《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

今日 僕たち 私たちは、ほぼ 高校1年生後半の思い出しかない学校を 卒業します!

花にけだもの(10) (フラワーコミックス)
杉山 美和子(すぎやま みわこ)
花にけだもの(はなにけだもの)
第10巻評価:★★(4点)
  総合評価:★★(4点)
 

累計150万部突破の大人気コミックス「花にけだもの」最終巻。
卒業式を迎えたけだものたち。キューちゃんは、保育士を目指し地方の短大へ、豹は政治家を目指し、都内の大学へ。千隼は、モデルの世界へ飛び込み、竜生はアメリカへ。そしてカンナの選ぶ道は…
それぞれの夢に向かって第一歩を踏み出した5人。そして、永遠の愛を確かめあった恋人達…キューちゃんと豹が、本当の幸せを掴んだ姿は、感動的です!
卒業後のキューちゃんと豹を描いた番外編読みきりも収録。卒業してもなおラブラブな二人は、うらやましくもありほほえましくもあり…最後まで、ぜひぜひ二人の恋を見届けてください!

簡潔完結感想文

  • まだ不明な素性もあったのに再告白・再交際。実家が金持ちなのは飾りです。
  • 9巻まで1年生、10巻で卒業式⁉ 恋愛も展開も作者のペースに ついてけない。
  • 思い出したかのようなスクールリングと隠れ家では感動が湧き上がらない。

に届く きっと届く 乙女心 勇気だして♪(「虹色くまくま」)の、最終10巻。

ヒロインの久実(くみ)が豹(ひょう)に想いを伝えに行く所から始まる『10巻』。
でも一度交際してるし、両想いは確定してるしで緊張感は ない。
『10巻』全体が恋愛の勝者である2人のウィニングランみたいなもんです。

手厳しいことを言えば、私の集中力は『9巻』で切れた。
久実が もう一度 豹を見直す過程や、豹が成長する様子に僅かな期待をしていたが、
あんなに雑に恋心を再燃させたことに失望を禁じえないし、もはや主人公たちに興味はなくなった。

更には『10巻』で重要な場面として取っておいたのかと思われた
「スクールリング交換式」も中途半端に終わったことにも失望した。
ここで私の作者への信頼は一層 失われた。

本書は高校1年生の2学期(推定)から高校2年生の4月か5月ぐらいの8か月余りの話だと思われる。
その中で、出会って数時間で好きになって、3か月ほど経過したクリスマスで別れて、その後、別れは2年生になるまで続いている。
別れている期間は作中の経過時間の半分の4か月にも及ぶのに、実感として そうは感じられなかったのが残念である。

久実が申し出た別れに意味が薄かったのと、別れた後も ずっと豹は久実を想っていたこと、
そして千隼(ちはや)のアプローチがあったので、久実に孤独を感じなかったのが原因だろうか。
しかも別れを通して作者が何を描きたいのかが何も浮かび上がってこなかったし…。

ただ本書においては2人が両想いの時より、別れている時の方が2人のことを理解できた気がする。
久実が感じた 最初の交際の限界が一番 共感できた箇所。
2人が明確に成長したとは言えない段階で また恋愛に のぼせていく久実を見た時、
また彼らのことが理解できなくなり、彼らの恋愛を冷ややかに見つめるだけとなった。

全体的に大まかな展開や設定・モチーフを用意していた割には、全てが十全に機能しているとは言い難い。
複雑な過去は匂わす程度にして、深入りしない手法は品があるとは思うが、
作者の場合、忘れてるのではないかと疑うほどなかったことにしていることが多すぎた。

ちなみに完結から5年以上経過した2018年に番外編が1冊発売されている。
その感想は『コチラ』に(感想文のページに飛びます)。
作者が描きたくてたまらなかったであろうシーンが満載の短編集だったなぁ…。


に自分の想いを伝えるために彼の実家を訪れた久実。

最後の最後まで豹という人物の価値を高めたいのか、彼が政治家の息子だという設定が明かされる。
有名校に在籍してるし良家の子息であることは何となく予感していましたが、ここまでとは思わなかった。

とはいえ、久実が その事実を知ったのは告白の後。
最初の出会いでは「王子様」だと熱を上げた豹が「けだもの」だったことで裏切られたと思った訳ですが、
今回は告白してから彼が本物の「王子様」だということが分かった。
これは豹のステイタスを知らなくても、彼本人を好きになったという証拠と好意的解釈しておきましょう。
豹も自分の「外側」だけではなく、彼に自然に接してくれるから久実に惹かれたのだろうし。

豹がアパートで一人暮らしをしたのは、
政治家の次男として生まれ、病弱な兄に代わって「外側」を必要とされることに疲れたから。
アパートは逃避先だったけど、好きな子を守れるくらい強くなりたいと思ったから、実家に戻ったらしい。

