痛みを引き出すのが ぽんこ なのではないか。

コンプレックスと向き合って、それが成長の糧となる。
そうして根須・真・拓に 今以上の成長を心に決めさせた。
これから彼らはきっと いい男になる。

そんな良い男に愛されることで ぽんこ の価値は上がっていく。
そうやって間接的に自分の価値を高めていくのも少女漫画ヒロインの正しい手法なのである。

今回は、新キャラ・拓も良いですが、基本的には二ノ宮兄弟との絆の話で大満足。


る日、一が用意した首輪を付けられた ぽんこ。
それによって自分がペット扱いされたと憤慨し、野生のプライドを持つ ぽんこ は家出を決意する。

一にとって首輪は お近づきの印。しかし ぽんこ はペット扱いに果てしない距離を感じた。

これは一は説明不足ですね。
彼女のために良かれと思ってしたことが、
彼女には真意が伝わらず裏目に出るという少女漫画の すれ違いパターンです。

トラックの荷台に乗ったまま ぽんこ が辿り着いたのは東京から8時間の田舎の村。
目を覚ましたぽんこはパニックになり、言葉を発しながら逃走しようとする。
が、それを男性に捕獲され、万事休す。
今回は急須になる余裕すらない。

しかし その男性・拓も また化け狸だった…。
拓は家族のいない たぬき。
家族が死んでしまった幼い頃は、他の家族の世話になり、そして成長してからは各地を転々としている。
その知識と恩を忘れずに狸の住みやすい環境づくりに従事している。
人間社会では野生動物研究家として扱われているらしい。


んこ は持ち前の順応力で、この地での婚活を始めようとするが、
この地に慣れない ぽんこ には危険も多いので、拓は ぽんこ を自分の住まいにしている民宿に泊まらせる。

またも新しいイケメンとの同居ライフですね。
新章開幕である。

しかも拓は民宿の人に、人間姿の ぽんこ を嫁として紹介する。
これにて婚活成功である。
ご愛読ありがとうございました。


一方、真は ぽんこ の家出直後から彼女を5時間以上探し回ったらしい。
それを聞いても一は冷静。
なぜなら彼が ぽんこ に装着した首輪にGPSが付いているから。

これ、同じことを真がやったら、ただのストーカーに思えてしまうところが おかしい。
真からの首輪の場合は、独占欲や執着のこもっていて、首元が むず痒くなりそうだ。

だが、兄弟がGPSの発信源で見たのは、ぽんこから外され放置された首輪だった…。


は ぽんこ がこの地域で馴染めるように、自分を育ててくれた家族を紹介しようとする。
だが、その家族は随分前に事故で他界したという。

前日、出会ったばかりの ぽんこ が野宿しようとする際に「車の通りも多い」と言っていたが、
拓の大事な人は既にその犠牲になっていた。
会おうとしない間に、もう一生会えなくなってしまった。
彼の恩返し、そして彼の人生で学んできたことは、その届け先の一つを失ってしまった。

その夜、拓を気遣うぽんこの口から婚活の理由が詳しく語られる。

かつて自分の家族も危なかったこと、
それが危機感を呼び起こし、狸の力だけじゃどうしようもない現実を思い知らされたこと。
だから彼女は人間の雄との結婚で、家族のセーフティーネットを確保しようとした。

ぽんこは自分の暮らしではなく、家族の保険になるために婚活をしている。
いわば家のための結婚だ。

そんな ぽんこ の結婚の理由が、自由恋愛になっていくのかどうかも見所か。
真が この話を聞いたら、今すぐ家族全員養ってくれるだろうが。

ぽんこ は拓がこれまで何のために頑張ってきたのかを理解している。
だから今日は同衾の禁を自ら破って、彼の隣にいてあげる。
モフモフの威力は絶大で、男性たちの心を癒す…。

彼女は、自分の中に野性があることを誇りにしているが、自分が魔性であることは気付いていない。


んこ の家出から3日目。
真は焦っていた。
彼の焦りは、ずっと冷静な兄の一にぶつけられる。

真は ぽんこ に対して一心不乱に愛情を注ぐが、その分 ぽんこ の背景が見えていない。
一の行動が、大局的な視点で たぬきが都会で生きていくことを考えていた結果であることを真は思い当たらない。

そして この一の行動は『2巻』の ぎん と きんじろーの件が影響していた。
園で飼われているペンギンのぎんは、飼育員の きんじろーが園から出た生活を見守れない。
それと同じように、一が学校に行っている際などに、
ぽんこ がどこで何をしているかが彼には把握しきれない(大抵 近くにいるのだが…)。

だから万が一の事故などを考慮して、一は ぽんこ にGPS付きの首輪を用意した。
失うこと、万全を尽くせないことへの恐怖が首輪を形を変えたと言える。
これが愛情でなくて何だというのだ。

そして一は、ぎん たちに自分たちが何かあった時、ぽんこ の助けになって欲しいという自分の願いを託していた。
人間だから絶対に安全に過ごせるわけじゃないですからね(人間の きんじろーは怪我したし)。
自分にせよ相手にせよ、同居人に何かあった場合でも保険を用意する、
これが一なりの人の守り方なのだろう。

ぽんこ への愛情は真の方が強いと思うが、
ぽんこ が望むような継続的な生活の確保、という意味では一の現実的な対処が合っているように思える。


かし考えてみれば ぽんこが自分では この首輪を外せないことは、
ぽんこ=たぬ沢の二重生活の破綻の危機でもあった。
どうやら首輪は、「変化したとしても本体(狸)についてたら外せない」ものらしい。

