星森ゆきも（ほしもり ゆきも）
ういらぶ。ー初々しい恋のおはなしー
第06巻評価：★★☆（5点）
総合評価：★★☆（5点）
恋のライバル登場にギクシャクした2人だったけれど、優羽のバースデイイブに凛がサプライズを企画して・・・！？ 2人の素敵な仲直りに悶絶必至！
そして友人暦と和真の恋も大きく動き出し・・・！？
上手くいかない恋だって、上手くいってる恋だって、女の子は恋をするとキラキラ輝く・・・！
簡潔完結感想文
- 仲直り編。謝ってからイケメン気取りの台詞を吐いて体面を保つ凛様。
- 偽装交際編。前回の偽装交際は主役で、今回は友人だから全くの別物！
- 心変わり編。恋愛が上手くいかない＆即行の心変わりは あの兄妹の役割。
胸キュン謝罪によって汚名返上したいんだろうけど、汚名を挽回している 6巻。
表紙からしてイッちゃってる凛（りん）くん。彼の迷走は続く。
『5巻』そして この『6巻』で凛が女性たちに頭を下げた2つの謝罪。
しかし全てが丸く収まった、とは感じられないモヤモヤする謝罪だった。
ヒーローの過ちや謝罪すらも胸キュンに利用しようとする浅はかな根性が見え隠れする。
頭は下げても、ヒーローの株は下げられない 作品の葛藤が見えるようだった。
『5巻』いや『4巻』の実花（みか）初登場時から続く嫉妬編。
恋人の優羽（ゆう）が自分にヤキモチを焼いていると知り、
自分に好意を抱く実花を巻き込んで、嫉妬大作戦に乗り出した凛。
だが、それは2人の女性を傷つける結果となった。
それを幼なじみの蛍太（けいた）に指摘され、初めて気づいて実花に謝罪したのが『5巻』。
『5巻』の感想文でも謝罪時の謎のイケメン化について言及した。それが、
「…お前 いいヤツだからさ …俺より もっと いいヤツいるよ」
「…俺の全部 優羽だけのモンだから」
「…ダメなんだ 俺は お前に なにもしてやれない――…」
という自分に酔った数々のイケメン発言。
この自分の地位を決して下げたくない勘違い発言も目に余るが、
まだ誠実さがあったし、論理もあった。
しかし、今回の謝罪は全くもって話にならない。
「…ここんとこ ずっと ヤキモチやかせて 不安にさせて …ごめん」
「…お前の気持ち 試すようなことしたグズだけど……」
ここまでは良い。
優羽にクズを連発していたが、自分こそクズだったと言及していることに胸がすく。
だが問題は、謝罪の後のイケメン化だ。
「これだけは言っとく」
「…お前は俺と一生一緒にいんだから …なんも不安になること ねーんだよ」
……ハァ？？？
相手を不安にさせたと認めたお前が、不安になるな、…だと⁉
これは凛の株を維持するために作者が考案した胸キュン台詞なのかな…？
まるで論理がない。
むしろ開き直ってる凛が悪目立ちしている。
こんなんで騙されるのは世界でたった一人しかいませんよ。
涙を流して受け入れる優羽だけだ。
読者は…、気絶してます。
また、嫉妬編で優羽の中に浮かんだ言葉を伝えないまま、
キス一つで全ての感情を洗い流してしまったのも悪手だと思う。
対話を回避することで凛が傷つくことなく、優羽が全てを呑みこんでしまった。
旧時代的な夫唱婦随が ここに完成してしまったように思う。
ここが凛への不満を告げる最後の機会だったのではないかと思う。
上級国民である幼なじみ4人組の中でも特に凛に 優しい世界が構築されている。
主人公カップルによる初めての喧嘩にならない喧嘩、そして仲直りが終わって、
いよいよ少女漫画の王道、友人の恋模様にシフトしていく。
しかも、お約束の手近な者同士が くっつくという流れ。
いくら作者にとって連載最長記録を更新中で、先が見通せないと言っても、
この暦（こよみ）の恋愛は間を置くべきだった。
こんなに即座に心変わりする恋愛は 新旧どちらも偽物のような気がしてしまうではないか。
この時点で蛍太の恋愛も用意していたのなら、彼から先に進めるべきだった。
それなら新キャラとの恋愛で世界が少しだけ広がった。
そして時間をかけて その人に惹かれていく変化する気持ちを丁寧に描けただろう。
なのに、偽装交際をしたら すぐ心変わりしてしまうなんて安易すぎる。
目の前にある問題から片付けてしまおうという拙速さを感じた。
実花に続いて、和真（かずま）までも振られた直後に心変わりをしてしまうのは いかがなものか。
彼ら兄妹は本書における失恋担当である。
だが、それもこれも作者の中で最強の幼なじみ4人組を傷つけないためだと思えてしまう。
本書の中で初恋を成就させているのは この4人だけ（後半の新キャラは不明だが）。
選ばれし7人の登場人物の中でも やはり神から愛されるのは神が最初に創り出した人間たち。