豹の実家問題や彼のトラウマを恋愛に絡めなかったのは(久実に解決が出来るとは思えないため)良策だとは思いますが、
トラウマの解消という分かりやすい成長や分岐点がないため、
豹の変化がぼやけてしまった感もある。

だからこそ、2人が復縁する過程が分かりにくい。
久実もカンナも男性からの猛アタックに 根負けしたようにも見えてしまう。

ちなみに豹の実家ではキスしなかったのは彼らなりのモラルなのだろうか。
…と思ったが、最終話で久実が居候する おばさんの家でしてるから モラルの問題ではないか。


想い後に向かったのは、これまで豹が住んでいたアパート。
この部屋、豹が出て行って以降、鍵が締まっている様子がないが大丈夫なのだろうか。

日が出ている時刻にアパートに到着したのに、
1回 キスを交わし始めて我に返ったら電車が終了してしまう時刻であった。
都内の終電は とても遅い時間だから、推定で8時間ぐらいキスをし続けていたか。
トイレなどで我に返る暇もなく8時間?

久実の終電を逃してしまい帰宅する方法を探す2人。

高校生だからか、最初にタクシーという選択肢はないらしく、
カラオケや漫画喫茶などを渡り歩くが どこも満室。
そもそも高校生が深夜に入れないと思うけどね…。

歩き回るうちに突然の豪雨となり、とあるホテル前で足を止める2人。
そこで理性を働かせたのか、ここにきてタクシーを提案する豹。

それに どこをどう歩いてきたか知らないけど、
さっき出てきたアパートに引き返すという選択肢はないのだろうか。

でも もしかして豹は こんな展開を狙ってたんじゃないか という疑惑が残る…。
なにせ ずっと女遊びをしてきた男だもの。
女性を絶対に落とす・自宅に帰らせない方法なんていくらでも用意があるだろう。
終電を逃したところから彼の計画は始まっていたのだ。

そういえば 今回も水に濡れてますね(笑)
本物の「濡れ場」はさすがにカットされているが、作者は10ページほど濡れる久実たちを描けたようだ。

掲載雑誌の制約で「濡れ場」は描けないから、代わりに物理的に濡らすことにしてみた。

実は自分からホテルへ入ることを提案する。
これぞOKサイン。豹からじゃないから暴行にもならない。
用意された展開なんで、久実のためにも何もないアパートじゃなく清潔なベッドを用意してあげたのだろうか。

緊張する久実だが、同じぐらい緊張させることで豹にとって「本当に愛してる人を抱く」はじめての経験とさせている。
ただ流石に 涙ぐむのは、男ヒロインだなぁと思っちゃったけど。

Sho-Comi」と同じレベルで品のないことを書きますが、
日が落ちる前からのキスは 長――――――い前戯だった訳ですね。

にしても偶発的で、結果的ではあるものの、
復縁した すぐその日に性行為に及んでいるのも慎みがないような…。
千隼が知ったら泣くんじゃないかな。


の一夜の出来事が、最終話の1つ前である。
彼らは ついこの前 2年生になったと思ったら最終話は3年生の卒業式の前日まで話が飛ぶ。
もしかして最初からこういう構成にするために修学旅行を1年の冬の沖縄で敢行したのだろうか。

我々読者にとっては実質8か月間の高校生活しか知らないので、
卒業の場面で泣かせようとするのは無理がある気がする。
雑誌や発売日に単行本を買ったリアルタイム読者にとっては、
現実時間で連載開始から2年ちょっと経過しているので ちょうどいい時間経過なのかもしれませんが。

進学先は久実が静岡で、豹は東京。2人は遠距離恋愛となってしまう。
この際の久実の進学費用とかどうなっているのかは謎のまま。
最初の東京の有名校への転入も、最後の遠距離恋愛も大雑把と言わざるを得ない。
まぁ本書が欲するのは「表層」ですから、仕方がない。

答辞はアメリカの大学に進学する竜生(たつき)。
もしかして学年主席か。さすが天才である。
『8巻』後半あたりから、いないも同然でしたけどね…。


業式後はモブ女子生徒たちによる第2ボタン争奪戦が繰り広げられる。
久実も参加を決意するが、マラソン大会同様、同じスタートラインにも立てない。
本当の「けだもの」は、イケメンに血眼な肉食獣の女子生徒だというオチだろうか。

けれど久実には豹と出会った秘密の隠れ家があった。

女性生徒は最後までモブ。RPGの謎解きのように、久実にヒントとなる台詞を言わされる。

隠れ家が久々の登場ですね。
後半 全く登場しなかったので、すっかり忘れておられる方も いるんじゃないでしょうか
久実だって思い出さなかったんだから(笑)

