《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

明日から本気出す、とか言っている人の本気は長続きしない。マジで。

純愛特攻隊長!本気(1) (別冊フレンドコミックス)
清野 静流(せいの しずる)
純愛特攻隊長!本気(じゅんあいとっこうたいちょう!マジ)
第01巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

無敵のカップルに大事件発生! ……で、気づけば世界制覇目指して大暴れ!? さらには、待望の新キャラ登場! 美少年好き×天然イケメンが加わって大波乱――!? ある日、勢い余った千笑(ちえみ)に校舎の3階から突き落とされた平田(ひらた)。そのショックで“千笑とつきあってた記憶だけ”が無くなっちゃった!! どーする千笑ッ!? 大ヒット連載新シリーズ、最強(最凶!?)LOVE新展開!!

簡潔完結感想文

  • 謎の仕切り直しだが、4回目の「するする詐欺」発生。良くも悪くも変わらない。
  • 1話目で両想いになったカップルを通算14巻目で一度リセットする記憶喪失回。
  • 美形キャラは静かに狂っている、という本気の再放送が始まる。引き出し少ない。

気が4巻しか続かないなら改題しなきゃいいのに、の 1巻(通算14巻目)。

書名に「本気(マジ)」が付いて新シリーズの開幕らしい。
心機一転、仕切り直しということなのか。

作者はカバー袖で「この世には、いろんな事情があるのです…(遠い目)」と書いているが、
「いろんな事情」が何なのかは具体的に記していない。

掲載誌も内容も何が変わった問う訳でもなく、
これまで通りの長所と短所が引き続き見られます。

著書はテンポの良さでしょう。
ストレスなく話が進んで、あっという間に読めてしまう。
特に今回の前半は、これまで登場したキャラクタが一気に登場していて、
ワイワイと楽しい雰囲気が味わえた。
これは長編ならではの楽しみで、これまでは こういう集合が無くて残念に思っていた。
特に追加キャラは出番が終わったら追放の お約束から真鶴(まつる)は逃れたようで、
新シリーズでも顔を出して、レギュラーに加わっていることが嬉しい。
作者はキャラの性格をしっかり作って、それぞれ生き生きと動かせるんだから大人数コメディの方が楽しいと思う。

その持ち味を殺してしまうのが長編で、本書の短所となる。
長編になると、主人公・千笑(ちえみ)と美形新キャラの2人だけのシーンが続いて、
大人数コメディどころか、恋人の平田(ひらた)まで物語から排除されて、
辛気臭い話が続くのが本書の残念なところ。

改題してテンポよく進んでいたと思ったら、暗い長編が始まりそうな予感で終わる。
扱う内容にバリエーションが乏しいのが本書の もう一つの欠点ですかね。
作風に そぐわない長編と「するする詐欺」は、もう飽き飽きです。

結果的に新シリーズは前シリーズに遠く及ばない4巻で終わった。
一体、作品と作者は何に本気(マジ)になったというのか…。


1話目は恒例の「するする詐欺」。
シリーズ通算4回目でしょうか。

タイトルが変わっても、内容は何も変わらないと読者を安心させるための、
同じ内容なのかと、作者の意図を深読みしてしまう。

結局、いつも通り 一歩も進まない関係を1回 全てリセットしてみたのが2話目。

教室で平田が のろけたことが恥ずかしくて、平田を思いっきりはたいた千笑。
その勢いで平田は開いていた窓から落下し、その衝撃で千笑との交際の記憶だけが抜け落ちた、という話。

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2人の問題に周囲が茶々を入れるのも新鮮。バカップルに呆れつつ、仲良く見守る展開を見たかった。

これは『1巻』の1話で交際が始まった2人の恋愛を再度、一から始めさせるためか。
新シリーズの開幕で、読者に2人の恋愛の形を再提示する意味もあるのだろう。

どうせなら1話目と2話目を逆にすればいいのに、と思わなくもない。
新シリーズになって、平田が千笑のどこを好きかを改めて知らしめて、
その後で 愛が再燃した2人が「するする詐欺」に手を掛ける、という展開でも良かったのではないか。

平田が千笑への恋愛感情だけを忘れてしまうのは、千笑にとって酷く悲しいこと。
本書における「愛の結晶」である平田から貰った指輪を見せても、彼は悶え苦しむだけ。

その辛い現実に対する千笑の解決法が、本書らしくて笑ってしまった。
やっぱり このぐらい突き抜けてないと笑えない。

千笑は、平田の「特別」になるために、学校の「黒鬼」として恐れられる平田の右腕として活動し始める。
この学校、普段は平和なのに、有事の際になると どこからともなくヤンキーが湧いて出る。
同じ学校のはずなのに、ギャップに違和感があるなぁ。

そんな校内での抗争の中で脛にアザが出来てしまった千笑。
それを平田が保健室で手当てをしてくれる。
通常なら保健室でのヒーローからの手当ては、胸キュンシーンだが、
平田が千笑の身体を気遣うのは、千笑が女で そして「関係ないヤツ」だから。
彼の一番近くにいたはずの自分が、完全な部外者になるという別れよりも辛い一方的な平田の言動。

そして千笑がどんなに平田のことを想っていても平田は千笑を恋愛感情は持てないという…。

だが、その どん底から千笑は自力で這い上がる。
彼女の努力によって この話は もう一度、平田が千笑を好きになる回となる。

千笑が本来の目的を忘れて、強くなることに一直線になるのは通常営業って感じですね。
ただ そんな千笑の短所も含めて、面白い人格を宿す女性だから平田は目が離せない。

千笑の暴走が振り切った所で、ヒーローがピンチを手助けをするというのも お決まりの展開。

記憶喪失の治り方は、本書ならではの派手な場面(再度 高所から落下するなど)が待っているかと思いきや、
自然に、もう一度 千笑を好きになる過程を経て記憶が戻っていった。
脳の道を間違わずに進むことで、好きの回路が繋がったのだろう。

ただ、本書は平田と作品の距離を取りがちなことで有名ですが、
今回の記憶喪失も、一種の平田の追放という感じもしなくない。

これは平田と一緒にいると、千笑の頭がピンク一色に染まってしまうからだろうか。
ストッパー役である平田は、千笑と作品にとって邪魔な時もあるのだろう。


編は「するする詐欺」が起こった後に始まる。
そして長編は新キャラの登場を意味する。

席替えで、新キャラの2人と知り合う千笑。
そういえば1年生の時は席替えがなかったような気がするけど…。
ずっと千笑が前の方で、平田は後方の席だった。

追加キャラは美形が定番。
1人目は女性で、伊波 葵(いなみ あおい)さん。
彼氏持ちだが、美少年好きで、真鶴や大野(おおの)など目の保養になる男性が好物。

そんな葵が目をつけているのが、千笑の隣の席になった由比 翔(ゆい かける)。

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またもやイケメンの新キャラと知り合いになる、ヒロイン特権を満喫する千笑。お節介の予感がする…。

由比は眉目秀麗で成績優秀の人生イージーコースといった雰囲気の男子生徒。
(とても治安の悪い学校の成績優秀だとは思うが)

だが、由比は自分が とばっちりで殴られてもヘラヘラと笑っているような人。
過激な言動も見え隠れしていて、心に問題を抱えている匂いがプンプンする。

由比もまた、倉森(くらもり)・立花(たちばな)・繁(しげる)の「静かに狂っている」という系譜を継いでそうである。
作者は美形の ちょっと壊れ気味のキャラしか創作できないのだろうか。

千笑はまた新キャラの男子に関わりまくるのだろうか。
新シリーズになったのなら、内容を一新して欲しかった。