もし ぽんこ が家出をしなかったら、
彼女はGPSが付いていることを知らずに学校に登校し、
ぽんこ と たぬ沢の生活圏の一致が露見してしまう所だったのだ。
(これは たぬ沢のスパイ活動&双子の使用人として同行していた、という言い訳が出来るが)

一が真みたいに粘着質な愛を ぽんこ に抱いていたら、
たぬ沢=ぽんこが一の自宅マンションに帰っていくのを知ってしまうかもしれない。

それにしてもぽんこの変身能力は謎ですね。
骨の構造が違う飛行可能な鳥にもなれるということは、視覚的だけじゃなく物理的に変化しているし、
もっと言えば首輪や ぎん の人間態への変化など、自分の肉体以外でも彼女の力は作用している。
こう考えると、首輪の形状を変えるとか、材質を変えるとか出来そうな気もするが…。


もし いつか、ぽんこ=たぬ沢の正体がバレそうな時は、
ぽんことたぬ沢が同一空間にいるようなトリックを駆使するのだろうか。

どこぞの名探偵や怪盗のように、冷や汗もののアリバイトリックをする場面を見たかったなぁ。
そして ぽんこつだぬき には失敗して欲しいけど(笑)

こういう展開も、作者は用意していたと思うんだけどなぁ。
あぁ、読みたい。


の一夜から拓にとって ぽんこ は、便宜上ではなく本当の俺の嫁になる。
その願いを拓は ぽんこ に伝える。
本書で最初の告白シーンでしょうか。

家族になろうよ、と提案するぽんこの頭には、父や母や兄弟たち、そして一と真の顔が浮かぶ。
だから ぽんこ は涙ながらに訴える。
帰りたい…、と。
一度、家を出たからこそ、帰る場所がある、帰りたい場所があることに気づかされたのだろう。

そんな ぽんこ の悲しみを助けるのは やはりヒーロー。
真は全身全霊でぽんこを抱きしめ、一は涙ぐんで ぽんことの再会を果たす。

レアな一の涙も良いですが、いつもは陽気な ぽんこ の涙もグッとくるなぁ。
大きな瞳を涙でいっぱいにして、遠慮なしに大切な人に抱きつく姿は胸を打つ。
なんだか最終回みたいな話だなぁ。

乙女ゲームのマルチエンディングの一つみたい。捕食する/される心配もないし良縁では?

出騒動を経て帰宅した3人だが、拓もちゃっかり東京行きの飛行機に同乗していた。
彼は都会の狸になって、ここで研鑽を積み、
ぽんこ に相応しい雄になって、もう一度求婚するという。

拓は ぽんこ にとって一番 親近感を覚える人だろう。
同種だし、同じ悩みや過去を共有できる。
彼となら人間社会に馴染むことも出来るだろう。

それは二ノ宮兄弟にとって最大のライバルということだ。

いなり が ぽんこ にとって同性ライバルになるよう現れたように、
二ノ宮兄弟と拓はライバルとして宿命づけられている。
愛する人を奪い合うイケメンの戦い、見たかったなぁ…。

そして拓が現れるなり、拓と ぎん の化獣コラボが見られて嬉しい。
こうやって世界が広がっていくんだろう。
(そして着実に人間が駆逐されていく未来が近づいている気がする…)


は、失敗も踏まえて最低限、飼い狸だと思われるような新しい首輪を ぽんこ に用意していた。
今度は、ネックレスのように見える品である。

ネックレスといえば少女漫画の男女の間で贈られる品、第1位ではないか。
作者の前作『兄友』でもネックレスは大事なアイテムだった。

この首輪にも 家族以上の愛情がこもっていたりして…。
それにしても ぽんこ と真・一のスキンシップは萌えるなぁ。


学校では、双子の二ノ宮(にのみや)兄弟と たぬ沢が同じ期間 休んでいることが噂になる。

それを許容できないのが狐の いなり。
ねずみの化獣・根須(ねず)を拉致・拷問して事情を聞き出そうとする。

ここの化獣コラボが大変 面白い。
根須は最弱キャラ、巻き込まれ不幸キャラが板についてきましたね。

いなり は根須に子分になることを要求するが彼は拒否。
ぽんこ への気持ちも隠そうとする根須に対し、いなり は狐ならではの こっくりさんで自白させる。

この こっくりさんは本当にお腹を抱えて笑った。
YES/NO、ひらがなの他に記号って(笑)

そして最終的に いなりは何だかんだで根須の ぽんこ への再アタックへの誘導に成功しているし。
こっくりさん は結構良い恋愛アドバイザーなのかもしれない。


んこの婚活アドバイザー役である一は、最近その役目を果たさない。
これは1話における真と同じように、ぽんこに相応しい人間を厳選し始めたからだろう。

イヌ科の狸だからか、犬好きセレブを狙う作戦に出る一行。
だが ぽんこ には犬になりきる屈辱が待ち受けていた。
機嫌の悪い ぽんこ は完全に輩(やから)かヤンキーですね。

そして ぽんこ の婚活を邪魔するものが意外なところにいるのが面白い。
そうだよね、彼らからすれば後から来た同類に家と主人を乗っ取られるみたいなもんだから。
後妻に対する実子の反抗だと思えば理解しやすい。

そしてラストで ぽんこ は既に周囲の誰もが知っている意外な事実を知る…。