そこで豹のスクールリングが久実に手渡される。
累計4回目の やっと到来した機会ですが、リングを交換した様子がないのが気になる。

そして それぞれのスクールリングがどこにあるのか作中で不明確なのも残念。
豹のは『7巻』のクリスマスで久実が豹に返したまま。
久実の物は、同じく『7巻』で久実が海に投げたが、なぜか そこに現れた千隼に拾われる。

卒業式の最中に千隼が豹に渡した物が、その時 拾ったままの久実のリングだろう。
まさか渡したのは千隼のリングで、豹に「…この後 死守しろよ」と告げたのは千隼の豹への密かな想いでBL展開な訳ないよね…(笑)

だから久実が隠れ家に現れた時点で豹は自分のと久実の2つのリングを持っていることになる、のか?
1話から登場する大事な愛のアイテムなのに、扱いが雑で悲しい。

これまで3回、リング交換の機会はあったが、
事情があって1回も交換できず、むしろ2人の仲が険悪になるような出来事が起きてきた。

それだけに リングの交換には意味があるのかと思っていたが、
最終的に交換していないことが心残りである。

この学校のジンクスは交換すると永遠の愛が約束されるのだし、
しかも この学校においてはリングの交換は擬似結婚式なんだから、お互いの指にはめるべきだと思うのだけど…。
豹の言葉はプロポーズっぽいのに、なんでリングの交換しないのだろう。

好意的に解釈すれば、千隼からリングを渡され、久実のことを託された、という意味なのだろうか。
でも やっぱり豹が2つのリングを2人の間において、儀式として交換するのが筋だと思うのだけど。

辛うじてリングを渡す場所は、2人が初めて出会った隠れ家にしたのは良かったが、
リングに関しては、作者はそれほど思い入れが無かったのだろうか。
こういう配慮が行き届かない点が多々あるのが、本書の短所だと思う。


業式後のカラオケは、
1軍のクマのぬいぐるみ仲間だけじゃなく、2軍のクラスメイトの女子2人も参加。
一応は名前に動物が入ってる「けものフレンズ」だからだろうか。

しかし この学校において名前付きのキャラって、この総勢7人だけなんですよね…。
無駄に合コン相手は名前付きだった気がするが…(『7巻』)。

卒業と その後の別れで むせび泣く面々。
ここで少しも感動しなくてゴメンね☆
だって実質8か月の学校生活だし、後半 駆け足だったし。

この場面で傍観してる千隼と猿渡(さるわたり)がお似合いなんじゃないか、と思った。
共に芸事に邁進するみたいだし、お前ら 付き合っちゃえよ。ヒューヒュー!!


ラストは新幹線のホームでのお別れの場面。
と思いきや、ネバーエンディングストーリー

しかし最後の場面、豹はなぜ息切れしているのか。
電車に駆け込んだだけでしょ?
演出は重々承知。
でも病弱な兄と同じく、豹も心臓や肺が異常に弱いのではないかと邪推してしまうではないか(汗)

「花にけだもの 番外編① ー再会ー」…
静岡の短大も2年目を迎え、
豹との3か月ぶりのデートだから待ちきれず、久実は一人で豹の大学に潜入してしまう…。

豹の大学は都の西北の大学ですね。
こういう形式での さりげない一流アピールは許せる。

だが潜入した授業での難解な言葉の羅列は久実を孤独にした。
まぁ 久実は その土俵に立つ必要性もないのだが。

その間違いを正してくれるのは豹。
久実の潜入を察知して泳がしておいて、彼女の居心地が最悪になったら救いの手を差し伸べるマッチポンプの王子様。

久実は豹の誕生日にたくさんの贈り物をする。
中でも20歳の男性に手作りのクマのぬいぐるみをプレゼントするのは少し痛いが、本書では神聖なアイテムですので大目に見ましょう。

豹も久実のためにプレゼントを用意していたが、早く届き過ぎて大変なことになったというオチ(笑)

今回は久実が施されてばかりでなく、自発的な行動で豹を喜ばせることが出来た(初めてかも…)。
「幸せそうなニオイ」とか言ってる豹が、その正体を豹は10か月後に身をもって知る…、なんて結末もありそうだなぁ。

この話は全体的に不穏な空気を漂わせていた『7巻』のクリスマス回をやり直しているような雰囲気を感じられて良かった。

「花にけだもの 番外編②」…
学校のアイドル・カンナと交際することになった竜生に男たちが勝負を挑む。
豹と千隼はチートでしかないけど、竜生の活躍は突き抜けた天才っぷりで笑える。

「花にけだもの 番外編③」…
竜生の人気と、それをよく見ていたカンナの話。交際前だろうか。
連載中に影が薄くなりがちだった竜生を補完する2編でした。