そんな上級国民の中でも格差を感じさせる恋愛模様です…。
そして友人の恋だけでは不安なのか、もう一つ読者の興味を惹きつける要素として使われるのが、
主人公カップルの肉体関係へのステップアップ。
嫉妬と喧嘩と危機を乗り越えた2人が次へ向かう先として、この問題があるのは当然だが、
一連の騒動、いや最初から小学校2年生メンタルの2人が、
肉体関係に移ろうとしていることは ちょっとした恐怖ですよ。
この時点で、盛りのついたガキとしか思えません。
では、各話の感想を。
29話。
誕生日の前日に凛とデートすることになった優羽。
デートは水族館。
水族館で初めて優羽を見た男性が彼女を褒めるのは お約束の儀式。
上述の凛のイケメン謝罪の後は、水槽の前でのキス。
「…言いたかったこと 伝えたかった気持ち全部
…唇から 伝わった気がしたよ――…」
だそうだ…。もう、本書からは何も伝わってこない。
誕生日の要望として「おそろいのものが欲しい」優羽のためにマスコットを買う凛。
ここでも凛が商品を買う描写がない。
優羽がトイレに行くとか席を外す伏線を入れるべきではないか。
いつも順序を踏まず結果だけで胸キュンさせようという展開が気になる。
「仲直りして笑い合えることが幸せなんて
これ以上に凛くんを愛しく思えるなんて ……知らなかったよ―――……」
うーん。
作者が描きたい結末はそうなんだろう。
それを優羽に言わせたのだろうけど、全くもって共感が出来ない。
仲直りでデートは終わるかと思いきや、隣同士の自宅前で凛は、
誕生日当日になる夜中の０時になる時に俺を独り占めさせてやるよ、と自宅に連れ込む。
それにホイホイと従う優羽の意思の無さよ…。
そして完全に次号への予告詐欺となる。
30話。
優羽の誕生日当日。
和真は仲直りした優羽と凛の姿を見て落ち込む。
「…1ミリも近付ける気がしない―…」
そうですね、読者である私も6巻一緒にいて、近付けません。
落ち込む和真は慰めてくれるという暦に寄り掛かり、そしてキスをしようとする。
それを見てしまう優羽。
ここも優羽が暦を呼びに彼女が自宅から出る描写が欲しかった。
31話。
暦の恋心を彼女以外の口から知ってしまい、
それを秘密にしなければならない幼なじみ4人の間の空気が史上最悪に険悪となる。
勢いで和真に自分の好意を伝えてしまう暦。
その想いに和真が即座に応えないので、暦は失恋を経験していると言えなくもない。
だが、どこまでも幼なじみに優しいのが この世界で…。
32話。
ここで和真が仲間から外れることは優羽を傷つける、という謎の理論を持ち出して、
暦と和真の偽装交際が始まります。
えっと、偽装交際、本書で2回目ですよね…。
偽装交際からの本当の交際が本書における正式な手順なのか？
そういえば あの人も ゴニョゴニョ…。
これを様式美と捉えるか、引き出しの無さと捉えるか。
暦の この行動が本当に優羽のためになるのか微妙ですね。
彼女を傷つけたくない、罪悪感を植えつけたくないという気持ちは分かるが、
恋愛に勝者と敗者がいること痛感した上で、それを乗り越える友情があることを自分で示せばいいのに。
そして何より偽装交際は暦自身に利するものがある。
冬休みをペンションで過ごすことといい、和真といるために皆を巻き込んでいる私利私欲の暦です。
この偽装交際は和真も暦も得しないことを、優羽のためにするという態度の表れである。
本当に優羽は姫なんですね。
またも外見の褒めが続く。
どうしても周囲の人間に美男美女カップルだと言わせたいらしい。
優羽は暦の後ろ暗い事情を察するが、暦には問いただせない。
役に立たない自分を責める優羽を、凛が抱きとめる。
凛が久しぶりに自作自演じゃないヒーローしてますね。
33話。
凛の仲介で暦と本音の話をする優羽。
幼なじみが ようやく親友になれた感じがする。
この場面では優羽はしっかりと自分の意見を言えている。
なぜこれを冒頭の嫉妬編の終了時でもしなかったのか謎です。
実は優羽は凛には言いたいことが言えてない、という今後の伏線だったりしたら驚くが。
お泊り女子会。
暦は、偽装交際をして和真と一緒にいられて得をしている自分のズルさを吐露する。
これを本人が自覚していたのには驚いた。
凛に続いて、暦も人を利用する人になりました。
なら次は蛍太か？？
そして優羽だけが、人を利用しない本当に純粋で可愛くて姫になる⁉
優羽の純真さを表すために周りが汚れていくような気がする…。
修学旅行編を予告して この巻は終わり。
次へ次へ、読者が一呼吸置かないように、イベントが乱発されます。
